結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2001−35302(T2001−35302/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4395864号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成10年5月1日に登録出願、「ゴジラ」の片仮名文字と「GODZILLA」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、第12類「自転車並びにそれらの部品及び付属品」を指定商品として、同12年6月30日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.請求人及び「ゴジラ」について
(1)請求人について
請求人(東宝株式会社)は、映画の制作・配給・上映、映画・演芸・演劇の興行、テレビ放送番組及び録画の制作等を主たる業務とする同業界におけるわが国の代表的な企業である。
請求人の歴史は、昭和7年(1932年)8月に、阪急電鉄・阪急百貨店等の創始者である小林一三により、主に宝塚歌劇の東京における常打ち劇場を確保するための劇場(東京宝塚劇場)の建設を目的とした株式会社東京宝塚劇場が設立されたことに遡る。請求人は、設立当初は東京宝塚劇場での宝塚歌劇の興行を行う一方、日比谷映画劇場や有楽座等の新劇場の設立及び日本映画劇場株式会社や帝国劇場株式会社との合併等を通して、直営の劇場や映画館を増やし、映画・演劇の興行を主に行っていたが、昭和18年(1943年)に、東宝映画株式会社(昭和7年設立の株式会社写真化学研究所が前身)と合併し、映画の制作・配給・興行並びに演劇の興行も行う映画・演劇の総合一貫経営を目指すことにし、同時に社名を東宝株式会社に改称した。請求人は、戦後も引き続き映画の制作・配給・興行、演劇の興行、劇場・映画館・レジャー施設等の経営を主とした業務を一貫して行ってきており、その設立以来すでにほぼ69年もの歴史を有し、この業界におけるわが国の策一人者の地位を築き現在に至っている(甲第2号証)。
(2)映画「ゴジラ」第1作について
請求人は昭和29年(1954年)に映画「ゴジラ」を制作した。この映画は、「ゴジラ」という怪獣を主人公とするわが国初の特殊撮影怪獣映画であり、同年11月3日に封切られたが、それ以前のラジオ放送(題名「怪獣ゴジラ」、ニッポン放送)や書籍の出版(「怪獣ゴジラ」映画の原作者である香山滋著、岩波書店出版)、その他の媒体を通した長期間の宣伝により広く一般に話題が浸透し、封切り日には当時の東京「日劇」前に長蛇の列ができた。
水爆実験のあおりで太古以来の眠りからさめ、口から放射能をまき散らしながら東京に上陸し、放送塔やビルを破壊する大怪獣ゴジラを描いたこの映画は、精巧なミニチュアセットとぬいぐるみを使いながら、特殊なレンズや照明を使い画面を現実的に見せる「特撮映画」という新しいジャンルを日本映画に確立した。それだけに製作費の総額は約1億円にもなり、これは当時の劇映画1本の平均的製作費のほぼ5倍であり、また、各種の媒体を利用しての宣伝活動や大々的なキャンペーンを行う等、請求人はこの一本の映画に同社の社運をかけ全力を投入した。その結果、封切配給収入だけでも約1億5千万円の大ヒットを記録し、さらに、昭和31年には、米人新聞記者が登場するシーンを付け足してアメリカへ輸出され、日本映画としては初めてのメジャー系の配給にのり、当時の円に換算して億の単位の興行収入をもたらした(甲第3号証ないし同第6号証)。
この映画の大ヒットの要因は、円谷英二を中心とする当時の請求人の誇る特殊撮影技術陣の技術の高さももちろんのこと、原作・脚本・監督・出演者・撮影・音楽等この映画の制作に関与したすべての人の知識、苦心、努力、熱意の結集によるものであり、卓越した想像力、創作力、技術力があってはじめて可能になったものということができる。さらに、この映画が単なる怪獣映画にとどまらず、現在も根強い人気を保持している理由は、画面を通して観客を非現実的あるいは非日常的な世界に誘う娯楽性を有しながら、同時にその年(昭和29年)3月のビキニ環礁における水爆実験に抗議する反戦反核の思想及びそれに立ち向かう人間の良心が根底に流れており、現在も観客の心に訴え、感銘を与えるものがこの映画にあるからに他ならない。
