Trademark Appeal Case
品種名と地名の結合の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2002−60008(T2002−60008/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4190897号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成8年5月31日登録出願、第30類「こしひかり米」を指定商品として、平成10年9月25日に設定登録されたものである。
2 イ号標章
請求人が商品「精米」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるものである。
3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
(1)判定を求める必要性
請求人は、商品「精米」にイ号標章(すなわち「こしひかり武川米」若しくは「武川米こしひかり」)が表示される包装袋(甲第1号証)を使用する小売業者(件外、株式会社オギノ)に精米を卸し販売する者であるが、平成13年6月6日に被請求人から「本件商標の商標権を侵害するものである」旨の通知を受けた(甲第3号証)。
これに対し、請求人は、平成13年6月25日に「イ号標章の使用は本件商標の商標権を侵害するものではない」旨を回答した(甲第4号証)。
しかしながら、被請求人によって、平成13年12月4日に「請求人によるイ号標章の使用は、本件商標の商標権を侵害するものである」との訴訟が提起された(甲第5号証)。
そこで、請求人は、本件商標の商標権の効力の範囲について判定を求めるものである。
(2)イ号標章の説明
請求人は、商品「精米」にイ号標章を表示した包装袋を平成13年4月から使用しているが、イ号標章を構成する「こしひかり」の文字は、商品「精米」の品種名を表示するものとして昭和31年に品種登録されており、それ以後おいしい米を代表する水稲品種として日本国民に長い間親しまれている(甲第6号証ないし甲第8号証)。また、「武川米」の文字は、うまい米を産する地域として知られる山梨県北巨摩郡武川村で産する米を認識させるに止まるものであり、古来より山梨県北巨摩郡武川村で産する米は、通称「武川米」として呼称されている(甲第9号証ないし甲第11号証)。そして、イ号標章は、包装袋の中央部に「こしひかり」の文字と「武川米」の文字を大きく表示し、包装袋の周囲3箇所に「武川米こしひかり」の文字を小さく表示してなるものであるが、この表示は当業界において商品「精米」の品質、原材料、産地を表示するに際し普通に用いられる方法(甲第12号証及び甲第13号証)で表示しているものである。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属しないとの説明
商標は出所識別標識であるが、イ号標章は、商品「精米」の品種名である「こしひかり」の文字と、「山梨県武川産の米」を認識させるに止まる「武川米」の文字を普通に用いられる方法で書してなるから、これを商品「精米」に使用したとしても、単に商品「精米」の品質、原材料、産地を表示するにすぎないものであり、商品の出所識別標識と認識し得ないものである。
一方、本件商標は、「武川米 こしひかり」の文字の下部に、「米」の漢字を図案化した図形と、この図形の中に書した「グッドライフ」の片仮名文字とを配してなるものである。すなわち、本件商標は、「武川米 こしひかり」の文字だけでは出所識別標識とは認められないところ、下部に配した「米」の漢字を図案化した図形と「グッドライフ」の文字との結合若しくは「グッドライフ」の文字が出所識別機能を果たす部分として認められたものであり、本件商標の要部は、以上の点から、「グッドライフ」の文字及び「米」の漢字を図案化した図形部分にあるものと思料する。このことは、被請求人が「グッドライフ」の文字よりなる件外登録第2095888号商標を所有していた事実(甲第14号証)からも明らかである。
してみれば、請求人が商品「精米」に使用するイ号標章は、本件商標を構成している「米」の漢字を図案化した図形や「グッドライフ」の文字を含まないから、本件商標とは外観、称呼、観念において非類似である。
したがって、イ号標章は、登録第4190897号商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人が、商品「精米」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属する、との判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
(1)「こしひかり」の文字が、商品「精米」の品種名を表示するものとして昭和31年に品種登録されており、それ以後おいしい米を代表する水稲品種として日本国民に長い間親しまれていること及び「武川米」の文字が古くから使われ、それが「武川村」で産する米の総称として使用されていた事実は甲第9号証等から認められる。
しかしながら、「武川米」の文字は「コシヒカリ」のような特定の品種を指すものではない。また、従来「武川米」として生産され、周知されていた銘柄は、農林22号や農林48号であって、「こしひかり」ではなかった。
