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Trademark Appeal Case

周知商標と称呼の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35342(T2001−35342/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4017837号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4017837号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年9月14日に登録出願、「ケロリン」の片仮名文字を縦書きしてなり、第33類「清酒」を指定商品として、同9年6月27日に設定登録されたものであるが、その後、平成13年11月21日付け審決によりその登録は取り消され、同14年1月4日に審決の確定登録がなされ、その商標権の抹消登録が同14年2月6日になされたものである。

第2 請求人が引用する商標は、以下のとおりである。

(1)登録商標

ア.登録第237343号商標は、「マルナケロリン」の片仮名文字を縦書きしてなり、昭和6年10月27日登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同7年10月15日に設定登録されたものである。

イ.登録第394746号商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和14年7月22日登録出願、第1類「頭痛歯痛薬(散薬、粉末薬)」を指定商品として、同25年12月12日に設定登録されたものである。

ウ.登録第460267号商標は、「ケロリン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和23年6月21日登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同30年2月15日に設定登録されたものである。

エ.登録第678590号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和29年6月7日登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同40年6月17日に設定登録されたものである。

オ.登録第723099号商標は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和33年7月7日登録出願、第1類「歯痛、神経痛、頭痛用の散薬」を指定商品として、同41年10月14日に設定登録されたものである。

カ.登録第1475219号商標は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、昭和51年11月12日登録出願、第1類「解熱鎮痛剤(散剤)」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録されたものである。

上記ア.ないしカ.の登録商標をまとめて、以下「引用登録商標」という。

(2)使用商標(甲第3号証ないし甲第8号証)

ア.昭和5年当時の広告に掲載された商標

イ.昭和45年から現在使用中の「ケロリン」商標

ウ.昭和63年から現在使用中の「新ケロリンE錠」

エ.昭和63年から現在使用中の「ケロリンIBカプレット」

オ.平成9年から現在使用中の「ケロリン鼻炎カプセル」

カ.平成9年から現在使用中の「ケロリン総合感冒薬」

上記ア.ないしカ.の使用商標をまとめて、以下「引用使用商標」という。

「引用登録商標」と「引用使用商標」をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番含む)を提出した。

1.本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当し、その登録は無効とされるべきである。

2.引用商標について

(1)引用登録商標は、一部「ンリロケ」を要部とする右書きのものも存するが、いずれも「ケロリン」の称呼を生ずる片仮名文字を要部として共通する商標である。

そして、引用登録商標は大正時代末期から使用され、時代の変遷により、薬袋、又は、薬箱のデザインが若干変化したとしても、その同一性は、特許庁でさえ更新登録の使用における同一性の証明書の例示において、社会通念上同一と認める例として10年間以上も掲載・使用していた(甲第9号証)範囲の変化でしかなく、永年継続して使用してきた商標である。

いずれにせよ、引用登録商標は、全て「ケロリン」の称呼を共通にする商標である。

(2)引用使用商標について

引用使用商標は、昭和5年当時の広告に掲載された商標(甲第3号証)を除き、現在使用中の商標「ケロリン」、「新ケロリンE錠」、「ケロリンIBカプレット」、「ケロリン鼻炎カプセル」、「ケロリン総合感冒薬」(甲第4号証ないし甲第8号証)を用いている。

これらの薬品は、薬効に若干の差異を有しているものの、「解熱鎮痛剤」を中心として、全て「薬品」の商標として現実に使用されているものであり、かつ、本件商標の出願日より早く使用開始されており、全て「ケロリン」の要部を同一とするものである。

3.引用商標の周知・著名性について

(1)その使用開始は、1925年ころの約80年前に遡る。

(2)この約80年の間、ほぼ、10年程度を置いて、特許庁・裁判所における審査、審判、訴訟等で周知・著名であることが再三にわたり確認され、平成3年にもその事実が認められている(甲第10号証ないし甲第17号証)。

