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Trademark Appeal Case

称呼類似と語頭音差

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35406(T2001−35406/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4358021号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4358021号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年2月26日登録出願、「バイスタミン」の文字(標準文字による)を横書きしてなり、第5類「薬剤」を指定商品として、平成12年2月4日設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当していたものとして引用した登録第582231号商標は、昭和33年2月12日登録出願、「HY−STAMIN」「ハイスタミン」の各文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、昭和37年1月9日設定登録がなされたものである。同じく、登録第2475276号商標は、平成2年3月19日登録出願、「ハイスタミン」の文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年11月30日設定登録がなされたものである。同じく、登録第2475277号商標は、平成2年3月19日登録出願、「Hy−stamin」の文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年11月30日設定登録がなされたものである。(以下これらを一括して「引用商標」という。)

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証を提出している。

(1)本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効にされて然るべきものである。

(ア)請求人は、自己所有に係る3件の登録商標を甲第2〜4号証として引用し、本件商標はこれら引用商標と称呼類似を以て、その登録は無効にされるべきものであることを主張する。

(イ)本件商標は引用商標より後願であることは明白である。そこで、両者を称呼につき比較検討すると、本件商標は「バイスタミン」の片仮名文字に相応して「バイスタミン」の称呼を生ずる。他方、引用商標は「HY−STAMIN/ハイスタミン」、「ハイスタミン」、「Hy−stamin」の構成文字に相応して、これより「ハイスタミン」の称呼が自然に生ずる。

この両者は、共に6音構成で、第1音目の「バ」と「ハ」に差異を有しているが、この差異は微差というべきである。すなわち、この「バ」と「ハ」は、母音「a 」を共通にする濁音と清音という差にすぎない。全体が6音という比較的長い音であるから、語頭音とはいえ、両者称呼の類似に与える影響は小さい等の特徴と類似点を有している。

してみれば、両者から生ずる「バイスタミン」と「ハイスタミン」の全体を一連に称呼するも、第1音目の「バ」と「ハ」の近似性並びに第2音以下の「イスタミン」の同一性により、電話や口頭で取引した場合、聴者の聴感自ずから酷似し、両者はその外観、観念の類否を論ずるまでもなく、称呼上彼此混同誤認を生ずるおそれのある類似の商標たるを免れないのである。

また、本件指定商品は、人体に大きな影響を及ぼす「薬剤」であり、現実の取引に際して需要者、取引者が聴き間違えると大きな問題になることは否定できないと思料される。

(ウ)本件商標と引用商標の場合と事案が似ている審決例がある(甲第5号証)。これらの事例からして、本件商標と引用商標の場合も全体として語調語感が近似する称呼上類似と認められるのである。特に、審決中で、4音構成でも称呼上類似と判断されている事例が存する以上、6音構成である本件商標と引用商標の場合は、より類似性が高くなること明白である。

(エ)以上のとおり、両者は称呼上類似し、かつ、指定商品も相抵触するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効にされて然るべきものである。

(2)弁駁の理由

(ア)両者から生ずる「バイスタミン」と「ハイスタミン」は、「バ」と「ハ」が濁音、清音の差があるだけで、他の音は全く同一であるから全体的な語調が近似する。「バイスタミン」と「ハイスタミン」は、6音構成とはいえ、淀みなく−速に称呼される。「ハロッズ」と「バロッズ」、「バッチ」と「ハッチ」の称呼は、3音と2音という短綴音であるからこそ語頭の差異が大きいと認められたのであって、これがそのまま本件の場合に当てはまるとは到底言えるものではない。このように、被請求人の各主張は、いずれも失当といわざるを得ないのである。

(イ)なお、先の審判請求書に添付した甲第5号証の審決例は、「バイコジン」と「ハイコジン」、「パイプロックス」と「ハイプロックス」、「バイベン」と「ハイベン」、「ハイセル」と「バイセル」、「バロン」と「ハロン」という3音以上の称呼であって、6音構成である本件商標と引用商標の場合、称呼における類似性がより高くなることは明白である。

3 被請求人の答弁

請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。

(1)請求人の上記主張は明らかに失当であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号には該当しない。

(2)本件商標と引用商標の称呼上の類否について検討する。

引用商標は、それぞれ「HY−STAMIN」の欧文字と「ハイスタミン」の片仮名とを2段に横書きしてなる商標と「ハイスタミン」の片仮名を横書きしてなる商標及び「Hy−stamin」の欧文字を横書きしてなる商標であるから、「ハイスタミン」の称呼が生じることも明らかである。

