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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35529号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4169389号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年11月29日登録出願、商標の構成を後掲(1)に示すとおり、「アパマンショップ」の片仮名文字とし、指定商品を第16類「雑誌その他の印刷物」として、同10年7月24日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効を述べる理由に引用する各登録商標は、次の(a)ないし(e)に示す5商標である。

(a)登録第1682939号商標(以下「引用a商標」という。)は、昭和55年7月28日登録出願、商標の構成を横書きした「APAMAN」の欧文字とし、指定商品を平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令第1条所定の商品の区分(以下「旧別表」という。)第26類「雑誌、新聞、その他本類に属する商品」として、同59年5月29日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、平成6年10月28日に存続期間の更新登録がされているものである。

(b)登録第1783947号商標(以下「引用b商標」という。)は、昭和55年7月28日登録出願、商標の構成を横書きした「アパマン」の片仮名文字とし、指定商品を旧別表第26類「雑誌、新聞、その他本類に属する商品」として、同60年6月25日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、平成8年2月28日に存続期間の更新登録がされているものである。

(c)登録第2216674号商標(以下「引用c商標」という。)は、昭和62年5月29日登録出願、商標の構成を後掲(2)に示すとおり、やや書体に変化を持たせた「アパマン」の片仮名文字とし、指定商品を旧別表第26類「印刷物(文房具類に属するものを除く)書画、彫刻、写真、これらの附属品」として、平成2年3月27日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、同11年11月9日に存続期間の更新登録がされているものである。

(d)登録第2216675号商標(以下「引用d商標」という。)は、昭和62年5月29日登録出願、商標の構成を後掲(3)に示すとおり、やや書体に変化を持たせた「APAMAN」の欧文字とし、指定商品を旧別表第26類「印刷物(文房具類に属するものを除く)書画、彫刻、写真、これらの附属品」として、平成2年3月27日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、同12年3月27日存続期間の満了による抹消の登録が同12年12月20日にされているものである。

(e)登録第2247623号商標(以下「引用e商標」という。)は、昭和62年11月13日登録出願、商標の構成を後掲(4)に示すとおり、やや書体に変化を持たせた「APAMAN」の欧文字とし、指定商品を旧別表第26類「印刷物(文房具類に属するものを除く)書画、彫刻、写真、これらの附属品」として、平成2年7月30日に設定の登録がされ、その後、該商標権は、同12年8月8日に存続期間の更新登録がされているものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証(枝番を含む)を提出した。

(1)請求理由の概要

本件商標は、請求人に係る引用各商標と類似し、指定商品も同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。また、引用各商標(「アパマン/APAMAN」)は、請求人の商標として広く一般に知られ、かつ、使用されている商標であるので(甲第3号証の1ないし甲第18号証)、これと類似する本件商標をその指定商品に使用した場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第15号に該当する。よって、本件商標の登録は、同法第46条第1項により、無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項第11号該当について

(ア)具体的理由

本件商標は「アパマンショップ」の文字よりなるところ、構成中の「ショップ」の文字は「店、店舗及び小売店」等を意味し、商品の販売場所を表示する自他商品の識別標識としての機能を充分に果たし得ないものである。そのため、本件商標は、識別力を具備しない「ショップ」の文字を除いた「アパマン」の文字が主要部を形成して、単に「アパマン」の称呼を生ずるものであり、また、特定の意味合いのない造語と認識されるものである。

これに対し、引用a商標ないし引用e商標は、「APAMAN」又は「アパマン」若しくはこれら文字の外形を損ねない程度にやや図案化して表してなるものであるから、いずれもその構成文字に相応して「アパマン」の称呼を生ずるものであり、また、いずれも特定の意味合いのない造語と認識されるものである。

そこで、本件商標より生ずる「アパマン」と引用各商標より生ずる「アパマン」の称呼を比較すると、両称呼は音構成が同一の「アパマン」の称呼を共通にする。また、本件商標の指定商品「雑誌その他の印刷物」は、引用各商標のいずれの指定商品にも包含され、抵触を免れない。

