結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35480(T2000−35480/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4156735号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成8年7月29日に登録出願、第42類「日本料理を主とする飲食物の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同10年6月19日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3135216号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成4年7月9日に登録出願、第42類「中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同8年3月29日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、と申し立て、その理由および答弁に対する弁駁を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第19号証を提出した。
1.請求理由
(1)本件商標は、引用商標に類似し、また、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を受けることができないものである。したがって、本件商標は、上記規定に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件商標は、「火を吹くオロチヨン」の各文字を白抜きで表記してなるもので、この中の「火を吹く」の文字は、「オロチヨン」の文字に比較して幾分小さく表記されている。このように、本件商標の場合、「火を吹く」の部分と「オロチヨン」の部分とは、幾分異なる大きさの文字で表記され、また「火を吹く」が漢字と平仮名で表記されているのに対し、「オロチヨン」が片仮名で表記されているため、この二つの部分は、外観上分離して認識されるものである。
本件商標中の 「オロチヨン」の文字は、「シベリアの外バイカル、アムール州及び中国内蒙古自治区などにすむツングース系の民族・種族」の呼称であることが明らかである(甲第5号証ないし同第8号証)。
他方、「オロチヨン」の前に幾分小さめに表記された「火を吹く」の文字は、一見「オロチヨン」の部分を修飾するものと認められるが、上述のように、「オロチヨン」が特定の民族・種族の呼称であることを考慮すれば、「火を吹く」の部分と「オロチヨン」の部分とは観念上何らの結び付きもないものと解される。
すなわち、本件商標を構成する「火を吹く」の文字と「オロチョン」の文字とは、観念上一体不可分に結び付いて特定の意味を有する熟語を形成するものと言うより、「オロチヨン」の語に「火を吹く」の文字が修飾的に付加されているに過ぎないものと言うべきである。したがって、かかる構成よりなる本件商標に接した者は、その全体の中の「オロチヨン」の部分から特に強い印象を受けるのであり、「火を吹く」の部分は単なる付加的要素として認識される筈である。
本件商標は、全体で「ヒヲフクオロチョン」の8音から構成され、これは一個の商標としてはかなり冗長であり、また、その外観上も、「火を吹く」の部分と「オロチヨン」の部分とで文字の種類と大きさが異なるため、この商標に接した多くの者は、これを「火を吹く」と「オロチヨン」の二つの部分に分離して認識することが明らかである。
そして、本件商標に接する者は、通常、特定の意味を持ち且つ極めて印象的な音から構成される「オロチヨン」の部分に特に惹き付けられるのであり、その結果、本件商標を称呼する場合には、付加的な修飾語である「火を吹く」の部分を除外し、最も印象的な「オロチヨン」の部分に基づいて、これを単に「オロチヨン」と略称することも多いと考えられるのである。
したがって、本件商標からは、「ヒヲフクオロチヨン」の一連の称呼の他に、「オロチョン」の称呼をも生じると言うべきである。
(3)引用商標の構成中「オロチヨン」の語は、既述の通り、「シベリアの外バイカル、アムール州及び中国内蒙古自治区などにすむツングース系の民族・種族」の呼称である。また、引用商標中の「ラーメン」の語は、請求人によって提供される料理を示すもので、これは指定役務である「中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供」との関係では、単に役務の内容を表示するに過ぎず、自他役務の識別機能を持たない言葉である。
さらに、引用商標中の「利しり」の文字は、「北海道北部、稚内南西方、日本海中に位置する島の名称」に通じることが明らかである(甲第5号証ないし同第8号証)。そして、この利尻島は、「利尻昆布」の産地として極めて著名であると共に、「利尻・礼文・サ口べツ国立公園」の中心地として知られている。このため、引用商標中の「利しり」の文字からは、誰もが容易に「利尻島」を想起するのであり、かかる著名な地名を表示したに過ぎない「利しり」の文字は、自他役務識別性の極めて弱い語と言うべきである。
