結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第30378号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第1393993号商標(以下「本件商標」という。)は、「春がすみ」の文字を縦書きしてなり、昭和51年1月12日登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同54年9月28日に設定登録され、その後、平成1年8月23日、同11年4月27日の2回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
請求人は、本件商標はその指定商品中「日本酒」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)商標権者である被請求人は、正当な理由なく、本件商標を継続して3年以上、日本国内でその指定商品中「日本酒」について使用していない。もし使用しているのであれば、該当する酒税を納付しているはずであるが、請求人が調べた範囲では、国税庁課税部酒税課のデータで該当する酒税を納付した形跡はなかった。
(2)本件商標の登録原簿(甲第1号証)によれば、本件商標には、専用使用権も通常使用権も登録されておらず、かつ、登録されていない通常使用権者が、本件商標を日本国内でその指定商品中「日本酒」に現在使用しているという事実も存在せず、過去3年以内に使用していたという事実も存在しない。
(3)同じく、登録原簿によれば、かって、本件商標と連合関係に立っていた登録商標は存在しておらず、したがって、連合関係に立っていた登録商標の使用は問題にならない。
よって、本件商標の指定商品中「日本酒」についての登録は取り消されるべきである。
請求人の関係者が、被請求人が経営する酒屋(店舗)に赴いて確認したところでは、被請求人は清酒を製造するかたわら、製造工場に隣接する酒屋において酒類の小売業を営み、清酒を含む酒類全般の販売を行っている。しかしながら、酒屋において本件商標を付した清酒は1本も陳列されていなかった。
清酒の製造業者が自ら酒屋を営んでいるのであれば、当然ながら、自らの酒屋において、常時、その清酒を陳列し、販売しているものである。ところが、実際には、その様な事実は見られない。これは常識的に考えて、極めて不自然であるといわざるを得ない。請求人が詳細に市場調査をした過程において、本件商標が商標権者及び使用権者のいずれによっても、過去3年以上使用された事実は発見されなかった。
被請求人が答弁書に添付した書類は、いわゆる「駆け込み使用」によって意図的に作成されたと考えられるものである。この点について以下に詳細に述べるものとする。
(ア)写真及び写真の複写について
乙第1号証として添付の写真並びに乙第2号証及び乙第3号証として添付の写真の複写には、撮影日の年月日、撮影場所、撮影者の住所、氏名についての記載が全くない。
通常の場合であれば、審判請求の答弁書に証拠方法として添付する写真や写真の複写は、いつ、どこで、(どこの)だれが撮影したかを表記するものであると、請求人は思料する。被請求人はどの様な事情により、これらの事実を明確にしていないのか、これを明確に答弁しなければならない。
乙第1号証として添付の写真の右下には、「99 5 31」との表示が見られるが、これは撮影日が1999年5月31日であることを示しているものと考えることが可能である。
しかしながら、商標法第50条に「...その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品...についての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品...に係る商標登録の取消しを免れない。...」と明記されていることからも、この日付では、不使用取消審判請求の登録日から過去3年以内に本件商標が使用されたことを証明していることにはならないと、請求人は思料する。
乙第2号証として添付の写真の複写には、その中央に本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶が撮影されているが、何故か、肝心の値札の価格が撮影されていない。請求人は、これは単なる撮影者の技術的問題ではないと思料するものである。これについては、後述の納品書と密接な関連があるので、そちらで詳細に述べることにする。
(イ)注文書について
乙第4号証として添付の注文書は、手書きによって作成されたものである。よって、この注文書を作成した人物の住所及び氏名並びに作成年月日を明確にするべきである。
この注文書は文面から判断すれば、明和酒類有限会社から有限会社堀川酒造店に出されたものである。つまり、明和酒類有限会社の関係者が手書きにより作成したことになる。しかしながら、この注文書は内容的にあまりにもきっちりとした文面となっている。通常の酒類の取引において.初めて取り引きをする相手でない限り、商品の注文は電話でされたり、ファクシミリによって注文書が発送されるものである。
仮に、電話での注文により、注文していない商品が届いたり、商品の数量が多すぎる場合には、意図しない商品の受け取りを拒めば済むことであり、また、注文した商品の数量が不足していれば、追加を要求すれば事足りることであって、電話での注文は注文者にとってリスクがない方法である。
また、乙第4号証として添付の注文書にはファクシミリで送信された形跡が全く見られない。これは注文書がファクシミリによって送信されたものではないことを如実に示している。
被請求人が注文書は郵便により送付されたとの主張をするのであれば、注文書の郵送に使用した消印の付いた封書を提出すべきである。郵便物の消印は郵便物が送付された日付を客観的に証明するものである。
さらに、被請求人と明和酒類有限会社との取引が、恒常的に手書きの注文書によって行われていたとするのであれば、被請求人の元には明和酒類有限会社からの注文書が他に何枚も届いていたはずであり、これらの注文書を提出すべきである。
請求人の調査によると、明和酒類有限会社は玉井道子を代表取締役とし、明和酒類有限会社の所在地において「酒のタマイ」及び「玉井酒店」の両方の名称を1件の店舗に使用して酒類の販売を行っている。日常的な顧客への酒類の販売の対応は、代表取締役である玉井道子によってなされている。
このことから手書きの注文書は玉井道子本人によって作成されたと考えるのが常識的である。ところが、この注文書には「酒のタマイ」及び「玉井酒店」の通称や代表取締役である玉井道子の名前が一切出てこない。さらには、この手書きの注文書の筆跡は、請求人が入手した玉井道子の筆跡とは明らかに異なるものである。
請求人は、注文書が今回の不使用取消審判に際して、意図的に日付を遡って、被請求人周辺の関係者によって作成されたとの疑念を抱くものである。被請求人はこの手書きの注文書を作成した人物の住所及び氏名並びに作成年月日を明確にすべきである。
請求人は、被請求人が提出する全ての書類について詳細な検証をしなければならないと思料する。
特許庁に提出される審判書類は、個人の権利、財産に係わるものであり、特許庁において長く保管され公文書となるものである。その内容に不明朗な箇所があってはならず、その疑いを抱かせることさえあってはならないと思料する。
