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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と差異音

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35599(T2000−35599/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3086047号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成4年8月4日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,香料類,化粧品」を指定商品として、平成7年10月31日に設定登録がされたものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1258399号商標(以下「引用A商標」という。)は、「オリリー」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和47年12月12日に登録出願、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、昭和52年3月14日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく、登録第1437818号商標(以下「引用B商標」という。)は、「O’LEARY」の欧文字を横書きしてなり、昭和51年7月9日に登録出願、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、昭和55年9月29日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標は、その全指定商品についての登録を無効とする。審判の費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第77号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標と引用A商標及び引用B商標の類否判断

そこで本件商標と引用A商標及び引用B商標との類否を検討すると、先ず外観について、本件商標と引用A商標とは欧文字と片仮名文字の差異があり、引用B商標とは同じ欧文字からなるがその書体及び構成文字が異なるため、両商標には差異が認められる。

次に観念について、本件商標は特定の意味を認識し難く一種の造語と考えられるため、本件商標と引用A商標、引用B商標とは、その観念を比較することができないものである。

しかるに称呼についてみると、以下のとおり両商標が類似するものであることは明らかである。

すなわち、本件商標を構成する欧文字「oilily」は、特定の読みをもって親しまれた外国語を表したものではなく、上記のとおり一種の造語と考えられるから、英語の一般的な発音法則からすると、その構成文字に相応して「オイリリー」の称呼のみが生じると考えるのが自然である。

これは、特許庁の商標出願・登録情報における称呼の欄において「オイリリー」とのみあることからも(甲第1号証の1)容易に裏付けることが可能である。

一方、引用A商標は、文宇とおり「オリリー」とのみ称呼されるものであり、また引用B商標は、その構成文字「O’LEARY」に相応して「オリリー」の他、「オーリリー」、「オリアリー」や「オレアリー」の称呼も生じる可能性はある(甲第3号証の1参照)。

しかるに、引用B商標が引用A商標「オリリー」の連合商標として登録されている事実(甲第3号証の2)、及び「O’LEARY」なる表示が後述するとおり商品「化粧品」等の商標として、この種商品の取扱者や需要者に「オリリー」の呼び名で広く知られている状況からすれば、引用B商標もまた「オリリー」とのみ称呼されるものと思料する。

そこで、本件商標の「オイリリー」と引用A商標及び引用B商標の「オリリー」の両称呼を比較すると、両者は称呼における識別上重要な要素を占める語頭音の「オ」と後半部の「リリー」の2音を共通にし、異なるのはわずかに第2音の「イ」の有無に過ぎないのである。

しかして「イ」の音は、比較的弱く称呼され易い中間に位置するばかりでなく、語頭音「オ」に続いて称呼されるため語頭音「オ」(o)と第2音「イ」(i)とで二重母音を形成し、そうすると第2音の「イ」は語頭の「オ」に吸収されて微弱に称呼されるに過ぎないものといわざるを得ない。

してみれば、上記第2音の「イ」の有無は、両称呼全体に及ぼす影響は極めて少なく、両商標を一連に称呼するときはその語調、語感が近似したものとなり、両称呼は互いに聞き誤まらしめるおそれが十分にあるものと考えるのが相当である。

よって、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、称呼において類似する商標であることは明らかである。

上記の称呼の類否判断は、主として差異音の分析的考察に基づき結論付けたものであるが、特許庁商標課編「商標審査基準」に示される「時と所を異にして、両商標が称呼され、聴覚されるときに聴者に与える称呼の全体的印象から、互いに相紛れるおそれがあるか否かによって判断されるべきもの」との手法も加味すれば、より一層、両商標が称呼上類似するものであることは明白である。

すなわち、引用A商標「オリリー」及び引用B商標「O’LEARY」が、後述するとおりこの種化粧品の主要な需要者である美容師等の業界においては、化粧品の周知著名な商標として広く認識され、これら商標から生じる称呼「オリリー」も広く浸透している状況にあるのである。

このような状況の下、本件商標が一連に「オイリリー」と称呼され聴覚されるときには、聴者が4音中、3音を占める「オ」「リ」「リー」の音を周知著名な引用各商標の称呼「オリリー」に結び付けて認識する可能性が非常に高いといえるのである。