以上から考えると、引用商標の「オロチヨンラーメン利しり」の中で、実質的に自他役務識別標識として機能し得るのは、先頭に位置する「オロチヨン」の部分であると解される。そして、「オロチヨンラーメン利しり」という引用商標の構成は、一個の商標としてはかなり冗長であるため、常に一連一体に称呼されるとは限らず、その最も顕著な語頭部分に基づいて「オロチョン」と略称される場合も少なくないと言うべきである。以上から、引用商標からは、「オロチヨンラーメンリシリ」の一連称呼の他に、「オロチヨン」の称呼をも生じると言うべきである。
以上述べたように、本件商標からは、「ヒヲフクオロチヨン」の−連称呼の他に「オロチヨン」の称呼をも生じると言うべきであり、また、引用商標からは、「オロチヨンラーメンリシリ」の−連称呼の他に「オロチヨン」の称呼をも生じると言うべきである。
したがって、本件商標と引用商標とは、需要者が「オロチヨン」の語の意味を正確に理解すると否とに関係なく、共に「オロチョン」の部分を基幹部分とする商標として認識され、相互に一定の関係を有するものと誤認されるおそれがある点において、観念上類似する商標と言うべきである。
本件商標の指定役務は、「日本料理を主とする飲食物の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」であり、他方、引用商標の指定役務は、「中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供」である。したがって、両商標の指定役務は、互いに同一又は類似の関係にあることが明らかである。
本件商標と引用商標とは、その称呼及び観念において極めて紛らわしい類似の商標であり、また、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは、互いに同一又は類似の関係にあるものである。そして、本件商標は、引用商標より後に登録出願され、引用商標の存在にも拘わらず登録されたものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたことが明らかである。
2.答弁に対する弁駁
(1)上記答弁書において、被請求人は、「オロチヨンラーメン」の語が、サッポロラーメン同様全国各地で使用されている旨述べている。これは、要するに、引用商標中の「オロチヨンラーメン」の部分、とりわけ「オロチョン」の語が、本件指定役務との関連において識別性に乏しい語であることを主張しているものと解される。しかし、被請求人は、その主張を裏付ける客観的な証拠を何ら示していない。つまり、「オロチヨンラーメン」が、特定の品質又は特徴(例えば、材料や調味料、調理方法等における共通の特徴)を有するラーメンの一般名(普通名称)として、現に市場で使用され、認識されている事実を示す客観的な証拠は、何も示されていない。
また、被請求人は、横浜ラーメン博物館でも「オロチヨンラーメン」というインスタントラーメンが展示されている旨述べている。しかし、仮に、過去において、「オロチヨンラーメン」なる商標をもって販売されていたインスタントラーメンが存在するからといって、その事実のみをもって、「オロチョンラーメン」の自他役務識別性を否定できるものでもない。
(2)答弁書に証拠として添付されているメニュー等の記載からすれば、被請求人自身も、「オロチヨンラーメン」の語を、識別性ある商標として使用しているものと思われる。すなわち、当該メニューには被請求人によって提供される様々な料理の名称が示されているが、これらの中で「オロチヨンラーメン」は、被請求人の主力商品(料理)としてメニューの筆頭に記載され、「火を吹くオロチョン」「ブーチャンポン」「豚プーラーメン」「北極ラーメン」「コシコシ冷麺」「バクニク飯」等の個性的なオリジナル料理の名称と共に使用されている。これらの名称が、いずれも料理の一般名を示すものでないことは明らかである。
さらに、被請求人は、「MENU(オロチヨンバワー)」においても、例えば、「薬よりもオロチヨンを食べて寝る。これが一番です。」「オロチヨンに使っている肉はビタミン・ミネラルをたくさん含み、...」「オロチヨンにはパワーの元がいっぱい!」等々、「オロチヨン」の語を数多く使用しているが、これらにおいても、「オロチヨン」の語は、一定の種類のラーメンの一般的な名称として使用されているのではなく、被請求人によって提供される個性的なラーメンの名称、すなわち商標として使用されていることが明らかである。
(3)以上の点から考えれば、本件商標「火を吹くオロチヨン」や引用商標「オロチヨンラーメン利しり」に含まれる「オロチヨン」の語が、本件指定役務との関連で識別性を有する語であることは明白である。そして、「オロチヨン」の語源は、「シベリアの外バイカル、アムール州及び中国内蒙古自治区等に済むツングース系の民族の呼称」であることが明らかであり、本件商標において、上記の意味を持つ「オロチヨン」の語と「火を吹く」の語とは、観念上一体不可分の結びつきを有するものではないから、本件商標が常に「ヒヲフクオロチヨン」と一連に称呼される必然性もないのである。
してみれば、本件商標からは、「ヒヲフクオロチヨン」の称呼の他に、「オロチヨン」の略称をも生ずると言うべきである。
したがって、本件商標と引用商標とは、互いに類似する商標と言うべきである。
(4)なお、被請求人のメニューには、「火を吹くオロチョン」と共に「オロチヨンラーメン」の文字が使用されているが、被請求人の直営店及びフランチャイズ店のうち、平成4年10月1日以降に開店した店舗での「オロチョンラーメン」の語の使用については、いわゆる継続的使用権の範囲を超えて清求人の商標権を侵害している可能性が極めて高い。