万一、被請求人が請求人の要求を受け入れることが出来ないのであれば、乙第4号証として添付の注文書を不適切なものとして、被請求人自らが撤回すべきである。
(ウ)納品書について
乙第5号証として添付の納品書は、受注者である被請求人が注文者(明和酒類有限会社)に発行したものである。それにもかかわらず、なぜ、納品書が被請求人の手元に存在していたのか大いに疑問である。
もっとも、この程度の内容であれば、受注者である被請求人が過去の日付に遡って作成することは極めて容易なことであり、本件商標を表示する手段として、この日付で納品書が用意された可能性を否定することは出来ないと思料する。
被請求人がこの納品書に基づく取引が事実であると主張するならば、被請求人から請求書又は領収書が当然に発行されていなければならず、その控書類が存在していなければならない。注文者(明和酒類有限会社)の手元にあるはずの納品書が乙第4号証として提出されているにもかかわらず、受注者である被請求人の手元にあるはずの請求書や領収書の控書類が提出されなかったのはなぜか、大いに疑問である。
この納品書の単価の項目には、「787」と表示されている。これは清酒1.8リットル瓶の価格が1本「787円」を示しているものと考えられる。
しかしながら、請求人の関係者が納品書の宛名である明和酒類有限会社である「酒のタマイ」及び「玉井酒店」では、本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶入りの清酒が意外にも「730円」で販売されていたとの情報を得ている。つまり、これは明和酒類有限会社は仕入れ価格よりも57円も安い価格で、損をしながら清酒を販売していたことになる。これは常識では到底考えられないことである。
被請求人は、平成10年10月15日付けで発行された納品書が真実であると主張するならば、これに表示された請求金額が被請求人に支払われたことを証明する資料、並びに、明和酒類有限会社である小売店の「酒のタマイ」及び「玉井酒店」において本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶入りの清酒が、この時期に販売されていたことを示す資料の提出を求めるものである。
万一、被請求人が請求人の要求を受け入れることが出来ないのであれば、乙第5号証として添付の納品書を不適切なものとして、被請求人自らが撤回すべきである。
(エ)「容器詰容器別受払 課税台帳」について
乙第6号証(乙第5号証とあるが乙第6号証の誤り、以下同じ)として添付の「容器詰容器別受払 課税台帳」は、乙第7号証(乙第6号証とあるが乙第7号証の誤り、以下同じ)として添付の「移出 課税移出」と照合してみると、在庫を絶やさないようにしながら、本件商標に係わる清酒を有限会社堀川酒造店から堀川酒造店小売部に、つまり被請求人が製造した清酒を被請求人自身が小売販売をしていることが示されている。
ところが、この記載部分は、平成10年10月1日から平成10年12月27日までの期間だけのものであり、平成10年10月15日付けで1度だけ堀川酒造店小売部以外の明和酒類有限会社に180本が販売されたことになっているにすぎない。
乙第6号証の「容器詰容器別受払 課税台帳」に対応する乙第4号証の注文書及び乙第5号証の納品書(注文書とあるが納品書の誤り)について、それぞれに疑義が存在していることから、平成10年9月30日以前及び平成10年12月28日以降の「容器詰容器別受払」についても、請求人はその内容を提示するよう求めるものである。
(オ)「移出 課税台帳」について
乙第7号証として添付の「移出 課税移出」の平成10年10月15日付けの欄の記載は、乙第5号証の納品書に対応するものと考えられる。
しかしながら、他の項目を見ると不自然と思われる箇所が多々見受けられる。これらの箇所はこの「移出 課税移出」の真偽を検証する上で重要なものである。
この「移出 課税移出」の「価額」の項目は、単価に個数を乗じた金額にその5%の消費税分が加えられたものである。税法上1円未満の端数は全額を切り捨てることとなっている。ところが.請求人の計算によると、10月16日付けの価額の項目は24,791となっている。
これは個数(30本)に単価(787円)を乗じた金額(23610円)にその5%の消費税分(1,180円50銭)が加えられ、1円未満の端数の全額(50銭=0.5円)を切り捨てることになっていることから、24,790円で処理されなくてはならない。
ところが、24,791円として処理されている。これと同様の処理は、以下の日付についても見られる。
年月日 価額
10月25日 24,791
12月 3日 24,791
12月27日 24,791
12月29日 24,791
請求人は、この事実から「移出 課税移出」の「摘要」の項目に表示された「春がすみ」は、つじつま合せのために、他の名柄のものと書き換えられたか、又は「移出 課税移出」自体が創作された可能性があると思料する。この「移出 課税移出」に記載された内容が真正であるとするならば、なぜ税法とは異なる処理がなされているのか、被請求人はその理由を明確に答弁すべきである。
もっとも、この「移出 課税移出」の「摘要」の項目には、「春がすみ」との表示がなされているが、これは商標法第2条第3項の「使用」の何れにも該当するものではないことには、被請求人にも異論はないと思料するものである。
(1)被請求人である「有限会社堀川酒造店」の住所は商標登録原簿に記載されているとおり「茨城県西茨城郡岩瀬町大字岩瀬178番地ノ1」である。また、請求人の関係者が赴いた酒屋は「堀川商店」であり、その住所は「茨城県西茨城郡岩瀬町大字岩瀬178番地ノ2」である。被請求人が提出した乙第8号証の名簿によると「堀川商店」は「堀川タツ」が責任者となっている。
つまり、被請求人と請求人の関係者が赴いた「堀川商店」とは、いわば壁1枚でとなりあった者どうしであり、被請求人の代表者である「堀川純一」と、請求人の関係者が赴いた「堀川商店」の責任者である「堀川タツ」とは、同姓であることからも親族であることが容易に窺える。
請求人の関係者が赴いた「堀川商店」では、「春がすみ」の清酒は1本も陳列されておらず、販売もされていなかった。これについて、被請求人は第2答弁書で「...被請求人は、隣接しているとはいえ前記の堀川商店(堀川タツ)に対し、「春がすみ」の清酒を販売したことはないので、同店に本件商標を付した清酒が1本も陳列されていないのは当然であって、何ら不自然ではない。...」と「春がすみ」の清酒を販売したことがないことを明確に認めている。
しかるに、請求人の関係者が赴いた「堀川商店」では、被請求人が製造する「桜川」の清酒は陳列されおり、請求人の関係者は同店でこれを購入しいる。
常識的に考えても、被請求人の提出した資料によれば、被請求人は年間千数百本も「春がすみ」を製造し、他県である群馬県邑楽町明和町の「明和酒類有限会社」に一度に180本も出荷することもあるというのに、隣で酒類販売業を営む親族に対して「桜川」の清酒は販売しているが「春がすみ」の清酒は1本も販売していないというのは、そのほうがかえって不自然である。
むしろ、通常であれば、隣人が他人であったとしても、隣人のよしみで損得抜きで商品を販売(卸)するものであり、まして、隣人が親族であればなおさらである。
(ア)被請求人の経営する「酒のエキスパート」について