そうであるなら、この種化粧品を扱う需要者や取扱者にとって、本件商標は単なる造語としての印象で「オリリー」と称呼するというより、むしろ引用各商標の称呼「オリリー」の如くの印象を持ちつつ称呼すると考えるのが自然であるから、両商標の差異音「イ」が微弱に称呼されることと相挨って、より一層、本件商標の称呼「オイリリー」と引用各商標の称呼「オリリー」とが相紛れるものであることは疑う余地はないのである。

イ 審判例の参酌

上記の主張が正当であることは、特許庁における多数の審判例から極めて容易に裏付けることが可能である。

すなわち、甲第4号証ないし甲第17号証の各審判でなされた審判官の判断は、本件の場合と同様に対比する商標の差異が、「イ」の音の有無であり、しかもこの音が第2音若しくは中間音に位置する場合のもので、かかる差異音「イ」が称呼上、与える影響が小さいと評価し、何れも両商標を類似するものと結論付けているのである。

以上のとおりであるから、本件の場合においても上記審判と同様に両商標の差異音「イ」の有無は、商標の類否判断では極めて低く評価すべきものであり、仮に本件商標と引用A商標及び引用B商標とが非類似であると判断されるなら、これは明らかに上記の判断とは矛盾する失当なものといえ、審査の統一の見地からも両商標が互いに類似するものであることは明らかである。

ウ 結論

以上により本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、称呼において類似する商標であることは明らかであり、かつ、その指定商品を同一とするものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

本件商標を、その指定商品に使用した場合、請求人たるオリリー株式会社又はそれに関連のあるものの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるから商標法第4条第1項第15号に該当する。

ア 引用A商標及び引用B商標の周知著名性について

請求人(オリリー株式会社)は、昭和35年(1960年)米国リディアオリリー社との技術提携により、ジャパンオリリー(株)として設立し、「カバーマーク」のファンデーションを主力に東京、大阪の美容院ルートを開拓し、皮膚変色のカバー技術を特徴とする「カバーマーク」のブランドの他、昭和54年(1979年)にヘアケアブランド「ローター」、昭和58年(1983年)にフェイシャルエステティックブランド「クレアージュ」を投入するが、平成3年(1991年)にブランドの総合化を図り、「オリリー」ブランドに一本化し、現在に至った経緯がある(甲第18号証参照)。

そして、上記甲第18号証の株式会社富士経済作成の「’92業務用化粧品市場の戦略分析」によれば、1983年〜1988年の間における美容院市場では、「ロレアル、ウエラジャパン、オリリーの3社が全体の3割以上を占めており、各社共100億円/年の売上高」を誇り、また1989年〜1991年の間では「最近3年を見るとロレアル、オリリー、ウエラジャパンの順で上位3社の位置付けには変化はない」との解説があるように、本件商標の出願時の平成4年(1992年)以前に既に、請求人はこの種美容院市場では、化粧品のトップメーカとして高い評価を獲得していたのである。

このように請求人は、全国の美容院ルートで自社化粧品の販路を拡大する企業戦略をとっており、請求人と取引関係にある美容院は全国で実に「1万2千店」を数え、その結果、業務用化粧品のマーケットシェアでは、本件商標の出願当時の平成4年(1992年)における販売実績として、約126億円を記録し、そのマーケットシェアは7.8%も占めている事実がある(甲第18号証参照)。

また、最近の化粧品の販売実績として、甲第19号証の「業務用化粧品市場の戦略分析/2000年版」によれば、業務用化粧品のマーケットシェアでは、平成12年(2000年)における販売実績として、70億5千万円を記録し、そのマーケットシェアは5.2%を占めるに至っているのである。

上記のような美容院ルートを通じた販売では、特に全国各地の美容院との密接な関係を維持するのが企業の生命線であり、これら美容院に対して新商品等の情報を提供すべく、請求人は、設立当初の昭和40年(1965年)5月より月一回「companion」なる情報紙を発行しており、請求人はその一例を示すべく、本件商標の出願前の平成3年(1991年)9月号から平成5年(1993年)1月号の上記情報紙の写を甲第20号証ないし甲第32号証として提出する。