したがって、本件商標と引用各商標は、称呼において相紛らわしいものであるから、両商標の外観及び観念について言及するまでもなく、互いに類似する商標である。

(イ)被請求人の答弁に対する弁駁

被請求人は、本件商標より「アパマン」の称呼は生じないとして、「アパマン」の称呼を生ずる引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれについても類似しない旨主張している。

しかしながら、「雑誌その他の印刷物」を指定する商標の区分は、他の区分の商標に比して識別性の判断が特殊な部門とされることがあるとしても、商標の類否における対比については、商標を構成する文字の識別性の有無を判断する場合と異なり、単なる称呼の対比のほか、一般的な普通名称のみならず、指定商品との関係で商品の品質(内容)又は販売場所等を示す識別性が認められない文字部分を除き、看者に強く印象させる識別力を具備した部分より生ずる称呼とを対比した審査・審判事例も多数存在する。

すなわち、本件商標と引用各商標の関係と同様、印刷物を指定商品とする区分において、普通名称及び品質(内容)又は販売場所等を省略して、看者の印象に残る識別性を有する部分を対比し、類似とした審決例(「NIPPONVCR」=「VCR」,「セブン(世文、せぶん、SEBUN)ブック」=「セブン」,「SCAT」=「スカット BOOKS(ブックス)」)(甲第19号証ないし甲第21号証)があることからも明らかである。この点よりしても、本件商標より「アパマンショップ」のほか、「アパマン」の称呼も生ずることは明らかであり、「アパマン」の称呼を生ずる引用各商標と称呼上類似する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号該当について

(a)具体的理由

請求人は、昭和57年7月に株式会社ハウザー(昭和48年5月の設立)が昭和48年12月に創刊したアパートマンション情報誌の取次・販売部門を引き継いで「株式会社アパマン」として設立した会社である。

請求人は、その後、昭和61年7月に株式会社ハウザーのアパートマンション情報業務のすべてを移管し、その情報誌の発売元となると共に、情報誌名として請求人の略称である「アパマン」を採択し、「アパマン」及び「APAMAN」と改題し、アパートマンションの賃貸の取次ぎ・不動産情報についての提供等のサービスを「アパマン館」として営業し、現在に至っている(甲第7号証及び甲第8号証)。

そして、「アパマン/APAMAN」を商標として使用したアパートマンションの情報誌(甲第9号証ないし甲第14号証)を関東一円の各都市の販売店並びにJR及び関東の各私鉄駅の売店等で販売し、その広告宣伝についてはJR及び各私鉄駅の構内・プラットホームならずJR及び関東の各私鉄の電車内の中吊り広告等をもって大々的な宣伝活動を展開している(甲第15号証及び甲第16号証)。

また、「アパマン/APAMAN」は、日本テレビ、東京放送、フジテレビ、テレビ朝日及びテレビ東京等のテレビでスポットコマーシャルで放映している(甲第17号証の1ないし甲第18号証)。

そのため、「アパマン/APAMAN」の文字は、アパートやマンション住まいの部屋さがしに関心を有する人は勿論のこと、関心のない人までが親しみをもって見つめており、取引者・需要者間において広く周知・著名となっているものである。

さらに、請求人は、アパートやマンションにおける賃貸の取次ぎ・マンションの分譲及び不動産情報の提供等のサービスを業務とするガイドセンターとして、「アパマン館」を新宿・渋谷・池袋及び立川等に配置しており、「アパマン/APAMAN」の文字をアパートやマンションの物件の内容(間取り等)・所在地・交通手段及び価格等を表示した部屋さがしに使用しており、また、札幌・富山・京都及び鹿児島等のように全国的な宿さがしをダイヤル回線を通じての対処サービスに使用している(甲第7号証)。

してみれば、本件商標は、前記したとおり引用各商標と「アパマン」の称呼を共通にする類似の商標であり、請求人が使用する「アパマン/APAMAN」の文字が交通機関やテレビ等のマスメディアを介して広く需要者間に親しまれているので、交通機関やテレビ等を介して需要者が本件商標に接するとき、あたかも請求人又は請求人の関連する会社の業務にかかわる商品かと誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがある。