被請求人は、第2答弁書において「酒のエキスパート」(茨城県西茨城郡岩瀬町明日香1−9)は被請求人が経営する小売部であることを認めている。つまり、「酒のエキスパート」は被請求人とは独立した法人ではなく、被請求人の組織内で酒類を小売販売している単なる出先にすぎないということである。
これは「酒のエキスパート」が酒類を販売したということは、すなわち被請求人が酒類を販売したということに他ならない。
したがって、被請求人と「酒のエキスパート」との間の書類は全て内部的な書類にすぎないのでであり、仮に、これらの内部的な書類に本件商標が表示されていたとしても、それは本件商標の使用を認定する資料とはならない。
(イ)「月次商品別売上(ベスト順位)」について
乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」を詳細にみると、全頁の商品名の項目には「春かすみ」と記載されているが、本件商標は「春がすみ」であることから、2文字目の清音の「か」と濁音の「が」との明瞭な不一致が存在している。同じ商品名の項目には、半濁音の「プ」・「パ」や濁音の「ザ」・「ぐ」・「ぎ」・「グ」等が使用されていることから、この不一致は機器等の性能の問題により止む得ず「が」を「か」に置き換えて使用しているのではないことは一目瞭然である。
また、乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」は、商品名の項目に記載された商品が、どこの、誰に、いつ販売されたかを示すものでは全くない。
さらに、乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」の全頁を詳細にみても、被請求人の名称はどこにも記載されておらず、そればかりでなく、被請求人を伺わせるものさえ全く記載されていない。これでは乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」が被請求人のものとはいえず、たとえ、全酒類の10年分のデータを同じように出してきたとしても、本件商標の使用を認定する資料とはならない。
(ウ)写真及び写真の複写について
被請求人は、第2答弁書において、乙第1号証ないし乙第3号証の写真及び写真の複写は、撮影日が1999年(平成11年)5月31日であったことを、後ればせながら明確に認めている。
乙第1号証ないし乙第3号証の写真及び写真の複写が「...店内での陳列販売状況を説明するものである。」と述べているが、これは撮影日である1999年(平成11年)5月31日以降に限っていえることであり、1999年(平成11年)5月30日以前については本件商標の使用を認定する資料とはなりえない。この1点を捉えてみても、本件商標を「駆け込み使用」と判断することは困難ではない。
(エ)注文書について
乙第4号証として提出された注文書は、本件商標の使用を証明するうえで最も重要な証拠となるものである。つまり、乙第4号証の注文書はこの度の不使用取消審判請求の成否の鍵を握っていると言っても過言ではないのである。
しかるに、請求人の印象として、注文書は答弁書の提出のために意図的に創作されたと思われる不自然な出来栄えとなっているのである。そこで、請求人は第1回弁駁書で注文書の真偽を是非とも明確にしなければならないと決意したのである。
請求人は第1回弁駁書において、「注文書を作成した人物の住所及び氏名並びに作成年月日を明確にすべきである。」と明確に要求しているのである。
それにもかかわらず、被請求人は、第2答弁書において乙第4号証の注文書の作成者が「群馬県邑楽郡明和町田島639の明和酒類有限会社 代表者玉井道子の夫・芳一」であるとしか述べていない。この住所は明和酒類有限会社のものとしか判断できないものであり、「玉井道子の夫・芳一」の住所は依然として不明のままである。
また、「玉井道子の夫・芳一」の記載から「芳一」の姓が「玉井」であると推測することは可能である。それでは、なぜ、氏名を「玉井芳一」と正確に記載することが出来なかったのか。これは「玉井道子の夫・芳一」の存在を曖昧にしようとするものであり、請求人の「玉井道子の夫・芳一」の確認作業を困難にしようとするものである。これは被請求人の立証責任を放棄しているとしかい言いようがないものであり、審判請求の制度を尊重するもののあるべき姿ではないと思料せざるを得ない。
請求人の限定された調査ではあるが、「群馬県邑楽郡明和町」に「玉井道子」の名で電話番号は存在しているが、夫の「玉井芳一」の名で電話番号は存在していない、これが被請求人が「玉井道子の夫・芳一」の存在を曖昧にしようとした謎を解く鍵ではないかと思料される。
乙第4号証の注文書に平成10年10月9日の記載がある。これが注文書が作成された日付との推測は可能である。
しかしながら、乙第4号証の注文書が平成10年10月9日に作成されたことを裏付ける客観的資料(例:消印のある封筒等)が提出されておらず、作成者も明確にされていない以上、作成者自身によって乙第4号証の注文書を作成した年月日を明確にする必要があると思料する。
しかも、頻繁に、明和酒類有限会社が被請求人から「春がすみ」の清酒を仕入れていたとするのであれば、当然ながら、被請求人は乙第4号証の注文書以外にも注文書が存在していなければならず、被請求人はこれらを全て提出すべきである。そうでなければ、後にも先にもこの時に限り注文書を1通だけ作成したという不可思議なことになる。注文書がこれ1枚だけというのは余りにも不自然すぎる。
そこで、次のとおり、再度重ねて問う。
(a)乙第4号証の 注文書の作成者の住所、(b) 乙第4号証の注文書の作成者の姓と名、(c)乙第4号証の注文書の作成年月日、等について筆跡照合のため本人自筆の書面をもって明らかにされることを求める。
さらに、(d)乙第4号証の注文書の作成者の明和酒類有限会社における立場・役職・地位及び日常の業務内容並びにそれを証明する資料、(e)乙第4号証の注文書以外の全ての注文書及び日付を裏付ける客観的資料(例:消印のある封筒等)の提出を求めるものである。
被請求人は乙第10号証として購入事実確認書を提出しているが、それより、請求人が要求している「玉井道子の夫・芳一」による本人自筆の書面を提出すべきが本筋である。
乙第4号証の注文書の真偽が明確にされていない現状での乙第10号証の購入事実確認書は無意味としかいえないものである。
なによりも指摘しておかねばならないのは、乙第4号証の注文書において押印された代表者印と、乙第10号証の購入事実確認書において押印された代表者印とは、肉眼で容易に大きさが異なると認識し得るものであり、明らかに同一とは認められない。
この点からも乙第4号証の注文書について疑念を抱くのは当然である。
もし、乙第4号証の注文書において押印された代表者印が真正であるとすれば、乙第10号証の購入事実確認書において押印された代表者印は、必然的に虚偽となる。この点においても乙第10号証の購入事実確認書は無意味でありが、そればかりでなく、これが商標登録の取消しを免れる目的の虚偽であるとすれば「行使の目的で、他人の印章若しくは署名を利用して事実証明に関する文書を偽造した」ことになるのである。当然ながら、この場合、実行した者のみならず命令・指揮した者や共同して実行した者についても重大な責任を追及されることになってしまう。
