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Trademark Appeal Case

著名商標ANGELと8th Angelの類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2001−90890(T2001−90890/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4501197号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4501197号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年8月24日に登録出願され、「エイスエンジェル」の文字と「8th Angel」の文字とを二段に横書きしてなり、商品の区分第9類及び第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年8月24日に設定登録されたものである。

第2 異議申立ての理由

1 申立の根拠

本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号に該当するものである。

2 引用商標

異議申立人(以下「申立人」という。)が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第2138647号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第11類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和56年3月27日に登録出願、平成1年5月30日に設定登録されたものである。同じく、登録第1849948号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第26類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和56年3月27日に登録出願、同61年3月26日に設定登録されたものである。同じく、登録第274252号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第22類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和10年7月8日に登録出願、昭和11年3月5日に設定登録されたものである。同じく、登録第455647号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第22類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和29年3月4日に登録出願、同29年11月15日に設定登録されたものである。同じく、登録第449969号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第22類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和28年5月25日に登録出願、同29年8月20日に設定登録されたものである。同じく、登録第639189号商標(以下「引用F商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第24類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和37年10月23日に登録出願、同39年3月21日に設定登録されたものである。同じく、登録第2676826号商標(以下「引用G商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第24類に属する商標登録原簿記載のとおり商品を指定商品として、昭和60年3月11日に登録出願、平成6年6月29日に設定登録されたものである。

3 具体的理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 引用各商標の著名性

申立人は世界最古のレコード会社であり、同社のクラシックレーベルとして「ANGEL」の文字及び天使の図形を戦前より使用してきた。この「ANGEL」の商標の付されたレコードが発売された時期はレコードという商品が世に出された時期にほぼー致し、この申立人のレコードはいわばレコードの歴史にも相当すると言ってよい。そして、申立人はその時代の優れた演奏家達による数多い名盤と言われるレコードを世に送り続けてきた。そのため、これらレコードは「名盤の宝庫」として高く評価されてきた。その結果、世界のクラシックファンの間では、「ANGEL」の商標は著名なものとなっていた。

わが国においても、昭和28年12月東京芝浦電気株式会社(現在の東芝)が英EMIと英グラムフォンおよび仏パテ・マルコニーとの原盤契約を結んだ。大手電気メーカーが直接レコード事業に乗り出し、昭和30年9月ANGELレコードを発売開始したことは、レコード業界関係者では大いなる関心を集めた(甲第10号証 レコード芸術 昭和30年9月号)。さらにこの発売はレコード業界のみならず、社会的にも大きな注目を集めた(甲第12号証 東京新聞 昭和30年8月26日)。また、東芝自身も積極的にANGELレコードの宣伝広告に努めた(甲第10号証 レコード芸術 昭和30年9月号の裏表紙)。

このANGELレコードはクラシックファンから大歓迎され、とりわけその販売されたレコード中でもフルトベングラーの「運命」は爆発的なべストセラーとなった。

昭和32年には現在の東芝イーエムアイ社が設立され、同社を通じてANGELレコードが販売され着々と業界に浸透してきた。特に、クラシック・レコードは英EMIのもっているレパートリーの広さと、フルトベングラーを筆頭とするー連の巨匠芸術陣の魅力で、クラシックファンの垂涎の的となった。

ポピュラー音楽については、当時のエンジェル・レコードはシャンソン、タンゴ、軽音楽のレパートリーによって、これまた多くの好評レコードを発売してきた。その中でもシャンソンのレコードは固定のファンをしっかりと把握して、国内に於けるシャンソンブームに拍車をかけたと言われている。

昭和38年以降はANGELはクラシックレコードのレーベルとして販売されるようになった。同年にはわが国で最も人気の高いカラヤンを擁する英コロンビアの製造販売権を獲得し(甲第9号証 東芝音楽工業10年史抜粋)、一層の発展を図ることができた。ちなみに、主要レコード会社の昭和35年度と昭和40年度の発売レーベルにも「ANGEL」は含まれていた。

以後も、商標「ANGEL」はクラシックレコードの商標として使用し続けられて今日に至っている。

その永年の使用により、昭和30年から40年以上たった、本件商標が登録された平成10年はおろか、本件商標が出願された平成7年頃にも「ANGEL」の商標は申立人ないしは東芝イーエムアイ社のクラッシクレコードのレーベルとして、わが国の取引者、需要者間で著名なものとなっていたと言える。申立人は上記事実を証明するための証拠方法を甲第9号証ないし同第24号証として提出する。.

