結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35330号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3370214号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示したとおりの構成より成り、平成6年12月16日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、同10年9月11日に登録の設定がなされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求める、と主張し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件審判請求人(以下「請求人」という。)は、ドイツ最大手のメンズアパレルメーカーのフーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシフト(以下「フーゴ・ボス」という。)の日本法人である。
(2)(a)フーゴ・ボスは、1923年ドイツにおいて設立され、現在までヨーロッパ、アメリカ、アジアを含む世界各国で、高級紳士服及び高級紳士服用品の製造販売を行っている。同社は、1998年12月31日現在、カナダ、スペイン、フランス、香港、イタリア、日本、スイス、イギリス、ブラジル、オーストラリア、トルコ、ルクセンブルク、オランダ、アメリカの世界14ケ国に子会社を有し、それ以外の約40ケ国に総販売代理店を有している。フーゴ・ボスの製品(以下「BOSS製品」という)は、衣類、スポーツレジャーウエア、服飾品、非繊維品の多岐に亘っている。また、BOSS製品には、「BOSS」、「BOSS HUGO BOSS」、「HUGO BOSS」、「HUGO HUGO BOSS」等のBOSSブランドを使用している。フーゴ・ボス・グールプの1998年の総売上高は13億3,700万DM(ドイツ・マルク)、同年中の税引後純利益は9,700万DM、1996年12月31日現在の純資産は2億2600万DMである。
(b)フーゴ・ボスは、世界中でBOSS製品を販売するため、世界各国に商標を出願し、権利を取得している。「BOSS」関係の商標は、世界の146ケ国(地域)に、第3類、第9類、第12類、第14類、第18類、第20類、第24類、第25類、第27類、第28類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第34類、第35類、第42類に亘り、合計977件の登録商標を有し、232件の商標を出願中である。
我が国では、被服類、繊維類などに23件の商標を登録しており、2件の登録商標に専用使用権を有している。これらの商標はBOSS製品に付されて世界中で使用されている。なお、外国における商標の使用の態様は、甲第5号証ないし同第10号証に示すような我が国での使用態様と同様である。
(c)フーゴ・ボスは、毎年多額の宣伝広告費を費やして、一般日刊新聞紙、業界紙、専門家向け及び一般向けファッション雑誌への広告掲載、テレビ番組で出演者が着用する衣服の提供等を通じてBOSS製品の宣伝広告に努めた。
また、世界中のスポーツイベントに協力したり、ハリウッド映画やテレビとのタイアップを盛んに行い、積極的なPR活動を続けてきた。例えば、テニスのデビス・カップ、全米、全仏オープン、ゴルフのメルセデス ジャーマン マスターズなどのスポンサーのほか、人気の高いFIのスポンサードも実施している。
BOSS製品はダステイン・ホフマン、ロバート・デニーロ、ショーン・コネリーなどのビッグスターにも愛用されている。
さらに、ワールド・カップ・サッカー日本代表チーム向けの紳士服を提供するなど、一貫して、高級紳士服及び高級紳士用品の製造販売業者としてのフーゴ・ボスのイメージの普及、定着、及びBOSSブランドの周知に努めてきた。
フーゴ・ボスが1993年、1994年、1995年、1996年及び1997年中に広告宣伝費及び販売促進費として支出した金額は、それぞれ総売上高の約13パーセント、8パーセント、10パーセント、10パーセント及び10パーセントに相当する金額であった。
以上のことから見ても明らかなとおり、商標「BOSS」、「BOSS HUGO BOSS」、「HUGO BOSS」、「HUGO HUGO BOSS」等のBOSSブランドは、全世界的な規模で使用され周知となっているブランドである。