上記の情報紙には、引用A商標の「オリリー」を表示すると共に引用B商標の「O’LEARY」を付した化粧品の写真を掲載して宣伝広告活動に努めている事実がある。

また請求人は、上記のような美容院に対する自社製品の宣伝広告のみならず、広く一般消費者をも対象として特に女性に人気のある全国的な雑誌に定期的に商品の宣伝広告記事を掲載している事実がある。その一例をあげれば、甲第33号証ないし甲第67号証のとおりである。

さらに請求人は、上記のような情報紙や雑誌における宣伝広告活動とは別個に、全国の美容院との関係を強化すべく美容師の技術と感性を競い合う場として全国規模のコンテストを主催しており、このような活動を通じても請求人の「オリリー」なる名称がこの種業界の人々に対して広く親しまれ、同時にこれと称呼を同じくする引用A商標及び引用B商標も請求人の商標として広く知られるに至ったものといえるのである。

請求人が上記コンテストを、主催者として開催した事実は、甲第68号証ないし甲第74号証の各種雑誌の掲載記事により裏付けることが可能である。

以上のとおり請求人は、昭和35年(1960年)の設立以降、平成3年(1991年)にブランドを「オリリー」に一元化して現在に至るまで、化粧品メーカーとして並々ならぬ宣伝広告活動を行なっている事実がある。

同時に請求人の販路戦略として、特に美容院に対して各種のコンテストや情報紙を通じて太いパイプを持ちつつ、上記引用各商標を付した化粧品を本件商標の出願前から現在に至るまで毎年、100億円前後の規模で販売してきたのである。

そうであるなら、この種化粧品の取扱者及び需要者の間では、引用A商標及び引用B商標は広く親しまれているものといえ、「オリリー」といえば、もはや請求人のブランドを指称するものとして広く認識されるに至ったものと考えるのが相当である。

イ 出所混同の可能性

以上のとおり請求人たるオリリー株式会社は、上記提出した各甲号証によって引用A商標「オリリー」及び引用B商標「O’LEARY」が、商品「化粧品」について本件商標の出願前の平成4年(1992年)8月4日以前から取引者、需要者の間で広く認識されるに至ったものと認めるのが相当である。

他方、本件商標は、引用各商標との関係では称呼において第2音の「イ」の有無しか異なるところがなく、極めて称呼上近似したものと認められ、しかもその指定商品中、「せっけん類、歯磨き、香料類」は、本来的に請求人の主要な取引先である美容院においても使用されている商品である。

そうであるなら、本件商標をその各指定商品に使用した場合には、かかる商品が請求人の商品あるいは請求人と何らかの関連がある者による商品と誤認混同をされるおそれがあることは明白である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、その全指定商品につき商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は答弁書(平成13年11月14日付)において、本件商標「oilily」が周知であるからこれをその指定商品に使用しても、引用A、B商標との関係で商品の出所につき誤認混同を生じるものではなく、したがって両商標は類似しないと主張する。

そもそも商標の類否は、対比される両商標が実際に「同一または類似の商品に」使用された場合に商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、商標の周知性により誤認混同の有無を判断する際にも、その周知性はあくまでも商品との関係で考慮すべきものであり、この点については被請求人も「本件商標は、子供服......のブランド(商標)として日本国内及び海外でよく知られているという事実も参酌すべきである」と主張するとおりである。

しかるに、被請求人が本件商標の周知性の裏付けとして提出した乙第2号証ないし乙第8号証は、いずれも被請求人の商標「Oilily」「オイリリー」が商品「子供服」の商標として使用されている事実を示すものばかりであり、さらに乙第9号証は、日本国内ではなく欧米諸国の「Oilily」の店での販売を示すものであって、結局、本件商標が指定商品「化粧品」等について我が国で使用されていることを示すものは一切ないのである。