(b)被請求人の答弁に対する弁駁

被請求人は、請求人に係る「アパマン/APAMAN」商標の周知・著名性は、その使用開始時期や使用期間、販売地域、発行部数や販売部数及び広告宣伝等の状況よりして、需要者間に広く浸透しているものとはいえないとして、本件商標が商品の出所の混同を生ずるおそれはないと主張している。

しかしながら、請求人は、アパートマンション情報誌について、昭和54年11月に第3種郵便物として認可されたのを引継ぎ、昭和62年から「APAMAN/アパマン」の文字を使用し(甲第22号証)、販売エリアも甲第7号証に示すように首都圏を中心とする関東地方の中部及び南部の地域であり、毎週金曜日に書店及び駅構内の売店で販売しており、その広告についても、駅構内のポスターにより、また、電車、バス内の中吊りや車額等による宣伝を現在も引き続き実施している(甲第23号証ないし甲第35号証)。

そして、そのアパートマンション情報誌の発行部数について、情報誌は、その特性から販売部数を公表しないのが通例で、正確な数値を公表することができない。また、新聞社・雑誌社等が発行する週刊誌の販売にあっても、部数が雑誌広告の効果を率直に表わし利害が絡むので正確な数字を公表しないのが出版業界の慣習であり、およその数値以外公表していないのが実情である。

しかし、「APAMAN/アパマン」の文字を使用したアパートマンション情報誌の発行部数が正確でないとしても、過去・現在を通じて最高の数値を示したものである。さらに、「APAMAN/アパマン」の文字は、アパートマンション情報誌の商標として周知・著名であると認められていることは商標登録異議申立の異議決定によっても明らかなところである(甲第36号証及び同37号証)。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第35号証を提出した。

(1)被請求人の主張の要旨

請求人は商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号該当を理由に本件商標の無効を述べているが、本件商標は引用各商標とは類似しないし、また、請求人の使用する商標は周知・著名商標ではないので、本件商標を指定商品に使用しても請求人又は請求人と密接な関係を有する者の業務にかかる商品と誤認し、混同を生ずるおそれはない。したがって、本件商標に対する無効請求は理由がない。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「アパマンショップ」と同書・同大・同間隔に外観上まとまりよく一体的に表わしたものである。そして、これより生じる「アパマンショップ」の称呼も冗長という程のものではなく淀みなく称呼し得る程度のものである。

また、本件商標の指定商品である「雑誌その他の印刷物」の分野においては、一般にその題号が印刷物の内容を包括的に表示しており、これら雑誌等の印刷物に接する取引者、需要者は題号に表された文字全体をもって、商品の取引に当たるのがこの種商品の取引の実情といえるものである。

してみると、本件商標は、前記のとおり、外観、称呼において一体のものと見られるだけでなく、その指定商品の取引の実情からしても、その表された構成どおり、「アパマンショップ」の一連の称呼が生じると考えるのが自然である。

したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「アパマンショップ」の一連の称呼が生じるものであって、本件商標からは「アパマン」の称呼は生じない。

これに対し、引用各商標の構成並びに指定商品はそれぞれ前記2に示すとおりのものであるから、各構成に相応していずれも「アパマン」の称呼が生ずる。

そこで、本件商標と引用各商標の称呼を対比すると、両者は「ショップ」の音の有無に差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても需要者は明確に聴別し得るものであり、また、観念については、「アパマン」と「アパマンショップ」はいずれも造語であって、特定の観念が生じないので、両者は観念上紛れるおそれはなく、さらに、外観において両者は「ショップ」の語の差異並びに英文字と片仮名文字の差異があるから、外観上類似しない。

そして、請求人がその発行に係るアパートマンションに関する賃貸情報の情報誌に使用している商標は専ら引用e商標であり(甲第8号証ないし甲第17号証参照)、需要者が請求人に係る情報誌を識別するのは専らその先端の尖った特異な英文字にあると考えられ、現実に、本件商標に係る印刷物と請求人に係る印刷物を需要者が誤認・混同することなどありえない。