すなわち、昭和29年に制作された映画「ゴジラ」第1作には、その制作にかかわった多くの人の知的創作力が結集され、請求人の総力が注がれたからこそ、当時の大ヒット作となったのであり、その後も請求人により20作を越えるゴジラ映画が制作され、ゴジラは 45年以上も経た現在も依然として新鮮さと映画のヒーローとしての生命を持ち続けているのである。事実、「昭和」あるいは「20世紀」の時代に起きた日々の出来事をまとめた書籍類には、昭和29年11月の映画「ゴジラ」の封切りが大きく取り上げられているが、このことは、「ゴジラ」という映画が日本の映画史上のみならず社会・文化史にも残ることを示しているといえる(甲第5号証及び同第6号証)。
(3)「ゴジラ」の一般への浸透度及び請求人への貢献度
このようにして、映画によって作られた架空の存在である「ゴジラ」は、まさに、請求人の貴重な知的財産となり、この第1作から平成12年までの46年間に合計25作(後述のようにこの内1作は米国のトライスター・ピクチャーズ社による制作である)のゴジラ映画が制作された。その間、ゴジラ映画を特集した雑誌やゴジラを内容とする書籍がしばしば出版され(甲第7号証及び同第8号証)、また、請求人は作品が封切られる度に大々的な宣伝を行い、「ゴジラ」はより広範に一般大衆に知られるようになった。したがって、ゴジラ映画が請求人の収益に大きく貢献をしたことはいうまでもない。例えば、平成になってから制作された9作のゴジラ映画(上記米国製のものを含む)に関し、請求人は各作品の度に3億円前後の宣伝費を支出したが、9作の合計で160億円以上の配給収入をあげている(甲第9号証)。
「ゴジラ」の一般人への浸透度及び請求人への貢献度については、例えば、平成6年の映画の日(毎年12月1日)の式典において全国興行環境衛生同業組合連合会から「マネーメーキングスター賞」の名目で「ゴジラ」自体が表彰されたり、平成7年に制作された「ゴジラ VS デストロイア」で壮絶な最期を遂げる「ゴジラ」の追悼式が現実に行われたり、また、その年に日比谷の映画・劇場街の中心にある日比谷シャンテ前の著名な俳優の手形がある広場に「ゴジラ」の銅像が設置される等の色々な話題が、その都度一般の新聞・雑誌・テレビにしばしば取り上げられた事実を指摘することができる(甲第10号証ないし同第16号証)。
このような事実は、「ゴジラ」が一般人からどれ程愛されているか、請求人にとって「ゴジラ」がいかに重要な存在であるか、請求人がいかに大切に「ゴジラ」を扱っているかを示すものに他ならない。
(4)ゴジラの名称の由来
「ゴジラ」の名称は、昭和29年の第1作の制作が決定した際に、主人公たる恐竜の名を(ゴリラとクジラを足したような)という当時の東宝演劇部の社員のあだ名から採り、これがそのまま映画のタイトルとして採用されたが、制作中の間には「G」作品の名称で極秘のうちに進められたため、かえってそれが他社にまで話題を浸透させる結果となった、といわれている(甲第4号証)。
また、「ゴジラ」は恐竜をモデルとしているが、単なる恐竜ではなく、請求人が創作した架空の生物たる怪獣であり、その性質や行動を擬人化して表したいわゆる「キャラクター」である。また、上述のように「ゴジラ」の名称も請求人の創作にかかるものであるから、「ゴジラ」の名称と上記のキャラクターとは常に一体なものとして使用され、一般にも認識されていることは明らかである。
(5)レコード・書籍・ビデオ等によるゴジラ作品
「ゴジラ」は、映画以外にも、特に昭和40年代初頭から当時の「怪獣ブーム」の影響を受け、レコード、書籍(怪獣図鑑)、雑誌を通しても大きな人気を得てきた(甲第8号証)。さらに、昭和50年代後半から、ゴジラ作品のビデオが、映画化されたものを含め現在までに全部で31作が請求人によって発売され、大半の作品が10,000本から50,000本程度売れており、映画の第1作「ゴジラ」が約2億3千万円、平成11年に制作された「ゴジラ2000ミレニアム」でも約3億2千万円の売り上げを計上している。また、レーザーディスクやデジタルビデオディスクによってもゴジラ作品は販売されているから、これらの映画以外の媒体を通しても「ゴジラ」が長期間にわたり一般家庭にも広くかつ深く浸透してきたことは疑いない(甲第17号証及び同第18号証)。
