結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35119(T2000−35119/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4254292号商標(以下「本件商標」という。)は、「和田八物産」の文字(標準文字による)を書してなり、平成9年6月16日に登録出願、第29類「鶏肉,赤貝,あさり,あゆ,あわび,いか,いくら,うに,えび,かき,かずのこ,かに,かれい,キャビア,鯨,こい,さけ,ざりがに,さんま,食用がえる,すじこ,すずき,すっぽん,たい,たこ,たらこ,にしん,はまぐり,ぶり,まぐろ,ムール貝,かす漬け肉,乾燥肉,ソーセージ,肉の缶詰,肉のつくだに,肉の瓶詰,ハム,ベーコン,かす漬け魚介類,かまぼこ,くんせい魚介類,塩辛魚介類,塩干し魚介類,水産物の缶詰,水産物のつくだに,水産物の瓶詰,素干し魚介類,はんぺん,フイッシュソーセージ,かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,魚肉練製品,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆 」を指定商品として、平成11年3月26日に設定登録がされたものである。
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2207079号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、昭和62年9月30日に登録出願、第32類「加工食料品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録されたものである。同じく、登録第2434696号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成元年7月7日に登録出願、第32類「加工食料品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証(枝番を含む。)及び資料NO.1ないし資料NO.6を提出している。
(1)本件審判に至った経緯
(ア)請求人らの概要
請求人株式会社和田八(以下「第1請求人」という。)及び和田八蒲鉾製造株式会社(以下「第2請求人」という。)は、「蒲鉾、水産物練り製品、その他の加工水産物(以下「請求人商品」という。)」の製造販売を主たる業務内容とする株式会社である。
請求人らの前身は、昭和6年に和田八次郎が兵庫県尼崎市において創業した和田八蒲鉾店であり、以降昭和27年の法人化を経て、事業の拡大を続け、昭和51年には販売部門と製造部門とを別法人として、第1請求人が主として直販店による販売部門を引受け、第2請求人が製造とその他の販売部門を引受けて事業を継続し現在に至っている。
現在、請求人らは、大阪市西淀川区中島2丁目10番28号に工場を設け、約60人の従業員、直売店12店舗、百貨店への出店7店舗を有しており、請求人商品は「かまぼこの和田八」ないしは単に「和田八蒲鉾」として、関西を中心として近畿一円に幅広く販売されている(甲第3号証)。
請求人らは、創業者和田八次郎の創業当時より、「和田八」なる標章を、その営業標章として使用し、また請求人商品の商標として一貫して使用している。
(イ)被請求人の概要
被請求人は、請求人らの元代表者であり現代表者の親族である和田功らが民芸品等一般雑貨の取引事業を起こすために、昭和48年に設立した株式会社であるが、設立後1年ほどで頓挫して以来、現代表者塚本亮介が経営を再開するまで、長期間に亘って休眠会社となっていた。
(ウ)両当事者の関係
平成5年4月頃、請求人らと被請求人との間で、請求人商品の卸販売契約を締結した。そしてこの契約に基づき、被請求人は、請求人らの「和田八」の文字からなる営業標章・商標を付した請求人商品の販売、包装用資材の使用、並びに右標章を付した幟を掲げた水産物練り製品の実演販売などを行っていた。
ところが、被請求人は、請求人らとの間での前記卸販売契約が存続する中で、平成9年6月16日、請求人らに告知することなく密かに、構成要部を「和田八」とする本件商標他3件の商標登録出願を行った。
被請求人は、請求人らとの間の前記契約終了直後の平成9年12月9日、自ら請求人商品と形態をほとんど同じくした蒲鉾その他の加工水産物を製造し、これに「和田八物産」等の表示を付し、これを東京、大阪、奈良各都道府県下に出荷し(甲第8号証)、あるいは、京阪神を中心とする被請求人取引先の小売店舗に「和田八物産」と表示した広告看板及び商品陳列箱等の販売用資材を設置して、被請求人商品の販売を開始した(甲第9号証)。
このように、被請求人は、第1請求人との卸販売契約が終了するやいなや、請求人らが長年にわたってその営業標章として、また請求人製品の商標として使用してきた「和田八」の標章を含み、語尾に「物産」なるいずれも自他商品識別力を有しない語を付加した請求人の商標に酷似する標章を使用して、被請求人の製造に係る商品の販売を行い、一般消費者そ の他の需要者に対し、被請求人の商品を請求人商品と誤認・混同させてきたものであり、かかる被請求人の行為は、既に請求人らが長年の営業努力によって獲得してきた信用、評価、名声等を不正に利用する意図をもってなされたものであること明らかである。