そして、本件商標が「化粧品」について国内で全く使用されていないことは、被請求人目身「日本国内では......「Oilily」の化粧品の販売がされていなかった。」(第6頁第22ないし24行)と認めていることからも明らかであり、加えて本件商標については、商標法第50条の規定によるいわゆる不使用取消審判が請求されたのに対し、被請求人が一切答弁しないまま登録取消の審決(甲第75号証)がなされた事実があり、このことは、まさに本件商標が指定商品のいずれについても全く使用されていない事実を示すものにほかならないのである。

そうすると、商標の周知性は冒頭で述べたとおり、あくまでも指定商品との関係で考慮すべきところ、被請求人の主張は指定商品「化粧品」等について本件商標を全く使用していないにもかかわらず、「化粧品」とは非類似の関係にある「子供服」等の商標として周知であることのみをもって、引用A、B商標とは類似しないとするものであって、これは上記した本来の商標の類否判断手法を無視したもので、本末転倒な主張といわざるをえない。

むしろ、商品との関係で商標の周知性を考慮するならば、この種化粧品業界において「オリリー」及び「0’LEARY」が請求人の「化粧品」の商標として広く知られている状況にある点を重視すべきであり、そうとすれば本件商標は「オイリリー」なる称呼が「イ」音が微弱であることと相俟って、引用各商標の「オリリー」なる称呼に結びつけて認識され、称呼において相紛らわしいものであることは、疑う余地はないのである。

(2)また、被請求人は、本件商標から生じる称呼「オイリリー」と引用A、B商標から生じる称呼「オリリー」とは、第2音「イ」の有無が称呼全体に及ぼす影響が非常に大きく、両称呼は語調・語感が異なるので称呼において類似するものではないと主張する。

しかるに、称呼「オイリリー」の「オ」も「イ」も共にア行に属する母音である以上その音質について大きく異なるところはなく、また第2音「イ」が語頭の「オ」音に吸収されてしまう程度の微弱な音として称呼されることは、本件商標のように、語頭において母音「オ」の後に「イ」音が続く比較的音数の短い英語の発音方法をみても明らかである。

すなわち、例えば「Oilily」の語頭部分の「oil」や語頭・語尾を結びつけた「Oily」なる語が我が国でも広く一般に知られており、また「Oi」の部分が「オイ」と発音されることが周知であることは、被請求人も認めるところであるが(第3頁第6行目ないし13行目)、これらはいずれも、語頭の「オ」音のみを強く発音し、「オ」音と「イ」音を共に強く発音するものではないことは、甲第76号証の「新英和大辞典」(研究社)に記載の発音記号からも明らかである。

またこのほかにも、語頭の「オ」音のみを強く発音するものとしては「oyster」「boil」「coil」「coin」「foil」等枚挙にいとまがなく、さらに我が国でも外来語である「オイル」「オイスター」「コイル」「コイン」「ホイル」等の語を発音する際には、「オ」音のみを強く発音し、次の「イ」音を弱く発音するのが普通であり、このことは甲第77号証の「日本語発音アクセント辞典」(NHK編)においても示されるとおりである。

そうすると本件商標を「オイリリー」とごく自然に称呼した場合には、上記多数の語と同様に語頭の「オ」音のみを強く発音するものといえ、その結果、第2音の「イ」音は直前の「オ」音の勢いに吸収され、微弱なものとならざるをえないのであって、これが日本語の「生い立ち」(オイタチ)や「負い目」(オイメ)(上記発音アクセント辞典の第99頁参照)等を称呼した場合のような、語頭の「オイ」がいずれも強く明瞭に発音されるものと同様でないことは明白である。

したがって、「イ」音の有無が称呼全体に及ぼす影響が非常に大きいとして、本件商標と引用A、B商標とが称呼において類似しないとする被請求人の主張は、何ら根拠のない失当な主張であるといわざるをえない。

(3)以上より、本件商標が引用A、B商標のいずれにも類似しないとする被請求人の主張については、本件商標を指定商品「化粧品」等に全く使用していないにもかかわらず、これとは非類似の商品「子供服」との関係での周知性を根拠にしている点、及び、その称呼「オイリリー」が、「oil」「oily」等の発音方法と同様に「イ」音が微弱であり目立たないにもかかわらず、「イ」音の有無の差異により引用商標の「オリリー」と聴別しうるとした点で、何ら根拠のないものといえ、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張を何ら覆すものではない。

