sokuhyo

Trademark Appeal Case

結合商標の全体観察と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2000−90851(T2000−90851/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4382255号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4382255号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成11年5月19日に登録出願され、第33類「清酒」を指定商品として、平成12年5月12日に設定登録されたものである。

2.取消理由

本件に係る登録商標は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成11年5月19日に登録出願され、第33類「清酒」を指定商品として、同12年5月12日に設定登録されたものである。

登録異議申立人 菊正宗酒造株式会社(以下、「申立人」という。)の主張及び提出に係る甲第1号証(商標「菊正宗」についての登録第1964970号商標)及び同第2号証(平成9年10月23日付け朝日新聞における広告の写し)によれば、申立人は、万治2年(1659年)12月に創業されて以来、今日まで約340年の歴史を誇る我が国清酒業界のトップメーカーの一つであり、申立人が清酒に使用している「菊正宗」の商標は、明治18年より使用され、申立人の社名ともなっており、書体を微妙に変化させながら多くの関連商標が登録されてきたものである。そして、現在、使用されている「菊正宗」の商標(登録第1964970号 以下、「引用商標」という。)には24件の防護標章登録がなされていることからみても、引用商標は、本件商標の登録出願前から、我が国の取引者・需要者間において、広く認識されていたものであることは明らかなところである。

しかして、本件商標構成中、需要者がその出所を判断するにあたり、最初に拠り所とする部分は、「金盃菊正宗」の文字部分にあるものとみられるところ、該文字は、全体として特定の語義を有するものではないばかりでなく、「金盃」の文字部分は、金製の盃を意味するとともに、商標権者の商号の要部でもあり、一方、「菊正宗」の文字部分は、上記のとおり、申立人の使用に係る著名商標であることから、容易に「金盃」の文字と「菊正宗」の文字とを結合させたものと理解・認識されるものである。

そうとすれば、本件商標は、その構成中に、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「菊正宗」の文字を含むものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品である「清酒」について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、「菊正宗」の文字部分に注意が惹かれ、申立人の使用に係る著名な商標である「菊正宗」を想起し、該商品が申立人あるいは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

3 商標権者の意見

商標権者は、本件商標をその指定商品である「清酒」について使用しても、該商品が申立人あるいは同人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはないと確信するので、以下のとおり、その理由を述べる。

取消理由通知書によると、本件商標は、「金製の盃」を意味するとともに、商標権者の商号の要部でもある「金盃」の文字と申立人の使用に係る商標「菊正宗」を結語させたものと容易に理解されるとしている。

A)しかし、取引者・需要者は、常に商品の製造者等を確認して商品を購入するとは限らないものであり、また、取引者・需要者が商標権者の商号を確認したとしても、本件商標は、その構成文字を同書、同大、同間隔に表示してなり、その外観構成がまとまりよく一体に表されているばかりか、「金盃」は、金製の盃を意味するところ、平安時代、陰暦9月9日、重陽の節句の日に宮中で催された観菊の宴である菊花の宴においては、さかずきに菊の花を浮かべて飲むのがならわしになっており、酒を飲む器である「盃」と「菊」は、指定商品である清酒を介して密接な関連を有するといえるものであることから、殊更「金盃」と「菊正宗」に分離すべき理由はない。

また、本件商標は、「金盃菊正宗」の文字の下に、中央に顕著に表された「正宗」文字に「金盃」と「菊」の図柄が背景として描かれている。そして、これと同様の特徴、すなわち構成中央に表された「正宗」の文字に図柄が背景として描かれている商標は、例えば「桜正宗」「ユリマサムネ」「笹正宗」「ツツミマサムネ」「三朝正宗」「富士正宗」「浪花正宗」「名刀正宗」等の如く多数存在するところ、これらの商標は、「正宗」の文字の上下に、図柄と正宗の文字を組み合わせた全体の呼び名(桜正宗、ユリマサムネ)が付されているという共通の特徴を窺うことができる。

そうすると、これらの清酒のラベルに多く接している清酒の取引者・需要者は、本件商標についても、上記「桜正宗」と同様の特徴を持った商標であるかの如く看取し、その「金盃菊正宗」という標章も、「正宗」の文字に「金盃」と「菊」の図柄が配されている商標の呼び名として表記したものと理解・認識するとみるのが自然なものである。

しかも、「金盃菊」は、商標権者の商標として商標登録(登録第4259445号)がされている。

B)一方、申立人が実際に取引している商品(菊正宗・商品を一覧表)をみると、いずれの商品も「菊正宗」の3文字を一貫して使用しており、申立人の商号の略称である「菊正宗」文字に他の文字を冠した商標を使用しているものはないばかりか、一般的にも商号に他の文字を冠した商標を採択、使用することは考え難いものである。

C)このような観点からすれば、清酒の取引者・需要者は、「金盃菊正宗」を「菊正宗」に「金盃」と冠したものと理解することなく、「正宗」が清酒の慣用商標であるため、特徴的に描かれた「金盃」及び「菊」の図柄を漢字に翻案したところの「金盃菊」の文字により、他人の商品(清酒)と区別するというのが妥当なものであり、この文字部分より生ずる「キンパイギク」の称呼をもって取引に資するというのが相当である。

してみれば、本件商標は、「菊正宗」の文字を含むとはいえ、上記の中央に正宗の文字を顕著に書してなる商標を付した商品の取引実状を合わせて考えると、商標権者が本件商標を指定商品「清酒」に使用しても、当該商品が申立人或いは同人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれのないこと明らかである。