(エ)仮処分及び商標法等違反差止請求訴訟
上記のような被請求人の行為に対し、第2請求人は平成9年12月18日、大阪地方裁判所に商標使用差止等仮処分を申し立てた(甲第10号証)。大阪地方裁判所は、被請求人に対し、平成10年3月13日仮処分決定を発し、被請求人の前記各行為が請求人の商標権を侵害し、不正競争行為となる旨の判断が下された(甲第11号証)。
さらに、請求人らは、被請求人を被告として、平成10年9月11日、商標権侵害及び不正競争防止法違反に基づく侵害・違反行為差止請求訴訟を提 起した(甲第12号証の1)。
(2) 商標法第4条第1項第11号
(ア)商標の類似について
本件商標は、漢字で「和田八物産」を横書きしてなるものであるところ、該構成中の「物産」の文字は、「土地から産出する品物」「産物」等の意味を有する語であり、他の文字〇〇に結合して〇〇の産物、〇〇から産出する品物等の意味を看取させるにとどまり、元来それ自体商品の出所を表す文字としての格別の限定的意味を有しない。まして、特許庁に顕著な事実であるように、「物産」の文字は、商号中の一部に、産物の取扱い販売業であることを示すための業種を表す文字として普通に採択使用されることの多い文字でもあることに鑑みれば、同じく業種をあらわす「〇〇商事」「〇〇化学」「〇〇機械工業」「〇〇薬品」等と同じように、あるいは法人の種類を表す「株式会社」「商会」「組合」等の文字と同様に、元来自他商品識別標識としての機能を有しないか、または少なくとも同機能に極めて乏しい文字である。
加えて、本件商標の「和田八物産」は、その「和田八」の部分が、後述するように、請求人らの営業標章、及び商号の略称として周知著名であり、また請求人商品の商標としても周知著名なものであるから、この文字部分のみが需要者に強く印象付けられて、その部分のみが看取されて取引きに供される蓋然性が高いものである。
よって、本件商標は、唯一「和田八」の部分を自他商品識別のための支配的要部とするものであり、これより「ワダハチ」の称呼、観念を有するものであること明らかである。
一方、引用A商標は、「和田八」の文字から、唯一、「ワダハチ」の称呼、観念を有する。また、引用B商標は、別掲(2)のとおりであって、その構成文字中の中央の文字は、「田」の特殊変形態様文字であり、異字体であることは平均的一般人において容易に認識しうるところであるから、これもまた「ワダハチ」の唯一の称呼、観念を有するものである。
したがって、本件商標は、引用A商標及び引用B商標のいずれに対しても相互に類似するものである。
さらに、本件商標の指定商品は引用商標A及び引用商標Bの指定商品中に包含されるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(3) 商標法第4条第1項第15号
(ア)請求人らの使用に係る標章の周知著名性
請求人は、和田八蒲鉾店の創業当時の昭和6年より、以降昭和27年の法人化を経て、現在に至るまでの実に70年間に近い極めて長期間、「ワダハチ」の称呼を有する別掲(3)(4)の標章およびこれらと実質同一の「和田八」の文字からなる標章(以下、これらを合わせて「請求人使用商標」という。)を、その営業活動のあるゆる場面で継続的に使用し、現在も引き続き大々的に使用している。その結果、請求人使用商標は、請求人らの商号の略称を示すものとして、また請求人らのハウスマーク、営業標章として、更には、請求人商品の商標として、少なくとも本件商標出願前にいずれも周知著名なものとなっていた。
(イ)別掲(3)(4)の標章と本件商標の類似について
本件商標「和田八物産」は、前記のとおり周知、著名な請求人の使用商標別掲(3)(4)と称呼「ワダハチ」を同じくする「和田八」を要部とするものであるから、これが別掲(3)(4)の標章と類似することは、前記に既述したとおりである。
(ウ)商品の同一又は類似について
請求人使用商標は、前述のとおり請求人の製造販売に係るかまぼこ、その他水産物練り製品の商標として周知、著名なものであるところ、本件商標の指定商品は、上記第1のとおりであり、請求人のかまぼこ等の商品と同一又は類似するものである。
(エ)出所の混同が生ずるおそれが存する事実について
(a)請求人使用商標に表された「和田八」の標章は、請求人らの創業者の氏名「和田八次郎」の「和田八」の部分から採択された固有性の高い創造標章である。そしてこれが請求人らの略称として、またハウスマークないし営業標章として、更には請求人商品の商標として、高度の周知性を有し、著名なものであることは前記に述べたとおりである。
また、請求人使用商標が、本件商標と類似することも前述したとおりである。
(b)請求人らにより、請求人使用商標が使用されている請求人商品は、かまぼこを代表とする水産物練り製品である。
