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Trademark Appeal Case

周知商標の無効理由

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35371(T2001−35371/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4288318号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4288318号商標(以下「本件商標」という。)は、「ASHWORTH」の文字を横書きしてなり、平成8年3月27日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製ろうそく及びろうそく立て,貴金属製喫煙用具,時計,記念カップ,記念たて,貴金属製のがま口,貴金属製コンパクト及び財布,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」を指定商品として、平成11年7月2日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番号を含む。)を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号、又は同第19号の規定に該当するから、その登録は商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきである。

(1)「Ashworth」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)が請求人の商標として取引者又は需要者に広く認識されていることについて

(ア)引用商標の由来及び特徴並びに世界的な周知・著名性

請求人は、引用商標を所有している。

引用商標は、アメリカ合衆国カリフォルニア州所在のアシュワース インコーポレーテッド(以下「アシュワース社」という。)のデザイン担当でアシュワース社の副社長「ジョン アシュワース」の名前に由来し、1987年12月1日にゴルフウェアとして米国で誕生したものである(甲第2号証、甲第15号証、甲第21号証及び甲第22号証)。

アシュワース氏は、一流ゴルフプレーヤーとの親交を深める中で、多くのプロゴルファーが現状のゴルフウェアに不満をもっていることを知り、満足のいくプレーを実現させるための機能性が高く、また、ファッション性にも優れたゴルフウェアを追求・開発し、これに「Ashworth」ブランドを付して1987年12月1日から販売を開始したものである。

「Ashworth」ブランドのゴルフウェアは、アシュワース社の経営陣の1人である、米国プロゴルフ協会(U.S.PGA)所属のツアープロとして活躍中のフレッド・カプルス氏がプロゴルファーの立場から助言し、それが商品開発に生かされ製品化されたものである。その結果、「Ashworth」は、機能性とファッション性とが融合されたゴルフウェアとして米国を中心に高い評価を受け、急成長したブランドとして世界的に著名である(甲第2号証ないし甲第25号証)。

1988年10月27日の引用商標の米国商標出願における使用に関する宣誓使用供述書(甲第2号証)によれば、1992年にゴルフショップ600店を対象にしてGolf Pro Merchandiser誌が行った米国における全国調査において、引用商標は、最も有名な男性用ゴルフウェアの第1位かつ急成長ブランドに選ばれている(なお、女性用ゴルフウェアでも急成長ブランドの第3位に選ばれている)。また、Golf Pro Operations誌によれば、1992年のブランド勢力市場調査で、引用商標は、プライベート・ゴルフコース・プロショップ及びリゾート・プロショップで、男性用ゴルフウェアのブランド第1位に選ばれている(女性用ゴルフウェアでは、プライベート・ゴルフコース・プロショップで第4位、リゾート・プロショップでも第5位となっている)。

この調査は、引用商標が、米国全域の関連市場において、確固たる名声を有していることを示すものである。また、その他の調査においても、引用商標を付したゴルフウェアは高い評価を受けている(甲第12号証ないし甲第14号証)。

さらに、米国のゴルフの雑誌、ニュース等では、しばしば「Ashworth」の紹介記事が掲載されており(甲第15号証及び甲第16号証)、請求人自身も、雑誌等を通じて「Ashworth」ブランドを付したゴルフウェアの宣伝広告を行っている(甲第17号証)。

なお、アシュワース社は、1987年3月19日に「スチックス クロジング カンパ二」として設立され、1987年4月8日にその商号を「チャーター ゴルフ インコーポレーテッド」に変更し、さらに、1994年6月4日に、そのブランドイメージを社名にも反映させるために「アシュワース インコーポレーテッド」に変更したものである(甲第18号証ないし甲第20号証)。

アシュワース社は、設立して10年強と非常に若い企業であるにもかかわらず、1988年以来の全世界における引用商標を付したゴルフウェアの売上高は急激な上昇を示しており(甲第3号証ないし甲第11号証)、その後も売上高を順調に伸ばしている(甲第11号証)。

このように、引用商標は、ゴルフウエアの売上が急激に伸びたブランドとして極めて著名であり、1990年頃、遅くとも1991年4月頃には米国をはじめとする世界各国において周知・著名であったといえる(甲第2号証ないし甲第25号証)。

(イ)我が国における引用商標の周知・著名性

我が国において、アシュワース社は、1991年8月にスポーツ用品、スポーツウェア、時計、アパレル製品、食品、ファッション雑貨等の輸入及び国内販売の代理店として日本最大手の一つである「株式会社大沢商会」(以下「大沢商会」という。)と独占販売契約を締結し、1992年春夏より販売を開始していた(甲第21号証ないし甲第23号証)。また、今年からは、大沢商会と同様に日本最大手のアパレルメーカーである「小杉産業株式会社」が販売を請け負っているものである。