そこで、請求人は乙第10号証の購入事実確認書について、これが手書きによる書面であることから、ア 作成者の住所、イ 作成者の姓と名、ウ 作成年月日、について筆跡照合のため本人自筆の書面をもって明らかにすることを求める次第である。
請求人は被請求人に対して決して無理難題を要求しているのではないと思料するものであるが、万一、被請求人が請求人の要求を受け入れることが出来ないのであれば.乙第4号証の注文書を不適切なものとして、被請求人自らが撤回すべきである。
(オ)納品書及び請求書(控)について
乙第11号証の平成10年10月15日付けの請求書(控)は乙第5号証の平成10年10月15日付けの納品書に対応し、この乙第5号証の平成10年10月15日付けの納品書は乙第4号証の平成10年10月9日付の注文書に対応していると思料する。
ところが、乙第14号証の平成11年2月21日付けの請求書(控)は乙第13号証の平成11年2月21日付の納品書に対応しているが、乙第13号証の平成11年2月21日付けの納品書に対応する注文書は全く提出されていない。
なぜ、乙第13号証の納品書に対応する注文書だけが提出されないのか。
乙第11号証の請求書(控)は、請求人が清酒の価格の仕入れ値(787円)と販売価格(730円)との不適合を指摘した後に、第2答弁書ではじめて提出されたものである。
乙第5号証の納品書には「NO. 013」と通し番号が記入されているが、これに対応するはずの乙第11号証の請求書(控)には通し番号が全く記入されていない。
また、乙第14号証の請求書(控)についても、これに対応するはずの乙第13号証の納品書には不鮮明ながら通し番号が記入されているが、乙第14号証の請求書(控)には、やはり通し番号が記入されていない。
納品書には通し番号が記入されていながら、なぜ請求書(控)には通し番号が記入されていないのか。請求人の指摘によって後から提出される書類に限って通し番号が記入されていないのは不可解としかいいようがない。
納品書及び請求書(控)は、注文書に対応するものであり、乙第5号証の納品書及び乙第11号証の請求書(控)は、乙第4号証の注文書に対応していなければならない。
乙第4号証の注文書は答弁書の提出のために意図的に創作されたとの疑念が払拭されないからには、これに対応する乙第5号証の納品書及び乙第11号証の請求書(控)についても答弁書の提出のために意図的に創作されたとの疑念が生じてくるのであり、本件商標の使用を認定する資料にはならないと思料する。
乙第14号証の請求書(控)及び乙第13号証の納品書についても、これに対応する注文書の提出が拒まれている現状においては、乙第5号証の納品書及び乙第11号証の請求書(控)と同じく、答弁書の提出のために意図的に創作されたとの疑念が払拭されないのであり、本件商標の使用を認定する資料にはならないと思料せざるを得ない。
(カ)領収証について
乙第5号証の納品書及び乙第11号証の請求書(控)の日付はどちらも平成10年10月15日であり、乙第12号証(乙第13号証となっているが、乙第12号証の誤り、以下同じ)の領収証の日付が平成10年10月15日であることから、これを見る限りにおいて商品の納品時に対価が現金で支払われたことになる。
ところが、乙第12号証の領収証を詳細にみると、通し番号が全然ないし、印紙税法で定められた収入印紙も貼付されていない。さらには、「扱者印」についてわざわざ「取扱者印なきものは無効とします」と特記されているにもかかわらず、取扱者の押印がない。これで正規の領収証であるといえるのか。
この領収証が売買契約の対価の支払いを証するものとして、対価を支払った側にとって納得できるものであったとしても、本件商標の使用を認定する資料としては信憑性に欠けるものであるといわざるを得ない。
この様な領収証であれば、被請求人は遡った年月日でいつでも簡単に用意することが出来ると思料されるのであり、これではつじつま合わせのために創作されたと判断されても仕方がない。
(2)被請求人によって提出された資料の中には、答弁書の提出のためにつじつま合わせのために意図的に創作されたとしか判断できないようなものさえ含まれている。この様な状況下では、いずれの資料においても信憑性に疑問を抱かざるを得ないのであって、本件商標の使用を認定することは困難であると思料するものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由、弁駁に対する答弁及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第24号証を提出した。
被請求人は、その商号のとおりの「酒造メーカー」であって、その製造販売に係る商品「清酒」について、昭和60年10月4日より現在に到る迄、継続して本件商標を使用しているものである(乙第1号証ないし乙第7号証)。
以上の次第であるから、本件商標は、いずれにしても商標法第50条第1項の規定に該当しない。
(1)先ず請求人は、「被請求人が経営する酒屋(店舗)に赴いて確認したところでは、被請求人は清酒を製造する傍ら、製造工場に隣接する酒屋において酒類の小売業を営み、清酒を含む酒類全般の販売を行っている。しかしながら、酒屋において本件商標を付した清酒は1本も陳列されていなかった。」と主張するが、これは主張の前提において誤りがある。
すなわち、これは別添の水戸小売酒販組合の岩瀬区の名簿に示されるように、被請求人会社に隣接する酒屋は、岩瀬町岩瀬178−2 堀川タツ名義の「堀川酒店」であり、被請求人の経営する小売部ではない。
被請求人の経営する小売部は、岩瀬町明日香1−19「酒のエキスパート」である(乙第8号証参照)。
しかも、被請求人は、隣接しているとはいえ前記の堀川酒店(堀川夕ツ名義)に対し、「春がすみ」の清酒を販売したことはないので、同店に本件商標を付した清酒が1本も陳列されていないのは当然であって、何ら不自然ではない。
(2)請求人は乙第1号証ないし乙第3号証の撮影の年月日等の記載がない、との主張には次のように明らかにする。
撮影日 1999年(平成11年)5月31日
撮影場所 茨城県西茨城郡岩瀬町明日香1−19(酒のエキスパート)
撮影者 (有)堀川酒造店 代表取締役 堀 川 純 一
また、請求人は、乙第1号証ないし乙第3号証(写真)の撮影年月日が不使用取消審判請求の登録日の後ではないかとの主張は、実情を知らないものである。
すなわち、通常において、商標権者は、現実に使用されている商標に対して取消請求されることなどは全く想定していないものであり、したがって、そのために予め写真を用意しておくことなどはないのが普通である。
乙第1号証ないし乙第3号証の写真は、後述する被請求人の小売部「酒のエキスパート」で販売した事実を証する「月次商品別売上(ベスト順)」の商品「春がすみ」の店内での陳列販売状況を説明するものである。
また、請求人は、本件商標が審判の請求の登録前3年以内の使用がないが如き主張に対しては、次のように明らかにする。
すなわち、被請求人たる(有)堀川酒造店の小売部「酒のエキスパート」で本件商標「春がすみ」を付した清酒を審判請求の登録前3年以内に販売していたことは、小売部「酒のエキスパート」で使用しているコンピューターポスレジで売上管理している清酒の月次商品別売上(ベスト順)によって明らかである(乙第9号証参照)。
前記の月次商品別売上は毎月データをプリントアウトするものであり、該データを出力した日時がデータ右上に印字されるものであるから自由に改ざんは出来ず、したがって「駆け込み使用」によって意図的に作成されたものではない。
