結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2001−35236(T2001−35236/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4385044号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成11年6月30日に登録出願され、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、靴合わせくぎ、靴くぎ、靴の引き手、靴びょう、靴保護金具、げた、草履類、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)、乗馬靴」を指定商品として、同12年5月19日に設定登録されたものであるが、指定商品中の「運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)、乗馬靴」についての登録は、同13年8月1日に放棄がなされ、一部抹消の登録が、同13年8月22日になされているものである。
請求人は、「本件商標の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第140号証(枝番号を含む。)を提出した。
請求人が引用する登録第1934194号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲の構成よりなり、昭和53年4月7日に登録出願、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)、レコード、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同62年2月25日に設定登録され、その後、平成9年5月9日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。同じく、登録第2715796号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲の構成よりなり、昭和62年9月18日に登録出願、第24類「ゴルフ用具」を指定商品として、平成8年8月30日に設定登録がなされているものである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前述の構成からなるから、これから「マスターズゴルフクラブ」の称呼が生じる。さらに、これから「マスターズ」の称呼が生じるというべきである。すなわち、本件商標は「MASTERS」「GOLF」「CLUB」のそれぞれの語の間に一文字分の間隔があるから、「MASTERS」の語が他の語と外観上分離して認識される。また、本件商標を称呼した場合、全体で10音の構成音数からなり、一息で称呼するには冗長である。 したがって、本件商標の構成音数に照らしても、これはいずれかの部分に略称される可能性がある。そして、本件商標の後半部は「GOLF CLUB」であるから、本件商標は「MASTERS」というゴルフクラブの名称を示すものである。この場合、前半部の「MASTERS」が当該ゴルフクラブの名称として重要な部分であるから、前半部の「MASTERS」によって当該商標は特定される。さらに、後述するように「MASTERS」は請求人の開催する世界的に著名なゴルフトーナメントである「マスターズ/MASTERS」ゴルフトーナメンの略称として、さらにゴルフ用具、ゴルフウエア、その他アクセサリー等に関する商標として、著名な商標である。 しかも、本件商標は、指定商品中に「運動用特殊靴」を含んでいるから、これと類似する指定商品の「ゴルフ靴」について使用された場合、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標を「マスターズトーナメント」との関係で認識することは明らかである。
また、ゴルフシューズ以外の靴であっても、運動靴やストリートシューズについて本件商標が使用された場合、「マスターズ」の著名性に照らせば、需要者、取引者が本件商標を「マスターズトーナメント」を開催するゴルフクラブであるかの如く認識したり、「マスターズ」というゴルフクラブと言った意味で認識する。
したがって、本件商標の主要部は「MASTERS」の部分にあるといえるから、本件商標からは「マスターズ」の称呼が生じるというべきである。
一方、引用A、B商標は前述の構成からなるから、これから「マスターズ」の称呼が生じることは明らかである。したがって、本件商標と引用A、B商標は称呼上類似する商標である。
そして、本件商標に接する者は、本件商標を「マスターズ トーナメント」との関係で認識することは明らかであるから、これから「マスターズ トーナメント」の観念が生じると言うべきである。
以上の理由により、本件商標は引用各商標と称呼上及び観念上類似するものであるから、外観上の類似性について論じるまでもなく、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人の開催する世界的に著名なゴルフトーナメントである「MASTERS/マスターズ」と類似する商標であり、かつ、当該商標の使用にかかる「ゴルフシューズ、ゴルフ用具」と同一又は類似する運動用特殊靴を指定商品に含むものである。
請求人「オーガスタ ナショナル インコーポレイテッド」は、世界の4大トーナメントの一つである「MASTERS TOURNAMENT」(マスターズ トーナメント)を主催し、運営する米国法人である。
該トーナメントは、1930年、年間四冠王を達成したボビー・ジョーンズが故郷のジョージア州オーガスタにオーガスタ・ナショナル・コースを創設し、1934年に第1回大会が開催された。