イ 特許庁における引用各商標の著名性の認定

特許庁も、登録第1993374号商標に対する無効審判並びに商願平6一6807号商標、登録第4123887号商標、同第4123888号商標及び同第4259039号商標に対する異議申立において、それぞれの商標の出願時の申立人の「ANGEL」の著名性を認めている(甲第25号証及び同第29号証)。本件商標はこれら商標の後願であり、これら商標が出願された後も商標「ANGEL」はわが国で使用され続けてきたから、本件商標の出願時で「ANGEL」商標の著名性は当然認められるべきである。

ウ 本件商標と引用各商標との類否

本件商標の「エイス/8th」は「8番」を意味する語であるが、今日における英語のわが国における浸透度からして、平均的知識水準の需要者であれば誰でもこの意味を理解出来る。そして、取引においては商品記号・型式番号として「○番」なる表示が使用されており、これを英語で「エイス/8th」として表すことは現在の英語の浸透度からして十分考えられる。現に

、8代目の商品の意味等でわが国の現実の取引において「8th」が使用されている(甲第32号証)。したがって、簡易迅速を尊ぶ取引の実情からすれば本件商標に接した需要者は「エンジェル/Angel」の部分を当該商標の要部であるとして、「エンジェル」の称呼・観念をもって取り扱うは必定である。また、上述したように、本件商標が「ANGEL」を含んでいる事は容易に理解できる。この「ANGEL」は申立人の商標として極めて著名であるから、需要者は本願商標に接したときには、該「ANGEL」に注意を惹き、この部分を他の構成要素と分離して捉えるは必定である。

特許庁においても、「指定商品について著名な商標と他の文字とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよくー体に表わされているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その著名な商標と類似する。」(商標審査基準)として、申立人と同様の見解を採っている。そして、審査基準上、例外としては、他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっている場合とされているが、本件商標は全体として一つの既成語ではないので、この例外には当たらない。

以上述べた二つの点から、本件商標は、取引時には「エンジェル」の称呼・観念をもって取り扱われる。したがって、本件商標と引用商標とは、称呼・観念上相紛れるおそれがある。

(2)商標法第4条第1項第10号について

引用商標は本件商標が出願された時点でもすでに「レコード」の商標として著名であったから、本件商標は商標法第4条第1項第10号の規定にも違反して登録されたものと言える。

(3)商標法第4条第1項第15号について

引用商標は著名であったので、本件商標がその指定商品とりわけ、レコード並びにれら商品と関係の深いCDプレーヤー、レコードプレイヤー、テープレコーダー、ビデオレコーダー、テレビ受信機並びにレコード、録画済みビデオディスクの技術が用いられる電子計算機用プログラム、レコードの情報が含まれる音楽情報・音楽を内容とする電子出版物及び印刷物等に使用された場合には、当該商品が申立人ないしは東芝イーエムアイ社の業務に係る商品であるとその出所について混同を生じるは必定である。現に、東芝イーエムアイ社自身コンピュータソフトの制作、製造、音響・映像機器の製造を行うと共にゲームの分野にも進出している(甲第30号証及び同第31号証)。

近年における技術革新による産業構造の変革による企業の多角化・異業種への参入により、他業種からの本件商標の指定商品分野への参入が増加している状況にある。この点でなお一層出所について混同を生じる商品の範囲が広がるものとなっている。

また、商標の面でも、本件商標は全体としてとらえた場合にも「8番目のエンジェル」なる意味合いが感得される。この「8番目のエンジェル」の意味合いからは「エンジェル/Angel」の部分が需要者に強く印象付けられる。需要者によっては本件商標が「8枚目のANGELのレ−ベル」と認識する者もいると考えられる。この点で、本件商標が申立人の著名商標「ANGEL」との関係で出所の混同を生じる可能性は極めて高いものと言える。

(4)特許庁における取扱

特許庁においても、本件商標の指定商品と同じ商品である「レコード」をその指定商品に含む登録第1993374号商標「AngelParde」、「レコード,録画斉みビデオディスク」をその指定商品に含む商願平6ー6807号商標「レックスエンジェルス」がその指定商品に使用された場合には申立人あるいは申立人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれがあるものとしている(甲第25号証及び同第26号証)。また、本件商標と同じ商品をその指定商品とする登録第4123887号商標「STAR ANGEL」及び同第4123888号商標「スターエンジェル」並びに登録4259039号商標「NOVA ANGEL」がその指定商品中「電気通信機械器具 レコード、録画斉みビデオディスク及びビデオテープ」等に使用された場合には申立人あるいは申立人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれがあるものとしている(甲第27号証及び同第29号証)。