我が国における1992年から1995年までの大沢商会による「Ashworth」ブランドのゴルフウェアの販売額(百万円以下は四捨五入した。)は、92年こそ6千百万円であったものの、93年には、5億2千8百万円、94年には、6億5千4百万円、そして、95年には8億8千5百万円と売上を伸ばしている(甲第23号証)。

我が国における「Ashworth」ブランドのゴルフウェアは、1995年以降も、上述の「Ashworth」の全世界での売上の伸びと同様に、売上を伸ばしているものである。

我が国は、1991年当時、既にゴルフ人口が1,300万人を超えたとされているが、ゴルフに関するトーナメント及びファッション等の情報については、米国が一歩も二歩も先んじており、日本のゴルファーは、テレビ、雑誌等のマスメディアを通じて、米国のゴルフに関する各種情報を収集していた。これは、現在においても何ら変わることはなく、インターネット等を通じた情報収集が容易となった今日では、米国のゴルフに関する各種情報を熟知しているゴルファーが増加するに至っているものである。

したがって、我が国においては、米国のゴルフウェアについての引用商標の周知・著名性は、大沢商会がその販売を開始する以前より獲得されたものである。また、アシュワース社は、我が国において大沢商会による本格的な販売を開始する前に、1990年には株式会社アキ・クリエイティブを通じて引用商標を付したゴルフウェアを販売していたものである(甲第24号証及び甲第25号証)。

ゆえに、我が国において、本件商標が出願された1996年には、引用商標はアシュワース社のゴルフウェアとして、需要者又は取引者に広く認識されていたものと認められ、また、上述の「Ashworth」社の全売上の伸びからも明らかなように、現在においても周知・著名なブランドとして取引者又は需要者に認識されているものである。

(2)請求人の周知・著名な引用商標が商標登録を受けていることについて

(ア)我が国で商標登録を受けていることについて

請求人は、我が国において、上述の周知・著名な引用商標について商標登録出願をし、甲第26号証ないし甲第30号証のように商標登録が認められている。

(イ)諸外国において商標登録を受けていることについて

請求人は、商標「Ashworth(ASHWORTH)」について、その世界的な著名性から、国際分類第25類及び第28類を中心に、日本のみならず、米国を中心とした世界各国に商標登録出願を行い、商標登録され、商標権を取得するに至っている(甲第31号証ないし甲第56号証)。

(3)本件商標「ASHWORTH」が、請求人の所有する周知・著名商標「Ashworth」との関係において、取引上出所の混同を生じるおそれがあることについて

本件商標「ASHWORTH」と請求人が所有する周知・著名な登録商標「Ashworth」との類否を判断すると、両者は、構成する文字が完全に同一であり、本件商標「ASHWORTH」も請求人が所有する周知・著名な登録商標「Ashworth」も同一の称呼「アシュワース」を生ずることから、両者は類似する商標である。

また、上述のとおり、請求人が所有する登録商標「Ashworth」は、請求人自身の販売促進活動等によって、本件商標の出願時点において、我が国のみならず、米国ほかの世界各国において、取引者又は需要者に、請求人の周知・著名な商標として認識されるに至っていたことは明らかであり、しかも現時点においても継続して盛大に使用されている。

そうすると、本件商標「ASHWORTH」の指定商品と請求人が所有する周知・著名な登録商標「Ashworth」の使用商品ゴルフウェア(被服)とは必ずしも抵触するものではないが、本件商標を上記指定商品に使用した場合には、企業の多角経営化等の進んだ今日、これに接する取引者又は需要者は、恰も請求人の業務に係る商品であるかのごとく、あるいは、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について誤認、混同を生ずることは明らかである。

しかるに、請求人の所有する登録商標「Ashworth」は、上述のような採択の由来を有しており、人名に由来するという点では造語とは言えないまでも、既成語として一般に用いられているものではない以上、造語に準じた独創性の強い語であって、かつ、上述のとおり周知・著名である。

以上より、本件商標「ASHWORTH」を指定商品に使用するときは、取引者又は需要者において、これらの商品が、請求人と密接に関係にある営業主の業務に係る商品と広義の混同を生ずるおそれがあることは明白である。

(4)本件商標「ASHWORTH」の使用が、請求人の所有する周知・著名商標「Ashworth」との関係において、出所表示機能が稀釈化されるおそれがあることについて

本件商標は、上述のとおり、請求人の所有する周知・著名商標との関係において、請求人の業務に係る商品と広義の混同が生じるものであるが、仮に広義の混同を生じない場合であっても、本件商標を上記指定商品に使用する場合には、請求人が所有する周知・著名な登録商標「Ashworth」の商品の類似範囲を超えた指標力を希釈化し、請求人がその営業努力と莫大な宣伝広告費を投じて獲得してきた信用や名声に只乗りするものであって、請求人が営々として築いてきた営業努力に取り返しのつかない損害を及ぼすおそれがあることは言うまでもない。

