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Trademark Appeal Case

著名商標と称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35216号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3057483商標(以下「本件商標」という。)は、「ランド・ダカール」の文字を横書きしてなり、平成4年9月19日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成7年7月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出している。なお、請求人は、弁駁書の証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出しているが、既に請求と同時に甲第13号証までを提出しているので、上記証拠を甲第14号証ないし甲第16号証として判断した。

(1)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するという点について

(ア)理由

本件商標は、国際自動車スポーツ連盟(FISA)が主催する国際的に有名なクロスカントリー・レイドである「パリ・ダカール・ラリー」のシンボルマークである「DAKAR」の文字及びそれを含む登録商標と出所混同を生じさせるものである。

請求人は、「パリ・ダカール・ラリー」を組織する者であり、以下の(イ)に示す「DAKAR」の文字を含む多数の登録商標「DAKAR+図形」、「RALLYE PARIS DAKAR」、「PARIS DAKAR」(甲第2号証、以下、これらの登録商標を記載した記号に従い「引用商標(a)」、「引用商標(b)」のようにいい、これらを一括していう場合は「引用商標」と総称する。)の商標権者である。

そもそもパリ・ダカール・ラリーとは、「現代用語の基礎知識1996」(自由国民社)によれば、「日本では『パリダカ』などと呼ばれているパリ・ダカール・ラリーは、フランスのパリからアフリカ大陸西岸セネガルの首都ダカールまで、アフリカの砂漠地帯を一万数千キロ走る冒険ラリー。」(甲第3号証)であり、世界にその名をとどろかせている国際的自動車ラリーの代表格である。

わが国でもそのラリーの名前を知らない者は殆どおらず、ラリーの様子も毎年のようにわが国でテレビ放送されている。

甲第4号証として、1992年から1998年までの期間中、「パリ・ダカール・ラリー」がわが国のテレビ朝日、NHKなどでいかに放映されているかを示す証拠を提出する。

さらにその著名性を立証するために、1987年ないし1992年における同ラリーに関する記事を甲第5号証ないし甲第7号証として提出する。

同ラリーは定期的に開催されているため、その有名性は現在まで継続するところである(甲第8号証ないし甲第11号証)。

よって、上述の証拠により、パリ・ダカール・ラリーのシンボルマーク、及びそれを含む引用商標は、本件商標の登録出願前から登録時、及び現在に至るまでわが国で著名であり、被請求人が本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、請求人の著名なラリーのシンボルマーク及びそれを含む登録商標を想起し、恰も請求人と何らかの資本的、組織的関係があるとの誤解を与えるものであるから、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといえる。

本件商標は、「ランド・ダカール」の片仮名文字よりなり、世界的に著名なラリーである、パリ・ダカール・ラリーの「DAKAR」の文字と称呼類似する片仮名文字「ダカール」、及び「ランド」よりなるものである。

「ランド」の文字部分は、本件商標の指定商品たる「自動車並びにその部品及び附属品」が「陸上の車両」であることから、指定商品の内容を表し識別力がないといえる。

また、本件商標の指定商品は「自動車並びにその部品及び附属品」であり、自動車ラリーたる上記ラリーと密接な関連性を有する商品であるから、本件商標は出所混同を生じさせるおそれは非常に高いものといえる

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(イ)引用商標

以下の登録商標における指定商品又は指定役務、登録出願日、設定登録日は登録原簿に記載のとおりである。

(a)登録第2594246号商標、登録第2662535号商標、登録第2694862号商標、登録第2713606号商標

商標の構成 別掲1に示すとおり

(b)登録第3178282号商標、登録第3181288号商標、登録第3206595号商標、登録第3212336号商標、登録第3220475号商標、登録第3267891号商標、登録第3273273号商標、登録第3304107号商標、登録第4038268号商標、登録第4153762号商標、登録第4208758号商標

商標の構成 別掲2に示すとおり

(c)登録第2115273号商標、登録第2118255号商標、登録第2132758号商標、登録第2331406号商標、登録第2339899号商標、登録第2458151号商標

商標の構成 RALLYE PARIS DAKAR

(d)登録第2594096号商標

商標の構成 PARIS DAKAR

(2)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するという点について

上述の如く、被請求人が指定商品について本件商標を使用することにより、請求人の商標たる上記ラリーのシンボルマークを想起させるため、かかる登録商標は、国際取引秩序に違反し、国際信義にも反するものといえる。

「DAKAR」の文字を含む商標は、わが国のみならず世界各国で数多く登録されている(甲第12号証)。

また、我々が調査したところによると、被請求人は本件商標をあたかもパリ・ダカール・ラリーを認識させるような方法で使用している。すなわち、「4WD ランド・ダカール」の文字及び、アフリカの地図に重ねて「DAKAR」の文字を付して表示している。