よって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張は失当である。

(3)商標法第4条第1項第15号について

(ア)周知・著名というための要件

請求人は、「アパマン」及び「APAMAN」を「住宅情報誌」について使用した結果、本件商標の出願時及び登録時には、それら商標が請求人発行に係る「住宅情報誌」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと主張する。

しかしながら、請求人が提出した甲第7号証ないし甲第18号証では、請求人使用の題号(以下「請求人題号」という。)が、請求人発行にかかる「住宅情報誌」を表示するものとして本件商標の出願時及び登録時に需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。

すなわち、請求人発行の「住宅情報誌」は、ある地域のアパートマンションの賃貸物件を主に掲載するものであるから、その販売場所は物件の所在地及びその周辺地域に限られる。一般の雑誌のように日本全国に流通するものではない。また、「住宅情報誌」の購入者はその掲載内容からして一般大衆である。したがって、「住宅情報誌」に使用する請求人題号が周知・著名というためには、需要者一般に相当程度広く認識されていることが必要と考えられる(乙第15号証判決)。

(イ)請求人題号の周知・著名性の欠如

請求人が提出した各証拠に基づいて、請求人題号がこの要件を備えているかどうかを検討する。

(a)使用開始時期及び使用期間

請求人題号の使用開始時期は昭和63年1月であり、本件商標の出願前までの請求人題号の使用期間は10年間でしかない(乙第16号証)。

(b)販売地域

請求人は、「住宅情報誌」は「関東一円の各部市の販売店並びにJR及び関東の各私鉄駅の売店で販売した」と主張している。

しかし、これは請求人が作成した甲第7号証の会社案内及び甲第8号証の業務広告に記載されているだけで、このことを客観的に証明するものは一切提出されていない。

請求人の「住宅情報誌」は、その掲載記事から東京を中心とした近郊で販売されていることは認められるが、請求人主張のように「関東一円の各都市の販売店並びにJR及び関東の各私鉄駅の売店で販売した」というのは誇張である。

(c)発行部数並びに実販売部数

請求人は、昭和63年1月から本件商標の出願前までの間の「住宅情報誌」の発行部数、実販売部数及び売上高等を明らかにしていない。甲第7号証の会社案内には、「発行部数26万部、発行部数は同業者でトップ」の記載はあるが、これを客観的に証明するものは一切提出されていない。

被請求人の調査によれば、請求人の発行する情報誌「アパマン(東京・神奈川・千葉・埼玉)」に掲載された賃貸情報の量は、同種情報誌で提供されている同地域の賃貸情報の総量のせいぜい1パーセント強といったところであり、しかも、その数字は年々減少している(乙第17号証ないし乙第35号証)。

(d) 広告宣伝の方法、回数及び内容

請求人は、「その広告宣伝についてはJR及び各私鉄駅の構内・プラットホームのみならずJR及び関東の各私鉄の電車内中吊り広告等をもって大々的な宣伝活動を展開している」と主張している。

しかし、請求人が提出した証拠の中にはJR及び各私鉄駅の構内・プラットホームに広告を行ったことを証明するものは何もない。また、電車内の中吊り広告にしても、甲第15号証及び甲第16号証は、電車内に中吊り広告をしている状態を撮影した写真の下に、線名、期間、媒体を記載しただけであり、それらを誰がいつ作成したのか、あるいは何本の電車に何枚の広告をしたのか等の具体的なことが、これだけでは一切わからない。また、中吊り広告の回数も、甲第15号証及び甲第16号証によると、平成7年及び平成9年の2年間に、2日間の広告を、京成線5回、新京成線5回、京急線11回、東武線10回、京王線4回、小田急線4回、東急線14回、西武線5回、相鉄線5回、東京モノレール1回、横浜地下鉄線1回、JR線17回を行ったにすぎない。

電車内には毎日多数の中吊り広告が掲示されるが、その中で、数か月に1回、しかも2日間だけ、1枚か2枚程度の広告を出すことが大きな宣伝効果を有することなどはあり得ない。また、本件題号を付した「住宅情報誌」という商品の性質からすれば、これに関心のある者ないしは購読を希望する者の数はある程度限られているから、この広告により需要者が請求人題号を請求人が発行する「住宅情報誌」を表示するものであると認識することなど考えられない。