この侵害問題自体は、本件登録無効審判事件とは直接の関係を持たないが、かかる被請求人の行為から察すると、そもそも被請求人が本件商標登録を得た背景には、本件商標の登録を根拠に、自らによる「オロチョンラーメン」や「オロチヨン」の使用を際限なく正当化しようとする意図が読み取れるのであり、また、被請求人自身が、「火を吹くオロチヨン」と「オロチヨン」の二つの語を、密接な関連を持つ類似のものと認識していることが窺われる。
現に被請求人は、メニューにおいて、「火を吹くオロチヨン」を「オロチヨンラーメン」の次に並べており、両者が一種のシリーズ商品の如く扱われていることがわかる(具体的に言えば、「オロチョンラーメン」の辛み成分だけを増大したものが「火を吹くオロチヨン」であると推察される。)。
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次ぎのように述べた。
被請求人は、昭和55年に本店(愛媛県松山市吉藤2丁目2番31号)で開店以来、現在もオロチョンラーメン、火を吹くオロチョンを主力メニューとして営業しており、平成2年川内店オープン、同4年二番町店オープン、同5年砥部店オープンと直営店を展開し、同4年2月10日、株式会社からし屋として法人登記をした。その後、続々県外に増えていったいきさつ上、同8年オロチョンラーメンとしての商標登録を弁理士事務所に依頼した所、オロチョンラーメン利しりが、商標登録しており、オロチョンラーメンでは、申請できないとのことである。
弁理士の話では、オロチョンラーメン利しりが、商標登録願いを出した年に(株)からし屋さんも「オロチョンラーメン」と出願していても、その年ならとれた。オロチョンさんも、古くから愛媛で営業しているのは知っていたが、大手のスーパー、お菓子屋、他には声をかけ出願呼びかけをしたが、オロチョンさんにも声をお掛けしようかなと思いつつ、声掛けをしないままになってしまったとの弁理士の話であった。それでは、火を吹くオロチョンではどうでしょうとの私の問いに弁理士は、これなら他に登録者がなければ、できるでしょうとの答えに、申請手続きをし、特許庁の審査の結果、登録できるに至った。現在、母親の個人店を含め20店舗でオロチョンラーメン・火を吹くオロチョンの主力メニューで盛業中である。
インターネット検索エンジン「インフォシーク」でオロチョンという単語を調べると日本全国あらゆる方面で何百と使用されている。
オロチョンラーメン自体、サッポロラーメン同様全国各地で使用されており現に横浜ラーメン博物館でもオロチョンラーメンというインスタントラーメンも展示されている。オロチョンラーメン利しりと火を吹くオロチョンが類似するものとなると、札幌ラーメン横町と札幌ラーメン横町富屋との関係をどうみるのか、サッポロラーメン味の時計台とサッポロラーメン時計台はなぜ登録できているのかということになる。
本件商標は、別掲(1)に表示のとおり、「火を吹くオロチョン」の文字を白抜きで表してなるものであり、「火を吹く」の文字と「オロチョン」の文字の大きさに多少の差を有しているとしても、構成各文字は外観上まとまりよく一体的に表現されているものであり、全体をもって称呼される「ヒヲフクオロチョン」もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、たとえ、その構成中の「オロチョン」の語が請求人主張の如く「シベリヤの外バイカル、アムール州及び中国内蒙古自治区などにすむツングース系の民族・種族」の意味を表すとしても、その理由をもって「オロチョン」の文字部分に限定して称呼、観念を生じるとはいえず、むしろ、かかる構成においては、構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが相当である。
しかして、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ヒヲフクオロチョン」の称呼のみを生ずるものと認められ、また、「オロチョン」の語は、請求人主張の如き意味合いを有するとしても、本件商標は、全体として一種の造語よりなる商標とみることができるものである。
他方、引用商標は、別掲(2)に表示のとおり、「オロチョンラーメン利しり」の構成よりなるものであり、請求人は、「オロチョン」、「ラーメン」「利しり」の各文字それぞれの意味を分析し、判断しているが、引用商標は、その指定役務との関係よりすれば、「オロチョンラーメンリシリ」の一体の称呼をもって取引に資するものと判断するのが相当であり、単に「オロチョン」のみの称呼、観念をもって取引されるものとは認められない。
そうとすれば、本件商標及び引用商標より「オロチョン」の称呼、観念を生ずるとし、そのうえで両商標が称呼、観念上類似するものである旨の請求人の主張は認めることができない。さらに、両者はそれぞれの構成別記のとおりであり、外観上は明らかに区別し得るものである。
してみれば、本件商標は、外観、称呼および観念のいずれよりみても、引用商標に類似する商標とはいえないものである。
なお、請求人は、被請求人が使用する商標について言及しているが、本件商標と引用商標との類否の判断に影響を与えるものとは認められない。
また、甲第9号証ないし同第19号証の審決例は、いずれも本件と事案を異にするものであるから、それに基づく請求人の主張も採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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