(3)広告宣伝は、テレビも使用しているものの、ラジオを中心に現在まで30年継続のもの・40年継続のもの・50年継続と長期にわたり、継続してCMを行っているところであり、最近の方が継続を維持している関係上多く取り扱われているもので、これが減少しているものではない(甲第18号証ないし甲第26号証)。

(4)交通車両・駅における広告は、東京モノレール全車両の30年継続や、20年継続する西鉄バスの後部板看板、大阪地下鉄の全吊革や、30年以上にわたる大阪地下鉄の主要7駅の階段ステップ下広告に至っては、関西に居住する者だけでなく、関西を訪ねたことのある者(30年間も行われているため、国民の過半が必ず目に触れているものと考えられる。)にとっても大阪の一風情として認識され、現在も続く「ケロリン」を記憶に残す奇抜な宣伝方法といえるものである(甲第28号証及び甲第37号証)。

(5)「ケロリン」の広告に関し、最大の地味な、そして最も費用を費やしている宣伝方法がコマーシャル入り「湯桶」の配置である。40年近く行っているこの「湯桶」の配置は、2、3個配置した民宿から、100個以上配置した大温泉旅館に至るまで、15,000軒近い施設に配置し、全国民の目に触れているといっても過言ではない程親しまれており、温泉風景の一つとなっているところで、かつ、耐久性に富むためその宣伝の効用は現在も続いている。

また、同じくコマーシャル入りの「バスタオル」、「バスマット」も使用されており、商品としても購入されている状況である(甲第39号証及び甲第43号証)。

(6)東京タワーのチケット裏面広告も35年以上に及び、この間の入場者を考慮したら極めて膨大な人数であり、記念にファイルする者を考慮すると、都会的華美な発想と異なり、多くの人々の脳裏に自然に溶け込む宣伝方法をとっているところである(甲第41号証及び甲第42号証)。

(7)上記以外の、テレビ、新聞、雑誌、看板等の広告手段も、通常をいかに考えるか基準にもよるが、それぞれ行っているところであり、これが減少していることはなく、逆に、継続により増加しているところであって、周知・著名状況が減退したとは全く考えられないところである。

(8)「ケロリン」の取扱い店舗数も、他の薬品に比べ明確な系列にないことから、極めて多くの店舗で取り扱われており、「配置販売」により各家庭に取り揃えられている現状からも、他の薬品に比べより著名となっていることを自負するところである(甲第49号証及び甲第50号証)。

(9)インターネットにおけるヒット件数をみても、他のそれぞれ著名と考えられる「ビオフェルミン」、「ボラギノール」等よりも話題性に富んでおり、「コーラック」、「パンシロン」、「サクロン」、「トクホン」等の倍を超えるヒット件数となっている(甲第57号証及び甲第58号証)。

したがって、これらの薬品でさえ、多くの人々に広く認識されている事実を考慮すると、引用登録商標「ケロリン」はこれを上回る著名性を獲得しているといっても過言ではないものと考えられる。

つまり、本件は、「ケロリン」に換え、「パンシロン」、「サクロン」、「トクホン」と名乗った場合より以上の、「悪意」さえ感じられる採択といわざるを得ないところである。

4.出所の混同について

特許庁は、商標法第4条第1項第15号の審査基準に、「その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について誤認するおそれがあ場合」のみならず、「その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について誤認するおそれがある場合」をもいう、と記載し、いわゆる「広義の混同」を含めて基準として発表している。

(1)周知性

引用商標の周知性に関しては、上記したとおりである。

(2)創造性

「ケロリン」の語は、頭痛・歯痛が「ケロリと治る」の意味合いの「ケロリ」に「ン」を付加した「造語」として採択したもので、請求人の商標「ケロリン」と認識される以外、他に全く意味合いを見出すことができない「造語」でしかない。

「造語」なるが故、その識別力は極めて強く、これを模倣・盗用、又は、フリーライドしたものと考える以外、被請求人の該商標の採択理由は見出し難いところである。

(3)ハウスマーク性

請求人にとって、「ケロリン」は、請求人の商号と直接一致するものではないとしても、「ハウスマーク」同様に使用する請求人を代表する基幹商品の商標であり、請求人自体を代表する商標である。

