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Trademark Appeal Case

記述的商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第14348号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1.本願商標

本願商標は、「シアノ」の文字を横書きしてなり、第1類「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」を指定商品として、平成6年6月6日に登録出願されたものである。

2.原審の理由

原審において、登録異議申立ての結果、「本願商標を構成する『シアノ』の文字は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出した証拠によれば、『シアノ酢酸から合成されるシアノアクリレート』が瞬間接着剤の原材料として使用されていることが認められる。そして、接着剤を取り扱う業界においては、シアノアクリレートを主成分とした瞬間接着剤を『シアノアクリレート系接着剤』『シアノ系接着剤』『シアノ系』の如く、『シアノ』の文字が『シアノアクリレートを主成分とする接着剤』であること、即ち商品の品質、原材料を表示するものとして商取引上普通に採択使用されているものである。

してみれば、『シアノ』の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎない本願商標を、その指定商品中『シアノアクリレートを主成分とする瞬間接着剤』について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記事情よりして商品の品質、原材料を表示したと認識するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当であり、また、前記商品以外の『接着剤』に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当する。」として本願を拒絶したものである。

3.当審の判断

(1)原審において、申立人が提出した甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証及び出願人(審判請求人)の提出に係る乙第1号証によれば、「シアノアクリレート系接着剤」ないし「シアノアクリレート接着剤」といえば、「瞬間接着剤」のことを指称することが認められる。

この点に関し、請求人は、「シアノアクリル酸エステル、シアノアクリレート(接着剤)、α−シアノアクリレート(接着剤)、シアノアクリレート系接着剤、2−シアノアクリレート、シアノ系(瞬間接着剤)、シアノ系接着剤が、いわゆる瞬間接着剤の代表として使われていることについてはこれを認めるにやぶさかではない。」旨述べ、シアノアクリレート系接着剤が瞬間接着剤を表すことについて、争うところはない。

また、「速硬化接着剤」(甲第6号証;123頁、表81)には、上記「シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)」のほか、コンタクト接着剤(ネオプレン系)、ホットメルト、2液型エポキシ接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、マイクロカプセル型接着剤、UV硬化型接着剤(TGA)、嫌気性接着剤があることが認められる。

(2)ところで、甲第8号証の1ないし4(商品カタロク)によれば、

ア.「酢ビエマルジョン系、・・・エポキシ系、ビニル樹脂系、ホットメルト系」などの文字と同列に「シアノ系」の文字が認められる。(「アイカ接着剤総合カタログ」の「アイカ接着剤選択早見表」)

イ.「低粘度液体定量吐出装置 標準4(「4」はローマ数字で表したもの)型」の「使用可能液体」として「シアノ系(瞬間接着剤)、その他低粘度液体」の記載が認められる。(「バルペット ディスペンサー 液体定量吐出装置」)

ウ.「低粘度流体用ディスペンサー/チューブポンプ」の「特長」として、「特殊設計により、シアノ系接着剤をはじめ硬化しやすい・・・すばやく稼働します。」の記載が認められる。(「PILOT FOUNFLOW/ファンフローSERIES」)

エ.「アロンアルフアの正しい使い方」の「取扱上の注意」には、「シアノ系接着剤」の文字が使用されている。

(3)甲第9号証の1ないし20(シアノアクリレート系接着剤に関する論文等)によれば、シアノアクリレート系接着剤について、「シアノ系接着剤」の文字が使用されており、また、例えば、「エポシキ系が数量において、遙かに多いが、出荷金額では、シアノ系が追い越した・・」(甲第9号証の14)、「エポシキ系をはじめ成分100%の接着剤の多くが、数千〜数万CPであるのにシアノ系は数CPである・・」(甲第9号証の20)のように、単に「シアノ系」の文字が使用されていることが認められる。さらに、シアノ系接着剤に関し、「今日迄私達の予測を常に上回る成長を遂げ、現在、『シアノ・ブーム』といわれている。」(甲第9号証の6)、「輸出の方は世界最大量を誇るまでになって、『日本は世界のシアノの基地』といわれている。」(甲第9号証の12)、「瞬間接着剤の主役はシアノ」(甲第9号証の15)の記述が認められる。