これらの様々な媒体に登場するゴジラの容姿・映像及び音楽についての一次的著作権が、映画と同様に請求人に帰属していることはいうまでもない。
(6)ゴジラ映画のアメリカ版(GODZILLA)
請求人による「ゴジラ映画」は昭和29年から平成10年まででも22作制作されたが、その間の国内の観客動員数は約9千万人であり、日本以外でも欧米を中心に公開され世界各国で人気を集めている。特にアメリカでは、邦画のゴジラ作品の多くがテレビで繰り返し放映されている(甲第20号証)。
なお、アメリカにおいて「ゴジラ」はその発音から「GOZILLA」と表記され、日本と同様に「ゴジラ」と称呼されている(甲第19号証ないし同第22号証)。したがって、「ゴジラ」は日本のみならず、外国でもそのまま通用するキャラクターの名称であり、これは世界的に著名な「ミッキーマウス」に匹敵するといっても決して過言ではない。
また、米国における「ゴジラ」の人気に着目した米国のトライスター・ピクチャーズ社(TRISTAR PICTURES,INC.)は、請求人の許諾を受け米国ハリウッドで「ゴジラ」を主人公とする映画を制作した(甲第19号証)。これは1998年5月にアメリカで封切りされ、当時の新聞紙上にも頻繁に「米国版ゴジラ」「米国製ゴジラ」等として取り上げられ、日本とアメリカの「核」に関する感情の違い、あるいは日米文化の比較論的な見地からも話題を呼んだ(甲第20号証ないし同第22号証)。
日本側の関係者からは、この米国製ゴジラと請求人の制作してきたものとが、その容姿や動きが極端に異なるため、請求人が貸与したのは「ゴジラ」という名前だけであってキャラクターまでは貸与していない、との見解を述べている人もいる(甲第22号証)。なお、このアメリカ製のゴジラ映画のわが国における利用権が請求人に属していることはいうまでもない(甲第9号証)。
いずれにしても、「ゴジラ」はその第1作の発表後すでに46年以上も経過しているにもかかわらず、その人気はいっこうに衰えず今も新作が制作されており、その名声を確固としたものにする一方、常に新しい話題を提供しながら現在ではより国際的な著名性を獲得していることは明らかである。
(7)「ゴジラ」の商品化権
請求人は「ゴジラ」の文字及びキャラクターについて、多くの企業にいわゆる商品化権を与えており、「ゴジラ」のイメージを損なわないように使用権者等の商品を管理する一方、適正な使用料を使用権者等から継続的に得ている。それらの商品は多岐にわたっており、現在使用権者(ライセンシー)の総数は30社を越えている。また、それらの商品には人形、ぬいぐるみ、玩具、陶器、カード、菓子、キーホルダー、ライター、パズル、貯金箱、氷型器、ペーパーホルダー、コード、シール、文房具、時計、CDケース、エプロン、メンコ、ポスター、バッジ、Tシャツ、トランクス、トレーナー、電気スタンド、ぬりえ、バック、ミニリュック、ルアー、缶詰、食料品、ガラス食器等々が含まれている(甲第23号証及び同第24号証)。
これらの商品化権を許諾することによって請求人は当然に使用者から使用料を得ている。また、これに「ゴジラ」の写真の使用料やぬいぐるみ等を使用する展示会やショーでの「ゴジラ」のキャラクターの使用料等を合わせると、例えば、本年(平成13年)4月の1ヶ月だけでも約7千万円の売上を計上している(甲第23号証)。
さらに、請求人はプロ野球の東京読売巨人軍と提携し、現在のプロ野球界で人気・実力とも第一人者ともいえる同球団の松井秀喜選手の名前と「ゴジラ」とを結合した「ゴジラ松井」の名称を使用して様々な商品を販売している。同球団と請求人との契約では、「ゴジラ」の名称に関する権利が請求人に属することを前提としていることはいうまでもない(甲第25号証)。
以上のような「ゴジラ」の商品化権を通じて、「ゴジラ」の名称及びそのキャラクターが、請求人にとって貴重な経済的価値を有する財産となっていること、並びにそれらの権利が請求人の所有に係るものであることが一般にも広く認知されていることは明らかである。
(8)本件商標と「ゴシラ」の類似性
本件商標は、片仮名文字「ゴジラ」と英文字「GOZILLA」を二段に横書きした構成からなるから、これが、請求人の制作に係わりそのキャラクター及び名称に関するすべての権利が請求人に帰属する「ゴジラ」と、称呼上同一であることはいうまでもない。しかも、本件商標中の英文字の部分は、外国で使用されている請求人の「ゴジラ」と同一文字であるから、本件商標が請求人の「ゴジラ」をそっくりそのまま利用した構成であることは明らかである。