「4WD ランド・ダカール」の文字においても、「ダカール」の部分のみを大きく記し、あたかも一見して「ダカール」の称呼のみが生じるような態様で記載している(甲第13号証)。本件商標は同書同大の「ランド・ダカール」の文字よりなるにもかかわらず、「ダカール」の部分のみ大きく表示するのは、パリ・ダカール・ラリーの「ダカール」のシンボルマークを意識したものと考えずにはいられない。

よって、本件商標は被請求人により、パリ・ダカール・ラリーを想起させる態様での使用がなされているともいえる。

かかる意味でも、本件商標は国際信義に反するものであり、公の秩序及び善良の風俗を害するおそれがあるといえるため、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録を無効とされるべきである。

(3)被請求人の答弁に対する請求人の弁駁

被請求人は、本件商標の要部は「ランド・ダカール」全体であって、請求人が主張する引用商標と出所混同を生じさせることはなく、国際取引秩序に違反したり国際信義に反するものでもない旨主張している。

(ア)本件商標の観念について

被請求人は、「ランド」は「地方」の語意を有するので、本件商標から「ダカール地方」の観念が生じると述べているが、単語「ランド=LAND」にはそのような語意がなく、したがって、請求人の主張を認容することができない(甲第1号証)。また、「ダカール=DAKAR」が西アフリカ、セネガルの首都であっても、一般人が「ランド・ダカール」でもって即座に「ダカール地方」を想起するとは到底思えない(甲第2号証)。さらに、万が一「ランド・ダカール」が被請求人が主張する「ダカール地方」であったとしても、その表記は「ダカールランド」であって、決して「ランド・ダカール」の表記方法は採られない。

(イ)併存登録例について

被請求人は、自己の主張を補強するために、第12類に文字「ランド」を含む複数の商標が併存していることを例示しているが、根拠とする商標の中、「LANDMARK」、「MASTER」「LANDMASTER」「ランドメイト」の登録が確認できず、したがって論拠不在であるといわざるを得ない。(甲第16号証の1ないし甲第16号証の12)

(ウ)商標法第4条第1項第7号に該当する範囲について

いかなる商標が公序良俗に反するかは、一国におけるその時代に応じた社会通念にしたがって、これを指定商品又は指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会通念の一般的道徳観念に反することとなるかどうかにより、取引の実情を通じて判断されるべき相対的な観念であると理解するところ、本件商標を出願した時点で、請求人の商標の要部「DAKAR」が既に著名となっていたといえる。

この時間的な近接性は無視し難く、本件商標が著名となっていた「DAKAR」の文字及びそれを含む引用商標の指定商品でない商品に無断で使用することは、著名となった商標をその商品と全く関係のない自己の商品に使用することにより、著名商標にフリーライドすることは、商品の出所の混同を生じない場合においても、著名商標のイメージを僭用することにより請求人の商標の持つ強力な表彰力を希釈化するゆえに、請求人の業務上の信用を害し、商標保護を目的とする商標法の精神により維持される商品流通社会の秩序を侵害するものであるから、本号に該当するものである。

(エ)商標法第4条第1項第15号に該当する範囲について

甲第13号証で明らかなように、被請求人の本件商標の使用は「ダカール」及び「DAKAR」を拡大することでパリ・ダカール・ラリーを想起させる態様のみならず、「パリ・ダカール・ラリー」との関連を意識したものといわざるを得ない。

(4)結論

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、本件商標の登録の背景につき別紙(陳述書)を提出している。

(1)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、本件商標における「ランド」の文字について、その指定商品との関連で、これを「陸上の」の意味に曲解し、本件商標の要部は「ダカール」にのみあるとして論理を展開しているが、「ランド」の文字は「地方」を意味しており、換言すれば本件商標は「ダカール地方」の意味であり、これを「ランド」と「ダカール」に切り離すことはできない。「ランド」を語頭に書した第12類に属する既登録例で、例えば「LANDMARK」があるにも拘らず「MARK」が登録されている事実、また、「MASTER」があるにも拘らず「LANDMASTER」が登録されている事実、また、「メイト」があるにも拘らず「ランドメイト」が登録されている事実から、本件商標は「ランド・ダカール」の全てが商標の要部であり、請求人のいう「DAKAR」とは何等業務又は指定役務の混同を生じさせる商標ではない。まして、請求人のシンボルマークは「ダカール」ではなく、「パリ・ダカール ラリー」そのもの又は、その略称である「パリ・ダカ」であって、いみじくも請求人は甲各号証において、この事実を立証しているのと背反している。

(2)商標法第4条第1項第7号について

本件商標が国際取引秩序を乱し、国際信義に反するおそれがあり、商標法第4条第1項第7号の規定に該当する、と請求人はいうが、(1)において述べた如く「ランド・ダカール」全体から自他商品の識別力を生ずるものであり、「ダカール」のみに自他商品の識別力を生ずるものではなく、決して国際取引秩序を乱し、国際信義に反するおそれのある商標ではない。

