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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35430号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4185314号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年4月25日に登録出願、「SNS PILOT」の欧文字を横書きしてなり、第25類「被服,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成10年9月4日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第1482011号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PILOT」の欧文字を横書きしてなり、昭和52年7月11日に登録出願、第17類「 被服、布製身回り、寝具類」を指定商品として、昭和56年9月30日に設定登録されたものである。その後、指定商品中「くつ下,たび,手袋(ゴム手袋、絶縁用ゴム手袋を含む),えりまき,マフラー,スカーフ,ネッカチーフ,ショール,ネクタイ,ゲートル,たびカバー,エプロン,おしめ」について、また「帽子,ナイトキャップ,ずきん,ヘルメット,すげがさ,頭から冠る防虫網」についての登録を取り消す旨の審決がなされ、その確定の登録がそれぞれ平成10年2月18日になされたものであり、現に有効に存続しているものである。

同じく登録第1591233号商標(以下「引用商標2」という。)は、「PILOT」の欧文字を横書きしてなり、昭和55年1月21日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和58年5月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。(以下、合わせて「引用商標」という。)

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第26号証を提出した。

(1)請求の利益について

請求人は、本件について引用商標1及び2を所有する商標権者であり(甲第2号証及び同第3号証)、かつ、自己の業務に係る商品を表示するものとして全国的に著名な商標「PILOT」の所有者であるので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上記に示すとおり「SNS」と「PILOT」の英文字をそれらの間に1文字分の余白を設けて結合させ、左横書きにしてなるものである。

そこで、本件商標から生じる称呼について検討するに、本件商標の構成中「SNS」の文字から生じる称呼は「エスエヌエス」であり、同じく「PILOT」の文字から生じる称呼は「パイロット」である。したがって、本件商標全体から生じる称呼は、「エスエヌエス パイロット」であるとも考えられる。

しかしながら、「SNS」と「PILOT」の両文字間には1文字分の余白が設けられており、また、「SNS」の文字からは何ら特定の観念が生じないのに対し、「PILOT」の文字からは「水先案内人」等の特定の観念が生じること(甲第4号証)に鑑みれば、これに接する需要者は、本件商標を「SNS」と「PILOT」の文字部分に分けて称呼・観念することは容易に想到される。特に、「PILOT」の文字部分は、後述のとおり、請求人のハウスマークであり、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本全国において著名な商標「PILOT」と同一の文字から構成されるものであるため、本件商標の要部として需要者に認識され易いものである。

したがって、本件商標の構成中、「PILOT」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能する場合があると考えられるので、本件商標からは「パイロット」の称呼及び「水先案内人」等の観念が生じるものである。

これに対し、請求人の引用商標1及び2はいずれも「PILOT」の文字を横書きに一連に書してなるものであるから、これらは「パイロット」の称呼及び「水先案内人」等の観念を生ずるものである。

したがって、本件商標と引用商標とは、「パイロット」の称呼及び「水先案内人」の観念が生ずる点において共通し、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、類似の商標というべきである。

そして、本件商標に係る指定商品中の第25類「被服(「エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すけがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を除く。),ベルト」と、引用商標1の指定商品中の第17類「被服(「くつ下,たび,手袋(ゴム手袋,絶縁用ゴム手袋を含む),えりまき,マフラー,スカーフ,ネッカチーフ,ショール,ネクタイ,ゲートル,たびカバー,エプロン,おしめ,帽子,ナイトキャップ,ずきん,ヘルメット,すけがさ,頭から冠る防虫網」を除く。)」及び引用商標2の指定商品中の第21類「装身具」とは、同一又は類似する商品である。

以上述べたことから、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、それらの指定商品についても同一又は類似するところがある。

(3)商標法第4条第1項第15号について

請求人の商標「PILOT」は(以下「PILOT商標」ともいう。)、大正7年に請求人が創業以来80年に亘り、商品「筆記具」をはじめとする「文房具類」について、継続的に広く使用されているものである。特に、請求人は、その主力商品である「筆記具」については、平成8年度において342億4千4百万円の売上高を計上しており(甲第5号証)、当該商品に関する我が国における請求人の市場占有率は極めて高い(甲6号証乃び同第7号証)。

