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Trademark Appeal Case

造語商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35100号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3294241号商標(以下、「本件商標」という。)は、「PYROSIL」の文字を横書きしてなり、平成5年7月19日登録出願、第1類「化学品,非金属鉱物」を指定商品として、同9年4月25日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第481376号商標(以下「引用商標」という。)は、別記に表示したとおりの構成よりなり、昭和30年8月17日登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として昭和31年5月19日に設定登録され、昭和51年8月9日、同61年6月24日及び平成8年10月30日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判の費用は、被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証を提出している。

(1)引用商標の通常使用権者「日本アエロジル株式会社」(以下「通常使用権者」という。)は、請求人と三菱マテリアル株式会社との間の合弁会社として、1966年に引用商標の指定商品に含まれる乾式法超微粒子シリカ(無水シリカ)(以下、単に「無水シリカ」という。)を日本国内で主として販売するために設立され、同商品を主要な商品とし30年以上前から引用商標の使用を開始し、今日に至るまで継続して使用している(甲第5号証、第6号証)。

その間、通常使用権者は、月に1回発行されているエネルギー・化学・プラントの業界誌として同業者間において著名な総合雑誌である「JETI」に商品「無水シリカ」について引用商標を付して定期的に広告を行い、商標を周知にさせる努力を続けてきた(甲第7号証)。

この結果、通常使用権者は、代表的なシリカ(ゲル)の製造会社として商品大事典に掲載されるまでに至った(甲第8号証)。上述の事情に鑑みれば、引用商標は、本件商標の登録出願日前に既に日本国内において著名であった。

(2)本件商標は、ローマ字で「PYROSIL」と横書きされた商標である。本件商標の前半部の「PYRO」は、英語及び化学品関係の商品に使われるドイツ語において「火・熱」、「熱作用による」等の意味を有する接頭語として広く用いられている(甲第9号証、甲第10号証)。また、本件商標の後半部「SIL」は、請求人の製造に係る化学品中「シリコン(Silicon)」に使用されている(甲第11号証ないし同第16号証)。したがって、本件商標は、1語の如き構成となっているが、2音節に分けて認識され得る。

また、請求人の製造に係る「無水シリカ」は、精製四塩化珪素の「燃焼」によって作られるものであり、他の製造方法とは全く異なっている(甲第17号証)。このため、無水シリカ関連商品の取引者間においては、燃焼を意味する「PYRO」の文字と「SIL」により構成された商標は、請求人商標の周知度とその構成態様から、請求人の商品に係るものを想起することは極めて自然なことである。

このような事情に鑑みれば、被請求人が「PYROSIL」を採用するに至った過程には、引用商標の著名性に着目し、これの派生商品であるかのごとき印象を与えようとする不正の意思が明確に看取されるのである。このような行為は、同業者間における商取引の国際信義に反する行為であり、商標法第4条第1項第7号に該当するのみならず、同第19号を改正し追加した法の精神にも反するものである。

(3)本件商標は、上述のとおり請求人の著名な商標を想起させるものであり、請求人の生産及び販売網に属する指定商品に使用されると、それらの商品が、恰も請求人又は請求人の業務に係る商品と経済的又は組織的に何らかの関連がある企業の業務に係るもであるかの如く商品の出所について混同を需要者間に与えるのである。したがって、本件商標を指定商品に使用すると、他人の業務に係る商品と混同を生じることから、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも該当する。

4 被請求人は、本件審判請求に対して何ら答弁するところがない。

5 当審の判断

(1)本件商標は、前記のとおり「PYROSIL」の文字を横書きしてなるのに対し、引用商標は、別記に示すとおり、円状図形の中央部に、その円状図形のほぼ横の直径に至適する長さの「aerosil」の文字を横書きで配してなるものであるから、それぞれの構成からすると、本件商標は、引用商標と外観において明確な差異を有する非類似のものであり、いずれの文字も格別の意味を看取し得ない造語よりなるといえるから、観念においても類似するものとは認められないものである。

両商標を称呼上よりみると、それぞれの文字構成に相応し、本件商標は「パイロシル」、引用商標は「アエロシル」及び「エアロシル」の称呼を生ずるものと認められる。

そこで、本件商標より生ずる「パイロシル」の称呼と、引用商標より生ずる「アエロシル」、「エアロシル」の称呼とを比較すると、「パイロシル」と「アエロシル」の称呼は「パイ」と「アエ」の差異があり、「パイロシル」と「エアロシル」の称呼は「パイ」と「エア」の差異があるものであって、5音構成というさほど冗長ともいえない称呼において2音が相違するものであり、しかも、その相違は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭部におけるものであるから、上記差異が全体の称呼の音調、音感に及ぼす影響は大きく、いずれの称呼においても相紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。

してみれば、本件商標は、引用商標と外観、観念、称呼のいずれにおいても類似するものではない。

(2)請求人は、通常使用権者が30年以上前から引用商標を無水シリカに継続して使用しており、その間、通常使用権者は月に1回発行されている総合雑誌「JETI」に無水シリカについて引用商標を付して定期的に広告を行い、その結果、引用商標は、本件商標の登録出願日前に日本国内において著名であった旨述べる。

確かに、会社概要と称する甲第5号証には、表紙に「AEROSIL」「日本アエロジル株式会社」の文字が、次葉には「AEROSIL(アエロジル)は、工業規模で製造されているシリカ(SiO2)の中では、最も小さい粒子を持つ高純度の無水シリカです。」の文字が、裏表紙に「初版 72.9.」の文字が記載されている。これらのことからすると、昭和47年9月には通常使用権者が引用商標を使用して無水シリカを製造、販売していたことを推認することができる。しかしながら、該無水シリカに関する宣伝、広告の期間、回数などその実績を示す証左はなく、また、販売実績なども何ら示されていない。そうすると、これらの証拠をもって引用商標が周知著名であるとすることは到底困難であるといわざるを得ない。

そうとすれば、本件商標は、請求人又は請求人と関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断することができない。また、不正の目的をもって使用するものとはいえないこと明らかである。

(3)次に、本件商標は、矯激若しくは卑猥な文字よりなるものとはいえないものであり、かつ、国際信義に反する商標とも認められないものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても何ら公の秩序又は善良な風俗を害するおそれのあるものとは言い得ないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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