(3)(a)日本においてBOSS製品の本格的な販売が始まったのは、1985(昭和60)年秋であり、当初は商社を通じての販売であったが、その後1992(平成4)年5月には、本件審判請求人であるヒューゴ.ボス株式会が設立され、BOSS製品の日本における輸入及び販売を現在まで独占的に行っている。また、請求人は、BOSSの製品を直営店及び有名百貨店のみで販売して、フーゴ.ボス製品の高級紳士服及び高級紳士服用品としてのイメージの維持、定着に努めてきた。そして、現在、BOSS製品は直営店(青山及び丸の内)、有名百貨店内ショップ(阪急(梅田、有楽町)、高島屋(難波、横浜、京都、玉川)、大丸(博多、神戸、東京駅、下関、心斎橋)、西武(渋谷、池袋)、三越(日本橋、名古屋、札幌、松山、仙台)、伊勢丹(新宿、浦和)、そごう(奈良、福山)、小田急(新宿)、東急、(渋谷)、福屋(広島))及び全国各地の専門店(11店)で販売されている。(甲第5号証乃至甲第10号証参照)。
株式会社矢野経済研究所の調査によれば、「ボス」は、1994年において、輸入メンズウェアの諸ブランド中、売上高で、「ダンヒル」、「ミラ.ショーン」、「ジョルジオ・アルマーニ」、「ゼニア」及び「アニエスb」に次いで第6位の地位を占めており、1995年においては、「ダンヒル」、「ジョルジオ・アルマーニ」及び,「ゼニア」に次いで第4位であった。
(b)フーゴ・ボスは、永年に亘るBOSSブランドの宣伝広告活動等の結果、その略称「ボス」、「BOSS」は我が国で著名となっている。1991(平成3)年3月には、特許庁に於いてフーゴ・ボスの使用する「BOSS」が著名なものと認定されている。(甲第3号証の1)。
すなわち、旧第12類輸送機械器具等を指定商品として第三者によって出願された商標「BOSS」の出願に対する登録異議申立の決定の理由の中で、「異議申立人(フーゴ・ボス)は男性用のアパレル用品を取り扱うドイツ国の法人であって、そして同人の使用する『BOSS』の文字は本件商標の出願前より同人の略称として取引者,需要者間に広く知られたものである」と認定して、出願人の「BOSS」商標を、フーゴ・ボスの著名な略称と同一の文字よりなるとして拒絶している。
この登録異議決定は、1985(昭和60)年12月10日以前に「BOSS」がすでにフーコ・ボスの略称として著名であり、フーゴ・ボスの取り扱い商品であるアパレル製品とは非類似の関係にある輸送機械械器具等の商品にまで出所の混同が生じることを認定している。
また、1998(平成10)年には、請求人の申し立てた3件の商標登録異議申立事件について決定が出され、これらは、いずれも請求人の主張がいれられ、商標法第4条第1項第15号あるいは同第11号によって「理由がある」との決定がなされた。
更に、1999(平成11)年の商標登録異議申立事件においても、商標法第4条第1項第15号によって「理由がある」との決定がなされている。 これらの異議申立事件では、いずれも商標「BOSS」はフーゴ・ボスの著名な登録商標であると認定されている。
また、1990(平成2)年に発行された英和商品名辞典には「HUGO BOSS」が、フーゴ・ボスを指すものとして記載されている。(甲第4号証)。
(c)請求人はBOSSブランドについて宣伝広告し、権利侵害者に対してはその度に警告書を送り、類似と思われる出願公告には異議を申し立て、フーゴ・ボスの著名な略称及び同社の登録商標である「BOSS」、「HUGO BOSS」、「BOSS HUGO BOSS」、「HUGO HUGO BOSS」の保護と管理には多大の費用と時間をかけている(甲第6号証ないし甲第10号証)。以下1990(平成2)年からの例を説明する。なお、宣伝広告資料等が多量すぎるため資料の一覧表を提出し、そのうちの抜粋を提出する。また、資料の中では「HUGO BOSS」をカタカナに表記するため、ヒューゴ・ボスと表示されている場合もあるが、フーゴ・ボスと同−である。
まず、新聞記事では日本繊維新間,織研新聞,センイジャーナル等の業界紙をはじめ日経産業新聞,日経新間,THE JAPAN TIMES等の一般紙に168回に亘り、フーゴ・ボスあるいは請求人の記事が掲載されている。これらの記事は、フーゴ・ボスあるいは請求人の紹介記事あるいは同社の製品を商標「BOSS」と共に掲載したものが大部分である。(甲第6号証)。
また、その他各種雑誌等に記事として取り上げられた「PUBLICITY」では、上記5年間にを業界新聞、一般新間、あるいは雑誌等で国内のあらゆる地域、あらゆる階層に向けて、フーゴ・ボスあるいは請求人とその製品である、「HUGO BOSS」等の商標を付したアパレル製品が記事として取り上げられ、紹介されている。その掲載回数は562回に及ぶ。(甲第7号証)
広告は、上記5年間に上記業界紙はもとより朝日新聞,神戸新聞,中日新聞,西日本新聞等の一般紙で全国を網羅して行われている。さらに、PRESIDENT,NUMBER,BRUTUS等の雑誌に合計342回も掲載されている。(甲第8号証)