(4)甲第10号証の1ないし7(特許公報)によれば、「シアノ系接着剤」、「シアノ系瞬間接着剤」の各文字が使用されていることが認められる。

(5)甲第11号証の1ないし3及び甲第12号証の1ないし56(新聞記事)によれば、シアノアクリレート系接着剤等について、「シアノ系接着剤」、「シアノ系瞬間接着剤」の各文字、あるいは単に「シアノ系」、「シアノ」の各文字が使用されていることが認められる。

(6)前記(1)ないし(5)で認定した事実よりすると、接着剤を取り扱う分野においては、瞬間接着剤を指称する「シアノアクリレート系接着剤」ないし「シアノアクリレート接着剤」は、「シアノ系接着剤」、あるいは「シアノ系瞬間接着剤」と呼称される場合が極めて多いこと、「シアノ系接着剤」以外の、例えば、エポキシ接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤などを、「エポキシ系、ウレタン系、アクリル系」と略称する場合があるように、他の「速硬化接着剤」との関係から、上記「シアノアクリレート系接着剤」を単に「シアノ系」ないし「シアノ」と略称する場合も少なくなく、接着剤の分野においては、「シアノ系」ないし「シアノ」の文字から、容易に「シアノアクリレートを主成分とする接着剤」、すなわち「シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)」を表したと理解されるとみるのが相当である。

(7)ところで、本願商標は、「シアノ」の文字よりなり、その指定商品を「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」とするものであり、その指定商品中に「瞬間接着剤」が含まれることは明らかである。

してみると、本願商標は、これをその指定商品中の「瞬間接着剤」について使用した場合は、前記(6)の接着剤の分野の取引の実情からすれば、その取引者、需要者は、単に商品の原材料ないし品質を表したと理解するにとどまり、自他商品を識別する標識たる商標とは認識し得ないというべきである。

また、本願商標は、これを「瞬間接着剤」以外の「接着剤」について使用するときは、取引者、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

(8)請求人は、「シアノ」の文字は、「接着剤」、「瞬間接着剤」、「シアノアクリレート系接着剤」の文字とともに使用されており、単独での使用はないから、一種の造語と理解され、自他商品の識別機能を有するものであるし、また、商品の品質の誤認を生じさせるものではない旨主張する。

しかしながら、「シアノ系」ないし「シアノ」の各文字は、「シアノアクリレート系接着剤」、「シアノ系接着剤」等の文字とともに使用されている場合が多いとしても、該文字は、「シアノアクリレート系接着剤」、「シアノ系接着剤」の略語的に、接着剤の分野の業界紙誌等に少なからず掲載されている事実があることからすれば、接着剤との関係からみれば、「シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)」を表したと理解されるというのが相当である。

また、請求人は、「シアノボンド」商標が請求人の取扱に係る瞬間接着剤を表示するものとして需要者の間に著名であり、該商標は単に「シアノ」と略称されて取引または取引されつつあり、本願商標は、「シアノボンド」商標の連合商標的あるいは防護的機能を有するものであるから、登録されるべき旨主張する。

しかしながら、請求人は、同人が所有する「シアノボンド」商標の著名性及び該「シアノボンド」商標が単に「シアノ」と略称され著名であることについて何ら立証するところがないのみならず、仮に、本願商標が「シアノボンド」商標の連合商標的な出願であるとしても、それぞれの出願は独立した出願というべきであり、出願された商標は、各商標毎に登録要件を備え、かつ、不登録事由に該当しないことが必要であるというべきであって、本願商標は、前記したとおり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものであるから、「シアノボンド」商標の登録の存在をもって、本願商標が必ず登録されるというものではない。

したがって、請求人の上記主張は採用することはできない。

(9)以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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