そして、本願商標から生じる「バイスタミン」の称呼と、引用商標から生じる「ハイスタミン」の称呼とを対比すると、共に全体が6音であって、語頭において「バ」と「ハ」の音が相違し、その他の音は共通している。しかしながら、両称呼において、「バ」と「ハ」とは、語頭音であるに留まらず、称呼上最も強調される位置、即ち、アクセントが付く位置にある。しかも、「バ」と「ハ」とは、母音「a」が共通するものの、子音については、前者が「b」、後者が「h」であって、明らかに聴き分けられるものである。具体的にいえば、「バ」の子音「b」が、両唇を合わせておいてから破裂させる破裂音であって、力強く発音され、明瞭に聴き取られるものであるのに対して、「ハ」の子音「h」は、無声の摩擦音であって、軽く発音され、それ程明瞭には聴き取れないものである。また、「バイスタミン」と「ハイスタミン」とは、共に6音構成ではあるが、共通する音の1つである「ン」については、語尾に位置していて極めて弱く発音されるものであるから、両称呼の類否にはほとんど影響を及ぼさない。しかも、「バイスタミン」と「ハイスタミン」とは、前2音の「バイ」「ハイ」と、残りの「スタミン」との間で一呼吸おいて発音される。この事は、両者を実際に発音してみればわかるはずである。したがって、前記「バ」と「ハ」の音の相違が、「バイスタミン」及び「ハイスタミン」の称呼全体に及ぼす影響は極めて大きい。

(3)請求人は、「本件商標の指定商品が、人体に大きな影響を及ぼす『薬剤』であり、現実の取引に際して需要者が聞き間違えると大きな問題になることは否定ではないと思料する」と述べているが、その点について何ら根拠をあげていない。称呼上の類否判断に関し、「薬剤」を指定商品とする商標であるからといって、その他の商品や役務に係る商標と区別する必要はないと考える。

以上のとおり、本件商標から生じる「バイスタミン」の称呼と、引用商標から生じる「ハイスタミン」の称呼とは、語頭にあってしかもアクセントが付く「バ」と「ハ」の音が相違し、これらの音は、明瞭に聴き分けられるものであって、両称呼全体に及ぼす影響が大きいから、口頭や電話による取引の場面においても彼此混同を生じるおそれはなく、明らかに非類似である。

(4)過去においても、例えば、『続商標類否叢集』(乙第1号証)に記載のとおり、商標「Harrods(称呼:ハロッズ)」と商標「バロッズ/VAROZ」の類否について、『「ハ」は聴感において軽い感じの音質を、「バ」は重い感じの音質を有するもので、両者の位置がアクセントを有し、称呼上最も強い印象を与える語頭にある。』として、非類似と判断した審決や、商標「バッチ」と商標「ハッチ」の類否について、『子音が前者は(b)、後者は(h)であるため、両者は明らかに聴き分けられ、かつ、称呼識別上重要な要素を占める語頭に位置するもので、2音という短い音構成の両称呼に及ぼす影響は大きい。』として、非類似と判断した審決が存在する。これらの審決例に照らしてみても、本件商標と引用商標とが称呼上非類似であることは明らかである。

(5)本件商標と引用商標との外観上の類否については、詳しく述べるまでもなく、明瞭に区別し得るものであって、非類似である。また、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を想起させない造語であるから、これらの観念上の類否については、比較のしようがない。以上の次第で、本件商標と引用商標とは、外観上及び観念上はもとより、称呼上も彼此混同を生じさせるおそれのない非類似のものであることは明らかである。

4 当審の判断

本件商標と引用商標との類否について検討する。

(1)本件商標と引用商標から生ずる称呼について

本件商標から「バイスタミン」の称呼を生じ、引用商標から「ハイスタミン」の称呼を生ずるものであることについては、当事者間に争いはない。

(2)称呼の類否について

本件商標及び引用商標は、いずれも6音からなり、第2音から第6音までの「イスタミン」を共通にし、差異音は、語頭に位置する「バ」と「ハ」が相違しているものである。

そして、該差異音である語頭音における「バ」と「ハ」は、「バ」の音が、両唇を合わせて破裂させる有声子音「b」と母音「a」との結合した音であり、「ハ」の音が両声帯を接近させ、その隙間から出す無声摩擦音「h」と母音「a」の結合した音であることが認められる。

そうすると、語頭におかれたときの「バ」と「ハ」のそれぞれの音を対比すると、両者は子音において、両唇をつかって出す破裂音の「b」と無声摩擦音の「h」という相違はあるものの、母音において、ともに、「ア(a)」であって同じであり、濁音「バ」と清音「ハ」という関係にすぎないものということができる。

してみれば、本件商標の「バイスタミン」と引用商標の「ハイスタミン」とは、発音の冒頭において、濁音「バ(ba)」で発音されるのか、清音「ハ(ha)」で発音されるのかで異なるだけであり、その後の母音からの発音は全く同じであるから、両称呼を一連に称呼するときは、全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、称呼上相紛らわしく、彼此聞き誤るおそれがあるものといわざるを得ない。