また、上述のとおり、本件商標の出願時から、請求人の所有する登録商標「Ashworth」は、米国及び我が国においても周知・著名であって、商標権者は、これと完全に同一の文字から構成される本件商標を出願している。さらに、請求人の所有する登録商標「Ashworth」は、上述のように、人名に由来するという点では造語とは言えないまでも、人名としても日本人にとってなじみがあるとはいえず、我が国では使用される必然性のない語であるため、造語に準じた独創性の強い語である。したがって、このような事情を考慮すれば、本件商標を出願した商標権者には、不正の目的があったと言わざるを得ない(甲第57号証)。

よって、請求人の所有する周知・著名な商標「Ashworth」と類似する本件商標「ASHWORTH」を使用する行為は、不正の目的を有する行為に該当することは明白である。

(5)本件商標「ASHWORTH」の出願が、国際信義に反するおそれがあることについて

上述のとおり、本件商標の出願時から、請求人の所有する登録商標「Ashworth」は米国及び我が国においても周知・著名であって、かつ、造語に準じた独創性の強い語であるから、これと完全に同一の文字から構成される本件商標を出願している商標権者には、不正の目的があったものといわざるを得ない。したがって、本件商標の出願は、国際取引の進展を不当に阻害するおそれがあり、また信義則に反するものというべきであるから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあることは明らかである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁するところがない。

4 当審の判断

(1)請求人の引用商標の周知性

甲第2号証の1ないし甲第12号証によれば、請求人は、1987年に米国デラウェア州法に基づき設立された法人であって、主としてゴルフウェアを製造販売しているものと認められる。

また、甲第2号証の2、甲第7号証ないし甲第10号証によれば、請求人の1988年から1995年までの売上高は、88年には37万5千ドル、89年には214万2千ドル、90年には750万8千ドル、91年には1,702万3千ドル、92年には2,856万2千ドル、93年には4,582万3千ドル、94年には6,083万9千ドル、95年には7,452万4千ドルであり、売上はゴルフウェアの販売によるものがほとんどであって、請求人の販売するゴルフウェアには、「Ashworth」の欧文字からなる引用商標が使用されていたものと認めることができる。

そして、1992年に600のゴルフ・プロショップを対象にGolf Pro Merchandiser誌が行った米国での全国調査の結果(甲第2号証の2の6頁)によれば、引用商標は、最も多くのプロショップから名前を挙げられた男性用シャツ売上No.1かつ急成長ブランドであったことが認められる。

また、甲第15号証の1,2及び甲第16号証の1ないし3、6ないし8によれば、1989年12月から1996年春までに、米国における「COVERSTORY」「Newyork Times」「Golf World」「San Diego Daily Transcript」「GOLF SHOP OPERATIONS」「GOLF NEWS」等の新聞が引用商標を使用した請求人のゴルフウェアを紹介する記事を掲載した事実が認められる。

そうしてみると、引用商標は、本件商標の登録出願日(平成8年3月27日)前から、請求人のゴルフウェアを表示するものとして米国におけるゴルファーをはじめとする需要者の間において広く認識されていたものと認められる。

(2)不正の目的

請求人の使用する引用商標と本件商標の構成は、前記したとおりであり、同一の綴りよりなる欧文字であって、実質的に同一の商標ということができる。

そして、本件商標を構成する「ASHWORTH」の文字は、米国においては、人名を表したものといえるとしても、我が国においては、これが人名等特定のものを直ちに認識させるものとは認め難く、むしろ、独創的な造語としてみられるものと認められる。

しかも、甲第21号証ないし甲第23号証によれば、我が国では、株式会社大沢商会が請求人と独占契約を締結し、引用商標を使用した請求人のゴルフウェアを輸入し、1991年10月から1996年春頃まで販売した事実が認められることからすると、引用商標は、本件商標の登録出願時には、我が国においても充分に知られ得る状態にあったものと推認できる。

そして、被請求人は、本件商標を不正の目的をもって使用するとの請求人の主張に対して何ら答弁するところがない。

そうとすると、本件商標と引用商標の綴りが同一であるのは偶然の一致ではなく、請求人が米国においてゴルフウェアに使用して周知となっていた引用商標を知っていた被請求人が、我が国において引用商標が出願されていないことを奇貨として、本件商標の出願をし、登録を受けたものと認められるものであって、引用商標の指標力を希釈化し、不正の目的をもって使用するものといわざるを得ない。

(3)むすび

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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