すなわち、本件商標は請求人の創作にかかるキャラクターの名称であり、かつ、請求人が著作権を有する映画のタイトル及び主人公の名称である「ゴジラ」と外観・称呼・観念を同一にするものである。
2.商標法第4条第1項第7号該当について
商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することを目的としており、同法第4条第1項第7号は、この目的を具現する条項の一つとして「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定している。この規定に該当する商標としては、過去の審判決例によれば、その商標の構成自体が矯激・卑隈な文字・図形、その時代に応じた社会通念に鑑み当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような商標、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標も含むとするのが相当とされており、さらに、前記商標法の目的を考慮すれば、同号中に規定されている「公の秩序」の中には、商品またはサービスに関する取引上の公正な秩序も含まれると解すべきである(甲第26号証)。
本件商標は、前述のとおり請求人が著作権を有する映画のタイトル「ゴジラ」またはその主人公であるキャラクターの名称「ゴジラ」及びその英文表記と同一の構成からなるものである。
したがって、本件商標は、そのキャラクター及び名称等について請求人がすべての正当な権利を有する「ゴジラ」から採択されたことは疑いなく、本件商標を登録出願するにつき、被請求人が請求人から許諾を得た事実も存在しない。
よって、本件商標は、請求人の「ゴジラ」に依拠し、これを剽窃して登録出願されたものであるから、その登録を有効として維持することは、請求人の創作にかかる「ゴジラ」及びそのキャラクターの名声・信用力・顧客吸引力を無償で利用するものであり、かつ、請求人が創作し、育て、その維持に営々と努力してきた「ゴジラ」の名称及び商標について、それらに何も関与していない全くの他人に、その指定商品について独占的に使用し得る権利を与えることになるから、そのようなことが商取引における信義誠実の原則を損ない、公正な商品またはサービスの取引秩序を維持するという前記法目的に合致しないことは明白である。
したがって、本件商標は公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
3.商標法第4条第1項第15号該当について
「ゴジラ」の商品化権を請求人から得て販売されている前記の商品には、共通して、「ゴジラ」のキャラクターが使用され、「ゴジラ」の文字も商品自体、商品の包装、宣伝広告物、取引書類等のいずれかに使用されている。また、これらの商品の店頭あるいは電話による取引に際しては、当業者は当該商品を単に「ゴジラ」あるいは「ゴジラ印の××」と特定せざるを得ない。したがって、上記の商品の取引に当たっては「ゴジラのキャラクター」及び「ゴジラ」の文字は商標として使用され、出所表示機能あるいは品質保証機能を十分に果たしている(甲第27号証)。
したがって、「ゴジラのキャラクター」及び「ゴジラ」の文字は前記商品化事業に係る多数の商品の商標として、本件商標の出願日前から広く取引者・需要者間に知られているものである。しかるに、被請求人は、無断で本件商標を登録したものであり、その使用について請求人から何ら承諾を得ていないから、請求人の「ゴジラ」と完全に同一の本件商標が指定商品に使用されれば、当該商品はあたかも請求人又はその関係者(商品化事業グループ)の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所を混同させるというべきである。
なお、他人により出願された登録第4120501号商標「ヤンキーゴジラ」(第28類)について、請求人からの異議申立により、同商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものとされ、その登録は取り消されている(甲第28号証)。本件商標は「ゴジラ」「GOZILLA」の文字のみからなるから、上記先例より、より一層出所の混同を生じるおそれが高い。したがって、本件においても上記先例と同様の判断が下されるべきである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