なお、このデータには清酒だけでなく、全酒類の10年分を保存しているが、今回は1998年5月から1999年4月分の清酒についてを提出する。
(3)請求人の「注文書」についての主張には、被請求人は次のように答弁する。
すなわち、被請求人が先に提出した乙第4号証の注文書は、群馬県邑楽郡明和町田島639の明和酒類有限会社 代表取締役 玉井道子の夫・芳一が作成したものである。
この注文書(乙第4号証)にもとづいて納品書(乙第5号証)とおりに納品販売したことを証するため、明和酒類有限会社 代表取締役 玉井道子の作成した「購入事実確認書」を今回提出する(乙第10号証参照)。
(4)請求人の「納品書」についての主張には、被請求人は次のように答弁する。
すなわち、被請求人の納品書は同じ様式の2枚複写であり、切り離した1枚を注文者(明和酒類有限会社)に渡し、控えの納品書が被請求人の手元に残っているのは当然であり、したがって、先に提出の乙第5号証は被請求人の手元にあるのをコピーしたもので、何ら問題はない。
また、納品書には通し番号が印字され、かつ課税移出台帳にもその出荷伝票番号が記録されるので、過去の日付に遡って作成することは困難であり、しかも税務調査もあって不正をするわけがない。請求人の主張は酒税行政を知らない者の意見といわざるを得ない。
さらに、価格については酒販店が決定することであり、被請求人がそれに関与することはできないが、先に提出した納品書(乙第5号証)の平成10年10月15日納品分については、請求書(乙第11号証参照)の控えをみると、卸し価格787円、値引131円となっており、差引656円(消費税抜価格)で明和酒類有限会社は仕入れているから、730円で販売しても採算はとれる。
したがって、「損をしながら清酒を販売していた」との請求人の主張は成り立たない。
むしろ、酒類業界が建値で納品書を作成し、別に値引を計上して請求書を発行するという実情を看過したものである。
なお、上記の請求書(乙第11号証)とおりの金額が入金されたことを示す領収証(乙第12号証参照)を提出する。
さらにまた、使用事実を示す補強的資料として、平成11年2月21日に明和酒類有限会社に納品した分の納品書(乙第13号証参照)、請求書(乙第14号証参照)、当日に代金として受領した「支払場所 東和銀行館林支店 支払人 明和酒類有限会社」発行の小切手について、被請求人が平成11年2月23日に取立依頼をした常陽銀行岩瀬支店の代金取立手形通帳(乙第15号証参照)及びその入金を示す同支店の普通預金通帳(乙第16号証参照)を提出する。
(5)請求人の「容器詰容器別受払 課税台帳について」の主張には、被請求人は次のように答弁する。
すなわち、被請求人は平成10年9月30日以前の「詰口酒類の容器別受払」(乙第17号証参照)及び平成10年12月28日以降の「詰口酒類の容器別受払」(乙第18号証参照)を提出する。
なお、請求人は、本件商標に係わる清酒が堀川酒造店小売部と明和酒類有限会社でしか販売されているにすぎないという。
しかし、被請求人の清酒「春がすみ」は、アルコール14度の低価格酒であるため、被請求人としては多くの酒販店で販売したくないとの事情によるものである。
(6)請求人の「移出 課税移出について」の主張には、被請求人は次のように答弁する。
すなわち、請求人は、税法上1円未満の端数は全額を切り捨てることになっていると主張している。
しかし、被請求人の多くの取引先では、消費税について、1円未満の端数処理は「四捨五入」が多数派であって、「切り捨て」は少数派であり、したがって、切り捨てなければならないという請求人の主張は認められない。
請求人は、酒税を算出する場合、1円未満を切り捨てて処理することと、混同しているものと思われる。
被請求人は、平成12年5月16日付けの審尋に対し、次のように回答する。
(1)「春がすみ」ラベルの印刷年月日、枚数、発注依頼書、支払証明書等の書類について。
被請求人は、平成4年6月高桑美術印刷(株)に電話で発注依頼し(電話発注のため日時は不明)、平成4年7月1日付けの納品書(乙第19号証参照)及び同年7月20日付の請求書(乙第20号証参照)を受け、同年9月3日付の領収証(乙第21号証参照)によって明らかにする。
なお、被請求人「春がすみ」のラベルは年間1,500〜2,000枚前後の使用であるため、平成4年に印刷したラベルを現在も使用している。
また、領収証については、被請求人において紛失しているため、高桑美術印刷(株)の控を提出する。
(2)被請求人提出の乙第1号証ないし乙第3号証の撮影年月日、撮影者、支払証明書については、次のとおりである。
撮影日 1999年(平成11年)5月31日
撮影場所 茨城県西茨城郡岩瀬町明日香1−19((有)堀川酒造店の小売部・酒のエキスパート)
撮影者 (有)堀川酒造店 代表取締役 堀 川 純 一
(3)乙第4号証の「注文書」が郵便であればその封筒について。
被請求人は、封書についてはスペース等の問題もあり、保管していない。
(4)乙第4号証(乙第5号証の誤記)の納品書に伴う入金状況が判る受領書等について。
被請求人は、乙第5号証の納品書に伴う平成10年10月15日付けの請求書(乙第22号証参照)、及び平成10年10月15日付けの領収証(乙第23号証参照)を提出し、入金状況を明確にする。
(5)乙第7号証「課税移出台帳」の10年10月15日以前・以後の明和酒類(有)との取引状況が判る課税移出台帳について。
被請求人は、平成10年10月15日以前・以後の明和酒類(有)との取引状況が判る課税移出台帳、すなわち平成9年2月6日〜7月30日及び平成10年12月31日から同11年3月5日までの課税移出台帳(乙第24号証参照)を提出する。
(1)請求人は、第2回弁駁書2頁の15ないし18行にかけて「請求人の関係者が赴いた「堀川商店」では「春がすみ」の清酒は1本も陳列されておらず、販売もされていなかった。」と述べている。
他方、第1回弁駁書によると6頁の1行目より、請求人の関係者が納品書の宛名である明和酒類有限会社である「酒の夕マイ」及び「玉井酒店」では本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶入りの清酒が意外にも「730円」で販売されていたとの情報を得ている、と述べている。
これらの陳述からして、請求人の関係者は、現実に「玉井酒店」と「堀川商店」の店内に入って調査していることは明らかである。
そして、「堀川商店」には「春がすみ」の清酒は1本も陳列されておらずと、断定していながら、有限会社堀川酒造店が販売していると主張する明和酒類有限会社である「酒の夕マイ」及び「玉井酒店」については、1本も陳列していないと断定しないばかりか、本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶入りの清酒が意外にも「730円」で販売されていたとの情報を得ていると述べている。
このことは「語るに落ちた」という言葉がある様に、これは「春がすみ」の清酒が「玉井酒店」において730円で販売されていた事を認めたものに他ならない。
また、請求人は、堀川商店に対して「桜川」の清酒は販売しているが、「春がすみ」の清酒は1本も販売していないのは不自然であると主張しているが、「玉井酒店」に対しては当社の主力商品である「桜川」を販売していない事には何らふれていない。