(3)観念について

本件商標と引用商標とは、共に造語よりなるものと認められ、観念において比較することはできない。

(4)外観について

本件商標と引用商標中の登録第2475276号商標とを対比するに、両商標は共に6字からなる商標において、第2字から第6字までの「イスタミン」を共通にし、第1字における「バ」と「ハ」の相違にすぎない。そして、このような場合にあって両商標を時と所を異にして離隔観察する場合には、両商標が特定の観念のあるものではないため、その配列文字について特段の注意を払うのは少ないこと及び称呼が類似することも併せ考慮すると、外観上からも甚だ紛らわしく、取引者、需要者をして近似した印象を与えるものであることを否定し難い。

(5)被請求人の主張について

(ア)被請求人は、「バ」と「ハ」とは、語頭音であるに留まらず、称呼上最も強調される位置、すなわち、アクセントが付く位置にある。しかも、「バ」と「ハ」とは、母音「a」が共通するものの、子音については、前者が「b」、後者が「h」であって、明らかに聴き分けられるものである旨主張している。

しかしながら、一般論として、語頭音が称呼を識別するうえで重要な要素を占めることが多いとしても、本件商標と引用商標とは6音からなる文字のうち語頭の子音のみが相違しているだけであり、しかも、それ自体で何らかの意味を有するというものでもないことからして、取引者、需要者が、自他商品の識別のために無意識的に「バ(ba)」を強く発音し、「ハ(ha)」を軽く発音するとは考えにくいというべきである。

(イ)被請求人は、「バイスタミン」と「ハイスタミン」とは、前2音の「バイ」「ハイ」と、残りの「スタミン」との間で一呼吸おいて発音される。この事は、両者を実際に発音してみればわかるはずである。したがって、前記「バ」と「ハ」の音の相違が、「バイスタミン」及び「ハイスタミン」の称呼全体に及ぼす影響は極めて大きい旨主張する。

しかしながら、称呼の類否の判断上、差異音が称呼の語頭にあることは、称呼の差異を識別する重要な要素の一つではあることは前記したとおりであるが、それのみが重要な要素ではなく、称呼の類否については、他の要素をも合わせて判断すべきところ、本件商標の「バイスタミン」と引用商標の「ハイスタミン」は、いずれもわずか6音からなる造語であり、それ自体で何らかの意味を有するというものではなく、一般的に両商標に接した取引者、需要者に格別の観念を生じさせるというものともいえないから、それぞれ「バイスタミン」及び「ハイスタミン」と一体不可分に把握し、一連のものとして発音するのが通常であるというべきである。

(ウ)被請求人は、過去の審決例をあげ非類似である旨主張しているが、商標の類否の判断は、本件商標及び引用商標の類否のみを判断すれば足り、他にどのような商標が登録されているかということが、本件審決の判断に影響を及ぼすものとはいえない。

したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。

(6)出所の混同のおそれついて

本件商標の「バイスタミン」と引用商標の「ハイスタミン」とは、前記のとおり全体として語調、語感が近似し、称呼上(引用商標中の登録第2475276号商標とは、外観上も)において、相紛らわしいものであるから、両商標の類否判断において、出所の混同のおそれを生じさせると推測されるということができる。

被請求人は、称呼上の類否判断に関し、「薬剤」を指定商品とする商標であるからといって、その他の商品や役務に係る商標と区別する必要はない旨主張するが、一般に,商標の類否は,対比される二つの商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである。その場合,考察は,上記のような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼によって取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的になされるべきであり,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきであることは、経験則の教えるところでもある。

そして、本件商標を使用した商品は、「薬剤」であるから、以下に述べるとおり、取引の実情において、出所の混同のおそれがあるというべきである。

すなわち、我が国における医薬品等の流通経路は、一般的には製薬会社から出荷され、専門の卸業者を経由して、病院、医院、薬局に販売され、医師、一般消費者等が最終需要者となるものと認められる。また、請求人及び被請求人は共に製薬会社であって、いずれも医薬品等を製造販売しているという点で事業内容が共通しているものである。

そうすると、前記流通経路が競合する可能性があり、その場合には、少なくとも流通経路の中間にいる卸業者或いは病院、医院、薬局において、耳からの情報によって取引をすることが少なくなく、本件商標と引用商標との称呼上の紛らわしさから、商品の出所の混同をきたすおそれがあるものというべきである。

(5)結論

以上のとおり、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないが、称呼において類似するものであり、また、引用商標中の登録第2475276号商標とは外観においても近似した印象を否定できないものであって、商標全体として出所の混同を生ずるおそれのある類似する商標といわなければならない。そして、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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