また、請求人は、「アパマン」及び「APAMAN」は日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日及びテレビ東京等のテレビでスポットコマーシャルで放映しているとして、甲第17号証の1から甲第18号証の各テレビ局のテレビスポット放送通知書及び株式会社電通の請求書を提出している。

しかしながら、証拠として挙げている各テレビ局のテレビスポット放送通知書には、昭和63年1月から4月(日本テレビとTBSは1月から3月まで、フジテレビとテレビ東京は1月と2月、テレビ朝日は1月、2月と4月)までのものしか記載されてなく、また、株式会社電通の請求書も従来のアパートマンション情報誌の題号を「APAMAN」に改題した昭和63年1月から平成2年2月までのものに限られ、しかも、どの局でどの程度の頻度で、どのような内容で放送されたのか、はっきりしない。本件商標の出願時及び登録時までに、かかるテレビ広告が、この移り変りの激しいテレビという媒体からの広告として効果を持ち続けるはずもない。

以上、請求人提出の証拠によると、請求人は「アパマン」の題号を付した「住宅情報誌」を昭和63年1月から発行していること、販売地域は東京を中心としたその周辺地域であること、前記「住宅情報誌」の創刊から2年間だけはテレビ広告をしたこと、電車内の中吊り広告をしているが散発的であることがわかるだけで、それ以上に請求人題号が需要者に浸透していることを裏付ける事実は認められない。

したがって、請求人題号が本件商標の出願時及び登録時に需要者の間に広く認識されていたと認めることができないから、本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当するとの請求人の主張は失当である。

(4)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。

5 当審の判断

本件商標は、商標の構成を「アパマンショップ」の片仮名文字とし、指定商品を第16類「雑誌その他の印刷物」とすること前記のとおりである。

請求人は、商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号該当を理由に本件商標の登録の無効を述べ、証拠方法(甲各号証)を提出しているので、以下、その主張の当否について判断する。

(1)商標法第4条第1項第11号該当の主張について

本件商標は、「アパマンショップ」の文字よりなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさをもって等間隔に表されていて、視覚上一体的に看取し得るばかりでなく、これより生ずるとみられる「アパマンショップ」の称呼も格別冗長に亘るものでなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、たとえ、構成中の「ショップ」の文字が「店、店舗」等を意味する平易な外来語であるとしても、本件商標の指定商品の分野において、該文字部分が特定の著作物又は印刷物一般の内容・品質を表示するものとして直ちに理解されるものとはいい難く、その証拠もないから、むしろ、本件商標は全体として特定の意味合いを表現し得ない一種の造語と認識し把握されるとみるのが相当であって、殊更、構成中の「アパマン」のみを分離・抽出しなければならないような特段の事情は見出せない。

また、特に、雑誌、新聞等の定期的に刊行される商品分野にあっては、一般に、一定の社会分野に関する事柄を出版事業者それぞれの編集方針の下に巻号を追って逐次刊行するというものであり、かつ、その題号(表題、タイトル)は、意味上において当該刊行物の取り扱いに係る社会分野、すなわち、編集内容を端的に言い表している場合が多く、したがって、同じ社会分野の刊行物がいくつも刊行されるという場合は、自ずとその題号として使用される標章(商標)は観念等において似かよったものとならざるを得ないから、これら逐次刊行物に接する取引者、需要者は、当該題号に表された文字又はその表示態様上の特徴を含む構成全体をもって取引に当たるというのがこの種商品の取引の実情である。

そうすると、本件商標は、前記したように、外観、称呼において一体のものとみられるだけでなく、その指定商品の取引事情よりしても、その構成全体をもって取引指標とされるとみるのが相当であるから、構成文字又はその表示態様上の特徴を含む全体より「アパマンショップ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、単に「アパマン」の称呼は生じないものといわなければならない。