これらから明らかなように、隣家の堀川商店がいずれの銘柄の清酒をどの蔵元あるいは、どの卸屋から購入するかは、その経営者が自由に判断する事であり、「桜川」は購入しているが「春がすみ」は購入していないというのは不自然であるというのは、あまりにも独断的な主張である。
(2)請求人は、「酒のエキスパート」は被請求人の小売部であるから、これらの書類は内部的であって使用を認定する資料にはならない、と主張するが、これは誤りである。
何となれば、被請求人たる「有限会社堀川酒造店」と、その小売部たる「酒のエキスパート」間のみで取引したものではなく、「酒のエキスパート」を介して一般の需要者に販売しているからである。
(3)請求人は、乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」の商品名の項目に「春かすみ」と記載されており、かつ、この乙第9号証に被請求人の名称が記載されていない、と主張するが、これまた誤りである。
何となれば、乙第9号証の「月次商品別売上(ベスト順位)」は被請求人の自社管理上作成しているもので、その理由は、酒販店は、以前は毎月、その後4半期毎に、現在でも年1回は税務署に売上数量の報告義務があり、その為の正確な資料を採る為に、当社ではコンピュータによる売上の単品管理をしているのであり、「春がすみ」が「春かすみ」と記載されているのは単なるパソコンの操作ミスであり、かつ、表紙に相当するものは必要ないからである。
(4)請求人は、写真及び写真の複写について主張している。
これに関しては、上記第3、2、(2)の第2答弁書で述べたとおりである。
(5)請求人は、乙第4号証の「注文書」について言及している。
注文が何でなされたか、例えば電話、FAX、手紙等をいかに証明したとしても、それに対する納品がなされたかが証明されなければ、注文自体の証明は意味をなさなくなってしまうのであるから、注文書の存在を厳密に要求する事はあまり重要ではない。
それよりも、支払いがなされた事を証明すれば、商品を購入した事の裏付けとなる。
本件の場合、明和酒類有限会社は、売買と同時にその振出しの、商品代金に相当する金額の小切手を、有限会社堀川酒造店に支払っており、まさに商品購入の事実は証明されたものといえる。無の証明は、あらゆる可能性をすべて否定しなければならないが、有の証明は、一つの存在を指摘すれば足りるわけである。
同様にして、本件商標が使用された事実がない事を証明する為には、被請求人を含む日本全国の酒販店が販売した事実がない事を証明しなければならない訳であるが、そのような事は不可能なので、請求人は先ず、被請求人の隣の堀川商店が、被請求人の経営する店と勘違いして「春がすみ」が一本も陳列していなかったので、使用していないと思い、取消審判の訴を起こしたのであろう。
ところが、当社の小売部である「酒のエキスパート」と明和酒類有限会社である「玉井酒店」で販売していると主張されたので,それを否定する為、無理な主張を続けているにすぎない。
(6)請求人は乙第12号証の領収書に通し番号がなく、かつ収入印紙の貼付がない等を主張している。
ところで被請求人においては、計理専門の担当者などはいないところから、ましてや現金決済の場合等、通し番号を付さないことが多々あり、かつ印紙は貼付されていないにせよ法律上は有効である。
(7)ところで、平成1年1月19日付けで秋田県仙北郡六郷町六郷字米町56番地の合名会社栗林酒造店が「春霞」の商標登録出願を行なったところ、本件商標「春がすみ」に類似するとの拒絶理由がなされたとして、今回と同様な取消審判の請求があったが、被請求人の使用が認められ、請求は成り立たない旨の審決がなされた。
しかして、今回、請求人「玉生かおり」から同様な請求があり、被請求人としては、継続して商標を使用してきた事実がある事から、容易に解決すると考えていた。
ところが税務署に毎年調査される関税帳簿や、納品書、そして銀行が証明した小切手の取立等の証拠を提出しても、請求人は頑として認めず、目的の為には手段を選ばないような無理な主張が感じられたので、不審に思い調べたところ、前記した平成1年の取消審判の請求人と同一人たる秋田県仙北郡六郷町六郷字米町56番地・合名会社栗林酒造店が商標「春霞」を登録出願(商願平9一162430号)したところ、本件商標を引用した拒絶理由通知がなされ、これに対し「意見書に代える上申書」が提出されていることが判明した。
しかも、上記の意見書に代える上申書では、「商標権者に対して、議渡交渉に全力を傾注したい」と上申しているが、被請求人に対して未だそのような事実は全くない。
換言すると、前記した商願平9−162430号の出願人と本件審判請求人は同じ代理人でもあるところから、両者は何らかの関係があるかとも思われる。
(8)以上の次第であるから、本件商標は、いずれにしても商標法第50条第1項の規定に該当しない。
(1)乙第1号証は、「春がすみ」のラベルの貼ってある清酒1.8リットル瓶の正面部分が写されている写真であって、写真の左下部分に「’99 5 31」の数字がある。
(2)乙第2号証及び乙第3号証は、同じく写真(答弁書原本には現物写真が貼付されている。)であって、上記「春がすみ」のラベルの貼ってある清酒の陳列されている状態と清酒のケースに収納されている状態であって、いずれも、「春がすみ」のラベルが貼られているものである。
(3)乙第4号証は、平成10年10月9日付けの被請求人宛の明和酒類有限会社からの手書きの「注文書」の写しである。
(4)乙第5号証は、被請求人からの平成10年10月15日付けの明和酒類有限会社宛の「納品書」の写しであつて、右上部にNo 013の数字、品名・容器別・本数・単価・金額の各項目欄に、清酒、1.8リットルびん、180本、787円、141660円、消費税(5%)の金額として、7083円、摘要として「低濃度酒(春がすみ)」の各記載がある。
(5)乙第6号証は、被請求人の容器詰容器別受拂(通称、課税台帳という)の写しであって、次頁の「詰口酒類の容器別受払」の表題の下に、佳撰級 銘柄 春がすみ アルコール分 14.4の記載、受入れ・払出しの区分の項目欄の年月日の項に10年10月1日、現在228本、10月15日、払出し180本、現在48本、...各記載がある。
(6)乙第7号証は、被請求人の移出(通称、課税台帳という)写しであって、次頁の「課税移出」の表題の下に、自製酒佳撰 適用税率 従量税 アルコール分 14.4の記載、容器(種類・個数)・数量・単価・価格・受取人(住所・氏名又は名称)・出荷伝票番号・摘要の区分の項目欄の年月日の項に10年10月15日、(1.8リットル・180本)、324000ミリリットル、787円、148,743円(群馬県 明和町・明和酒類(有))、1ー13、春がすみ、の各記載がある。
(7)乙第8号証は、岩瀬区の表題のある名簿の写しであって、(有)堀川酒造店 堀川純一、酒のエキスパート、西茨城群岩瀬町明日香1ー9、75ー0662、の各記載がある。
(8)乙第9号証は、98年5月から99年4月までの被請求人の月次商品別売上(ベスト順)の写しであって、98年5月では順位6、商品名「春かすみ」、数量1800ミリリットル、136、5.1%、累積% 58.8%、販売金額 166,640、粗利 56,320、の各記載がある。
(9)乙第10号証は、平成12年2月23日付けの明和酒類有限会社からの被請求人に対する「購入事実確認書」の写しであって、平成10年10月15日に被請求人より清酒「春がすみ」1.8リットルを180本購入した事実を確認した旨の記述がある。