これに対し、本件商標の指定商品は、「加工水産物及び肉製品」に属する前記の商品群において、請求人使用商標の使用商品群と同一または類似であるのはもとより、その他の指定商品群、即ち「鶏肉,赤貝,あさり,あゆ,あわび,いか,いくら,うに,えび,かき,かずのこ,かに,かれい,キャビア,鯨,こい,さけ,ざりがに,さんま,食用がえる,すじこ,すずき,すっぽん,たい,たこ,たらこ,にしん,はまぐり,ぶり,まぐろ,ムール貝,かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆 」は、請求人使用商標の商品群の主たる原料や添加物であったり、あるいは同じ商品群に属するものとして、用途、販売者、取扱い系統を共通にするものであり、いずれも相互に密接な関連性を有する。
したがって、被請求人が本件商標「和田八物産」をその指定商品群に使用するとき、これに接する需要者が、請求人の業務にかかる商品と誤認、混同を生ずるおそれがあることは明白である。
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(4) 商標法第4条第1項第8号
請求人らは、その創業当時以来、「和田八かまぼこ」あるいは「かまぼこの和田八」の愛称のもとに広く一般需要者、取引者に親しまれてきたところであり、その商号も要部に「和田八」を用いた「株式会社和田八」及び「和田八蒲鉾製造株式会社」とするものである。
請求人らは、永年に亘って請求人商品に「和田八」の文字を商標として一貫して使用し、またそれをハウスマークないし営業標章として広く使用してきた結果、少なくとも本件商標の出願前に、請求人らの商号、株式会社和田八、及び和田八蒲鉾製造株式会社は、いずれも和田八グループとして「和田八」の略称で広く親しまれ、該略称のもとに周知、著名になっていたところである(甲第15号証、甲第16号証、甲第18号証、甲第20号証、甲第21号証、甲第24号証〜甲第28号証)。
してみれば、本件商標は、請求人らの著名な略称である「和田八」に蒲鉾類の生産あるいは取扱い販売業なる業種を示す「物産」を付加したにすぎない商標であって、請求人らの名称の著名な略称を含む商標であるといわなければならない。そしてまた、請求人らは被請求人に、本件商標を被請求人の商標として使用することを承諾した事実はない。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
(5) 商標法第4条第1項第19号
第2請求人所有の引用A商標が、本件商標出願前に、商品、蒲鉾等の水産加工物に関し、周知著名な商標である事実は、前記において詳述したとおりである。
かつまた、被請求人が本件商標を「不正の目的」を以って使用し、出願に及んだ事実も前記にて詳述したとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当するものといわなければならない。
(6)結び
以上の次第で、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第8号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(1)商標法違反等差止請求事件の判決(甲第30号証)について
本件審判事件の当事者間で関連事案について争われていた大阪地方裁判所平成10年(ワ)第9655号商標法違反差止請求事件について、平成12年10月12日判決が言い渡された。
判決理由によれば、本件商標が、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第8号に該当し、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものであることは明らかである。
さらに、本件商標は、「不正の目的」をもって出願に及んだものであることも明らかであり、商標法第4条第1項第19号にも該当するものといわなければならない。
(2)答弁書に対する反論
(ア)「本件審判事件の背景事情」に対して
被請求人は、本件審判事件の背景事情として、旧和田八グループの概要、被請求人会社の独立の経緯、請求人と被請求人の関係についての経緯、請求人の現状等について、縷々述べているが、上記の事情はそのほとんどが本件審判事件の審理事案とは関係がない。また、被請求人の誤解ないし思い込み、あるいは独自の見解が開陳されているにすぎない。
(イ)商標法第4条第1項第11号について
引用A商標及び引用B商標「和田八」は、識別力を有するものであるからこそ、商標登録されているところである。一方「物産」の文字部分こそ、これが識別力に極めて乏しいものであることは、前記判決(甲第30号証)においても認定されているとおりである。
また、被請求人のいう「のれん分け」は、被請求人の勝手な思い込みにすぎず、そのような事実はない。本件商標の許諾も、請求人らとの取引関係が途絶した時点以降において「解除条件」が成就しているものであること判決の示すとおりである。
のみならず、「のれん分け」の事実の有無と、本件審判事件における本件商標についての登録無効事由の有無の問題とは何の関係もない。ましてや「のれん分け」の事実の有無が、両商標間の出所混同の有無、類似性と何ら関係するものでもない。
さらに、被請求人が保有する登録第4342352号商標に対する登録異議決定は、請求人商標の周知性、両指定商品の具体的使用の場面での密接な関連性等の具体的事情を看過して判断されたものであり、妥当性を欠くものである。