これに対して、引用各商標は、その構成それぞれ前記2及び後掲(2)ないし同(4)に示すとおりのものであって、「APAMAN」の文字ないし同文字をやや図案化したもの若しくは「アパマン」の文字よりなるものであるから、各々の構成文字に相応して、いずれも「アパマン」の称呼を生ずるものである。

しかして、本件商標より生ずる「アパマンショップ」の称呼と引用各商標より生ずる「アパマン」の称呼とを比較すると、両称呼は、その後半部分において「ショップ」の音の有無に差異を有する結果、それぞれを一連に称呼しても、彼此聞き誤るおそれはなく、また、両者は、前記各構成よりして、全体の外観印象を異にするものであり、かつ、共に一種の造語とみるのが相当であるから、観念において、両者が紛れ得るとする事由は見出せない。

さらに、後述する如く、請求人情報誌の題号(商標)として一貫して使用されている「APAMAN」商標は、引用e商標(後掲(4)参照)と同様の構成のものであって、その文字態様の特異性と相俟って本件商標における場合とは需要者の記憶・印象において大きく相違するものである。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、称呼、観念及び外観の各点を総合し、かつ、この種商品の取引事情をも併せ考慮するに、両者はその出所について混同を来すおそれのない互いに非類似の商標と判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえないから、これを理由に本件商標の登録を無効とすることはできない。

請求人は、「ショップ」の文字について自他商品の識別標識としての機能を有しない旨述べ、審査例、審決例を挙げ(甲第19号証ないし同第21号証)、本件商標と引用各商標は称呼上類似する旨主張しているが、それら事例は、商標の具体的構成等において本件とは事案を異にするものであって、本件の類否判断の基準とするのは必ずしも適切でなく、また、「ショップ」の文字については、前記判断を相当とするものであるから、請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。

(2)商標法第4条第1項第15号該当の主張について

登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第15号に該当するというためには、その登録出願時を含む登録査定時(又は登録審決時)において該当していることが要件と解される(商標法第4条第3項)。したがって、本件の場合、請求人主張に係る情報誌の題号(商標)に関し、本件商標の登録出願時である平成9年11月29日及び同登録査定時である平成10年6月4日において、その著名性が十分に主張、立証されることが要件となる。

そこで、請求人提出に係る甲各号証(甲第7号証ないし甲第35号証)について検討するに、以下の理由により、それら甲号証によっては、請求人がその発行に係る住宅情報誌(以下「請求人情報誌」という。)について使用する「アパマン」又は「APAMAN」商標(以下「請求人商標」という。)が本件商標の登録出願時ないし登録査定時において我が国の需要者一般に広く認識されるに至ったいわゆる著名商標であるとは俄に認め難く、その著名性は十分明らかにされたものとはいい難い。

(ア)請求人提出の甲第7号証は、請求人会社に係る3葉綴りの会社案内(写し)であって、その表紙には、商号「株式会社アパマン」の表示の下、設立「昭和57年7月」、支社「新宿・横浜・秋葉原」及び関連会社「(株)アパマン館、(株)アパ」等の記載があり、同2頁目には、「創業20周年、『ウィークリーアパマン』は、・・・」との紹介記事の下、「媒体名:週刊アパートマンション情報『Weekly APAMAN』」、「販売場所:JR、地下鉄、私鉄の駅売店、書店、コンビニエンスストア」、「販売エリア:首都圏全域(東京、神奈川、埼玉、千葉ほか)」、「発行部数:26万部」等の記載があり、さらに、同3頁目は、「媒体概要」、「APAMAN」(「引用e商標」と同じ態様のもの)及び「WEEKLYアパマン」の大見出しの下、同頁全面に十数個の請求人情報誌の表紙写真(題号はすべて「引用e商標」と同じ態様のもの)を図柄風にあしらってなるものである。