(4)また、被請求人は、請求人の「化粧品」の販売ルートが、百貨店のブティックにおける販売を主として行う被請求人の販路とは明らかに異なっていることを理由に、引用A商標及び引用B商標と本件商標が相紛れるおそれがないと主張するが、被請求人が国内で一切販売等行っていない化粧品について、販売ルートを限定すること自体が何ら根拠のないこじつけといわざるをえない。

むしろ、引用商標「オリリー」及び「0’LEARY」が請求人の「化粧品」の商標として広く認識されている状況のもとでは、これらの引用商標に類似する本件商標を「化粧品」等の商品に付して百貨店で販売すれば、これを見た需要者は請求人の化粧品が百貨店に進出したと認識し、請求人の取り扱いに係る化粧品であると誤認することは十分ありうるのである。

したがって、本件商標をその指定商品「化粧品」等に使用しても請求人の取り扱いに係る化粧品と誤認されるおそれがないとする被請求人の主張は、何ら客観的な根拠に基づくものではなく到底認められるものではない。

なお、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないと判断すべき理由として、被請求人は3件の判決例を列挙するが、これらはあくまでも、対比する商標が外観・称呼・観念の点から非類似の商標であることを前提とするものであり、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは既に述べたとおり、称呼において相紛らわしい類似の商標であることが明らかである以上、前提が異なる上記判決例を本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない根拠とすることは妥当ではない。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由の概略次のように述べ、証拠方法として乙1第号証ないし乙9第号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

請求人は、引用A商標及び引用B商標を引用して、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して 登録されたものであることを主張している。

ア 請求人は、本件商標と引用A、B商標は観念・外観においては類似しないと主張しているが、この点を被請求人は認める。

次に請求人は、本件商標から「オイリリー」の称呼が、引用A、B商標から「オリリー」の称呼が生じると主張しており、この点を被請求人は認める。

しかし被請求人は、称呼「オイリリー」と称呼「オリリー」が類似するとの請求人の主張を、否認する。

イ 称呼「オイリリー」と称呼「オリリー」を比較すると、第2音「イ」の有無において差異がある。「オイリリー」の第1音「オ」は、母音「ア」と「ウ」の中間に位置する音で、口を丸い形にあげて発音される。これに対して第2音「イ」は、唇の両端を横に広げて発音されるもので、「オ」とは発音方法が異なり、音質も異なる。しかも「オイリリー」を称呼する場合、語頭の「オ」と「イ」は同じ強さで発音され、第3音以下の「リリー」が弱く発音される。「オイリリー」の第2音「イ」が第1音の「オ」に吸収されて微弱に称呼されることは、断じてない。「オイリリー」は5音、「オリリー」は4音の短い音構成である。短い音構成において、強く発音される語頭第2音における「イ」の有無が、称呼全体に与える影響は大きい。

その上、「オイリリー」は第2音に「イ」があるため、「オイ・リリー」と2音節に分かれ、「イ」も明瞭に発音されるのに対して、「オリリー」は一気に称呼される。

したがって、第2音「イ」の有無が称呼全体に及ぼす影響は非常に大きく、「オイリリー」と「オリリー」を一連に称呼すると、語感、語調が全く異なるので、両者を聴き誤るおそれは全くない。

請求人は、引用A、B商標が化粧品との関係で広く知られているので、本件商標から生じる称呼「オイリリー」を、引用商標の称呼「オリリー」と結びつけて認識される可能性があると、主張する。

しかし、称呼は商標を構成する文字の綴りを認識した上で生じるものであるところ、本件商標「oilily」からは「オイリリー」以外の称呼が生じる余地がないことは明らかであるので、本件商標を称呼「オリリー」と結びつけて認識されるおそれは全くない。また、引用A商標「オリリー」引用B商標「0‘LEARY」と本件商標は全く文字の綴りが異なるので、商品広告などに付されている本件商標が、引用A商標及び引用B商標と結びつけて認識されることは、全く考えられない。