以上のとおり、被請求人の主張には根拠がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、無効事由を有するものである。
(ウ)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、請求人使用商標が周知性、著名性を欠くこと、請求人らの経営実態の変更により請求人使用商標の著名性を議論することはできないと主張している。
しかしながら、請求人使用商標が高い周知性、ひいては著名性を獲得するに至っていることは、甲15号証〜甲28号証によって十分な立証がなされている。殊に、甲第25号証は、公的機関である「大阪商工会議所」が証明するものであり、甲第26号証は業界団体が証明するものである。
加えて、甲第30号証の判決においては、「大阪市及びその周辺部(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)」を範囲とする地域的限定が付されているとはいえ、「原告らの営業表示に共通する『和田八』との表示が原告らの営業を表示するものとして広く認識され、周知性を獲得するに至ったと認めるのが相当である。」と、請求人使用商標の周知性を明確に認めている。
したがって、周知・著名性を否定する被請求人の主張には理由がない。
(エ)商標法第4条第1項第8号について
本号の立法趣旨は、人格権の保護にあるが、本号にいう「他人」には法人が含まれる。
したがって、被請求人が主張するように本件に関して「人格権の主体は請求人らではなく...『和田八次郎』個人にほかならない。法的には...請求人らは、本号を援用する適格性を有しない。」というのは誤りである。
また、被請求人に対する本件商標の使用についての「のれん分け」による「承諾」の事実がないことは前述したとおりである。
(オ)商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、「不正目的の不存在」の理由について、「のれん分け」による使用の「承諾」、「伝統的かつ正当な取引慣行」云々を理由として述べているが、本件商標が「不正の目的」をもって出願及び登録されたものであることは、前記に述べたとおりである。
(3)結び
以上のとおり、被請求人の主張には、いずれも正当な理由がない。
(4)甲第30号証の第1審判決(大阪地方裁判所平成10年(ワ)第9655号)に対する控訴審大阪高等裁判所平成12年(ネ)第3740号商標
法違反差止等請求控訴事件について、資料NO.6のとおり、平成13年9月27日判決言渡があった。そして、この控訴審判決は、このほど確定した。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件審判事件の背景事情
(ア)関係会社(旧和田八グループ)の概要
第1請求人は、昭和27年5月21日に設立された会社であり、設立当初の商号は、株式会社和田八蒲鉾店であり、会社の目的は、「蒲鉾、練製品その他食料品等の製造並びに販売」であった。その後、その後、昭和48年7月7日、会社の商号を株式会社和田八に変更したうえで、昭和51年10月9日、会社の目的は、「蒲鉾、練製品その他食料品等の販売」に変更された。
第2請求人は、昭和51年11月6日に設立された会社であり、会社の目的は、「蒲鉾、練製品その他食料品等の製造」として設立され、その後、平成元年11月30日、「レストラン、食堂の経営」、「練製品の原材料となる農産物、水産物の輸出入」を事業目的に追加した。
被請求人は、昭和48年8月13日、「生鮮および加工水産物の輸入ならびに販売」他を、会社の目的として設立され、その後、平成3年及び平成7年に、目的の追加がなされ、現在のものとなっている。
以上の3社については、既に、昭和48年後半には、和田功が、和田八蒲鉾店の創始者である和田八次郎の跡を継ぎ、経営権を把握していたが、これらの登記簿の記載から明らかなとおり、和田功は、株式会社和田八蒲鉾店を、製造会社と販売会社とに分離し、前者の機能を第2請求人に、後者の機能を第1請求人に担わせることを計画したものである。
また、被請求人については、「生鮮及び加工水産物の輸入」等をさせるために設立したようである。しかし、和田八蒲鉾に入社した塚本亮介(現、被請求人会社代表取締役)が、和田功の依頼を受け、平成3年2月に販売事業の展開を開始するまで休業状態であったが、同人を中心とした事業展開により、平成3年度28,783,671円 平成4年度80,292,065円 平成5年度132,843,861円 平成6年度157,162,505円 平成7年度364,509,444円 平成8年度340,197,319円 平成9年度392,392,155円 平成10年度212,499,615円(但し、事業年度の変更により4ヶ月分の売上) 平成11年度404,895,505円のような事業実績を残すに至った。
(イ)和田八物産の独立と関係会社との関係
塚本亮介は、平成3年9月1日、被請求人の代表取締役に就任し、平成5年2月頃、同社の全株式を和田功から譲り受けた。この時点で、塚本亮介は、和田功より、「のれん分け」をしてもらい、「和田八物産」の名称で、事業展開をしていくことを認められたのである。つまり、被請求人は、第1請求人及び第2請求人と密接な関係をもつ兄弟会社ではあるが、それら会社から独立した事業主体として業務を行なっていくこととなるのである。