ところで、産地表示とは、「武川」とか、「武川産」とか、「武川村」、「武川地方」、「武川の」をいうのであって、「武川米」というのはこのような産地表示に該当しない。「精米」においては「・・・産」という産地表示が一般的であるけれども、「・・・米」を産地表示として使用したり、そのように認識されている例はほとんど存しない。
請求人は、平成13年4月より「精米」の包装袋に「武川米こしひかり」の文字を使用している旨述べているが、被請求人が所有する本件商標の商標権の出願・登録前から「武川米こしひかり」の文字を精米の包装袋に使用している事実を立証していない。
また、請求人は、当業界において商品「精米」について「武川米こしひかり」の文字が商品の品質、原材料、産地を表示するものとして普通に用いられていると主張しているが、被請求人の調査によれば、その事実は見当らなかった。
したがって、産地表示として一般的に認められているとは言い難い「武川米」という文字を「こしひかり」という品種名に付し、その称呼を「ムカワマイコシヒカリ」とする「武川米/こしひかり」の文字は充分自他商品の識別標識として認められるべきであるし、本件商標の要部も「武川米/こしひかり」にあるものといわざるを得ない。
次に、本件商標の構成中「グッドライフ」の文字は、特に顕著性の面で特別な意味合いを有する商標でなく、キャッチフレーズ的な意味合いを備えた商標である。
したがって、「グッドライフ」の文字は、本件商標の要部と認めることはできない。
さらに、図案化した「米」の部分は、一見して「米」と読むことができない図形であり、相当程度慣れ親しんでから、それと気づく程度のもので、その表示されている場所や大きさ等からも本件商標の要部と認めることはできない。
してみれば、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しないとする請求人の主張は誤りである。
(2)本件商標からは「ムカワマイコシヒカリ」の称呼を生じ、イ号標章からも「ムカワマイコシヒカリ」の称呼を生ずることは明白であり、また、使用している商品も「精米」において同一であるから、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。
5 当審の判断
本件商標及びイ号標章中にはいずれも「武川米」及び「こしひかり」の文字が表示されているところ、甲第9号証(武川村誌上巻 昭和61年3月31日発行)ないし甲第11号証(武川村の情報ページ(ホームページ)2002年1月18日現在)によれば、武川米は、北は長野県境の白州町教来石から南は御勅使川までの釜無川右岸の総称である武川の地(現在の山梨県北巨摩郡、釜無川に注ぐ大武川・小武川流域の地域名)で産出される米であり、武川米の発祥は、武田家の始祖といわれる武田太郎信義時代、その同族である青木、柳沢、山高、入戸野、円野、教来石の武川衆が自分の領地から収穫された米に「武川米」と名づけたのが始まりであるといわれる。また、釜無川沿いは甲斐駒ヶ岳のふところ深く、石英の水に洗われた砂質壌土で米作りには最適の土地であり、その頃よりその地で産出された米は「うまい米」として知られていたことが窺えるものであり、昭和45年9月20日発行の武川村広報には、「味で勝負、これが武川米だ」という見出しで自主流通米についての記事が出ていたこと及び昭和46年5月10日発行の同広報には、武川村長期総合計画の基本構想についての記述があり、その農業振興計画の中に、「『うまい米武川米』の主産地形成を図る。」とあることが認められ、昭和61年当時においても、武川米のうち食味の優良品種として、農林48号はコシヒカリと共に武川米の代表品種として作付けされていたことを窺わせる記述がある。
そして、甲第11号証によれば、武川村の産物として「米」が掲載されており、「武川村の河川流域は、花崗岩質の砂質壌土で、大武川、小武川、黒沢川などの流域は米作りに非常に適しています。」「100%武川村産の『農林48号』と『コシヒカリ』は、武川村内だけで限定販売されています。」「『武川村米』は通称『武川米』と呼称されています。」とある。
そうしてみると、古来より武川の地で産出される米は、「武川米」と呼称されてきたものであり、さらに、現在においては、武川村産の米を「武川米」と通称することがあるものと認められる。
また、「こしひかり」が、水稲品種として登録された「米」の品種名であることは、甲第7号証及び甲第8号証によっても明らかである。
そうすると、本件商標及びイ号標章を商品「精米」に使用した場合、その構成中の「武川米」及び「こしひかり」の文字部分は、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たすものということはできない。
そして、他にイ号標章中には、本件商標と同一又は類似する識別標識としての機能を果たす部分は含まれていない。
したがって、商品「精米」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
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