(4)多角経営・商品「薬品」と商品「清酒」との関連性

請求人は、「内外オーバーシーズ株式会社」(東京都千代田区四番町6所在)を子会社として有しており、同社は、食品輸入及び健康食品の販売をも行ない、飲食品との関連も既に業務として行っているところである。

また、「明治製菓株式会社」や「サントリー株式会社」等のように、「医薬部門」、「飲食品部門」、「レストラン部門」を現に行っている企業は現実に多く存するところで、人間の「栄養」を中心とした極めて密接な分野である。

特に、バイオ技術の発展により、今後これらの結びつきはより多くなること明らかであって、他の「機械」、「繊維」、「役務」等と比べると、極めて緊密な分野であり、「薬用酒」なる酒の存在等からも、両経営を同一人が行うことに何ら不自然さが見受けられない分野である。

(5)本件商標との関係

本件商標は、前記の如く、平成7年9月14日の出願に係り、設定登録は、平成9年6月27日である。

引用商標の周知・著名性は、本件商標の「出願時」や「設定登録時」の時期を問わず、継続されていたこと明白であり、第4条第3項の関連も十分に満足される状況となっている。

(6)他人の著名商標を一部に有する商標

特に、「他人の著名商標を一部に有する商標」の取扱いについては、厳しく解釈する旨の審査基準の見直しが近年行われたばかりである。

本件においては、該審査基準にいう「有する」を超え、明らかに「そのものずばり」であり、そのまま同基準に該当するものでしかない。

(7)不正使用の意図について

本件商標「ケロリン」は、他に意味合いが考えられない「造語」商標であることより、請求人の著名商標「ケロリン」を盗用し、その著名性に便乗しようと意図して採択したものと考えらるのが自然である。

特に、被請求人のごとき「酒造株式会社」は、若年者のみが経営するベンチャー企業と異なり、相当の年限を経た企業と考えられ、このような商標の採択が、若年者のみの判断で行われたものとは考え難いところである。

そこにおいて、「ケロリン」の約80年続いた著名性は、特に、年配者には当然熟知されている筈の名称であり、請求人の「出所表示機能の稀釈化」を招くことを十分認識してこれを採択したこと明らかと言わざるを得ず、必然的な意図が明白な、「不正の目的」を有するものと断ぜざるを得ない。

5.したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効とされるべきである。

第4.被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

第5.当審の判断

1.甲各号証及び請求の理由を総合すれば、「ケロリン」の文字を要部とする引用商標は、請求人の業務に係る商品「解熱鎮痛剤」の商標として80年間にわたり使用されてきたこと、ラジオ、テレビ、車内広告、新聞、雑誌その他の広告媒体を通じて継続して宣伝、広告してきたこと、該「ケロリン」の語は、「ケロリと治る」の意味合いの「ケロリ」に「ン」を付加した請求人の創作による造語であって、「解熱鎮痛剤」の商標として語呂よく記憶に残りやすい商標であることなどが認められ、その結果、引用商標は、請求人の業務に係る商品「解熱鎮痛剤」を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、取引者及び需要者の間に広く認識されていたと認め得るところであり、その著名性は本件商標の登録査定時のおいても継続していたものといえる。

2.本件商標は、前記したとおり、「ケロリン」の片仮名文字を縦書きしてなり、「清酒」を指定商品とするものである。

してみると、本件商標と引用商標とは、いずれも片仮名文字の「ケロリン」よりなるものであり、したがって、「ケロリン」の称呼を共通にするものである。

そして、前記したとおり、「ケロリン」は、請求人の取扱いに係る「解熱鎮痛剤」の商標として、語呂の良さ故に記憶に止めやすく、かつ、著名であること、及び企業の多角経営、子会社などによる異種商品分野への商品展開などが普通に行われている商取引の実情などを併せて考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用する場合は、その商品が請求人若しくは請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当である。

3.以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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