Trademark Appeal Case
著名作品名の商標登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2001−90574(T2001−90574/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4470684号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年6月20日に登録出願され、別掲に表示したとおりの構成よりなり、商品の区分第9類及び第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成13年4月27日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立の理由(要約)
本件商標を構成する欧文字を書してなる「Anne of Green Gables」は、カナダ国の誇る女流小説家ルーシイ・モウド・モンゴメリの世界的に著名なシリーズ小説「赤毛のアン」の原題である。
カナダ国政府当局は、1)同原題をカナダの誇るべき文化遺産として、カナダ国の貨幣および切手に登載させているほか、2)同シリーズ小説の主人公であり、世界中において今や著名なキャラクターとして認識されるに至っている「赤毛のアン」が住んでいたとされる「緑の切妻屋根の家」(Green Gablesの邦訳)を「Anne of Green Gables Museum」(グリーン・ゲイブルス博物館)として、その管理下の下に開設し、カナダ全体およびプリンス エドワード アイランド州の観光事業の目玉としている。3)加えて「Anne of Green Gables」を本件商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)を受益者として公的標章として登録しており、受益者以外の第三者の使用を禁止している。
これらの事実を踏まえて、申立人は、主に次の理由により各条文が適用されるべきと主張する。
(1)本件商標権者は、同一態様の商標を旧区分の指定商品につき、平成2年4月23日から商標登録第2224831号及び同第2227776号(以下「旧商標」という。)として所有していたところ、申立人に不使用取消審判を申し立てられた。本件商標権者は、「旧商標」を全く使用していなかったので、弁駁することを放棄して本件商標を出願した。「旧商標」は弁駁されないためそれぞれ取り消されたが、本件商標は新規に登録されるに至った。当該事実に照らせば、本件商標権者は、指定商品を取扱っておらず、徒に申立人をわが国の市場から排除する目的を成就させる意思で登録を取得したものといわざるを得ない。
(2)本件商標権者は、「赤毛のアン」物語の良いイメージを正当な理由なくフリーライドすることを企て、「赤毛のアン」の原題である「Anne of Green Gables」が申立人ないしそのライセンシーがその当時日本において出願していないことを奇貨として「旧商標」登録を得た。また、本件商標権者は、申立人の構成員である著作権権利継承者ルース マクドナルド及びデイビット マクドナルドとの間で、1984年2月ころ「赤毛のアン」に関してその無体財産権の映画・テレビ使用許諾についての独占的ライセンス契約(以下「独占的ライセンス契約」という。)を締結する等して、申立人の身近で「Anne of Green Gables」なる商標が使用主義を採用しているアメリカ合衆国、カナダ国他主要国において、1909年頃から赤毛のアンの著作権者ないしはそのライセンシー等により物品又は役務の商標として広く使用され、既にこれらの国々で著名になっている事情を知悉し、かつ、日本において赤毛のアンが並はずれた顧客吸収力を取得するに至っていることを熟知した上で、不正の利益を得るか、申立人の日本進出を妨げる目的で本件商標を使用ないし使用せんとするものである。
(3)本件商標権者は、プリンス エドワード アイランド州の管理下に我が国でも広く知られている「Anne of Green Gables Museum」(グリーンゲイブルス博物館)が本件商標出願以前に古くより存在していること、カナダ国プリンス エドワード アイランド州とモンゴメリの権利継承者との間でAnne of Green Gablesの無体財産権のライセンス事業展開目的で、第三セクターとして申立人が1994年に設立されている事実を知悉し、これらが時にAnne of Green Gablesと略称されていることを聞知しながら、申立人ないしは「Anne of Green Gables Museum」の承諾を得ないで本件登録を得た。
(4)書籍でシリーズ本の場合、タイトルないし登場人物名が商標的役割をはたしているところ、本件商標権者が本件商標を使用した場合、商品の出所について混同を生じるおそれがある。申立人の構成員であるカナダ国プリンス エドワード アイランド州政府は、州内の中小企業を振興する趣旨で高品質な産品が販売されるよう、信用し得る企業を選んで、別途80社近くの会社に対して商標のライセンスを供与している。このような状況下において、本件商標を付した指定商品が日本国内で出回った場合、消費者は、申立人又は同人と経済的もしくは組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について広義の混同を生じるおそれが極めて高い。
(5)申立人が、「Green Gables」からなる商標登録第4068115号に対して異議を申立てた平成10年異議第90408号事件において、「我が国において出願し権利を取得しようとする行為は国際信義に反するものというべきであり、かつその行為には不正の目的があるものといわざるを得ない。」という決定を下されている。本件においても同様の理由で取り消されるべきである。
(6)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第5号、同第7号、同第8号、同第15号及び同第19号に該当し、その登録は取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第5号について
カナダ国造幣局及びカナダ郵政省が「コイン及び切手」の図柄に赤毛のアンの肖像及び「Anne of Green Gables」なる文字を使用し、また、該「Anne Of Green Gables」がカナダ国のプリンス エドワード アイランド州の公的標章であることは認められるとしても、本件商標は、日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同−又は類似の標章を有する商標でなく、その印章又は記号が用いられる商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用するものではないから、商標法第4条第1項第5号に該当するということはできない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字又は図形からなり、これをその指定商品について使用することが、社会公共の利益・一般道徳観念に反するものではなく、かつ他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められないものである。また、我が国において、著作物の題名や登場人物の名前は、著作物から独立した著作物性を持ち得ず、原著作物の複製とはいえないと解されているところである。
そうとすれば、別掲に表示したとおりの構成よりなる本件商標が、カナダ国の小説家ルーシイ・モウド・モンゴメリの著名な小説「赤毛のアン」の原題であるとしても、他人の著作権と抵触するものではないから、該行為が国際信義に反するものではない。
したがつて、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するということはできない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
申立人が提出している証拠を検討するも、カナダ国の史跡であり、同国の管理下にある「Anne of Green Gables Museum」(グリーン・ゲイブルス博物館)が「Anne of Green Gables」と略称され、これが需要者間において著名であるとは認め難い。
したがつて、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するということはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標(別掲)を構成する「Anne of Green Gables」は、一書籍の題号にすぎず、かつ、他人の業務に係る商標として需要者間に広く認識されている商標とはいい得ないものであるから、これをその指定商品に使用しても、当該商品が申立人又は申立人と何らかの関連を有する者に係る商品であるかの如く、その商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれはないものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。
(5)商標法第4条第1類第19号について
本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者に広く認識されている商標と同一又は類似の商標でなく、また、本件商標を採択使用することについて、特段不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)があるとも認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しないものである。
(6)商標法第3条第1項柱書きについて
申立人は、本件商標権者が指定商品に関する業務を行っていないから、商標法第3条柱書きの要件を具備しない旨を主張しているいるが、この点について、申立人は商標権者が本件商標を使用していないことを立証する証拠を提出していないので、この点に関する申立人の主張は採用することができない。
なお、以前に本件商標と類似する登録商標が不使用取消審判で取り消しになった事実が存在するとしても、そのことのみをもって本件商標が指定商品に関し使用されていないと直ちにはいい得ないところである。
(7)結論
したがって、本件商標は、商標法第3条柱書、同法第4条第1項第5号、同第7号、同第8号、同第15号又は同第19号に違反して登録されたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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