そして、上記の記事や宣伝広告にはヒューゴ.ボス(フーゴ・ボス)の名称と共に、スーツ、ジャンパー、ジャケット、ネクタイ、セーター等のフーゴ・ボスの製品及び、これら商品と同時に販売されている紳士用品、例えば、サングラス、香水、手袋、ベルト、ウオレット、システム手帳、札入れ、ノートパッド、ホルダー、財布、小銭入れ、ペンケース等の商品が、商標「BOSS」、「BOSS HUGO BOSS」、「HUGO BOSS」,「HUGO HUGO BOSS」を付して紹介されている。
さらに、この後も請求人等はBOSSブランドについて、上記と同様な規模と態様で、継続して現在まで宣伝広告をしている。1995(平成7)年9月から1996(平成8)年末までの資料を提出する。(甲第9号証)。
さらに1998(平成l0)年1月以降の宣伝広告資料を甲第10号証として提出する。
(d)上記のように、新聞等の紹介、宣伝広告および販売活動によって、フーゴ・ボスの略称であり商標である「BOSS」は、本件商標の出願日である平成6年12月当時には著名であり、そしてこの状態は現在まで継続していると考えられる。
(4)上述の通り「BOSS」は、少なくとも本件商標の出願時点である平成6年12月頃にはフ一ゴ・ボスの著名な商標および略称になっていたと考えられる。従って、本件商標は、フーゴ・ボスの著名な略称「BOSS」を含み、かつ同社の承諾を得ていないことから、商標法第4条第1項第8号の規定に該当する。
(5)本件商標は、フーゴ・ボスの著名な商標および略称を含むため、消費者、取引者にあたかもフーゴ・ボスまたは請求人の提供する商品であるかのごとき意識させる可能性がたかく商品の出所の混同を生じせしめる恐れがあるといえる。
すなわち、本件商標の「WELL BOSS」は前述の通り、フーゴ・ボスの著名な略称および登録商標である「BOSS」を含むものである。服装業界あるいは男性用ファッション用品において広く知られたフーゴ・ボスの略称を含む本件商標に接した需要者、取引者は、本件商標が請求人と何らかの関係があると感じるのが自然である。
さらに、本件商標の指定商品である「履物」には、紳士靴等を含み、それらの商品は上述の紳士服や紳士用品とは、需要者を同一にしており、またその宣伝形態や販売場所において類似した方法が採用されていることを考え合わせれば、混同の恐れが強い。
また、すでにのべたように「BOSS」製品の宣伝ならびこフーゴ・ボスと請求人の記事は新聞や雑誌にも頻繁に紹介されていることを考え合わせれば、一般需要者が本件商標を付した商標権者の商品に接した場合、フーゴ・ボスあるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、出所につき混同を生じると考えられる。従って、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。
(6)(a)本件商標は、第25類「履物」を指定商品としている。商標の構成は、多少ロゴ化した英文字で「WELL BOSS」と横書してなり、「WELL」と「BOSS」の二つの部分からなっている。
この「WELL BOSS」は成語とはいえず、特になじまれた語でもない。このうち、前半部の「WELL」は、「良い」という意味合いを有する外来語としても、日常一般に知られている語であり、商品の品質を表すものとして商取引においても採択、使用され普通に使用されている言葉であるから顕著性を有さない文字と考えられ、同趣旨の審決がなされている。(甲第12号証)。
一方、後半部の「BOSS」は、一毅的には「大将、ボス」を表す外来語として親しまれ、かつ前述のように、フーゴ・ボスの会社の略称、その商標として著名な「BOSS」と同一の綴り文字であることから、本件商標は「ウエルボス」の他に「ボス」の称呼も生じるものである。
(b)請求人は、これに対し登録第2708549号商標(甲第11号証)を提出する。この登録商標は、昭和62年3月17日に出願され、平成7年7月31日に登録されたものである。商標の構成は、英文字で「BOSS」と横書してなり、指定商品は旧22類はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品である。
(c)本件商標と、引用した登録商標とを比較すると、両者は、称呼は「ボス」で同一、さらに観念、外観も同一または類似していることは明白である。さらに指定商品も、本件商標の「履物」は、登録第2708549号商標の指定商品中に含まれており、本件商標は上記登録商標と類似関係にある。従って、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