4.商標法第4条第1項第19号該当について
前述のとおり、請求人は「ゴジラ」の名称及びそのキャラクターを種々のメディアを広範に利用し、かつ、前述の多数の商品化事業を通して「ゴジラ」の一般大衆に広く愛されるイメージ及び人気の維持に営々たる企業努力を積み重ねてきたのである。その結果、「ゴジラ」の名称及びそのキャラクターは現在では本来の映画の主人公という枠を越え、高い名声と信用及び評価を獲得している著名商標にもなっているものである。
本件商標は、このような著名商標「ゴジラ」及びその英文表記と同一の表示よりなるから、請求人の「ゴジラ」の名声に便乗しようとするフリーライドであり、かつ「ゴジラ」の有する出所表示機能を稀釈化するものである。 しかるに、被請求人は本件商標の登録及び使用について請求人より何ら承諾を得ていないから、本件商標はそのような信義則に反する不正の目的をもって使用するものといわざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
5.結論
したがって、本件商標は、その出願日並びに登録査定の時点において、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当していたものであるから、その登録は同法第46条第1項の規定により取り消されるべきである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第4号証(枝番号.を含む。)を提出した。
1.被請求人は、自転車の製造販売事業を営む平成7年10月18日に設立された法人で、株式会社力ワムラサイクルより自転車に関する一切の営業権譲渡を受けて自転車の製造販売にかかる事業を継承している。
さて、本件商標は、請求人の主張しているとおり、片仮名「ゴジラ」とその英文字からなる「GODZILLA」を二段に横書きした構成からなり、平成10年5月1日に出願され、商品区分第12類の指定商品「自転車並びにそれらの部品」を指定商品として平成12年6月30日に登録されたものである。なお、本件商標に関しては、株式会社力ワムラサイクルが昭和60年9月19日に商標「ゴジラ」を商品の区分第12類で指定商品「輸送機械器具その部品及び付属品」として出願し、昭和62年10月1日に出願公告(商公昭62−073905号)され、昭和63年5月26日に登録(第2048181号)(乙第4号証)を受けていた。被請求人は、株式会社力ワムラサイクルが所有していた登録商標について、順次更新登録出願時期に応じて新規に同一の商標を出願し、登録を受けてきた。これは、株式会社力ワムラサイクルの所有する登録商標を被請求人に移転し、更新出願するよりも費用的負担が遙かに少ないからに他ならない。
本件商標については、片仮名「ゴジラ」を出願する予定であったが、将来英文字を使用する可能性を考慮し、英文字を併記して出願したもので、英文字については、調べたところ正式なスペルが「GODZILLA」であることから、片仮名「ゴジラ」と英文字「GODZILLA」とを二段に併記して出願した次第である。
2.請求人によれば、本件商標は請求人が著作権を有する映画のタイトルおよび主人公の名称である「ゴジラ」と同一であると主張しているが、被請求人は、映画に著作権があっても、そのタイトルの「ゴジラ」については著作権が及ぶものではなく、採択したものに過ぎないと考えている。つまり、被請求人は乙第1号証として本件商標を付した自転車を掲載したカタログを本書に添付しているが、本件商標は、被請求人の複数種類の自転車を自社内で識別するとともに、他社製品とも識別するために使用しており、請求人の主張するような、「ゴジラ」のキャラクター等に依存する顧客吸引力等を無断で利用する、いわゆる「只乗り」を目的として使用しているものでは一切ない。このことは、被請求人の有する他の登録商標と本件商標とに使用上において全く相違するところがなく、いいかえれば本件商標のみが特別な使用態様をしていないこと、および本件商標を付した自転車の後述する販売数量(特に販売開始時)が他の商標を付した自転車の販売数量に比べて際だつものではないことから、被請求人が只乗り行為をしていないことを十分に確認してもらえるはずである。