また、請求人は、雑誌、新聞、テレビ等の多様な媒体を利用して、積極的に広告宣伝活動を行っていることから(甲第8号証ないし同第16号証)、請求人の「PILOT商標」は、需要者及び取引者への浸透度はかなり高いものである。

さらに、請求人の「PILOT商標」は、他人がこれをその指定商品と類似しない商品について使用した場合に、出所の混同が生ずるおそれがある商標であるとして防護標章登録が認められているものである(甲第17号証ないし同第20号証)。特に、甲第20号証として提出する商標登録第1761688号防護第1号においては、商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」について防護標章登録が認められている。このことが直ちに本件商標の出願時において本件商標がその指定商品について使用された場合に、請求人の業務と出所の混同が生じるおそれがあることを証するものではないとしても、少なくとも当該防護標章登録の査定時である平成11年4月2日時点において、本件商標の指定商品と同一又は類似するこれら商品について請求人以外の者が「PILOT商標」を使用した場合には、出所の混同が生じるおそれがあるものであることは御庁の審査官により認定されたことを示すものであり、この事実を、本件商標の出願時以前から上述のとおり請求人が「PILOT商標」を長期に亘り継続的に使用している事実と総合的に勘案すれば、請求人の「PILOT商標」が本件商標の出願時及び登録時において、請求人以外の者が「PILOT商標」を商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」について使用した場合には出所の混同が生じるほどに著名な商標となっていたことは明らかであり、その他の指定商品についても、同様に、この商標を含む商標を他人が使用した場合には、その商品の出所について混同が生じるおそれがある。

また、請求人は、多岐に亘る商品を取り扱っているものであり、現在20社を超える内外の多様な事業を目的とする関連企業を有していることから(甲第5号証)、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合には、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者に係る商品であると認識されるおそれがある。

したがって、本件商標は、その指定商品について使用された場合には、その商品の分野の需要者は、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。

以上、述べたところから、本件商標は、商標法第4条第1項11号及び第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすべきである。

(4)答弁に対する弁駁

(ア)商標法第4条第1項第11号について

被請求人は、「簡易迅速を旨とする実際の商取引において、需要者・取引者をして、一つの商標中に特定の観念を生じさせる文字と特定の観念を生じさせない文字とがあることを瞬時に判断するとは到底考えられないと共に、そのように分けて取り引きする特段の事情も存在しないものである」と反論している。

しかしながら、本件商標中の「SNS」の文字部分は、単にアルファベット大文字3文字から構成されるものであることから、商標としての自他商品の識別力が比較的弱いものと考えられる。このように一種の記号的な文字がより自他商品の識別力が強い文字と結合した場合には、その文字部分がその商標の要部として需要者・取引者に認識され易いものと思料する。特に、本件商標中の他の「PILOT」の文字部分は、少なくとも「文房具類」の分野において請求人の商品を表示するものとして著名な「PILOT商標」と全く同一の文字から構成されるものであり、また「PILOT」の英語は、わが国において「水先案内人、パイロット(飛行機の操縦士)等」を表示する語として、広く親しまれている語であるため、この語が特定の観念を生じさせるものであることは、需要者・取引者をして、容易に認識されるものである。

さらに、被請求人は、本件商標中の「SNS」と[PILOT」の文字との間に余白が設けられていることに関して、「その余白は実際には1文字分もなく、両者は分離し難いほどに近接して書されていることに鑑みると、本件商標に接する需要者・取引者をして、『SNS』の文字と『PILOT』の文字とに分けて認識するというよりは、寧ろ全体を特定の観念を生じさせることのない造語として、一連にのみ認識すると考えられる」とも反論している。

しかしながら、「SNS」と「PILOT」の文字との間に設けられた余白部分が厳密に1文字分であるか否かはともかくとしても、本件商標は、その態様からみて、両文字が分離され、それらの間に余白部分が存在することを疑う余地はない。特に、本件商標全体から生じる称呼は「エスエヌエスパイロット」という10音から構成される冗長なものであることに鑑みると、簡易迅速を旨とする実際の商取引においては、これを省略して「パイロット」と認識、称呼され易いものであると考えられる。