(3)本件商標の背景

上述のように、本件商標は、無効理由を有するものではないと確信する。なお、本件商標が登録された背景には別紙(陳述書)記載のような事実がある。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第15号について

(ア)本件商標

本件商標は、前記のとおり「ランド・ダカール」の文字よりなるところ、中黒を介して表された「ランド」と「ダカール」の各文字が同じ書体、同じ大きさで一体的に表されていて、両文字の文字数も3文字又は4文字よりなり、両文字間に軽重の差は見出せないものであって、その全体から生ずる称呼も特に冗長なものではなく淀みなく一連に称呼し得るものである。そして、構成中の「ランド」の文字は、「陸地、土地」等を意味するにとどまることからすると、この語自体、商品の品質、内容等を表すものとは認められないものであり、かつ、商品の品質、内容等を表すものとして普通に使用されているという事実を示す証拠はない。

そして、請求人の述べる「パリ・ダカール・ラリー」については、そのラリーの模様、経過、順位などが新聞、テレビなどのマスメディアを通じて報道される機会が多く、日本人が活躍する場面も少なくないことから、該ラリーが「(フランスの)パリから(セネガルの)ダカールまでを走破するラリー」であること、すなわち「ダカール」の語自体は、所在する国名はともかく同ラリーの行われる地名であろうという認識は、モータースポーツの愛好者のみならず、本件商標の指定商品である自動車に関連する商品の取引者、需要者の間に広く浸透しているものというべきである。

そうとすれば、本件商標を構成する「陸地、土地」等を意味する「ランド」の文字と地名と認識される「ダカール」の両文字は親和性に富んでいる語といえるから、上記いずれの点よりしても、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の構成よるなるものであって、全体として「ダカール」の地名に由来した文字と認識し把握されるものとみるのが自然である。

(イ)引用商標等

まず、請求人の提出に係る証拠のうち「パリ・ダカール・ラリー」に関する新聞、雑誌等の報道、紹介記事(甲第5号証ないし甲第7号証)を検討するに、「パリ・ダカール・ラリー」自体を「ダカール」又は「DAKAR」と略称することが一般的であると認めるに足りる証拠はない。

また、プレスリリース(甲第8号証、甲第9号証)、「La Boutique du Dakar 1997/1999」(甲第10号証)には、引用商標(a)及び引用商標(b)が表示されており、これらからすると、「パリ・ダカール・ラリー」に関連する商品又は役務について、或いは衣服、帽子などの商品についてこれらの引用商標が使用されていたと推認することができる。また、引用商標(b)は、別掲2に示すとおり、請求人が「パリ・ダカール・ラリー」のシンボルマークと述べる「DAKAR」の文字(以下「シンボルマーク」という。)と同じ構成の「DAKAR」の文字及び図形より構成されているものである。しかしながら、甲第9号証は、外国語で記載されたものであり、その「プレスリリース」という資料の性質上、わが国の取引者、需要者が該資料に接することが可能であったのか、該プレスリリースの内容がいかなる形態、内容で新聞、テレビ等で報道されたのかなど、その詳細が把握し得ないものである。また、甲第10号証も外国語で記載されているものであって、これが商品カタログの類であるのか、また、わが国において頒布されたものであるか、頒布されたとすればどの程度の部数をどの地域で頒布したのかなど、その詳細が明らかでない。

そうすると、請求人の提出に係る証拠では、本件商標の登録出願の時に、シンボルマークの「DAKAR」の文字及び引用商標が取引者、需要者の間に広く認識され著名性を獲得していた証左とするのに充分なものとは到底判断することができない。

(ウ)出所の混同

以上のとおり、本件商標は、「ランド・ダカール」の構成文字全体をもって認識されるものであって、かつ、シンボルマークの「DAKAR」の文字及び引用商標の著名性が認められないことからすると、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した取引者、需要者はこれを「ダカール」という地名に由来する表示であろうと認識するにとどまり、これよりシンボルマークの「DAKAR」の文字或いは引用商標を連想、想起するものとは判断することができないから、本件商標は、請求人又は請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字又は図形からなるものでなく、また、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものでなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実は認められない。

請求人は、被請求人は本件商標をあたかもパリ・ダカール・ラリーを認識させるような方法で使用している、すなわち、「4WD ランド・ダカール」の「ダカール」の文字を大きく記し、アフリカの地図に重ねて「DAKAR」の文字を付して表示しており、公の秩序及び善良の風俗を害するおそれがある旨主張する。

しかしながら、本件商標は、前記した構成よりなるものであって、請求人の述べるように「ダカール」の文字を大きく表し、或いはアフリカの地図に重ねて「DAKAR」の文字を付して表示したものではない。したがって、本件商標の構成それ自体が登録査定時に商標法第4条第1項第7号に該当していたか否か、又は登録がされた後において、同号に該当するものとなっているか否かを判断すれば足りるのであるから、請求人の主張は上記判断を左右するものではない。

(3)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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