3.請求人は本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に該当すると主張しているが、本件商標の商標の構成自体は矯激あるいは卑猥な文字は含まれておらず、社会公共の利益に反する商標でなく、また他の法律によってその使用が禁止されている商標でもなく、国際信義に反するような商標が含まれているとは考えられない。したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとの請求人の主張には承服できない。なお、本件商標は文字のみからなる商標であるが、たとえば「MICKY MOUSE」というキャラクターの名前を表す文字商標について、その登録を無効とする程度までに公序良俗を乱すおそれがあるとは認められないとして、無効審判請求は成り立たないとした審決例(昭和33年審判第652号、昭和35年4月25日)(乙第3号証)がある。
4.本件商標が商品の出所の混同のおそれがあるか否かについては、請求人は映画の制作および配給会社であり、自転車の製造や販売には全く関連がないから、本件商標を商品「自転車」に使用しても、出所の混同が生じるものとは考えられない。また、このことは、後述するように、被請求人は本件商標の登録後から商品「自転車」について商標「ゴジラ」の使用を開始し、ほぼ1年が経過するが、この間に一般需要者はもとより取引者から請求人の関連商品であるとか、請求人と何らかの関係があるとか、についての問い合わせは1件もなく、被請求人の独自の商品として認識されていることからも明らかである。いいかえれば、本件商標を付して販売中の自転車は、一般需要者をはじめ取引者に対し被請求人の独自の商品として認識され取り扱われており、請求人の関連した商品であるなどの誤解を受けたという事実は今までに一切ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5.ところで、請求人が審判請求書の中で「ゴジラ」について述べている事実関係については、全く異論を挟むものではない。しかしながら、請求人は、株式会社力ワムラサイクルの昭和62年10月1日に出願公告された商標「ゴジラ」に対し、登録異議の申し立てをすることなく、14年にわたる長期間を経過した段階の本年7月に入ってから、無効審判を請求したことについて、被請求人は納得しかねるものである。
そもそも、映画や小説等のタイトルや主人公の名称等に関係する商標を採択し、使用する場合に、映画や小説等の人気は変化するのが常であり、そのほとんどは長期間継続されずに忘れられている。商品の出所の混同が生じるかどうかは、本来、生産者や販売店等が共通するか、商品の性質、用途、用法が共通するか、商品の流通経路が共通するかなどに基づいて判断されるべきであって、その商標に関係ある映画や小説等の人気や流行、注目度などの一時的な要因によって左右されるべきではない。
6.請求人は株式会社力ワムラサイクルが出願し登録を受けた商標「ゴジラ」について、昭和62年10月1日に出願公告されてから現在に至るまでの長期間何らのアクションをとられず、また平成12年6月30日に本件商標が登録されたのちも登録異議の申し立てをされなかった。そこで、被請求人は、昨年の8月25日から本件商標の使用を指定商品「自転車」について開始した。被請求人が本件商標を付して発売を開始した自転車は、市販価格¥32,800〜¥37,800の高級自転車で、主に関西方面を中心に販売を展開し現在に至っている。この本件商標を付した自転車(以下、本件自転車という)については、被請求人の製品カタログ[KAWAMURA2001年度版」(乙第1号証)にも掲載されていることは上記したとおりである。同カタログは発行部数15,000部(乙第1号証の2)であり、主に「コープこうべ」その他の量販店(大規模店舗)に配布済みである。また、本件自転車を掲載した折り込み(チラシ)広告(乙第2号証)を、定期的に新聞への折り込み等により配布(通常、売り出し開始日の1〜2日前)しているが、被請求人の自転車の取扱い先である「コープこうべ」の分だけでも、昨年8月から現在までのほぼ1年間で、1,500,000枚を超える相当な配布枚数になる。なお、本件自転車の販売台数は、ほぼ1年間で1235台であり、昨年度の被請求人の年間販売台数は85,000台前後であるので、その約1.5%程度とやや少ないが、当該自転車の販売促進には被請求人のみならず、各関係先を含めて努力しているところである。