したがって、本件商標からは、「パイロット」の称呼及び「水先案内人、パイロット(飛行機の操縦士)」等の観念が生ずるものであるから、本件商標は引用商標と類似するものである。

(イ)商標法第4条第1項第15号について

被請求人は、「請求人が提出した各証書を検討しても、請求人が現在本件指定商品を取り扱っている旨示されておらず、また、将来的にも同分野に参入する予定があるとの示唆もない。さらには、甲第5号証で挙げられている関連企業の業務内容の殆どが筆記具・文具に関するものであることから、請求人において多種多様な事業が行われているとは到底考えられない」と反論している。

しかしながら、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」とは、経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品と誤信されるおそれがあれば足り、現実にその商品を取り扱っていること又は将来的に取り扱う予定があることは必要とされないと解されている。

また、請求人の事業の多角性に関しても、請求人は、文房具類以外に「貴金属・宝飾品類、ギフト用雑貨用品類」等の商品を取扱っており(甲第21号証ないし同第25号証)、それら取扱商品のうち「身飾品,かばん類,袋物」等の商品は、本件商標の指定商品「被服,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」と販売場所、用途、原材料及び需要者の範囲等において関連性のある商品である。さらに、請求人の関連会社の一つであるパイロットインキ株式会社では、玩具事業部を有し、本件商標の指定商品と原材料等において関連のある商品「玩具用衣服」等について請求人の商標「PILOT」を付して製造販売を行っている(甲第26号証)。これら請求人の取扱商品の中でも「身飾品,かばん類,袋物」は、いわゆるファッション小物類として、被服メーカー・販売店等が統一ブランドを用いた商品として取り扱われているものであることは取引の実情に照らして明らかである。このように請求人の事業範囲は、文房具類に止まるものではなく、多岐に亘るものである。

そうとすれば、本件商標がその指定商品について使用された場合には、これに接する需要者・取引者は、これが請求人の所有する著名商標「PILOT」についてのいわゆるシリーズ商品であるかの如く(例えば、パイロットの「SNS」シリーズのように)認識するおそれがあり、そうでなくとも、その商品が請求人又は請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品と誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

(1)商標法第4条第1項第11号について

請求人は、本件商標には、「SNS」の文字と「PILOT」の文字との間に1文字分の余白が設けられていること、及び「SNS」の文字からは特定の観念が生じるのに対し、「PILOT」の文字からは「水先案内人」等の観念が生じるため、本件商標は「SNS」の文字と「PILOT」の文字とに分けて称呼・観念される旨主張する。

しかしながら、簡易迅速を旨とする実際の商取引において、需要者・取引者をして、一つの商標中に特定の観念を生じさせる文字と特定の観念を生じさせない文字があることを瞬時に判断し、そのような判断を以て商取引がなされるとは到底考えられないと共に、特定の観念を生じさせる文字と特定の,観念を生じさせない文字とに分けて実際の取引がなされなければならないとする特段の事情も存在しないものである。

また、本件商標中の「SNS」の文字と「PILOT」の文字との間に設けられている余白について、請求人は1文字分の余白が設けられている旨主張しているが、実際には1文字分もなく、両者は分離し難いほどに近接して書されていることに鑑みると、本件商標に接する需要者・取引者をして、本件商標を「SNS」の文字と「PILOT」の文字とに分けて認識するというよりは、寧ろ全体を特定の観念を生じさせることのない造語として、一連にのみ認識すると考えられるものである。

なお、請求人は、本件商標中の「PILOT」の文字は請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名な「PILOT」の文字と同一の文字からなるため、本件商標にあっては「PILOT」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能する場合があると主張しているが、著名な文字と同一の文字が直ちに要部を構成するとは言え得ないと共に、「SNS」の文字と「PILOT」の文字とが、同書・同大の文字を以て分離し難いほどに一連に表されてなることからすると、本件商標は全体が一つの識別標識としてのみ機能し、「PILOT」の文字部分のみが独立して識別機能を発揮するとは到底考えられないものである。

