結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2001−35388(T2001−35388/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4452676号商標(以下「本件商標」という。)は、「NURSEWALKER」の欧文字と「ナースウォーカー」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成12年4月13日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成13年2月9日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第777783号商標(以下「引用A商標」という。)は、「NURSE」(色彩は省略した。)の文字を横書きしてなり、昭和41年7月16日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)」を指定商品として、昭和43年4月9日に設定登録、昭和53年5月10日、昭和63年6月22日及び平成9年11月18日の三回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第997695号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、昭和45年5月6日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)」を指定商品として、昭和48年2月3日に設定登録、昭和58年5月20日及び平成5年3月30日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。同じく登録第1355478号商標(以下「引用C商標」という。)は、「ナース」の文字を横書きしてなり、昭和50年7月25日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)」を指定商品として、昭和53年10月31日に設定登録、昭和63年11月16日及び平成10年6月9日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。以下、これらの登録商標を一括していう場合は「引用各商標」と総称する。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)引用各商標の著名性について
請求人は、半世紀も前に「くつ(シューズ)」、「サンダル」等の「履物」について、「ナース」という商標を採択し、昭和32年に最初の商標登録を取得している(現在は存続期間満了により消滅)。
請求人は、当初より、ナースシューズ(看護婦グツ)について、「ナース」「NURSE」等の商標を使用していたため、請求人の製造、販売に係る看護婦グツは、ナース印の商品として、需要者に親しまれてきた(甲第6号証ないし同第14号証)。
さらに、請求人は、引用A商標、引用B商標及び引用C商標について商標登録を受け、これらの各登録商標は、請求人の長年に亘る継続的な使用により、ナース印の中核をなす商標として、業界内において広く認識されるに至っている。
請求人は、長年に亘って、月刊誌「看護」に、ナース印の看護婦グツの宣伝広告を継続して掲載しており(甲第15号証の1ないし7)、こうした請求人の積極的な企業努力により、引用A商標、引用B商標及び引用C商標は、業界内において、高い著名性を獲得するに至っている。
ちなみに、「看護」誌は、看護婦向けの雑誌としては草分け的な存在であり、現在もトップクラスの発行部数(年間約63,000部)を誇っている。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、欧文字で「NURSEWALKER」と片仮名文字で「ナースウォーカー」と横書きしてなる横二段書きの構成であり、その構成中に、著名登録商標である引用各商標の構成文字である「NURSE」及び「ナース」の文字を有するものである。
しかして、著名商標をその構成中に含む商標においては、その著名商標の部分に取引者・需要者の注意が集中することは、判決例、審決例、学説等が広く認定するところである。
したがって、本件商標中「NURSE」及び「ナース」の部分に、取引者・需要者の注意が集中することは多言を要するまでもないことであるから、本件商標からは、「ナースウォーカー」なる全体称呼のほかに「ナース」の称呼も生ずることは明らかである。
また、本件商標中「WALKER」及び「ウォーカー」の部分は、「散歩靴」を一意味する「WALKERS」及び「ウォーカーズ」に通ずるものであるから(甲第16号証及び同第17号証)、本件商標がその指定商品中「履物」に使用された場合には、該「WALKER」及び「ウォーカー」の部分は、単に商品の品質を表示するにすぎないものと理解される。
すなわち、本件商標中「WALKER」及び「ウォーカー」の部分は、自他商品識別力が極めて希薄である。
したがって、本件商標の要部すなわち自他商品識別力を有する部分は、「NURSE」及び「ナース」の部分にあるから、該要部部分から「ナース」の称呼が生ずることは明らかである。
このように、本件商標と引用各商標とは、「ナース」なる共通の称呼を生ずるものであるから、両商標は称呼の点において相類似するものであると共に、指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
さらに、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものであることは、特許庁商標課編「商標審査基準(改訂第7版)」第29頁(甲第18号証)に照らしても明白である。
ちなみに、本件商標は、「NURSE」及び「ナース」の文字と「WALKER」及び「ウォーカー」の文字とが結合することによって、商標全体で固有の観念を生み出すものではないから、「NURSE」及び「ナース」の文字と「WALKER」及び「ウォーカー」の文字とを常に一体不可分のものとして認識しなければならない必然性はない。
本件商標から「ナース」の称呼が生ずることは、甲第19号証ないし同第23号証の審決例に照らしても明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用各商標は、前述した通り、著名登録商標である。