(7)上述の通り、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号あるいは同第15号の規定に該当する。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)フーゴ・ボスは、世界46ヶ国で「BOSS」製品を販売し、多額の費用をかけて宣伝広告に努めている結果、全世界的に周知となっているブランドであると主張し、多数の証拠を提出している。
しかしながら、これらの証拠及び理由は既に登録異議申立理由でも主張立証されたもので、著名又は周知になっている商標は、審判請求人等が主張している通り、「BOSS」「BOSS HUGO BOSS」「HUGO BOSS」又は「HUGO HUGO BOSS」等であって「WELLBOSS」ではない。しかも「履物」については著名であることは提出された証拠からはとうてい認められるものではない。
ここで、著名な略称とは、「BOSS/ボス」または「HUGO BOSS/フーゴ・ボス」であり、後述するように「WELL BOSS」はこれらとは類似しないものであるから、本件商標は著名な略称を含む商標ではない。
(2)審判請求人等の業務に係る商標と混同を生じるおそれがある、との主張についても同様先の異議申立でも主張されたものである。
しかしながら、本件商標と請求人主張の商標は商標自体が類似していないうえ、仮に誤認混同を生じるとするならば、世界的に著名だと主張している「被服」関係についてであって、商品について類似しない「履物」についてまで、一般需要者に混同を生じさせるおそれはない。
請求人は申立理由において、過去の「理由がある」との異議決定を数件の証拠(甲第3号証の4)として提出しているが、「BIG BOSS」については、第15号の規定ではなく、「BOSS」と類似するとして第11号の規定に該当すると審査されたのである。
(3)本件商標が登録第2708549号商標「BOSS」と類似する、との主張に対しては下記の通り反論する。
(a)本願商標の「WELL BOSS」は同一書体で、同一の大きさでバランスよく記載されており、しかもその称呼は「ウェルボス」と僅か5文字よりなっており、決して冗長でもない。
そして一連の称呼は「ウェルボス」と、「ウェル」と「ボス」とは語呂的にも極めて馴染みがよく、特にどちらにもウエイトが片寄らず、滑らかに一気に続けて称呼されるうえ、「良い親方」「立派な親分」との一体的な観念も生じるので迅速な商取引が行なわれている現在であっても、これを単に「ボス」とのみ略称されることはない。
「WELL」は確かに「良い」「立派に」等という観念を生じるが、決して一般的に使用されている言葉ではなく、日本においては例えば「HI/ハイ」「ACE/エース」「GOLD/ゴールド」「SUPER/スーパー」等の品質を表示する言葉と比べてみても遥かにその表示機能的要素は低く、「WELL BOSS」と一体となっても「BOSS」を「良い」とのみ観念されることは殆ど無いものとなっている。
(b)このことは、乙第1号証として提出した本件商標に対する審判請求人による登録異議甲立における「理由なし」とする決定理由においても明確な判断が下されている。
その要部を記載すると次の通りである。
『そこで、本願商標と登録異議申立人の引用する商標との類否についてみるに、本願商標は前記の構成よりなるところ、「WELL」と「BOSS」は、半字程度の間隔があるとはいえ両語が、バランスよく表され、このうち「WELL」が、「申し分なく」「首尾よく」「立派に」等の意味を有する語であるとしても、本願商標においては、品質の誇称表示的意味合いとしては認識し難く、一連に表された文字全体として把握されるものであり、しかも全体としては称呼した場合においても冗長ともいえず、語調よく称呼されるから、構成全体をもって不可分一体のものと認識し、理解されるとみるのが自然である。そして、本願商標からは、「ウエルボス」の称呼のみが生ずるというべきである。
他方、引用登録商標は、その構成より見て「ボス」の称呼を生ずるものと認められる。
しかして、本願商標より生ずる「ウエルボス」と引用登録商標から生ずる「ボス」の称呼を比較するに、前者は、「ウエル」と「ボス」の音が結合することにより、両者の構成音数に著しい差異を有することから、その語調、語感が相異し、明らかに区別し得るものである。また、本願商標は、全体としての成句はないとしても、「立派な親分」という意味合いを印象づける一種の造語といえるのに対して、引用例登録商標は、「社長」「親方」「親分」等の意味合いを看取させるものであるから、その観念についても区別し得るものであり、外観においても両商標は互いに相粉れるおそれはない。
してみれば、本願商標は、引用登録商標と外観、称呼および観念のいずれにおいても類似しない別異の商標といわざるを得ない。』このように本願商標は「WELL BOSS」は、一連に表された文字全体として把握され、全体として称呼も冗長でなく語調良く称呼されるものであるから、全体構成をもって不可分いったいのものと認識されるものであり、従って「ウエルボス」のみの称呼が生じ「ボス」の称呼を生じる前記登録商標とは決して類似しないものである。
