Trademark Appeal Case
著名ブランドの類否判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90750号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4238509号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成9年3月7日に登録出願、商標の構成を後掲に示すとおり「THE MODEST VALENTINO」の欧文字とし、指定商品を第18類「なめし皮,毛皮,革ひも,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,愛玩動物用被服類」として、平成11年2月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第62号証を提出した。
(1)本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の著名な略称を含むものであり、同人の承諾を得たものでないから、その登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。
(2)本件商標は、申立人の引用に係る商標、すなわち、昭和45年4月16日に登録出願、商標の構成を「VALENTINO」の欧文字とし、指定商品を第21類「宝玉、その他本類に属する商品」として昭和47年7月20日に設定登録された商標登録第972813号及び昭和49年10月1日に登録出願、商標の構成を「VALENTINO GARAVANI」の欧文字とし、指定商品を第21類「装身具、ぼたん類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」として昭和60年7月29日に設定登録された商標登録又は「VALENTINO GARAVANI」とし、指定商品を宝玉類・装身具類等又は宝玉類・装身具類・化粧用具類・かばん類等としてそれぞれ登録された商標登録第1793465号の各登録商標(以下、一括して「引用商標」という。)と類似し、指定商品も抵触するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(3)申立人は、引用商標のほか多数の商標登録を取得しており、因みに、被服類・寝具類等又は喫煙用具類等の商品について、商標登録第852071号、商標登録第1415314号及び商標登録第1402916号の各登録商標を所有している。そして、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」商標は、申立人に係る婦人服・紳士服・ネクタイ等の被服類、バッグ類、靴類ほかライター等を表示するものとして本件商標の出願前すでに著名となっていたものであって、本件商標をその指定商品について使用した場合、需要者がその出所について混同を生じさせるおそれがあるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
3 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして商標権者に対して通知した取消理由(平成13年11月20日付取消理由通知書)は、要旨次のとおりである(なお、本件通知書において、本件商標の構成中冒頭の定冠詞「THE」を「THA」と誤記したのでこれを改めた。)。
<取消理由>
本件商標は、平成9年3月7日登録出願、商標の構成を「THE MODEST VALENTINO」の欧文字とし、第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とするものである。
申立人の提出に係る甲各号証(甲第2号証ないし甲第62号証)によれば、次の各点が認められる。
(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名デザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。以来、同氏は、イタリア・ファッションの第一人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで広く知られる国際的デザイナーの一人と認められる。
(2)わが国において、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の名称(氏名)または標章(以下、「申立人商標」という。)は、前記1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞を契機に知られるようになり、同時にその製作・発表に係る作品群、すなわち、その取扱いに係る婦人服その他の衣料品、かばん類、はき物類ほかファッション関連各商品を表彰するいわゆるデザイナーズキャラクターブランドとして、ファッション関連雑誌、新聞等により屡々日本国内にも紹介されてきたことが認められる。また、この間、日本及び極東地区総代理店として昭和49年に設立された「株式会社ヴァレンティノヴティックジャパン」の事業展開と相俟っていわゆるヴァレンティノ(VALENTINO)製品の輸入、販売及びその広告・宣伝活動が活発に行われてきた状況を窺うのに十分である。
これら事情よりして、前記デザイナーの氏名ないしその作品群またはそれら取扱いに係る商品を表示する申立人商標は、わが国において、少なくとも昭和50年代前半においてすでにわが国の需要者一般に広く認識せられるに至ったいわゆる著名商標と認め得るものである。
(3)前記デザイナー名称または申立人商標は、一方において、前出新聞、雑誌の記事や見出し中において、単に「VALENTINO」または「ヴァレンティノ」の省略形または略称(以下、「略記商標」という。)をもって取り扱われている事実があり、ファッション関連分野において「VALENTINO」(ヴァレンティノ)といえば前記デザイナーに係る商品を表示するものとして、申立人商標と同様に需要者間に広く認識せられるに至ったものと認められる。