そうであれば、取引者・需要者の注意が、本件商標の構成中「NURSE」及び「ナース」の部分に集中することは明らかであり、該部分から「ナース」の称呼、観念が生ずるため、取引者・需要者は、著名登録商標である引用各商標を直ちに想起するものと考えられる(甲第24号証判決参照)。
そして、請求人は、ナース印の看護婦グツとともに、看護婦向けの「カーディガン」「ストッキング」「ソックス」「ハイソックス」「ナースピン」等も同時に製造、販売している(甲第6号証ないし同第14号証)。
したがって、これらの商品に、「NURSE」及び「ナース」の文字を含む本件商標が使用された場合は、あたかも請求人の取り扱いに係る商品であるかのように、取引者・需要者が商品の出所を混同するおそれが極めて大きいことは明らかである。
さらに、前掲商標審査基準第43頁(甲第25号証)に照らしても、本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものであることは明白である。
(4)被請求人の答弁に対する弁駁
ア 自他商品識別機能を有しない商標であっても、それが使用されることにより、自他商品識別機能を発揮し得るようになることについては、商標法上それを前提とした規定(商標法第3条第2項)があることに照らせば当然肯定されるべきである。
したがって、自他商品識別機能を有しない商標であっても、使用により自他商品識別機能を発揮し、周知・著名な商標になり得るのであるから、自他商品識別機能を発揮できない商標は、周知・著名な商標になり得ないという被請求人の主張が成り立たないことは明らかである。
イ 月刊誌「看護」は、通常、病院・医院等において定期購読されており、ナースステーション等で看護婦が回し読みするケースが多いため、「看護」誌の読者は、実際の発行部数よりもはるかに多いのが実態である。確かに、被請求人が主張されているように、単純計算すれば、「看護」誌は、看護婦及び准看護婦の0.8%程度の者にしか購読されていないということになるが、実際の読者は、その何倍もの人数に上っていることは言うまでもないことである。
しかも、請求人は、「看護」誌に単発的に広告を掲載しているわけではなく、40年以上も継続して、裏表紙という最も目に付きやすい場所に広告を掲載しているのであり、単純計算でも延べ250万人強、実際にはおそらく1000万人をはるかに超える看護婦等が「看護」誌に掲載された広告を見ていることになる。
したがって、引用各商標が、本件商標の出願前に、需要者間において、十分に認識され、周知・著名性を獲得していることは明らかである。
ウ 請求人は、本件商標中「WALKER」及び「ウォーカー」の部分は、「散歩靴」を意味する「WALKERS」及び「ウォーカーズ」に通じるものであるから、自他商品識別力が極めて希薄であると主張したのに対して、被請求人は、請求人の提出した辞書には一般社会人に必要としない単語まで掲載されており、「WALKERS」及び「ウォーカーズ」は、その必要としない単語に該当するものであると主張するが、業界において必要な単語が必ずしも辞書に掲載されているとは限らない。例えば、フラットヒールのパンプスのことを履物業界では「カッター(Cutter)」と呼んでいるが(甲第30号証)、新英和中辞典(甲第31号証)にも新英和大辞典(甲第32号証)にも、その語義は掲載されていない。
このように、辞書に掲載されていない語義であっても、業界においては、使用されている事例はままあるので、被請求人の上記主張が妥当でないことは明らかである。
以上詳述したように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)引用各商標の周知・著名性について
ア 「ナースシューズ」の語は、引用各商標の出願前である昭和35年頃から今日に至るまで「看護婦用の靴」を意味する普通名称として一般に通用しているものである(乙第1号証、及び同第2号証の1ないし8)。
したがって、「ナース」又は「NURSE」の商標を、商品「ナースシューズ」について使用するときは、商品「ナースシューズ」の使用者である看護婦(用途)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎないから、本来的に自他商品識別力を発揮できるものではなく、到底、周知・著名な商標になり得るものではない。そして商品「靴」について「ナースの靴」と言えば普通名称「ナースシューズ」を指すことは明らかであるから、この意味において「NURSE」又は「ナース」の文字を有する引用各商標は、既に希釈化(ダイリューション)しているといえる。したがって、引用各商標は、到底、周知・著名となり得る性質のものではない。
イ 月刊誌「看護」は、その発行部数が年間約63,000部、すなわち講読者数は毎月約5,250人であり、乙第3号証の厚生労働省統計表データベースに示された平成10年の時点で病院に従事している約69万の看護婦及び准看護婦の0.8%程度の者にしか講読されていない。したがって、月刊誌「看護」の宣伝広告に付された引用各商標は、0.8%というごく少数の看護婦や准看護婦にしか知られておらず、需要者である看護婦及び准看護婦の間で周知・著名に至っているとは決して言えない。
ウ 周知・著名を公的な証明書により具体的に立証しているものでないので、甲第5号証ないし同第14号証のみでは、引用各商標が周知・著名に至っているとは決して認めることができない
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 前記(1)で明らかにしたように、引用各商標が周知・著名な商標となり得ないことから、周知・著名な商標を含むことを前提とした商標審査基準に示された基準が本件商標に適用される余地は全くない。
イ 甲第16号証の「研究社新英和大辞典」(前者)及び甲第17号証の「研究社現代英和辞典」(後者)については収録語数又は見出し語が非常に多い。これに対して、乙第4号証の「新英和中辞典」には、請求人が散歩靴の意味であると指摘している「WALKERS」(「WALKER」ではない)は収録されていない。該「新英和中辞典」の英語学習者・一般使用者に必要と思われる総収録語数約7万5000語の範疇に「walkers」が含まれない。前者は収録語数23万5千のものであり、後者は見出し語12万2千のものであって、両者は一般社会人に必要としない単語まで掲載されており、「WALKERS」はこの必要としないものに該当する。