「oilily」の語頭部分の綴り「oil(オイル)」は「油」を意味する英語として広く一般に知られており、化粧品の分野において関連深い語でもある。また、語頭・語尾部分を結びつけた綴り「oily(オイリー)」は、肌質や髪質を表す語としてよく使用されいる。そして何れも「oi」の部分は「オイ」と発音することは周知であるから、「オイリリー」の「イ」が省略されたり、あやふやに発音されることはない。本件商標の綴りから全く認識することのできない、引用A商標又は引用B商標或いはその称呼「オリリー」と関連づけて認識されることは全くない。

加えて、本件商標はファッションブランドとして世界的に広く知られているので、ファッションに関連した商品「化粧品」などに本件商標が使用された場合、本件商標はファッションブランド「oilily」と関連づけて認識される。

したがって、本件商標を「オリリー」と結びつけて認識されるおそれは、全くない。

ウ 「イ」音の有無に差異を有する称呼が互いに類似すると判断されている審決例が、甲第4号証ないし甲第17号証として提出されている。しかし、問題の「イ」音の前が「オ」音の称呼は、それらの中にはない。それらの審決は、「エ」音に続く「イ」音の有無に基づく類否を争っているケースが殆どである。しかし、「エ」は「イ」と同様に、口を横に広げて発音する母音であるので、それらの審決は、「オ」の後ろに「イ」がある本件商標の参酌となるものではない。

その上、「イ」音の有無に基づき称呼非類似と判断されている審決も存在する(乙第1号証)。したがって、甲第4号証ないし甲第17号証は、「オイリリー」と「オリリー」を類似とする裏付けにはならない。

エ 称呼「オイリリー」と称呼「オリリー」は相紛れるおそれは全くない。このことに加えて、本件商標は、子供服・婦人服・ファッションアクセサリーのブランド(商標)として日本国内及び海外でよく知られているという事実も参酌すべきである。

「oilily」は、子供服を中心に、婦人服・アクセサリーなどに使用されている総合ファッションブランドである。「oilily」ブランドのアクセサリーとして、眼鏡・化粧品・香水・文房具・かばん・腕時計が販売されている。

本国のオランダはもちろんのこと、欧米・オセアニアなど45カ国で「oilily」ブランドの商品が販売されている。そして、欧州で28、アメリカでは40の「exclusive oilily store」が展開されている。独特な色使いをしたデザインと質の高さが高く評価されて、「oilily」の商品は人気を博している。公式の「oilily fanclub」も結成されているほどで、50カ国から60、000人がファンクラブに加入している(乙第2号証)。

1999年には、日本人も参加するという全米小売業協会年次大会で、インターナショナル賞を被請求人は受賞している(乙第4号証)。検索エンジンで「oilily」を検索したところ、約4890件ものサイトがヒットし、そのサイトは複数の国籍にわたっている(乙第3号証)。

このように「oilily」はファッションブランドとして世界的に広く知られている。

日本国内では、阪急百貨店などの有名百貨店などに、12の「exclusive oilily store」が出店されている(乙第4号証及び乙第5号証)以外にも、輸入された商品がインターネットで通信販売されており(乙第6号証)、本件商標は国内でも広く知られている。「oilily」は子供服のみならず、婦人服も扱っており、親子ペアルックを提案している。また、日本の雑誌などでも紹介されていることが、クレジットカードJCBのホームページに記載されている(乙第7号証)。検索エンジンで検索したところ382件の日本語のサイトがヒットした(乙第8号証)。これらの事実から、「oilily」はファッションブランド又は被服の商標として日本国内で広く知られていることは明白である。

欧米諸国では、「oilily」の店で香水などの化粧品や石けんなどが販売されている(乙第9号証)。これらの商品のパッケージには、被服と同様の独特の色使いによるデザインが施されている。これらの国では「oilily」は化粧品を含めた総合ファッションブランドとして知られている。 日本国内では、オランダ本社の経営戦略で化粧品の日本国内生産を認めておらず、輸入については法律上の規制があったため、「oilily」の化粧品の販売がされていなかった。しかし、経営戦略の変更に伴い、「oilily」ブランドの化粧品を日本国内でもライセンス生産が可能となったので、諸外国と同様に、「oilily」のブティックで化粧品を販売することが、日本でも現在計画されている。

