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Trademark Appeal Case

引用商標の著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35290(T2001−35290/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第3368826号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3368826号商標(以下「本件商標」という。)は、「SPARCO」の文字よりなり、平成5年6月18日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類」を指定商品として、平成10年2月6日設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第100号証を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号及び同第15号に該当するにもかかわらず、登録されたものである。したがって、商標法第46条第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。以下その理由を詳述する。

(1)請求人が使用する「sparco」商標の著名性について

(ア)まず、請求人スパルコ エス、アール、エル(SPARCO S.r.l.)(以下「スパルコ社」という。)は、イタリー国トリノ所在のレーシングドライバー用の靴、レーシングスーツ、自動車部品等の製造販売会社である。

スパルコ社は、1977年にイタリアのモータースポーツ委員会が、ラリー競技において発生した幾つかの事故を教訓として、全てのモータースポーツのレーシングドライバーに対して耐火スーツの着用を義務付けたことを機に、当時レーシングドライバーであったアントニオ パリシとエンリコ グロリオーゾが、レーシングドライバー用のスーツや靴等を製造販売するために設立した会社であり、それ以来、F1(フォーミュラ1)を初め、ラリー、レーシングカート等の自動車レースの世界において、スパルコ社のスーツや靴は、プロを初め、アマチュアのレーシングドライバーによって着用されており、斯かる商品の分野における世界のリーディングカンパニーとして成長を続けている。

また、1998年には国際標準規格であるISO9002の認定を受け、世界レベルの高信頼性を得るメーカーとなっている。このような地位を維持するためには、高品質の商品を供給するだけでなく、世界各地で開催されるレースに素早く対応できるようなサービス体制を整える等の企業努力がなされていることはいうまでもない。

また、スパルコ社はレーシングカーやラリーカー用の座席や各種の部品及び附属品類も製造販売している。

(イ)スパルコ社製のレーシングドライバー用の靴やスーツを始めとする全ての商品には、商号の要部である「sparco」の文字をデザイン化した後掲のとおりの商標(甲第2号証)(以下「引用商標」という。)が付されている。この商標は、看者の注意を最も強く惹く語頭の「s」の文字が特殊な書体で表されているために商標全体としても強く印象に残るものになっている。

また、「sparco」の語は、請求人が創造した造語であり、格別の意味合いは有していない。

次に、「レーシングドライバー用の靴」が掲載されたスパルコ社の商品カタログ(甲第3号証ないし甲第9号証)中に掲載された商品写真に示されているように、この特殊書体の商標は、商品に直接付されているが、商品だけではなく、インボイス等の取引書類にも付されており、所謂ハウスマークとして使用されている。

(ウ)スパルコ社の「レーシングドライバー用の靴」はヨーロッパを始め、世界各国において販売されており、わが国には1983年に輸入が開始され、それ以来現在まで継続的に輸入・販売されている。

(エ)レーシングドライバー用の靴が使用されるレースは、F−1世界選手権を頂点として毎年世界中数多くの場所で開催され、わが国でも全日本フォーミュラ・ニッポンや全日本ラリー選手権などの数多くのレースが行われているところであり、海外及び国内における主なレースの日程については、甲第10号証のとおりである。このような多くのレースには、多数の観客が観戦に来ており、特に毎年鈴鹿サーキットで開催されるF−1世界選手権の日本グランプリには、F−1選手権の最終戦ということもあって、日本中の自動車レースファンだけではなく、世界中からファンが集まって来る。

スパルコ社の商品には、子供用のものもあり、日本には子供用の商品も輸入されている。

スパルコ社の商品、特にレーシングドライバー用の靴がわが国に輸入されている事実を立証するために、スパルコ社発行のインボイスの写を提出する(甲第11号証ないし甲第67号証)。

さらに、「レーシングドライバー用の靴」以外の商品ではあるが、1980年代初めには「レース用自動車の座席」等もわが国に輸入され、販売されているため、スパルコ社の商品が20年程前から既に日本の市場で販売されていた事実を証明するため、それらのインボイス写も参考までに提出する(甲第69号証ないし甲第71号証)。

(オ)スパルコ社の商品は、自動車レースに関する世界中の雑誌類にその広告が掲載されている。参考までに、その一部を提出する(甲第72号証ないし甲第89号証)。

(カ)さらに、スパルコ社は世界中で行われている各種の自動車ショーや展示会に繰り返し同社商品を出展し広範な宣伝活動を展開しており、このような永年の宣伝広告活動により、引用商標「sparco」はその商品の需要者や取引者、並びにレースのファン等に広く知れ渡ることとなった。