被請求人はこのような状況にあり、請求人は長期にわたり黙認してきて今頃になって登録無効の審判を請求してきたが、この請求は、請求人側の一方的な事情に基づくものであり、被請求人側にとって非常に困るものである。
7.上記したように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号あるいは同第15号に該当するものではない。
請求人の提出に係る甲第2号証ないし同第25号証(枝番号を含む。)によれば、請求人(東宝株式会社)は、映画の制作・配給・上映、演芸・演劇の興行、テレビ放送番組及び録画の制作等を主たる業務とする、この種業界における我が国の代表的な企業であると認められ、「ゴジラ」は請求人が制作した日本初の特殊撮影による怪獣映画として昭和29年に制作、公開された映画の題名及びその映画に登場する主人公の名称であり、その後、請求人により今日までに20作を越える「ゴジラ」映画(シリーズ)が制作され、また、1998年には米国版「ゴジラ」が「GODZILLA」の題名で米国ハリウッドでも請求人と契約した企業(トライスター・ピクチャー社)によって制作、公開され、このことが日本でも全国版の新聞に報道されたことが認められる。
そうとすれば、「ゴジラ」は請求人の制作に係る怪獣映画に登場する主人公の名称として一般需要者に広く認識されているということができる。
さらに、請求人は、これらの「ゴジラ」映画作品をビデオ化、ディスク化して多数販売し、かつ、「ゴジラ」の名称及びそのキャラクターについては、人形、玩具、業務用遊戯具、ガラス食器、キーホルダー、ライター、文房具、時計、バッジ、トレイナー、ルアー、電気スタンド、菓子、食料品等の各種商品について、多くの企業にいわゆる商品化権の許諾契約を締結し、商品化事業を行っていることが認められる。
そして、それら商品化事業に係る商品には、「ゴジラ」の文字等が使用されており、したがって、「ゴジラ」の名称及びそのキャラクターは、本件商標の登録出願時には、既に請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商標として相当程度知られるに至っていたものと認めるのが相当である。
しかして、本件商標は、「ゴジラ」と「GODZILLA」の両文字からなるところ、該商標は、被請求人の創作に係る造語でないことは被請求人も認めるところであり、前記のとおり、怪獣映画の題名及びその主人公の名称の意味合いしか想起させないものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれが少なからずあるといわなければならない。
なお、被請求人は、被請求人の関連会社と認め得る株式会社カワムラサイクルが出願し、昭和63年5月26日に商標登録(登録第2048181号)を受けた商標「ゴジラ」(商品区分第12類、指定商品「輸送機械器具その部品及び付属品」)に対し、請求人は、登録異議の申立てや無効審判を請求しなかったこと、また、本件商標が登録されたのちも登録異議の申立てをせずに、本件無効審判を請求したことは納得できない等と述べている。
しかしながら、請求人が以前存在した登録商標について、登録異議の申立てや無効審判を請求しなかったこと、また、本件商標に対しても登録異議の申立てをしなかったことは、請求人の自由な意思に委ねられているというべきであり、本件商標の登録に無効事由が存在するか否かを審理する本件無効審判の結論に何らの影響を与えるものではない。
そして、被請求人は、本件商標を指定商品「自転車」について平成12年8月25日から使用開始しているが、取引者、需要者から請求人の関連商品であるとか、請求人と何らかの関係があるなどの誤解を受けたという事実はないと述べているが、商標法第4条第1項第15号にいう「混同」とは、現実に他人の業務に係る商品と混同を生じているという事実までは必要でなく、混同を生ずるおそれがあれが足りると解されているところである。
そうとすれば、被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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