子供服・婦人服と化粧品の需要者はともに女性であり、互いに共通している。またシャネル・イブサンローラン・ディオールなどの被服の有名ブランドが香水などの化粧品事業に参入すること、逆に二ナリッチのように有名な化粧品ブランドが服飾事業に参入することが、業界及び社会の常識となっている。子供服・婦人服ブランドの「oi lily」は日本国内で相当に知られているので、化粧品について「oilily」が使用されれば、子供服・婦人服ブランド「oilily」と同一ブランドの化粧品として、取引者・需要者に認識されると見ることは、社会・業界の経験則に合致している。既に欧米諸国ではそのような認識が確立されており、日本でも同様であると考えられる。

加えて、たとえ日本ではまだ化粧品が販売されていなくても、インターネットを利用すれば、諸外国で既に「oilily」の化粧品が既に販売されていることが、一般の消費者でも容易に知ることができる。そして化粧品のパッケージなどには、「oilily」ブランドの共通コンセプトにもなっているカラフルなデザインが用いられており、そのようなパッケージは化粧品のものとしては珍しいので、そのパッケージ自体が「oilily」のブランドを示唆するとも考えられる。

上記の事情を考慮すれば、引用A商標又は引用B商標が使用されている請求人の商品と、本件商標が使用されている被請求人の商品との間で、出所の混同が生じるおそれが全くないことは明らかである。

本件商標は、引用A、B商標の何れとも類似しないので、商標法第4条第1項第11号には該当しない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、引用A商標又は引用B商標が「化粧品」との関係で周知著名であるので、本件商標がその指定商品について使用された場合、請求人の業務に係る商品であるとの誤認混同がされるおそれがあると主張する。

しかし、1でも申し述べたとおり、本件商標「oilily」と引用A商標「オリリー」及び引用B商標「0‘LEARY」は、外観、特に文字の綴りが全く異なっており、両者の間に何の関連性も見いだせない。称呼も類似しない。本件商標と引用A商標又は引用B商標は非類似である。そのため「化粧品」について使用される本件商標と引用A商標又は引用B商標は、全く別異の商標として認識される。本件商標が使用された化粧品と、引用A商標又は引用B商標が使用された化粧品は、たとえこれらが同じ店の同じ棚に陳列されていたとしても、互いが相紛れるおそれはないし、「oilily」を付された商品を、請求人の業務に係る商品と混同されるおそれはない。そして、商標が非類似であるにも拘わらず、商品の出所の混同が生じるおそれがあるとすべき、具体的な事実や証拠もない。

さらに、請求人は美容院に対して、或いは美容院を通じて、「化粧品」を販売する企業戦略をとっており、業務用化粧品の売上げが高いことが、請求人の主張から明らかである。請求人の販売ルートは、百貨店のブティックにおける販売を主として行う被請求人の販路とは、明らかに異なっている。この点からも、引用A商標及び引用B商標と本件商標が相紛れるおそれがないことは、明白である。

しかも、「oilily」は、百貨店までの販売ルートにおける取引者・需要者の間には、子供服・婦人服の商標として既によく知られているところである。同じ企業が被服と化粧品の双方に同一商標を付して販売をすることが普通となっている今日では、化粧品などの本件商標に係る指定商品について使用されている「oilily」は、子供服・婦人服のブランド「oilily」と結びつけて認識されると見るのが、社会の経験則に合致する。

以上のとおり、本件商標は引用A商標及び引用B商標とは非類似であり、両者間で混同が生じると見るべき特別な理由もない。加えて、販路の相違及び本件商標の知名度をも考慮すれば、本件商標がその指定商品について使用されたとしても、請求人の業務に係る商品であると誤認されるおそれは全くない。

したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号には該当しない。

裁判所においても、非類似の商標は混同が生じるおそれがあると認めるべき特別な事情がないかぎりは、商標法第4条第1項第15号に該当しないと判断されている。

平成元年(行ケ)127号東京高裁判決

「たとえ、原告が著名な業務主体であり、引用商標が世界的に周知名ものであるからといって、本件商標と対比し、外観・称呼の点から別異の商標であると比較的容易に認識され得・・以上、そこから直ちに、本件商標が付された商品を原告の業務に係る商品と混同されるおそれが生じるとみることはできず、また、本件におけるすべての証拠を検討してみても、格別商品の出所の混同が生ずるおそれがあることを認めるに足る証拠はない。したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するとする原告の主張は理由がなく(以下省略)。」

平成7年(行ケ)108号東京高裁判決

「本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似せず、したがって、本件商標をその指定商品に使用するときは商品の出所について誤認を生ずるおそれがあるとは認め難いから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとしてその登録を無効にした審決は、違法として取消を免れない。」

平成8年(行ケ)199号東京高裁判決

「『アルベジオ』の本件商標と『ARPEGE』の引用商標は、称呼、観念、外観の何れにおいても類似しないから、引用商標を付した香水が世界的に周知著名な商標であるとしても、本件商標をその指定商品である化粧品に使用したとき、それが原告の業務に係る香水との混同を生ずるおそれがあるとは考えられず、両者が非類似であるにもかかわらず混同を生ずるおそれがあると伺わせる特別な事業も認められないから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するという主張は採用できない。」

(3)結び

本件商標は、商標法第4条第1項第11号にも第15号にも該当しないものである。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

一般に商標が類似するかどうかは、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり、その類否判断をするに当たっては、両商標の外観、称呼、観念を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであって、決して上記3要素の特定の一つの対比のみによってなされるべきものではないと解されるところである。

これを本件について考察するに、本件商標は、別掲に示すとおり「oilily」の文字よりなるものと認められるところ、該構成文字に相応して「オイリリー」の称呼を生ずるものと認められる。

他方、引用A商標及び引用B商標は、上記のとおり「オリリー」、「O’LEARY」の各文字よりなるものであるから、その構成各文字に相応して、いずれも「オリリー」の称呼を生ずるものと認められる。

そして、本件商標より「オイリリー」、引用A、B商標より「オリリー」の称呼が生ずることについては両当事者間に争いはない。

そこで、本件商標より生ずる「オイリリー」の称呼と引用A商標及び引用B商標より生ずる「オリリー」の称呼とを比較するに、両称呼は、第2音において「イ」の音の有無に差異を有するものである。そして、前者の「オイリリー」は、「オイ」と「リリー」の二音節風に聴取されるとみられるものであるのに対し、後者の「オリリー」は、一音節に聴取されるとみられるから、この「イ」の音の有無の差異が比較的短い音構成よりなる両称呼の全体に及ぼす影響は大きく、両称呼を一連に称呼した場合においても語調、語感を異にし聴き誤るおそれはないものといわなければならない。

また、両商標の外観についてみるに、本件商標と引用A商標とは、文字の種類(ローマ文字と片仮名文字)を異にし、また、本件商標と引用B商標とは、文字の綴りを異にするローマ文字の小文字と大文字の差異に加え、引用B商標は、その構成中にアポストロフィの符号を有しているから、その相違は一層際だっているということができるから、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、外観において明らかに相違するものである。

さらに、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、いずれも特定の意味合いを生じさせるものではないから、観念において比較すべき点は見当たらない。

そうとすれば、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、その外観、称呼及び観念を観察し、総合的に考察するに、いずれよりみても全体として類似する商標とみることはできないというのが相当である。

2 商標法第4条第1項第15号について

請求人の提出に係る証拠よりすれば、引用A商標及び引用B商標が請求人の業務に係る商品「化粧品」について使用され、該商品が主に美容院ルートを通じて販売された結果、本件商標の登録出願時には取引者、需要者の間において相当程度広く認識されていたことは認め得るものである。

しかしながら、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、前記1で述べたとおり、非類似の商標というべきものであって、両商標が非類似であるにもかかわらず、出所の混同を生ずるとみるべき事情も見出し得ないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、引用A商標及び引用B商標を連想、想起するとは認められず、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

請求人は、その他種々述べる点があるが、商標において類似するものではなく、他に出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見当たらないから、その主張は採用できない。

3 結び

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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