(10)乙第11号証は、平成10年10月15日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「請求書(控え)」の写しであって、月日・品名・数量・単価・金額の項目欄の年月日の項に10年10月15日、春がすみ1.8リットル、180、787、141660、消費税 7083、値引き 180、131、23580、値引消費税 1179、合計金額 123984、の各記載がある。
(11)乙第12号証は、平成10年10月15日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「領収証」の写しであって、金額 123984、の記載がある。
(12)乙第13号証は、平成11年2月21日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「納品書」の写しであって、品名・容器別・本数・単価・金額の項目欄に、清酒、1.8リットルびん、150・787・118050、消費税 5903、計 123953、摘要の項に、低濃度酒(春がすみ)、の各記載がある。
(13)乙第14号証は、平成11年2月21日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「請求書(控え)」の写しであって、月日・品名・数量・単価・金額の項目欄の項に11年2月21日、春がすみ1.8リットル、150、787、118050、消費税 5903、値引き 150、131、19650、値引消費税 983、合計金額103320、の各記載がある。
(14)乙第15号証は、被請求人の「常陽銀行岩瀬支店の代金取立手形通帳」の写しであって、右上部の入金口座の項に、種別7、No400189、の各記載があり、次頁の「代金取立手形通帳」の表題の下に、不鮮明であるが平成11年2月23日の日付、支払場所 東和銀行 館林支店、支払人 明和酒類有限会社 玉井道子、手形種類 小切手、金額 103320、手数料 630 、の各記載がある。
(15)乙第16号証は、被請求人の「常陽銀行の普通預金通帳」の写しであって、被請求人の名称 代表取締役 堀川純一、店番 083、口座番号 0400189、次頁の年月日の項6番目に11‐2‐23、摘要の項に他店券7、お預り金額(円)の項に103,320、差引残高(円)の項に12,031,382 、の各記載がある。
(16)乙第17号証は、被請求人の「詰口酒類の容器別受払」の写しであって、次頁の平成9年10月1日の「詰口酒類の容器別受払」の表題の下に佳撰、銘柄「春がすみ」、アルコール分14.4の記載、受け入れ・払出し、区分の項目欄、年月日の項に9年10月1日、現在332本、10月5日、払出し30本、現在302本、...の各記載がある。
(I7)乙第18号証は、被請求人の平成10年12月28日以降の「詰口酒類の容器別受払」の写しであって、表題の下に、佳撰、銘柄「春がすみ」、アルコール分14.4の記載、受け入れ・払出し、区分の項目欄、年月日の項に10年12月29日、課税移出 30本、現在24本、12月31日、払出し24本、現在0本、...の各記載がある。
(18)乙第19号証は、平成4年7月1日付けの高桑美術印刷株式会社より被請求人への「納品書」の写しであって、右上隅にNo.20818、左上隅に309‐12、被請求人の名称の右下に18‐1511の番号、品名の項に「春がすみ1.8リットル ラベル」、数量34,000、単価3,95、金額134,300、消費税4,029、の各数字がそれぞれ記載されている。
(19)乙第20号証は、平成4年7月20日付けの高桑美術印刷株式会社より被請求人への「請求書」の写しであって、左上隅に309‐12、被請求人の名称の右下に18‐1511の番号、品名の項に「春がすみ1.8リットル ラベル」、数量34,000、単価3,95、金額134,300、消費税4,029、の各数字がそれぞれ記載されている。
(20)乙第21号証は、平成4年9月3日付けの被請求人の支払ったことを示す高桑美術印刷株式会社の「領収証」の写しであって、右上隅にNo.28141の番号、金額として144,509、入金内訳として現金であることのチェックがある。
(21)乙第22号証は、平成10年10月15日付けの被請求人の明和酒類有限会社への「請求書」の写しであって、乙第11号証と同じ内容である。
(22)乙第23号証は、平成10年10月15日付けの被請求人の明和酒類有限会社への「領収証」の写しであって、乙第12号証と同じ内容である。
(23)乙第24号証は、被請求人の平成9年2月6日から7月30日及び平成10年12月31日から同11年3月5日までの「課税移出台帳」の写しである。
(1)請求人は、被請求人の親族であることが容易に窺える隣の「堀川商店」が、被請求人の製造する清酒「春がすみ」を陳列、販売していないのは不自然である。また、「酒のエキスパート」は、被請求人とは独立した法人ではなく、被請求人の組織内で酒類を小売販売している単なる出先にすぎないから、本件商標の使用を認定する資料とはならない旨、主張する。
しかしながら、先ず、いかなる銘柄の商品を購入し、販売するかは、その商品を購入する経営者がいろいろな事情を含めて自由に判断する事柄であって、たとえ隣で親族である者が購入しなかったとしても、直ちに不自然であるとはいえないものである。また、「酒のエキスパート」は、乙第8号証及び乙第9号証よりすれば、被請求人の小売部であったとしても、多数の他のメーカーの清酒とともに一般の需要者に販売していたといえるものである。
(2)写真について
請求人は、乙第1号証ないし乙第3号証の写真には、撮影日の年月日、撮影場所、撮影者の住所、氏名についての記載がない。また、乙第1号証として添付の写真の右下には、「99 5 31」との表示が見られるので、撮影日が1999年5月31日であることを示しているものと考えられるが、商標法第50条に「...その審判の請求の登録前三年以内に...被請求人が証明しない限り、...商標登録の取消しを免れない。...」と明記されていることからも、この日付では、不使用取消審判請求の登録日から過去3年以内に本件商標が使用されたことを証明していることにはならない。この一点を捉えてみても、本件商標を「駆け込み使用」と判断することは困難でない旨、主張する。
しかしながら、不使用取消審判請求における証拠としての商品写真は、不使用取消審判請求のために予め写真を用意しておくものではないし、単に商品写真のみで商標の使用の証明がなされるものではない。少なくとも商品写真は、商標を付した商品、商品の陳列、販売状況等を具体的に把握できるものといえるものである。したがって、商品写真の撮影日が審判請求の登録日の後であったとしても、商品写真を含めた各証拠の事実及び主張の全趣旨を総合して、商標が使用されたか否か或いはいわゆる「駆け込み使用」であるか否かを認定すべきである。
なお、本件審判請求における乙第1号証ないし乙第3号証の商品写真は、撮影年月日、撮影場所等が第2答弁書にて明確になされたものである。
(3)注文書について