(4)以上説明した通り本願商標の「WELL BOSS」は、一連に表された文字全体としてのバランスも良く、「WELL」自体についても特別品質表示的意味合いとして認識されるものでもなく、全体としての称呼も劣か5音で冗長ともいえず、語呂的にも滑らかに続けて称呼されるものであることから、全体「WELL BOSS」が不可分一体的に結合認識されることは明かである。
そうすると、「ボス」の称呼を生じる引用登録商標とは、称呼上語調語感が全く相違し、決して類似するものではない。
観念的にみても、全体として「良い親方」「立派な親分」の意味合いを有する本件商標に対して、単に「親方」「親分」等の意味合いの引用登録商標とは、明らかに区別し得るものである。
次に審判請求人等の著名な略称を含むとする主張についてみても、請求人等の略称は「BOSS」「HUGO BOSS」であり、これらは上述した通り「WELL BOSS」とは全く別異であって、類似していないものであるから、当然に請求人等の略称を含むものとは認識されるものではない。 また商標の出所について混同を生じる恐れがあるとの主張についてみても、商標自体が異なっており、しかも、商標としても被服関係とは類似しない履物についてまで、一般需要者は請求人等の商品と関係があるとしてその出所について混同を生じるようなことも全くない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に該当し、無効とするとの請求は、理由がないとすべきである
請求人が提出した甲第4号証、甲第6号証の25及び甲第6号証の39を総合すると、請求人の親会社であるフーゴ・ボスは、ドイツ最大手のメンズアパレルメ一カ一であって、世界的に営業活動をしており、1993年度のグループ全体の総売上高は8億4630万マルク(約516億2400万円)に及んでいた事実、また、請求人が提出した甲第6号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を総合すると、BOSS製品は我が国でも各地の有名百貨店内、フランチャイズ店、東京・青山にある直営店などにおいて本件商標の登録出願前より販売されていた事実が認められる。そしてまた、フーゴ・ボスの営業活動については、本件商標の登録出願前に我が国の業界新聞、雑誌などにしばしば紹介された事実、及びフーゴ・ボスが使用の主力商標は、別掲(2)に表示した態様の「BOSS HUGO BOSS」の文字からなる商標であり、この商標を伴ったBOSS製品の紹介記事、宣伝広告がしばしば我が国の雑誌、新聞に掲載された事実が認められる。さらに、この商標は、「ヒューゴボス」ブランド(甲第6号証の2)、「BOSS」ブランド(甲第6号証の3)、基幹ブランド「ボス・ヒューゴ・ボス」(甲第6号証の10)、「ボス」ブランド(甲第6号証の39)などと記事中において称しており、また、これらの商標を使用した男性用被服の我が国における売上高も、本件商標の登録出願前において相当額に上っていたものと認めることができる。
以上の事実によれば、フーゴ・ボスが、男性用被服について使用の別掲に表示した態様の「BOSS HUGO BOSS」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願時に、既に需要者の間に広く認識されるに至っていたものであり、また、その構成中の上段に大きく表された「BOSS」の文字により、需要者に「BOSS」ブランド、「ボス」ブランドとして認識されることがあったものと認められる。
そして、本件商標は、その構成中にフーゴ・ボスが男性用被服について使用して需要者の間に広く認識されるに至っていた前記商標と共通する「BOSS」の文字を含んでおり、その指定商品も、ファッションに関連の商品であって、男性用被服とは高い関連性がある商品といい得るものであること等を考慮すれば、これをその指定商品について使用した場合、その構成中の「BOSS」の文字よりフーゴ・ボスが使用の需要者の間に広く認識されるに至っていた前記商標を想起し、それがフーゴ・ボス、若しくは、同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、需要者がその商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、その余の無効理由につき判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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