すなわち、当審において調査するに、申立人商標はわが国において、「VALENTINO」、「ヴァレンチノ」または「ヴァレンティーノ」の略記(略称)をもって取り扱われていることが田中千代著同文書院1981年発行「服飾辞典」、山田政美著株式会社研究社1990年発行「英和商品辞典」、金子雄司ほか著岩波書店1997年発行「世界人名辞典」の当該各項の記載に徴して認め得るところであり、このほか、女性雑誌等においても、たとえば、「marie claire」(マリ・クレール)1996年2月号、「non−no」(ノンノ)1989年12月号における当該記事の見出し表示等よりして、その状況が十分に窺われる。
(4)前述わが国への進出時期と前後する昭和43年頃から同49年にかけて、申立人会社は、「VALENTINO GARAVANI」または「VALENTINO」商標のわが国における使用権確保と他人による使用を排除すべく、被服、布製身回品、寝具類、はき物、装身具類、かばん類、宝玉類、喫煙用具その他いわゆるファッション関連各商品分野において商標登録出願を行い(爾後、商標登録済み。)、その後も引き続き関連商標について商標登録し権利確保を図ってきた状況が認められる。
以上、(1)ないし(4)の各点よりして、略記商標は、申立人商標と同様に、国際的デザイナーの一人に数えられる前記デザイナーまたは申立人会社に係る婦人服、紳士服等の衣料品、かばん類、宝玉その他装身具類、はき物類及び喫煙用具等の各商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成9年)はもとよりそれ以前においてすでにわが国の需要者間において広く認識せられたいわゆる著名商標と認め得るものであって、その状況は本件商標の登録査定時である同11年2月12日の時日においてもなお同様であったものと認められる。
ところで、本件商標はその構成前記のとおり、定冠詞の「THE」及び「謙虚な、慎み深い」等の意味の英語「MODEST」とを結合し、「THE MODEST VALENTINO」の文字よりなるところ、全体として「慎み深いヴァレンティノ」程度の意味合いを生ずるとしても、これが一体として熟語ないしは固有の商標として常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情は見出せない一方、その構成後半部にあって強く印象づけられる部分というべき「VALENTINO」の文字部分は前記認定の略記商標と同一の文字綴りであり、かつ、その指定商品は申立人商標または略記商標の使用に係るかばん類ほか関連各商品を含むものと認められる。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、略記商標または申立人商標を容易に想起するとともに、その商品があたかも上記デザイナーまたは申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれが少なからずあったとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べている。
(1)本件商標は、「THE MODEST VALENTINO」の文字からなり、第18類のなめし皮,毛皮,革ひも,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具を指定商品とするものである。従来の特許庁の見解は、乙第1号証(平成9年異議第90468号の異議決定書写し)のアンダーラインで示すとおり、「VALENTINO」が18類のかばん類、袋物の商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めていない。この見解に基づき、ハンドバッグを指定商品とする当該事案の登録が維持されている。
しかるに、本件においては、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が、かばん類を表示するものとして著名商標と認めた上で、本件商標が略記商標または申立人商標を想起し、出所の混同を来すおそれがあると認定している。
しかしながら、かばん類において、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が著名商標とは認めることができない。
常識的に判断しても、需要者が本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれはまったくないものと思料する。
(2)以上述べた理由により、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品があたかも申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれがある商標とは認めることができないので、本件商標の登録は維持すべきである。
5 当審の判断
本件商標についてした上記3の取消理由は妥当であって、本件商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
商標権者は、乙第1号証(平成9年異議第90468号の異議決定書写し)を根拠に、かばん類における略記商標又は申立人商標の著名性を否定しつつ、本件商標が申立人に係る商品と出所混同のおそれはない旨述べているが、本件については、申立人に係る登録異議の申立て理由及び提出証拠(甲号証)を検討し、かつ、当審においてした職権調査事項(取消理由通知書により通知済み)とも併せ考慮の上、本件事案に即してその出所混同のおそれ を具体的に判断したものであって、判断の時期・内容を異にするから、その引用に係る異議決定例を直ちに本件の判断基準とするのは必ずしも適切でなく、したがって、この点を述べる商標権者の主張をもって前記認定を覆すことはできない。
また、本件については、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、申立人商標又は略記商標の著名性ほか取引の実情を総合判断するに、前記認定を相当とするものであるから、前記のほか述べる商標権者の主張は、いずれも採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。