(キ)日本においては、多くの需要者が購読するレーシングカート関係の雑誌に、輸入代理店が広告を掲載している(甲第91号証ないし甲第96号証)。

また、現在、レーシングカートの入門書が数種類発行されているが、その中、本件商標の出願前である1991年に発行された「ザ・カート 新版/レーシングカート入門百科」(甲第97号証)にスパルコ社のレーシングドライバー用の靴が紹介されている。

さらに、1999年に発行されたものではあるが、「カート入門」という書籍(甲第98号証)にもスパルコ社の靴が掲載されており、そこには「カーターからF1ドライバーまで多くのドライバーに愛用されているスパルコ社のレーシングシューズ」というコメントが付されている。

また、2001年に発行された「レーシングオン」3月15日号(甲第99号証)及び同3月29日号(甲第100号証)にレース用品が特集されている。3月15日号には、スパルコ社の「ヘルメット」が掲載されているが、そのコメント部分に「レーシングスーツやグローブ、シューズといったアイテムとして、あまりにも有名なスパルコだが...」という記載があり、3月29日号に掲載された「靴」の特集記事には「フォーミュラカー、ラリーを問わず、モーターレーシングシーンで活躍するドライバーたちから多くの支持を得ているスパルコ」との記載もある。

上記甲第98号証ないし甲第100号証として提出した書籍及び雑誌は本件商標の登録後に発行されたものではあるが、スパルコ社のレーシングドライバー用の靴が如何に有名であるかを如実に表しており、かなり以前から有名であったことが想像できるものと確信する。

(ク)以上のとおり、引用商標「sparco」は本件商標の出願日前より「レーシングドライバー用の靴」の商標として、わが国のみならず、世界中の需要者や取引者、並びに自動車レースの関係者やファンの間で周知著名となっていた事実がある。

また、本件商標の登録査定日である平成10年1月9日において、引用商標がわが国において周知著名であった事実については、出願日前から現在に至るまで継続的にスパルコ社の「レーシングドライバー用の靴」がわが国に輸入されている事実から容易に判断できるものと思われる。

(2)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について

上記の如く、本件商標は、その出願前及びその登録査定時において既に周知著名であった引用商標と綴りが同一であり、したがって本件商標からも「スパルコ」という称呼が発生することは明らかである。

また、引用商標は、何等語義を有していない造語であるから、通常採択されるような商標であるとは到底思えないのである。即ち、本件商標は請求人の著名商標と偶然に一致したものとはいい難く、商標権者が請求人の著名商標の盗用を目論んで採択したといわれても仕方のないところであろう。

さらに、本件商標を「レーシングドライバー用の靴」以外の靴類やげた、草履類について使用する行為は著名商標へのただ乗りであり、このような使用行為が行われた場合、請求人の著名商標の表彰力が稀釈化されることとなり、請求人が永年にわたり築きあげてきた業務上の信用が破壊されることとなるのは必定である。

したがって、本件商標の登録を認め、独占権を与えることは商標法の目的の一つである商品流通秩序を阻害するものであり、公序良俗を害することとなるため、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について

上述のとおり、請求人は1977年に設立された法人であり、その名称である「SPARCO S.r.l.(スパルコ エス、アール、エル)」中、「S.r.l.(エス、アール、エル)」の部分はイタリー語の「Societa responsabilita limitata」の頭文字をとった略語で、「有限責任会社」を意味する組織名を表した部分である。したがって、名称の要部は「SPARCO(スパルコ)」であり、請求人の名称は「SPARCO(スパルコ)」と略称されている。この点については、一般に会社名を称呼する場合には、組織名の部分は省略して称呼される場合が極めて多いことから、理解できるものと思われる。また、既に提出した証拠中において「スパルコのレーシングシューズ」等の文言が使用されていることから判断しても、この「スパルコ」の語が請求人の名称の略称として使用されていることは、明白である。

また、この「SPARCO」の略称がレーシングドライバー用靴の需要者及び取引者間において本件商標の出願前及び登録査定時において周知著名となっていたことは上述のとおりである。

したがって、本件商標は、他人の名称の著名な略称からなる商標であって、その他人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。