第1回大会は、「オーガスタ ナシヨナル インビテーション」の名称であったが、該トーナメントが名手だけが招待され行われたことから、新聞がこれを「マスターズ」と呼び、1937年から「マスターズ」が正式名称となった。以来、「マスターズ トーナメント」は、常に世界のトッププレイヤーが参加する世界的に周知、著名なゴルフ大会となり、今日では、「マスターズ」と言えば誰もが該トーナメントを指称する語として想起するほど広く定着している(甲第3号証及び甲第4号証)。
しかして、我が国においては、毎年該トーナメントが開催される時期になるとそれに関する記事がゴルフ雑誌に特集として掲載され(甲第5号証乃至甲第10号証)、スポーツ新聞のみならず、一般新聞紙上及び各種雑誌にも古くから頻繁に掲載され(甲第11号証乃至甲第128号証)ている。さらに、該トーナメントはテレビジョンで全世界で実況中継されている。このように、「MASTERS/マスターズ」は永年にわたり請求人の主催するゴルフトーナメントを示す略称として使用され、親しまれてきたものである。かかる事実は特許庁においても顕著な事実である(甲第129証)。
さらに、請求人は、我が国において株式会社ミズノを通じてゴルフバッグ、ゴルフクラブ、ゴルフシューズ」等のゴルフ用品を、株式会社ダン口ップを通じてゴルフボールを、株式会社フェニックスを通じてゴルフウェアの販売を永年にわたり行っており、これらの商品について「MASTERS」を広く使用している(甲第130号証乃至甲第140号証)。
その結果、「MASTERS/マスターズ」といえば、特にゴルフを初めとする運動具の分野において、間違いなく上記「マスターズトーナメント」あるいは請求人の商標として認識されているというべきである。
したがって、「MASTERS」が「ゴルフ用具」について請求人の商標として、本件商標の出願日である平成11年6月30日より相当以前から、我が国において周知、著名な商標であることは明らかである。
しかして、本件商標は前述のように「MASTERS GOLF CLUB」からなるから、これに接するものは、これを「マスターズ トーナメント」を開催するゴルフクラブであるかの如く認識したり、「マスターズ」というゴルフクラブという意味で認識する。
したがって、本件商標に接する者はこれを「マスターズ」と称呼する可能性がある、というべきである。また、本件商標に接する者は、本件商標を「マスターズ トーナメント」との関係で認識することは明らかであるから、これから「マスターズ トーナメント」の観念が生じると言うべきである。
してみれば、本件商標は、本件商標の出願日前から我が国において周知、著名な請求人の商標と類似する商標であり、請求人の商標の使用にかかる商品と同一又は類似する商品を指定商品に含むものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号に関する主張
「MASTERS」といえば、請求人が開催し運営すトーナメント」を示すものと世界各国において著名な商標となっていたことは疑いのない事実である。
前述のように、本件商標は「MASTERS GOLF CLUB」の文字よりなるものであるから、これに接する者は、「マスターズトーナメント」を開催しているゴルフクラブといった意味で認識する可能性があり、本件商標が指定商品について使用された場合、「マスターズトーナメント」に関係する商品であるとか、マスターズトーナメントを開催するゴルフクラブ、すなわち、請求人の経営する「オーガスタ ナシヨナル ゴルフクラブ」と関係のある商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
以上の理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号の規定に該当し、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
被請求人は、「マスターズトーナメント」が世界的によく知られているとしても、商標として著名ではない。また、「MASTERS」は特別顕著性に乏しい語であるから、商標法第4条第1項第15号に該当しないと主張するが、この主張は理由がない。
本件商標は、指定商品が一部放棄されたが、未だ、本件商標が使用された場合、需要者、取引者は、当該商品が、請求人又はオーガスタナショナルゴルフクラブと何らかの関係がある商品であるかの如く、商品の出所について、誤認、混同を生ずる可能性があるというべきである。
すなわち、本件商標は「MASTERS」に「GOLF CLUB」を付した構成からなるもので、本件商標が、ゴルフシューズでなく、一般のストリートシューズに使用された場合であっても、「GOLF CLUB」の文字から、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標を、ゴルフとの関係で認識する。
しかして、ゴルフで「MASTERS」といえば明らかに請求人が開催する「マスターズトーナメント」である。靴は誰でもが履くものであるから、ゴルフ用具、ゴルフウエアの需要者は必ず靴の需要者である。したがって、ゴルフをする者、すなわちゴルフ用具、ゴルフウエアの需要者は「MASTERS」といえば直ちに「マスターズトーナメント」を想起することは明らかであり、その結果、これらの者が本件商標に接した場合「MASTERS」と「GOLF CLUB」の文字から、本件商標を「マスターズトーナメント」と関連づけて認識し、請求人あるいはこれから使用許諾を受けた者によって製造、販売されている商品であるかの如く誤認する。仮に「MASTERS」が「主人、長、名人、熟達者」などの意味を有するとはいえ、本件商標が、「GOLF CLUB」なる言葉を含んでいることに鑑みれば、本件商標は、ゴルフの世界の4大トーナメントの一つとして有名な「MASTERS」のイメージを利用しているものに他ならない。
被請求人は、「MASTERS」は著名商標にいたっていないから、商標法第4条第1項第15号に該当しないと述べているが、ゴルフシューズ、ゴルフ用具、ゴルフウエアについては著名なものとなっている。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、要旨次のように答弁した。