塚本亮介が「和田八物産」の商号及び商標を利用して業務を行なうことを認められた後に計画をしたのが、タイ国における「原料すり身」「調理すり身」「最終練り製品」の製造及び輸入であった。従来、和田八グループは、タイ国のカンタン・コールド・ストレージ社と業務提携をし、「原料すり身」の輸入をしていた。しかしながら、平成5年末までには、同社との関係も解消され、和田八グループは、日本の大手水産会社から購入した「原料すり身」を利用して第2請求人が練製品を製造し、それを、第1請求人及び被請求人が販売していた。
しかしながら、そのような状態では練製品の生命線である「原料すり身」の質の維持が保てず、また、需給動向に左右され、安定した価格及び量による仕入れもできないこととなる。そこで、塚本亮介は、タイ国において、「原料すり身」はおろか、「調理すり身」及び「最終練り製品」までをも生産できる工場を設立することを発案し、和田功に相談した。その結果、第2請求人の協力を得て、タイ国のトラン・シーフード社への生産委託による工場が完成した。なお、被請求人のトラン・シーフード社への生産委託工場は、練り製品や練り製品の原料又は材料となる「原料すり身」や「調理すり身」だけでなく、海鮮品の加工能力も有していた。それにより、被請求人は、平成6年3月頃より、トラン・シーフード社の工場で生産された練り製その他の製品の輸入を開始し、それら製品の国内での販売を「和田八物産」の商標及び商号で行なっていくのである。
被請求人は、トラン・シーフード社の工場が完成したことにより、蒲鉾を含む練り製品全般を製造販売する能力を取得した。しかしながら、恩義を感じていた和田功氏が和田八グループの実権を握っており、同社と被請求人とは兄弟会社として良好な関係が維持されてきたために、被請求人は、蒲鉾の製造販売はせず、むしろ、「調理すり身」を第2請求人に卸し、同社が製造した練り製品の販売活動にも従事していた。
しかしながら、被請求人が製造委託したタイ工場において製造された練り製品は、平成6年以降、広く販売されていたのであり、被請求人の取り扱い商品として、第2請求人が製造する練り製品と当該タイ産の練り製品とは、何ら混同されることなく、市場において両立し販売されていたのである。請求人の社長であった和田功は、このような状態を是としたうえで、被請求人の販路として、積極的にイトーヨーカ堂等を開拓しようとしていたのである。
(ウ)第2請求人と被請求人和田八物産との関係断絶
帝国データバンク資料(甲23号証の(2))は、第2請求人について、平成9年事情を以下の通り述べる。すなわち、同資料によると、「平成9年2月:代表取締役社長の和田功氏が死亡退任」「平成9年3月:代表取締役専務庄司義郎氏が辞任。株主構成が変更され、前代表和田功氏(創業者の長男)一族から、親戚筋の末澤俊樹氏の一族が主体となった。」との記載がなされている。
しかしながら、末澤氏一族は、平成9年2月の和田功氏の死亡まで、和田八グループのどの会社においても、何らの経営にも関与していなかったのである。恐らく、末澤俊樹氏は、借金等のかたに和田功氏の株式を取っていたものと思料されるが、そのような経緯で取得した株式を利用して、第2請求人及び第1請求人の経営実権の獲得を企て、更には、和田功氏の妻である和田道子氏が異議を申し立てることによる後顧の憂いを解消するために、同人に対し、強引な攻撃をかけていったのである。そして、和田道子氏との相続関係について合意が成立させられ、同人の会社を解散に追い込むと、今度は、被請求人和田八物産に対し、攻撃の矛先が向けられるのである。 既に述べた通り、和田功氏は、塚本亮介に対し、「和田八物産」としてののれん分けを済ませており、末澤俊樹氏が、被請求人和田八物産の株式を取得することは不可能であった。そのため、まず、取引問題を利用した攻撃が加えられることになった。具体的には、和田功と塚本亮介との良好な人間関係を前提として、被請求人和田八物産は蒲鉾の製造はしていなかったが、他方、これに応え、第2請求人は、被請求人和田八物産が卸販売ができるように、百貨店やスーパーへの卸価格よりも1割程度低い価格(転売価格の6割)で、被請求人和田八物産への卸価格を設定していた。しかし、末澤俊樹氏は、第2請求人の実権を握ると、被請求人和田八物産への販売価格についての1割の値上げを要求してきたのである。
平成9年7月、予めの猶予期間もおかず、卸業者としての存立ができないような価格が請求人和田八蒲鉾により提示された。被請求人和田八物産としては、12月のお歳暮時期(実際、一年のうちでの蒲鉾の販売はこの時期に集中する)に、自社製品をまっている取引先に迷惑をかけることとなり、ひいては、自社の存立そのものの問題ともなりかねず、従来の和田功との間で存在した第2請求人との間の信頼関係も破壊されたために、蒲鉾等を含めた製品の本格的製造を開始することを決断したのである。
本件を含む第2請求人が商標権等を利用した攻撃がなされるようになったのは、第2請求人が、取引力により被請求人和田八物産を駆逐することができないことがはっきりしてからのことである。
(エ)末澤一族による第2請求人等の現状
現在、第2請求人等において実権を握っている末澤俊樹氏は、ガス卸しを業とする大阪市福島区に本社のある末澤産業株式会社の社長であり、更に、同人の支配する会社として、ビル賃貸を業とする株式会社ゲートタワービルがある。
