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Trademark Appeal Case

周知商標「Linux」の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35313(T2000−35313/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4346339号の指定商品中「印刷物」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4346339号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成11年3月12日に登録出願され、「リナックス」の文字と「Linux」の文字とを二段に横書きしてなり、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,印刷物,書画,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,観賞魚用水槽及びその付属品,衛生手ふき,型紙,紙製タオル,紙製テーブルクロス,紙製手ふき,紙製テーブルナプキン,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,荷札,紙製ブラインド,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,事務用電動式ホッチキス,製図用具,文書裁断機,印字用インクリボン,写真,写真立て」を指定商品として、同11年12月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至同第24号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)請求の理由

(a)本件商標を構成する「Linux」の文字は、コンピュータのOSの商標として周知、著名なものであり、該商標を書籍の題号として用いるときは、単にその書籍の内容を表示するにすぎないものであり、書籍以外の「印刷物、写真」等に使用するときには、あたかも「Linux(リナックス)」に関する事柄を内容とする商品であるかの如くその商品の品質につき誤認を生じるおそれがあるものである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

(b)本件商標は、リーナス・トーバルズが開発し、無償公開されたOSの周知、著名な商標である「Linux」及びその日本語の読みである「リナックス」の文字よりなるものであるから、これを本件商標の指定商品に使用した場合には、あたかも「Linux(リナックス)」と何らかの関係を有する商品であるかの如く、その商品の出所につき誤認、混同を生じさせるおそれがある。

また、被請求人は、本件商標の異議申立期間を過ぎる頃合いを見計らったかの如く請求人に対し、請求人が「Linux Magazine/Linuxマガジン」を発行することにつき話し合いを持ちたいとの申し入れをしてきており、被請求人による本件商標の採択及びその採択の意図には不正競争の目的があることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当する。

(2)答弁に対する弁駁

被請求人の答弁は、要点が何処にあるのか定かではないが、次の点について反論する。

被請求人は、「Linux」の発音が正しくは「リナックス」ではないと主張しているが、外国人や一部当業者がどのように発音しようと、我が国における取引者・需要者の大部分は「リナックス」と発音していることは、甲第5号証などによる証明によらずとも、特許庁において明白な事実であり、そもそも「Linux」の欧文字部分を含むが故に各条項に該当するのであり、発音云々は関係ない。

また、「Linux」は、本件商標出願時には一般には馴染みのない業界用語であったと主張しているが、そうであったとしても、既に当業者にはよく知られていた語であり、被請求人の主張は失当である。

なお、請求人としては、被請求人と話し合う意思は全くないことを明確にしておく。

3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第9号証(枝番を含む。)を提出した。

一部のコンピューター業界で話題を集めている「Linux」の正式発音は、甲15号証の紹介雑誌「UNIX MAGAZINE」149頁の「Linuxの紹介」にあるように「第一音節にアクセントがあり、LIHーnucksのように発音します。」と書かれており、これを日本語発音で表記すると「リーヌックス」となる。

また、本件商標出願後に設立された日本Linux協会の定款には日本リヌックス協会と日本語表記されている(乙第2号証)

そして、請求人添付の甲13号証の雑誌「LINUX JAPAN」のルビに「リナックスジャパン」と付されているが、「Linux」と「LINUX JAPAN」で異なっており、誤認混同のおそれはなく、商標法第4条第1項第15号、第4条第1項第16号には該当しない。

被請求人は、それぞれが有限会社ビジュ、株式会社ジェイシィトレーディングを経営して、ギフト用品製造販売、生活雑貨を輸入販売しており、ペンギンキャラクターにリナックスという名称をつけて絵本やマンガ雑誌を出版したり(乙第9号証の1)、いろいろなリナックスキャラクター関連商品を製造販売、輸入販売する予定である(乙第9号証の2)。

このことからわかるように、単にリナックスの名称だけの出版物ではなく、コンピューター書籍のLinuxとも異なるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

請求人は、甲21号証のインターネットサーバーの記事を根拠にして、一般に著名で馴染みの深い名称と主張しているが、本件商標出願当時、サーバー業界で「Linux」はサーバー用のコンピューターのOSとして知られていたが、一般人にはまずサーバーとはいかなるものでどういう働きをするのかを説明しないと「Linux」は理解できないくらい一般には馴染みのない業界用語であった。まして、本件商標出願当時は、前記した各Linuxベンダーはサーバー業界向けのソフトしか完成したソフトを持たないコンピューターOSであったので、一般には馴染みが薄い商品といえる。