(4)本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について

引用商標「sparco」が商品「レーシングドライバー用靴」について本件商標の出願日前既に周知となっていたことは、前述のとおりである。

また、本件商標の登録査定時においても同様に周知であった。

さらに、本件商標は、引用商標「sparco」と同一の綴りからなり、したがって称呼上同一であるから、両商標が誤認混同を生ずるほどに類似することは明らかである。

また、商品についても、本件商標の指定商品中「靴類」が「レーシングドライバー用の靴」を含む概念の商品である場合には、明らかに類似関係にある。

この場合、本件商標が靴類について使用された場合、その需要者及び取引者はこれが請求人の製造販売に係る商品であるかのような出所について誤認混同を生ずることとなる。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

(5)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

前述のとおり、引用商標「sparco」は、本件商標の出願日前、「レーシングドライバー用の靴」について、その需要者及び取引者並びにモータースポーツの愛好者や関係者間において、既に周知著名の域に達しており、また、本件商標の登録査定時においても同様に周知著名であった。

なお、「レーシングドライバー用靴」と本件商標の指定商品との類似性については、類似商品の判断基準によれば、両商品が類似関係にないと判断されるかもしれない。しかしながら、現在では、企業の多角経営が当然のように行われていることを考えれば、請求人が「レーシングドライバー用靴」の製造において培われた技術を応用して「一般ドライバー用の靴類」や自動車レースの現場において、例えばピット内の作業員が使用する「靴類」を、また一般に使用されるスニーカーのようなスポーティーな靴類やサンダル類を製造販売する可能性は多分にあるのである。

スパルコ社の「レーシングドライバー用靴」の取引者や需要者並びにモータースポーツの愛好者や関係者も、当然、一般の靴類やサンダル類を使用しているため、本件商標がそれらの商品に使用され、市場にて販売された場合、それらの商品が恰もスパルコ社自身により製造販売された商品であるかの如く、或いはスパルコ社の関連会社により製造販売された商品であるかの如く、出所の混同を生じることは明らかである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(6)以上要するに、本件商標は、その出願前既に周知著名の域に達している請求人の名称の略称と同一であり、また請求人が使用する著名な商標に極めて類似しているため、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号或いは同第15号に該当し、その登録を無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁するところがない。

4 当審の判断

(1)請求人の提出に係る証拠についてみるに、甲第11号証ないし甲第51号証の「インボイス」(1983年6月21日〜1993年4月30日発行)によれば、我が国に商品「レーシングドライバー用の靴」等が輸入された事実を認めることができる。

また、甲第69号証ないし甲第71号証の「インボイス」(1980年7月29日〜1982年6月23日発行)によれば、商品「レース用自動車の座席」も輸入されていた。そして、これらインボイスには、いずれも引用商標が印刷されている。

さらに、甲第72号証ないし甲第86号証の自動車レースに関する雑誌等には、請求人の業務に係る商品「レーシングドライバー用の靴」等の広告及び記事等が掲載されており、甲第91号証ないし甲第95号証の「ジャパン・カート」(1988年6月号〜1993年4月号 亜玄株式会社発行)、甲第96号証の「スピードマインド」(1992年6月号 マインド・出版株式会社発行)及び甲第97号証の「ザ・カート」(1991年11月10日 株式会社山海堂発行)には、請求人の業務に係る商品「レーシングドライバー用の靴」等の広告が掲載されていて、そのいずれにも引用商標が明示されている。

そして、請求人が主張する「レーシングドライバー用の靴」の販売実績及び宣伝広告活動等によれば、請求人はその宣伝広告に相当額を費やしているものと窺うことができる。

してみると、請求人の提出に係る上記証拠及び他の甲各号証を総合勘案すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る商品「レーシングドライバー用の靴」の商標、さらには同人のハウスマークとして取引者、需要者の間において広く認識されていたものと判断するのが相当である。

(2)本件商標は、その構成前記したとおり「SPARCO」の文字よりなるものであって、引用商標とその綴りを同じくするものである。

(3)また、本件商標に係る指定商品は、靴類を含む履物類であって、引用商標の使用商品「レーシングドライバー用の靴」とは同じ履物という点で関連性があり、なかでもモータースポーツやファッション(装身に関する流行)に敏感な若年層を含む需要者の範囲に共通性が認められるものである。

(4)そうとすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、前記実情よりして、これに接する取引者、需要者は、その文字綴りの共通性に着目し、前記周知になっている引用商標を連想、想起し、請求人の業務に係る商品、若しくは、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

(5)したがって、請求人のその余の無効事由について論及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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