つまり、同人の本業は、食品、とりわけ、高級食品を取り扱う業態とは全く異なるのであり、同人が、請求人和田八蒲鉾等への経営権を樹立した後、プロパンガス製品を製造する感覚で、練り製品の製造を開始したのである。その結果、磯部一族等の従来の第2請求人の味を支えてきた職人は、次々と同社を退職することとなったのである。
また、従来、第2請求人の製造する蒲鉾の包装紙等の図案は、書画を専門とする綿貫氏の手によるものであり、高級感のあふれるものであったが、末澤俊樹氏の趣味により、「なにわ随一」という語を付した赤色の梅鉢の図案が取り入れられたために、従来の第2請求人が作り出してきたイメージは全く崩れ去ってしまったのである。このような状況に嫌気がさして、請求人和田八蒲鉾の営業の中心であった松本弘正も退職したのである。 大阪市及び尼崎市の一部において知られた第2請求人の製造する練り製品の名前は、和田功の味にこだわった商品づくり、そして、それを支える磯部家の職人の腕、そして、包装紙等の醸し出す上品さによって支えられてきたのであり、当該「和田八」の名前に化体された品質及びイメージは、末澤一族による経営権が確立されたことにより、第2請求人から霧消したものである。
(2) 商標法第4条第1項第11号に基づく無効事由の主張について
商標の類似性の不存在
(ア)請求人らは、引用A商標及び引用B商標のうちの「和田八」部分に、商標の識別性があると主張するが、同商標は、営業主体が和田氏であったことに基づくものであり、日本語における人の一般的呼び名として、末広がりで縁起の良いとされる「八」を二音の氏などの語に付加することは一般的になされていることである。また、和田という姓自体、日本においては一般的な姓であり、結局のところ、引用A商標及び引用B商標の一般人に与える印象は、一般的な姓である「和田」さんが、縁起のいい「八」を付加して使用しているといった程度のものであり、いわば、ありふれた印象を与える識別力の弱いものであるといわざるを得ない。
(イ)本件商標は、「和田八物産」という語からなり、引用A商標及び引用B商標である「和田八」という商標とは類似性を有しない。つまり、「和田八」という商標は、先述の通り、格別の識別力を有するものではなく、むしろ、その後に「物産」の語が付加されることに基づく、様々な物品を扱っている会社(商社、輸出入会社、販売会社)という意味が付加的に形成されることによる異別性こそが重要である(和田姓の商店が多数あるとき、何をしている和田さんかがその判別の規準となるのが一般である)。
すなわち、「株式会社」や「有限会社」といった会社の法的な意義を表わす場合と異なり、「和田八物産」という語には、その扱う商品を連想させる一定の意義が存するのであり、本来の「和田八」という語から区別された商標を成立させるものである。ここでは、取引実態を一応捨象した商標の比較を行なっている訳であるが、例えば、和田八工業、和田八物流、和田八興産といった一定の業態を表わす商標は、「和田八」という部分が全国的な周知性を獲得していない限り、それら商標をもって表象される物品又はサービスの出所の混同が生じることはあり得ないのであり、類似性を肯定することはできない。
(ウ)さらに、本件においては、第2請求人の代表取締役であり、和田八グループを支配していた和田功氏の生前においては、被請求人は、請求人らと協調関係を維持しつつも、独自に、大々的に「練り製品」の製造販売を行なっていたことが留意されるべきである。すなわち、被請求人の代表取締役塚本亮介は、平成2年に第2請求人に入社した後、平成3年9月には、同社の和田功社長の依頼を受け、被請求人に所属し販売営業に従事し、その後、平成5年には、和田功社長より被請求人の全株式を購入したうえで、和田功氏の代の請求人らから「のれん分け」を受けたのである。
すなわち、「和田八物産」という名称は、請求人らより被請求人の会社及び事業の商号及び商標として使用されることが認められており、平成5年になって、正式に「のれん分け」がされてから、被請求人の事業に使用され、消費者の間で定着したものである。そのような取引実態に照らし合わせると、本件商標の使用により、請求人の商品の出所混同を生じることはありえないのであり、この点からも、商標の類似性は否定されるべきである。
(エ)つまり、引用A商標及び引用B商標の称呼である「ワダハチ」と「ワダハチブッサン」とはその称呼において全く異なり、明らかに外観も相違する。また、観念の点についても、「和田八」の語の顕著性の薄さに対し、「物産」という識別力ある語が結合されることにより、全く異なるものとなっている。取引実態を捨象し、外観、観念、称呼を総合的に勘案しても、本件商標と引用A商標及び引用B商標との類似性を肯定することはできないものである。
さらに、被請求人が請求人らから先代の和田功の時代に「のれん分け」を受けたものである。そのような場合、「のれん分け」をした者(会社)の商号及び商標の一部が、「のれん分け」を受けた者(会社)の商号及び商標に使用されることは社会的に一般的なことであり、また、消費者は、その製品等の出所をそれぞれの兄弟会社と区別して理解するのが一般的であり、現に、本件においても、区別がなされていたのである。