(1)本件商標の指定商品から、運動用特殊靴、乗馬靴が除去されたので、引用各商標の指定商品とは類似関係がなくなり、商標についての判断をまつまでもなく、商標法第4条第1項第11号についての該当関係は生じない。(2)請求人の使用商品は、ゴルフウエア、ゴルフバッグ、ゴルフクラブ、ゴルフシューズに限られているので、本件商標の指定商品とは類似せず、商標法第4条第1項第10号でも、商品の同一又は類似が必須要件となっているので、この条項に該当することはない。
(3)請求人は「MASTERS」が著名商標であると主張するが、これは認められない。「マスターズ ゴルフ トーナメント」が世界的によく知られているとしても、それは4大ゴルフトーナメントの一つとして有名なだけであって、決して商標として著名なわけではない。ゴルフ関連商品に対して、請求人の関連会社によって、「MASTERS」が商標として使用されているとはいっても、その使用はトーナメントの名声を利用した使用にとどまり、商標として著名といえるまでには至っていない。
その上、「MASTER」や「MASTERS」は、造語ではなく、主人、長、名人、熟達者などを表す英語であり、日本国内でもよく用いられる極めてありふれた語である。また商標としてもよく使用されており、「MASTER」や「MASTERS」を有する登録商標の数は、優に千件を超える。
このように「MASTERS」は、決して自他の識別力を高めるために新たに作られたものではなく、商標として一般的に多用されるありふれた語にすぎないのであって、この点は、請求人の主張にもあるように、「マスターズ トーナメント」が新聞などによる使用によって自然発生的にできた名称であるということでも裏付けられている。このような特別顕著性に乏しい語は、一般的に著名商標にはなりにくいものであり、著名商標化するには余程の使用実績が必要で、請求人主張程度で著名商標になったとは到底考えられない。
以上、「MASTERS」は、ゴルフ トーナメントの名称としては有名であっても、商標としての使用も少なく、著名商標にはなっていないから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
現在、世界のゴルフ界で四大トーナメントと称されているのは「全米オープン、全英オープン、全米プロ(PGA)、マスターズ」であることはわが国でもよく知られているところである。
ところで、請求人が提出している「情報・知識 imidas ’98」(甲第3号証、「株式会社集英社 1998年1月1日発行」)、「現代用語の基礎知識 1999」(甲第4号証、「自由国民社 1999年1月1日発行」)、「アサヒゴルフ」(甲第5号証、「産報出版株式会社 1977年5月1日発行」)、「Forbes」(甲第88号証、「株式会社ぎょうせい 1997年4月号」)等によれば、「MASTERS TOURNAMENT」(「マスターズ トーナメント」)は、1930年、年間四冠王を達成したボビー・ジョーンズが故郷のジョージア州オーガスタにオーガスタ・ナショナル・コースを創設し、1934年に第1回大会が開催されたものである。
第1回目の「マスターズ トーナメント」は、「オーガスタ ナシヨナル インビテーション トーナメント」と称されていたが、これに世界のトッププレイヤーが参加し、新聞等がこれらの人々を「マスターズ」と称したことから、第2回大会の1937年からは、該「MASTERS TOURNAMENT」(マスターズ トーナメント)は「マスターズ」が正式名称となったといわれている。
そして、上記「MASTERS TOURNAMENT」(マスターズ トーナメント)が「マスターズ」・「MASTERS」と称され、世界的に著名であることは、請求人の提出している各種雑誌、新聞(甲第3号証ないし甲第128号証 )等で窺い知ることができる。
また、請求人は、上記「MASTERS TOURNAMENT」(マスターズ トーナメント)を主催し運営する米国法人である。
ゴルフウェア、スラックス等の商品カタログ(甲第130号証ないし甲第140号証)によれば、請求人は、わが国において、「MASTERS」の文字を有する上記引用A商標及び引用B商標を「ゴルフバッグ、ゴルフクラブ、ゴルフシューズ」「ゴルフボール」「ゴルフウェア」等のゴルフ用品に付し「株式会社ダン口ップ」、「株式会社フェニックス」及び「ミズノ株式会社」を通じて1996年頃より販売し、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、これらの引用各商標は、取引者・需要者間に、請求人の業務に係る商標として広く知られていたことが認められる。
上記1、2を総合勘案すれば「マスターズ」・「MASTERS」は、ゴルフの世界四大トーナメントの一つである「マスターズトーナメント」・「MASTERS TOURNAMENT」の略称として著名であり、かつ、「MASTERS」は、請求人が「ゴルフバッグ、ゴルフクラブ、ゴルフシューズ」「ゴルフボール」「ゴルフウエア」等のゴルフ用品に長年に亘り使用した結果、遅くとも本件商標の登録出願時までには要者間に広く知られていたものと認められる。
そうとすると、「MASTERS」の文字をその構成中に有してなる本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、上記著名なゴルフトーナメントの「マスターズ」・「MASTERS」(「マスターズトーナメント」・「MASTERS TOURNAMENT」)を連想・想起し、その商品が前記ゴルフトーナメントを運営し主催する請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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