同じく、甲第8号証は、請求人情報誌に係る3葉綴りの宣伝・広告用印刷物(パンフレット)写しであって、その表紙には、「WEEKLYアパマン」の大見出しの下、中央部に平成7年11月24日発行のものとみられる当該雑誌の表紙(題号は「引用e商標」と同じ態様のもの)を大きく掲載し、そのほか、「住宅情報誌でTOPの発行部数を誇る」、「毎週26万部発行,JR、地下鉄、京浜急行、相鉄、横浜市営地下鉄、東急、小田急、京王、西武、東武、京成、新京成線の各売店、コンビニ、書店」等の記載があり、同2頁目には、「APAMAN/FAXNET」、「TELやFAXで部屋さがしができる」との見出しの下、全国向けの請求人に係る首都圏情報の利用(アクセス)方法が紹介され、さらに、同3頁目は、「アパマン館」、「コンピュータで自由に検索ができる」との見出しの下、請求人に係る「アパマン館」と称する情報利用設備(新宿店、池袋店及び蒲田店)その他フリーダイヤルサービスの番号等が紹介されている。

しかして、上記会社案内及びパンフレットは、それ自体がどの時期にどの地域でどの位の数量のものを制作・頒布したものか判然とせず、また、これに記載された「26万部」及び「住宅情報誌でTOPの発行部数」とする記載については、具体的にどの時期(期間)にどの地域でどの位販売され、或いはどういう根拠に基づく誰による評価であるのか等の事情も全く不明であり、しかも、一般に、この種アパート・マンション等の住宅に関する情報は、特定の地域範囲の物件を対象としていることが多い点で地域性が強く、かつ、その需要者は極めて流動的であって一定しないのが通例であるから、如何に請求人情報誌が首都圏地域を中心に継続的に販売され、或いは、電話・FAX等による当該情報の利用が可能であったとしても、同地域以外の全国域に亘る需要者一般にとっては殆どの場合、認識外の事柄といわざるを得ないから、これら事情並びにこの種情報誌の性格よりして、請求人情報誌が一定地域において相当期間に亘り相当程度の数量のものが継続刊行されていた点は考慮するとしても、それをもって、直ちに、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものと認めるのは困難といわなければならない。

したがって、これら証拠に基づく請求人主張は採用の限りでない。

(イ)同じく、提出された甲第9号証ないし甲第13号証は、請求人情報誌のそれぞれ昭和63年1月30日号、平成3年6月7日号、同4年9月11日号、同9年5月16日号及び同10年4月24日号の表紙及び裏表紙の各写しであり、甲第14号証は平成11年8月6日号の現物と認められる。 これら甲号証によれば、請求人情報誌が上記各期間を通じて継続刊行されていたこと、その題号は後掲(4)に示す「引用e商標」と同じ態様のものであること、そのほか、表紙には後掲(2)に示す「引用c商標」と同じ態様の商標が使用され、これに付加して、「weekly」、「週刊アパートマンション情報」の各文字が共通して用いられていること、情報の内容は首都圏域又は首都圏沿線別の情報が網羅されていること、さらに、当該雑誌のピーアール記事は上記(ア)と同様、「APAMAN/FAXNET」及び「アパマン館」に関する事柄(甲第14号証雑誌においては、インターネットによる利用法が紹介されている。)等の点が認められる。

しかしながら、上記(ア)に述べた理由と同様、この種情報誌の性格その他の点よりして、これら証拠によっては、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものとする点を客観的に示すものとはいい難く、これに基づく請求人の主張は採用の限りでない。

(ウ)同じく、提出された甲第15号証及び甲第16号証は、請求人情報誌に関し、平成7年1月11日から同年12月21日までの間と平成9年1月8日から同年8月28日までの間においてそれぞれ広告された首都圏域のJR及び私鉄各線の車内のいわゆる中吊り広告の写真24葉及び同20葉(いずれも写し)と認められる。

しかしながら、それら中吊り広告は、上記それぞれの時期に各路線毎に僅か2日ないし3日という短時日に、しかも他の雑誌広告等と混在してそれらの一つとして広告されたに止まり、それら広告をもって首都圏域の需要者間に広く認識せられるに至ったとの点は客観的に明らかでなく、また、この種情報誌の性格並びにその地域性、需要者層の流動性又は不定性等の事情については、前記(ア)と同様であるから、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものとみるのは依然困難というべく、これら証拠に基づく請求人主張は採用の限りでない。