したがって、事件においては、外観、観念、称呼における類似性の欠如ばかりでなく、本件における取引実態を前提とするとき、本件商標と引用A商標及び引用B商標との間に類似性の不存在は、さらに明確になる。
(オ)この点、本件の関連事件である、本件被請求人が保有する登録第4342352号商標の登録に対する本件の請求人による登録異議の申立に対し、特許庁は、本年8月21日付で、上記商標の登録を維持する旨の決定を下している(なお、そこで請求人らが提出した証拠資料は本件のそれと同一である)。
当該決定の理由に照らすとき、本件商標である「和田八物産」と引用A商標及び引用B商標である「和田八」との間にも、類似性が認められないことも明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号に基づく無効事由の主張について
(ア)著名性の欠如について
第二請求人の売上は7億円程度であり、練製品の会社における売上は、114位であり、しかも、近年、その売上は急激に落ちていっているのである。したがって、本号が著名商標の「信用」にただ乗りすることを防止する趣旨であるとすれば、引用A商標及び引用B商標には、ただ乗りするに値する「信用」さえ存在しないといわなければならず、そのことは、とりもなおさず、引用A商標及び引用B商標において求められる著名性が存在しないことを意味している。
また、商標の周知性は、当該商標に付託された品質及びイメージを保護するものであるが、現経営者の末澤俊樹氏が請求人らの経営権を取得して後、請求人らの製造する練り製品の品質は明らかに劣化しており、また、従来上品さを醸し出していた包装紙等のイメージも明らかに変質している。つまり、請求人らが述べている事情は、全て先代の和田功社長の代の請求人らの事柄でその信用を基礎付けるためにある。本号が商標に化体された事実上の信用を保護する規定であることからすれば、帝国データバンクの資料にも記載されているとおり、請求人らの経営実態が変更されたとの認識が一般的になされているのであるから、先代の時代の信用を前提に、商標の著名性を議論することはできないといわざるを得ない。
(イ)出所の誤認混同の不存在
先述のとおり、和田功氏は、被請求人に対し、「和田八物産」の商号及び商標を利用することを認め、いわば、被請求人は、請求人らから「のれん分け」を受けた会社である。そして、既述のとおり、「のれん分け」を受けた後、被請求人は、請求人から独立した経営主体として、タイ工場において製造された練り製品の製造販売を行なってきたものである。
「のれん分け」を受けた会社が、「のれん分け」をした会社の商号又は商標の一部の文宇を使用することはわが国の取引慣行であり、消費者は、それらを別異の会社として受け入れるのがわが国の取引実態である。美際に、本件商標と引用A商標及び引用B商標とが、その出所につき、混同されたことはないのである。
また、末澤俊樹氏が請求人らの実権を握った後、「なにわ随一」との標語を付して梅鉢模様のデザインを使用しているが、被請求人は、京風をイメージした上品さを前面に出しているのであり、この点からも、両者の間に出所の誤認混同が生じる余地は存在しない。
(ウ)無効事由の不存在
以上述べたとおり、請求人らが、本号を援用する前提として、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは非類似であることとなるが、更に、以上述べたとおり、本件商標の周知性の不存在及び取引上の出所の混同が存する余地はないことからして、請求人らの主張は失当である。
(4)商標法第4条第1項第8号に基づく無効事由の主張について
(ア)人格権の主体性の欠如
本号は、使用された商標に化体された人格権を保護する規定である。
請求人ら自身が、審判請求書で述べるとおり、引用A商標及び引用B商標の「和田八」の語は、「和田八次郎」の「和田」姓と名を構成する「八」の文字からなる同人の略称であり、引用A商標及び引用B商標に化体された人格権の主体は、請求人らではなく、和田八グループの前身である和田八蒲鉾店を開業した「和田八次郎」個人にほかならない。法的には、請求人らは、同人の承諾を前提として、「和田八」の語を、その商号及び商標として使用していたに過ぎないのであり、請求人らは、本号を援用する適格性を有しない。なお、引用A商標及び引用B商標の人格権の主体である和田八次郎は既に他界している。
(イ)承諾の存在
被請求人は、和田功より、「和田八物産」として「のれん分け」を受けているのであり、「和田八物産」の商標及び商号の使用についても「承諾」を受けているのである。
この点からも請求人らの主張は失当である。
(5)商標法第4条第1項第19号に基づく無効事由の主張について
(ア)不正目的の不存在
被請求人は、和田功より、その当時、「和田八物産」として「のれん分け」を受け、同人の承諾を得たうえで、「和田八物産」等の商号及び商標の使用を開始したものである。
すなわち、被請求人は、和田功氏の存命中は、請求人らと独立した兄弟会社として事業遂行をすることが期待され、「和田八物産」等の商号及び商標の使用を行なっていたものである。いうなれば、被請求人は、わが国における伝統的、かつ、正当な取引慣行に基づき、本件商標の使用を開始したのであり、そこには、如何なる意味でも「不正目的」は存在しない。