このことからも不正の目的をもって使用するものではなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

4 当審の判断

請求人の提出に係る甲第2号証(「情報・通信新語辞典」1997年10月9日1版1刷 日経BP社発行)、甲第3号証(「’98−’99年版パソコン用語辞典」平成10年3月1日第9版1刷 株式会社技術評論社発行)、甲第4号証(「’99−’2000年版パソコン用語辞典」平成11年3月10日第10版1刷 株式会社技術評論社発行)、甲第5号証(「現代用語の基礎知識2000年版」2000年1月1日 自由国民社発行、なお、発行日は、本件商標の出願後ではあるが、記事内容は本件商標の出願前の事柄が説明されている。)、甲第11号証(「月刊スーパーアスキー」1992年10月 株式会社アスキー発行)、甲第12号証(「Linux&BSD」平成6年10月4日 株式会社アスキー発行)、甲第13号証(LINUXJAPAN」1996年11月28日 レーザー5出版局発行)、甲第14号証(「日経オープンシステム」1998年2月号 日経BP社発行)、甲第15号証(ユニックス・マガジン」1998年8月号 株式会社アスキー発行)、甲第16号証(「DOS/V/magazine」平成10年9月1日 ソフトバンク株式会社出版事業部発行)、甲第17号証(「日経コンピュータ」1998年9月14日号 日経BP社発行)、甲第18号証(「日経マーケット・アクセスレポート」1998年10月号 日経BP社発行)、甲第19号証(「日経ウォッチャー」1998年10月30日号 日経BP社発行)、甲第20号証(「オープンデザイン/OPENDESIGN」1998年12月1日 CQ出版株式会社発行)、甲第21号証(「INTERNET/magazine」1999年1月1日 インプレス社発行)、甲第22号証(「日経バイト」1999年1月22日 日経BP社発行)及び甲第23号証(「月刊アスキー」平成11年3月1日 株式会社アスキー発行)によれば、「Linux(リナックス)」は、コンピューターを有効に利用するためのオペレーティングシステム(OS)であり、1991年に、フィンランド・ヘルシンキ大学の学生であったリ一ナス・トーバルズ(Linus B.Torvalds)によって開発されたものであること、主に複数のパソコンなどをネットワーク化する際のサーバー用のOSとして使用されているものであること、有料でサポート付きのパッケージ販売がされているばかりでなく、ネット上でプログラムが公開されているため、世界中の技術者らにより自発的に改良が重ねられた結果、動作の安定性などで高い性能を持つOSであること、また、アメリカでは、98年9月、世界最大の半導体メーカーであるインテルがリナックス関連ソフトを販売する「レッド・ハット・ソフトウェア」に資本参加したほか、IBM、ヒューレット・パッカード、デルコンピュータなどが相次いで参加を表明し、急速に注目を集めたものであること(主に甲第5号証)、我が国においても、Linuxで使える日本語対応のリレーショナル・データベース(RDB)ソフト、ワープロソフト、オフィス・スイート等が相次いで登場し、大塚商会、富士通ビジネスシステム、亜土電子工業といった大手ベンダーも新たにLinuxビジネスに参入したこと、Linuxは、バージョン1.0が公開された94年以降、爆発的にユーザーが増え続けており、Windows95、Windows98といったマイクロソフト製品を別にすれば、現在、世界中でシェアを伸ばしている唯一のOSであること(主に甲第17号証)を認めることができる。

以上の事実に照らしてみれば、「Linux」は、リ一ナス・トーバルズにより開発されたコンピューターのOSを表示するものとして、本件商標の登録出願当時、すでに我が国を含む世界各国のこの種業界における取引者・需要者間において周知・著名な商標となっていたものであることを認めることができる。

しかして、本件商標は、前記のとおり、「Linux」の欧文字と「リナックス」の片仮名文字を二段に横書きしてなるところ、この欧文字の綴りは、周知、著名な商標である「Linux」と同じ綴字からなるものであり、「リナックス」の片仮名文字は、その読みを表したものと認められるものである。そして、「Linux」の語は、特定の意味合いを有する既成語を表したものではなく、リ一ナス・トーバルズの創造語(造語)と認められるものであり、しかも、コンピューターソフトには各種の解説書が発行されることも多く、本件商標の指定商品中に含まれている印刷物とは密接な関連性を有するものといえる。

この点について、被請求人の主張は必ずしも明確ではないが、「Linux」の語は、その正式の発音を表記すると「リーヌックス」となること、「Linux」のOSは、一般には馴染みの薄い商品であることを挙げて反論している。

しかしながら、欧文字からなる用語を日本語表記する場合、必ずしも英語の発音を忠実に表記するというものではなく、読みやすい日本語表記をもって表されることが多いのが実情であり、「Linux」の語についても、例えば、現代用語の基礎知識(甲第5号証)において「リナックス」の読みをもって表記されていることからすれば、本件商標構成中の「リナックス」の

文字は、「Linux」の読みを表したものとみるのが相当である。また、近年におけるパソコンの急速な普及に鑑みれば、コンピューターに関心を持つ需要者層も急速に拡大しているものと推認されるところであり、「Linux」のOSは、上記のとおり、コンピューターに関わる取引者・需要者間において周知・著名な商標となっていたものと認められるものである。

してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品中の「印刷物」について使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、前記した実情よりして、取引者・需要者の間に広く認識されている「Linux」を想起し、該商品がリ一ナス・トーバルズの業務に係る商品又はリ一ナス・トーバルズと組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

しかしながら、本件商標の指定商品中の「印刷物」以外の指定商品については、コンピューターのOSとは、生産部門、販売部門、需要者、用途等を全く異する異種、別個のものであるから、これらの商品について本件商標を使用しても、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。

また、請求人は、本件商標は商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第19号にも該当する旨主張しているが、請求人の提出に係る証拠をもってしては、指定商品中の「印刷物」以外の商品について、その商品の品質を表すものとは認められず、又、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとも認められないから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しないものであり、不正の目的をもって使用するものと認めるに足る証拠も提出されていないから、同第19号にも該当しないものである。

5 むすび

したがって、本件商標は、その指定商品中の「印刷物」について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、請求に係るその余の指定商品については、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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