請求人は、乙第4号証の「注文書」について、手書きであって内容があまりにもきっちりした文面になっているし、通常商品の注文は、電話、ファクシミリにて注文書が発送されるものである。恒常的に手書きの注文書により注文されていいたのであれば、注文書が何枚も届いているはずであるから、これらの注文書を提出すべきである。もし郵送しているならば郵送日を証明すべきである。さらに、請求人の調査によると、注文書を作成すべき者と考えられる者の筆跡と、この手書きの注文書の筆跡は異なるから、注文書を作成した人物を明確にすべきである旨、主張する。
しかしながら、一般に商品を注文する場合、注文する者が電話、ファクシミリ、書面等の注文方法を自由に選択するのは当然と考えられる。また、乙第4号証の注文書を作成した人物は、第2答弁書にて「玉井道子の夫・芳一」が作成したものであると明確になされたものであり、さらに、玉井道子の作成した「購入事実確認書」(乙第10号証)、平成10年10月15日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「請求書(控え)」(乙第11号証)、平成10年10月15日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「領収証」(乙第12号証)、平成11年2月21日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「納品書」(乙第13号証)、平成11年2月21日付けの被請求人からの明和酒類有限会社に対する「請求書(控え)」(乙第14号証)、被請求人の「常陽銀行岩瀬支店の代金取立手形通帳」(乙第15号証)及び被請求人の「常陽銀行の普通預金通帳」(乙第16号証)が提出されている。そして、乙第14号証の被請求人から明和酒類有限会社宛の請求書(控え)中の合計金額103,320円が、乙第号15証及び乙第16号証の被請求人の「常陽銀行岩瀬支店の代金取立手形通帳」、及び「常陽銀行の普通預金通帳」の写し中の金額 103,320円と一致しており、注文書(第4号証)が手書きであるとしても、これらの証拠は一貫性を有しているものといわなければならない。
(4)納品書及び請求書(控え)について
請求人は、乙第5号証の「納品書」について、なぜ、納品書が被請求人の手元に存在しているのか、納品書との関係で請求書又は領収書が発行されているはずであるが、控え書類の提出がない。また、納品書の単価が「787円」とあるのに、請求人の得ている情報によれば、本件商標が表示されたラベルが貼られた1.8リットル瓶入りの清酒が明和酒類有限会社の仕入れ価格より57円安い「730円」で販売されており、常識では到底考えられない。さらに、乙第14号証の請求書(控)は、乙第13号証の納品書に対応しているが、乙第13号証の納品書に対応する注文書は提出されていないし、乙第11号証及び乙第14号証の請求書(控)に通し番号が記入されていないのは不可解である旨、主張する。
しかしながら、商取引において使用される納品書は、同じ様式の2枚複写であることは一般的であり、被請求人の提出した乙第5号証の納品書も同様のものと認められ、手元にあるのをコピーしたものであって、被請求人の主張は、何ら不自然とはいえない。また、納品書には通し番号が印字され、かつ、課税移出台帳にも出荷伝票番号が記録されているので過去の日付に遡って作成するのは困難と認められる。価格については酒販店が決定することではあるが、請求書の控え(乙第11号証)に値引き131円となっており採算はとれている旨、第2答弁書及び第3答弁書にて答弁し、乙第10号証ないし乙第16号証を提出している。
(5)「容器詰容器別受払 課税台帳」及び「移出 課税移出」について
請求人は、乙第6号証の「容器詰容器別受払 課税台帳」は平成10年10月1日から平成10年12月27日までの期間だけのものであり、平成10年10月15日付けで1度だけ堀川酒造店小売部以外の明和酒類有限会社に180本が販売されたことになっているにすぎない。平成10年9月30日以前及び平成10年12月28日以降の「容器詰容器別受払」についても、被請求人はその内容を提示すべきである。また、乙第7号証の「移出 課税移出」の平成10年10月15日付けの欄の記載は、乙第5号証の納品書に対応するものと考えられるが、この「移出 課税移出」の「価額」の項目は、単価に個数を乗じた金額にその5%の消費税分が加えられたものである。税法上1円未満の端数は全額を切り捨てることとなっている。ところが.請求人の計算によると、10月16日付けの価額の項目は24,791となっている。個数(30本)に単価(787円)を乗じた金額(23610円)にその5%の消費税分(1,180円50銭)が加えられ、1円未満の端数の全額(50銭=0.5円)を切り捨てることになっていることから、24,790円で処理されなくてはならない。この「移出 課税台帳」に記載された内容が真正であるとするならば、なぜ税法とは異なる処理がなされているのか、被請求人はその理由を明確に答弁すべきである旨、主張する。
これに対して、被請求人は、清酒「春がすみ」は、アルコール14度の低価格酒であるため、多くの酒販店で販売したくないという事情によるものであるし、また、被請求人の多くの取引先では、消費税について、1円未満の端数処理は「四捨五入」が多数派であって、「切り捨て」は少数派であり、請求人は、酒税を算出する場合、1円未満を切り捨てて処理することと、混同しているものと思われる旨、答弁するとともに、平成10年9月30日以前の「詰口酒類の容器別受払」(乙第17号証参照)および平成10年12月28日以降の「詰口酒類の容器別受払」(乙第18号証参照)を提出している。
(6)月次商品別売上(ベスト順位)について
請求人は、乙第9号証の月次商品別売上(ベスト順位)を詳細にみると、商品名の項目には「春かすみ」と記載されているが、本件商標は「春がすみ」である。また、商品名の項目に記載された商品が、どこの、誰に、いつ販売したか不明であるし、さらには、被請求人の名称はどこにも記載されていないので、被請求人のものとはいえない旨、主張する。
この点について、被請求人は、年1回は税務署に売上数量の報告のため自社管理上作成しているものであって、コンピュータで売上の管理をしており、「春がすみ」が「春かすみ」と記載されているのは単なるパソコンの操作ミスである旨、答弁している。
(7)領収書について
請求人は、乙第5号証の納品書及び乙第11号証の請求書(控)の日付はどちらも平成10年10月15日であり、乙第12号証の領収証の日付が平成10年10月15日であることから、これを見る限りにおいて商品の納品時に対価が現金で支払われたことになる。
ところが、乙第12号証の領収証を詳細にみると、通し番号が全然ないし、印紙税法で定められた収入印紙も貼付されていない。さらには、「扱者印」についてわざわざ「取扱者印なきものは無効とします」と特記されているにもかかわらず、取扱者の押印がない旨、主張する。
これに対して、被請求人は、通し番号は、経理専門の担当者がいないし、印紙は添付されていないとしても法律上有効である旨、答弁している。
したがって、本件請求に係る指定商品「日本酒」についての本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものとすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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