むしろ、「不正目的」については、和田功氏との取引関係で偶々請求人らの株式を取得し、和田功氏の妻に迫って同社の支配権を確立し、被請求人に対し突然かつ一方的に取引中止を迫り、被請求人の商売を窮地に追い込むことで、被請求人の営業先の取得を企み、そのうえ、それが完全に奏効しないと見ると、商標権等を盾にとって、次々と法的手続を起こす請求人らにこそ存在するといわなければならない。
(イ)周知性の欠如
引用A商標及び引用B商標は、尼崎市及び大阪市の一部においては知られているものの、全国的にはおろか、関西一円においてさえ周知性を有していない。
また、尼崎市及び大阪市において知られているものも、先代の和田功と結びつけられた、同人の代までの請求人らの商品であり、このことは、練り製品業界に素人である末澤俊樹氏が実権を握った後、売上が激減していることからも明らかである。
(6)結論
本件においては、被請求人が先代の和田功氏より「和田八物産」として「のれん分け」を受け、それに基づき、「和田八物産」等の商標を使用し、平成6年ころより請求人らから独自に製造された製品の販売を行なってきたという事実関係のもつ意味が重要である。
そのような取引実態に照らして見るとき、請求人らの主張が、何ら正当な理由に基づかないことが明らかになるといわなければならない。
(1)甲第16号証の(1)ないし(26)は、「蒲鉾の広告パンフレット」であって、これらのパンフレット右最下部には、「昭和47〜48年頒布」を始めとして「平成9年頒布」までの表示があり、その各々のパンフレット中には、「御蒲鉾 和田八」の文字若しくは引用B商標と同じ態様の商標が顕著に表されている。
(2)甲第20号証の(1)ないし(4)は、「株式会社日本食品経済社」発行の1989年度版から1992年度版の「蒲鉾年鑑」であって、引用B商標と同じ態様の商標と「和田八蒲鉾製造株式会社」の記載がそれぞれの版に掲載されている。
(3)甲第21号証の(1)は、1984年(昭和59年)11月14日付けの朝日新聞(夕刊)であり、引用A商標とほとんど同一の商標の広告記事が掲載されている。
(4)甲第22号証の(2)ないし(12)は、第2請求人に対する水産庁長官、島根県知事、大阪府知事、長崎県知事、農林水産大臣、宮崎県知事及び新潟県知事等からの全国蒲鉾品評会での賞状であって、昭和62年10月19日付けから平成8年10月19日付けのものである。
(5)甲第25号証ないし甲第28号証は、別掲(3)及び(4)の標章の著名性についての証明願の写しであって、「大阪商工会議所」、「全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会」等、公的機関、同業組合、一般企業及び一般消費者の1000件を超える署名がなされている。
以上の請求人の提出に係わる甲第16号証の(1)ないし(26)のパンフレット等及び甲第25号証ないし甲第28号証の証明願等甲各号証を総合勘案すれば、別掲(1)(2)に示すとおりの構成よりなる引用A商標及び引用B商標が、請求人の業務に係る商品「かまぼこ」の商標として、少なくとも大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県及び和歌山県において、本件商標の登録出願時には取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
本件商標は、上記のとおり「和田八物産」の文字よりなるところ、その構成中の「物産」の文字は、商社的な取引を業とする企業において「〇〇物産」という商号を使用することは世上ありふれたことであって、「海産物」を取り扱う業界においてもよく見られる識別性に乏しい語というべきであり、加えて、構成中「和田八」の文字は、請求人により商品「かまぼこ」に使用され著名であることは上記2のとおりであるから、本件商標は、その構成文字に相応して「ワダハチブッサン」の一連の称呼を生ずるほか、前半部の「和田八」の文字部分より、「ワダハチ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
他方、引用A商標及び引用B商標は、その構成文字に相応して「ワダハチ」の称呼を生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、外観、観念の点について考慮したとしても、「ワダハチ」の称呼において互いに相紛れるおそれのある全体として類似する商標といえるものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用A商標及び引用B商標の指定商品とは、同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
なお、被請求人は、本件商標と「和田八」商標とが類似しないと登録異議の申立の決定にて判断された旨主張しているが、商標登録無効審判における判断は、登録異議の申立の決定に拘束されるものではないので、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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