上述のように、本件商標においては、「PILOT」の文字部分のみを以て取引に資されることはなく、「SNS PILOT」の文字全体を以てのみ取引に資されることからすると、本件商標は、引用商標と称呼・観念を同じくするものではないので、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、請求人の「PILOT商標」が、長年に亘り「筆記具」をはじめとする文房具類について継続的に使用され、且つ積極的に宣伝・広告が行われていると共に、「第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として防護標章登録を受けていることから、その著名性は既に認定されているとした上で、この「PILOT」の文字を含む本件商標がその登録防護標章に係る指定商品に使用された場合には、恰も請求人会社の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同が生じるおそれがあると主張している。

しかしながら、上述のように、本件商標は「PILOT」なる商標と類似しないことからすると、本件指定商品の「靴類(「靴合わせくぎ」等を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」は勿論のこと、上記登録防護標章に係る指定商品と抵触する「被服,ベルト」に使用された場合であっても、請求人会社の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同が生じるおそれはないものである。

また、請求人は、多岐に亘る商品を取り扱っていると共に、多くの関連企業を有していることを以て、本件商標がその指定商品に使用された場合には、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く認識されるおそれがあるため、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるとも主張している。

しかしながら、請求人が提出した各証書を検討しても.請求人が現在本件指定商品を取り扱っている旨示されておらず、また、将来的に本件指定商品を取り扱う分野に参入する予定があるとの示唆もない。さらには、甲第5号証で挙げられている関連企業の業務内容は殆どが筆記具・文具に関するものであり、このことからすると、請求人において多種多様な事業が行われているとは到底考えられないものである。

上述の状況を考慮すると、本件商標がその指定商品に使用された場合であっても、商品の出所について混同を生じるおそれはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

以上詳述したように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではなく、その登録を無効にすべき理由はない。

5 当審の判断

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるか否かについて

本件商標の構成についてみると、本件商標は、前記のとおり「SNS」の文字と「PILOT」の文字との間を半文字程度の間隔を設け、等間隔に左横書きしてなる比較的簡明な構成で、かつ、これを構成する欧文字は同一の書体であり、同一の大きさをもってなることは明らかである。したがって、本件商標を構成する「SNS」及び「PILOT」の文字は、その書体、大きさ、配置からみて、視覚上、その間に主従、軽重の差の関係は認められない。

ところで、「SNS」は欧文字3文字であるところ、一般に、このような標章は、例えば、ある種の欧文字の名称の単語の頭文字をとって作った連続してなる、出所などを表す略記号的意味合いを有するものとして多数、採択使用されており、他方の「PILOT」の文字は、同じ英単語である「pilot」及びその表音の「パイロット」の片仮名文字と共に「飛行機などの操縦者、水先案内人」等を意味する平易な英語として使用されており、該「SNS」及び「PILOT」の文字は、双方とも日常、普通にみられる欧文字であるということができる。しかして、かかる事情の両文字が結合した「SNS PILOT」の文字からは、「SNSの操縦者」というような一連の意味合いを示唆する造語として理解しても、意味上の繋がり具合においてもそれ程違和感を有しているものではない。

そして、本件商標を、一連に「エスエヌエスパイロット」と称呼した場合、促音を加えて10音となるとしても、前半の「エスエヌエス」において「エ」と「ウ」の母音が繰り返されことにより、小気味よく称呼され、その全体の称呼が、よどみなく一気に最後まで称呼し得るものであり、それ程の冗長感を与えているものでもない。

以上の点を総合勘案すれば、本件商標は、商標として使用された場合には、取引者、一般の需要者は、これを全体として一体の商標として認識し、これを殊更に分離して「PILOT」の文字に着目し、「パイロット」と称呼したり、単に「水先案内人」等の観念をもって認識したりすることはないものと認められ、 全体をもって自他商品の識別標識としての機能を果たしているとみるの相当である。