以上述べたとおり、本件商標は、その指定商品である「清酒」について使用しても、申立人或いは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれのないこと明らかであるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

4 当審の判断

商標の類否の判断に当たっては、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を、取引の実情等にも照らして、総合的、全体的に考察すべきである。

これに加えて、その商標の一部が強い識別力を有しており、その他の部分が単に付加的な意味しか有せず、かつ、両者の間に密接な関連のないときは、商標の各構成部分が分離して看取される場合もあり、識別力を有する要部を抽出して二つの商標を対比することにより類否を判断するのが相当である。

そこで、これを本件についてみれば、本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中、顕著に表された「金盃菊正宗」の文字も独立して要部となり得るものである。そして、その「金盃菊正宗」の文字の構成中、「金盃」の文字部分は、金製の盃を意味するものあり、「金盃」の文字と「菊正宗」の文字との間に密接な関連があることを認めるに足りる証左も存しない。

一方、「菊正宗」の文字部分は、本件取消理由通知において説示したとおり、申立人の主張、同人の提出した甲第1号証(商標「菊正宗」についての登録第1964970号商標)、同第2号証(平成9年10月23日付け朝日新聞における広告の写し)、同第4号証〔大阪高裁平成11年(ネ)第2815号商標権侵害行為差止等請求控訴事件判決〕、及び当審における証拠調べ通知に添付の1.講談社編者「日本の名酒事典【清酒・焼酎】」株式会社講談社、昭和60年7月6日第一刷発行、同2.講談社編集「日本の名酒事典【清酒」株式会社講談社、1990年4月26日第第一刷発行、3.講談社編者「日本の名酒事典【清酒・焼酎」株式会社講談社、1998年4月10日第一刷発行、4.「【’91SAKE】世界の酒・日本の酒」株式会社サンケイ新聞データシステム・マーケティング事業部、1991年5月15日初版発行、5.平成10年度全国清酒出荷量によれば、菊正宗酒造株式会社が商品「清酒」に使用して、著名な商標となっているものである。

即ち、該証拠調べ通知に添付の1、2、及び3(日本の名酒事典)の「菊正宗」の欄によれば、「嘉納家の祖先が御影村で酒造りを始めたのは方治2年のことで、創業者は生魚屋治郎太夫宗徳という。・・・明治17年の商標条例の公布により、酒名を「菊正宗」とする。これは嘉納秋香翁が寒天に咲く一輪の白菊を見て感じ入り、前々から使っていた正宗と合わせて名づけたもの。・・・」と掲載されていること、

該証拠調べ通知に添付の4(【’91SAKE】「世界の酒・日本の酒」)によれば、「清酒 近畿 京都府 大阪府 兵庫県」の項に「菊正宗 雅」、「菊正宗 灘の生一本」、「菊正宗 特撰」、「菊正宗 別撰」、「菊正宗 たるざけ」、「菊正宗 生貯蔵酒」、「菊正宗 さけパック」とそれぞれ掲載されていること、

該証拠調べ通知に添付の5(平成10年度全国清酒出荷量)によれば、「銘柄」の項に「菊正宗」が記載され、「順位」及び「98年出荷量(KL)」の項に、それぞれ「6」及び「37,188」と掲載されていることが認められる。

上記証拠からすれば、本件商標の構成中「菊正宗」の文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前に、既に取引者、需要者の間に広く認識されているものということができるものである。

そうとすれば、「金盃菊正宗」の文字は、全体として親しまれた熟語的意味合いを表すものとは認められないものであり、また、「菊正宗」が上記したとおり広く知られている「菊正宗」の文字と同じ文字構成からなるものであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、上記事情よりして、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「菊正宗」の文字部分に強く印象付けられ、恰も、該商品が申立人あるいは同申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

商標権者は、清酒の取引者、需要者が「金盃菊正宗」を「菊正宗」に「金盃」と冠したものと理解することなく、「正宗」が清酒の慣用商標であるため、特徴的に描かれた「金盃」及び「菊」の図柄を漢字に翻案したところの「金盃菊」の文字により、他人の商品(清酒)と区別するというのが妥当なものであり、この文字部分より生ずる「キンパイギク」の称呼をもって取引に資されている旨主張する。

しかしながら、「正宗」の文字部分が清酒の慣用商標であるとしても、清酒を取扱う業界においては、「正宗」の文字部分の称呼を省略して取り引きされるものでもなく、商標権者が意見書において述べる如く、例えば、「桜正宗」「ユリマサムネ」「笹正宗」「ツツミマサムネ」「三朝正宗」「富士正宗」「浪花正宗」「名刀正宗」の場合は、「サクラマサムネ」「ユリマサムネ」「ササマサムネ」「ツツミマサムネ」「ミマサマサムネ」「フジマサムネ」「ナニワマサムネ」「メイトウマサムネ」と一連にのみ称呼されて取り引きされているのが実情であるから、商標権者の主張は、採用することができない。

また、商標権者は、前記該証拠調べ通知の5の平成10年度全国清酒出荷量に対して、商標権者の清酒の売上高は、平成6年の売上高については、概ね30億円を超え、出荷量に換算すると4,500キロリットル以上となるが、該出荷量は、清酒出荷量について広く公表されている会社だけを集計した結果であるから、上記証拠は、客観性に欠く資料と言わざるを得ないものである旨主張するが、商標権者の清酒出荷量4,500キロリットル以上と1998年の申立人の出荷量37,188キロリットルを比べてみても、申立人の出荷量は、8倍以上あり、その出荷量よりみても、商品「清酒」に使用されている「菊正宗」の著名性が窺い知れるものである。

以上のとおりであって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。