(ニ)同じく、提出された甲第17号証(枝番を含む)は、昭和63年1月ないし同年4月にかけて、請求人情報誌に関し、首都圏域の民放テレビ各社が集中的にCM(コマーシャル)放送したことを示すテレビスポット放送通知書写し46葉であり、甲第18号証は、昭和63年1月25日ないし平成2年3月19日までの間の株式会社電通(広告会社)に係る請求人会社宛テレビスポット放送電波料金の請求書写し30葉と認められる。

しかして、それら民放テレビによるCMスポット放送により、上記各時期において請求人情報誌又は請求人商標が首都圏域の需要者間に相当程度知られるに至った状況を十分窺わせるものである。しかしながら、その後、引き続きCMスポット放送がされたとする証拠はなく、また、そうとすれば、需要者のこの種のCMスポット放送に対する印象認識も急速に薄らぐのが通例であり、かつ、この種情報誌の性格並びにその地域性、需要者層の流動性又は不定性等の事情については、前記(ア)と同様であるから、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものとみるのは依然困難といわなければならない。

したがって、これら証拠に基づく請求人主張は採用の限りでない。

(ホ)同じく、提出された甲第23号証ないし甲第34号証は、平成10年3月初めから同12年3月にかけて、請求人情報誌に関し、株式会社アド・東弘(広告会社)により断続的にされた各種広告の内容を示すものであって、それらは、首都圏域のJR、私鉄各線における中吊り広告又はいわゆる車額広告であり、或いは沿線各駅における駅ばり広告又はフレコミボード等と称される広告用掲示板による広告と認められる。

しかして、それら中吊り広告又は車額広告のうち、本件商標の登録査定時(平成10年6月4日)前のものは甲第23号証ないし甲第26号証の僅か4点であり、それも各路線毎に僅か2日という短時日に、しかも他の雑誌広告等と混在してそれら車内広告の一つとして広告されているに止まり、単発的な感を否めないから、それら広告をもって首都圏域の需要者間に広く認識せられるに至ったものとは到底認め難く、また、この種情報誌の性格並びにその地域性及び需要者層の流動性又は不定性等の事情については、前記(ア)と同様であって、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものとするのは依然困難といわなければならない。

したがって、これら証拠に基づく請求人主張は採用の限りでない。

(ヘ)同じく、提出された甲第36号証及び甲第37号証は、商品及び役務の区分をいずれも第36類とする「apaman」又は「アパ・マン」商標に係る商標登録出願の登録異議申立事件において、本件審判請求人(登録異議申立人)による登録異議の申立てが容認された異議決定書2例と認められる。

しかしながら、これら異議申立事件は、商標の具体的構成及び指定商品又は指定役務の区分において、本件商標とは事案を異にするものであり、かつ、本件は、商標自体の構成において類似性を認め得ないとした前記判断を相当とするものであるから、それら事例を本件審判の類否判断の基準とするのは適切でなく、したがって、これら異議決定例を論拠に述べる請求人の主張は、採用の限りでない。

以上、(ア)ないし(へ)に述べたとおり、請求人提出の甲号証によっては、請求人商標が本件商標の登録出願時(平成9年11月29日)ないし登録査定時(平成10年6月4日)において、この種出版物の分野において著名性を獲得したものとする点を認めるには不十分であって、ほかに、この認定を覆すに足りる証拠はない。

さらに、請求人情報誌について一貫して用いられている「APAMAN」商標は、各文字を肉太の角形又は三角形様にした独特のものであって、その特異性が強く印象づけられる故に(引用e商標参照)、需要者をして本件商標より直ちに請求人商標又は請求人情報誌を想起する可能性は極めて低いといわなければならない。

そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品について使用したとしても、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはないというべきであるから、商標法第4条第1項第15号該当を理由にその登録を無効とすることはできない。

(3)結語

以上、(1)及び(2)に述べたとおり、本件商標は、前記各法条の規定に違反して登録されたものということはできないから、その登録は、商標法第46条第1項により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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