これら商標が出願された時点と本件商標が出願された時点とで申立人の商標「ANGEL」の著名性の程度が異なるとは考えれない。むしろ、前述したように、本件商標の方が後願であり、商標「ANGEL」が使用され続けてきたことからすれば、本件商標の出願時点の商標「ANGEL」の著名性はこれら商標の出願時点での著名性よりもその程度は高いと言える。

登録第4123887号商標及び同第4123888号商標に対する異議申立の決定がされたのが昨年5月25日であって、また、登録第4259039号商標に対する異議申立の決定がされたのが昨年5月15日であり、これらの日以降申立人の商標と類似する商標が出所の混同を生じないとするような取引状況の大きな変更は全くなかった。むしろ、上述したように、近年における企業の多角化・異業種への参入の傾向が著しい経済事情並びに著名商標の経済的価値の高まる状況にある点で、出所の混同が生じる可能性が高まると言えよう。現に、特許庁においても、最近改正された商標審査基準では、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観がまとまりよくー体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがある」として、著名商標の出所の混同の範囲を商標並びに商品又は役務の両面で広げている。

以上のことからして、本件商標がこれら商標と別異に取り扱われる理由は何ら見出せない。それ故,特許庁においては本件商標も商標「AngelParde」「レックスエンジェルス」「STARANGEL」「スターエンジェル」「NOVA ANGEL」と同様に商標法第4条第1項第15号に該当するとすべきである。

第3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は「エイスエンジェル」「8th Angel」の各文字を、まとまりよく一体的に表してなり、殊更、構成中の「エイス」と「8th」と「エンジェル」「Angel」の文字部分に分離して称呼し観念しなければならない特段の事由が存するとも認め得ないものである。なお、申立人は「エイス/8th」は8番を意味する語で、取引においては商品記号・型式番号として、8番目の商品の意味等でわが国の現実の取引で使用されているとして甲第32号証を提出しているが、そのような使用例があるとしても、本件商標の構成にあっては「エイス」「8th」を分離して観察すべきでないとみるのが相当である。そして、構成中上段の「エイスエンジェル」の片仮名文字は下段の「8th Angel」の文字の読みを特定した振り仮名と認められるものである。

そうとすれば、本件商標よりは書された文字全体に相応して「エイスエンジェル」の一連の称呼と「8番目のエンジェル」の如き観念を生ずるといえる。

他方、引用A商標ないし引用E商標及び引用G商標は、上記のとおりエンジェルと思しき図形と「ANGEL」の組み合わせ若しくは「ANGEL」の文字または該図形のみよりなり、また、引用F商標はエンジェルと思しき図形と「ANGEL RECORDS」の組み合わせからなるが構成文字中「RECORDS」は商品の普通名称を欧文字で表したものであるから、引用各商標はいずれも「エンジェル」(エンジェル、天使)の称呼・観念を生ずる。

そして、本件商標より生ずる「エイスエンジェル」の称呼と引用各商標より生ずる「エンジェル」との称呼とは、語頭部において「エイス」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、称呼上十分聴別し得るものである。

また、本件商標と引用各商標とは、外観上は明らかに相違し、観念上も上記のとおりのものであるから類似するものではない。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、称呼、外観及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。

(2)商標法第4条第1項第10号、同第15号について

本件商標と引用各商標とが、外観、称呼及び観念において類似する商標ではないこと、上記(1)で述べたとおりである。

ところで、近年の産業の発達にはめざましいものがあり、音楽の分野におけるレコードも、今日、そのほとんどが「CD」(コンパクトディスク)、「DVD」(デジタルヴィデオディスク)等に取って替わり、「レコード」が録音媒体の主体であった時代は過去のものになりつつある。

そして、申立人が使用する引用各商標の周知著名性を立証するものとして提出している甲第9号証ないし甲第31号証の「東芝音楽工業株式会社 10年史」「レコード芸術 昭和31年9月号」、「東京新聞 昭和30年8月20日版」、「コード芸術 1994年10月号」等は、主にレコードの製造販売が盛んだった頃のものであり、急激に変化している近年の音楽業界の状況を適格に反映したものとは言い得ないものである。

したがって、提出されている証拠だけでは、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用各商標が申立人の商品に係る商標として、需要者間に周知著名であったものとは認め難い。

上記事項を併せ考えれば、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者・需要者がこれより申立人の引用各商標を連想・想起し、その商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと認められる。

(3)結論

したがって,本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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