したがって、一般の取引において、取引者・需要者は、本件商標中「WALKER」及び「ウォーカー」の部分が「散歩靴」を意味する「WALKERS」及び「ウォーカー」に通じると容易に想起することは決してなく、本件商標中「WALKER」及び「ウォーカー」の部分が単に商品の品質を表す「WALKERS」及び「ウォーカーズ」に通じることを前提とする請求人の主張は、誤りである。
また、指定商品との関係において単に商品の普通名称又は品質を表示するにすぎない文字を含む商標に関連する審決例が本件商標に適用される余地は全くない。
ウ 本件商標に含まれる「NURSEWALKER」及び「ナースウォーカー」の語は、称呼する場合に特に強く発音する部分はなく各文字に対応する音に殆ど強弱の差異はなく、また冗長とも言えないもので、よどみなく一気に発音し得るものであり、「NURSE」及び「ナース」の文字部分のみが独立して認識されると見るべき事情は見出せない。
エ 本件商標は、「NURSE」及び「ナース」の部分のみに自他商品識別力を有する要部が存在するとは認められないことから、引用各商標と称呼はもちろんのこと、外観及び観念の点において類似するものはなく、商標法第4条第1項第11号規定に違反して登録されたものでない。この点は既に多数登録されている「○○○WALKER」及び「○○○ウォーカー」の登録商標(乙第5号証の1ないし10)と全く同様である。
ちなみに、本件商標の指定商品のうち「被服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」は、引用各商標の指定商品と非類似の関係にあり(乙第6号証)、商標法第4条第1項第11号規定を適用する余地は全くない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 前記(1)で明らかにしたように、引用各商標が著名な商標となり得ないことから、上記法条に関する請求人の主張は、誤りである。
そして、著名登録商標を一部に含む商標に関連する判決や商標審査基準に示された基準が本件商標に適用される余地は全くない。
イ 本件商標は、他人の著名商標を一部に含む商標でないため、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれは皆無であり、商標法第4条第1項第15号規定に違反して登録されたものでない。
以上述べたように、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものでないことから、本件商標登録は同法第46条第1項の規定の無効理由に該当するものではない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、前記又は別掲に示したとおり、「NURSE」の文字からなる引用A商標、山の形状の図形に「Nurse」の文字を配してなる引用B商標及び「ナース」の文字からなる引用C商標をナースシューズ、ナースピンなどの商品について使用していて(甲第5号証ないし同第14号証)、かつ、昭和36年より長年にわたり、月刊雑誌「看護」に上記引用各商標を使用したナースシューズなどの商品について広告を掲載していた事実があり(甲第15号証の1ないし7)、これらの事実よりすると、引用各商標は、申立人の業務に係るナースシューズなどの商品の商標として一定の使用実績を得ているものと認められる。
しかして、本件商標は、前記のとおり「NURSEWALKER」の欧文字及び「ナースウォーカー」の片仮名文字よりなるところ、これら各文字は同じ書体で一体的に表されていて、全体より生ずる称呼も冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成を「NURSE」と「WALKER」及び「ナース」と「ウォーカー」の各文字よりなるとみた場合、「NURSE(ナース)」は「看護婦」を、「WALKER(ウォーカー)」は「歩く人」をそれぞれ意味する英単語又は外来語として一般に知られているといえるから、本件商標は、「NURSE」と「WALKER」の2つの英単語を並記し、その読みとして「ナースウォーカー」の片仮名文字を併記したものみるのが自然であって、引用各商標の上記使用実績を考慮しても、「NURSE」及び「ナース」の文字部分より引用各商標を連想、想起させるとは判断することができない。
また、甲第16号証及び同第17号証によれば、英単語の「walker」は、複数形の場合「散歩靴」を意味することが認められるが、本件商標中の「WALKER」の文字は複数形でないばかりでなく、申立人の提出に係る証拠には、「WALKER」、「ウォーカー」の文字が「散歩靴」を意味するものとして普通に使用されているという事実を示す証拠はない。
そうとすれば、本件商標は、視覚上においても観念上においても「NURSE」、「ナース」と「WALKER」「ウォーカー」の両文字間には軽重の差を見出すことができないから、全体をもって一体不可分の構成よりなるものと認識され、それぞれの構成文字に相応して「ナースウォーカー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない一種の造語よりなると判断するのが相当である。
これに対し、引用各商標は、上記に示した構成よりなるものであって、それぞれの構成文字に相応して「ナース」の称呼、「看護婦」の観念を生ずるものであるから、本件商標と引用各商標とは、「ナースウォーカー」と「ナース」の称呼において、構成音数、音構成に著しい差異を有する非類似の商標であり、観念においては比較することができないものである。
それぞれの構成よりして、外観においても類似の商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
前述のとおり、本件商標は、引用各商標と類似するものではなく、他に両商標間には誤認、混同を生じさせる事由は見出し得ないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者がこれより引用各商標を連想、想起するものとは判断することができない。そうとすれば、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)結語
以上のとおりであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。