請求人は、本件商標は、「SNS」の文字部分が、アルファベット大文字3文字から構成され、一種の記号的な商標で比較的識別力が弱く、これがより自他商品の識別力が強い文字と結合した場合には、その文字部分がその商標の要部として需要者・取引者に認識され易いものと思料する。特に、本件商標の他の構成要素の「PILOT」の文字部分は、少なくとも「文房具類」の分野において請求人の商品を表示する著名な「PILOT商標」と全く同一の文字であり、また「PILOT」の英語は、わが国において「水先案内人、パイロット(飛行機の操縦士)等」を表示する語として、広く親しまれている語であるため、この語が特定の観念を生じさせるものであることは、需要者・取引者をして、容易に認識されるものである、と主張する。

しかしながら、本件商標中の「SNS」の文字が3欧文字構成の記号的標章であるとしても、前記したとおり、識別標識として多数使用されており、他方の「PILOT」の文字も「飛行機の操縦士」等の意味のよく知られた平易な語であって、双方、同等の識別力を有しており、両者の間に識別力の強弱はない。

さらに、「PILOT」の文字部分は、「文房具類」の分野においては請求人の商品を表示するものとして著名な商標と認められるが、前記認定のような本願商標の一体性に照らし、その構成要素として理解されるものであって、請求人の著名な商標を表すものとは認識され難く、取引者、需要者は殊更に「PILOT」の文字のみをとらえて取引に当たるものとは、到底認められず、この点に関する請求人の主張は採用できない。

以上によれば、本件商標からは、構成各文字全体に相応して、「エスエヌエスパイロット」の称呼が生じ、「パイロット」の称呼は生ずることはなく、また、特定の観念が生ずるものでもない。一方、引用商標は「パイロット」「飛行機などの操縦者」の称呼、観念が生ずるものである。

そうすると、本件商標と引用商標から生ずる前記称呼は「パイロット」の音を有することに共通性があるとしても、その構成音数、構成音「エスエヌエス」の有無により、称呼上十分聴別でき、また、両商標はその構成からみて、外観上も区別し得るものであり、観念については比較し得ない。

したがって、本件商標と引用商標は外観、称呼、観念のいずれにおいても類似しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。

(2)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるか否かについて

請求人の提出の甲各号証及び同人の主張を総合すると次の事実を認めることができる。

(ア)請求人は、大正7年創業の筆記具をはじめとする文房具等を製造、販売している会社であって、請求人が使用する「PILOT」及び「パイロット」の文字からなる商標は、筆記具などの文房具について需要者の間に広く認識されているものと認められる。

(イ)請求人(子会社、関連会社等、請求人と関係を有する者を含む。以下同じ。)は、文房具のほかに玩具、宝飾品類、革製小物類、かばん類を取り扱っていることが認められる。

(ウ)本件商標の指定商品と「PILOT商標」の著名性が認められる文房具を対比すると、これらの商品は、商品の用途、機能、材質はもとより、製造者、販売者、取引経路等において関連性を有しないものということができる。

(エ)請求人の文房具、玩具、宝飾品類、革製小物類、かばん類に現実に使用されている「PILOT商標」のロゴタイプをみると、これらは、太字、細字で普通に表された「PILOT」の欧文字、「パイロット」の片仮名文字、太字の欧文字の「PILOT」で「P」の文字を図案化した構成よりなるものである。

そうすると、請求人が現在ハウスマーク等に使用する主要な商標で特徴あるものは、太字の欧文字の「PILOT」で頭文字の「P」の文字を図案化した構成よりなるものである。

以上の事実を総合すると、本件商標は、構成中の「PILOT」の文字が請求人の著名商標の「PILOT」の特徴あるロゴタイプとは異なる一般の活字体で表されているに止まり、その意味も、日常普通にみられる平易な文字(語)で、よく知られた「飛行機などの操縦者」であること、上記に認定したとおり本件商標の一体性、さらに、本件商標の指定商品と「PILOT商標」の著名性が認められる文房具とは関連性を有しないこと、加えて、請求人が玩具類、宝飾品類、革製小物類、かばん類を取り扱うの多角化の傾向を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者、需要者は、これより「PILOT商標」を連想、想起し得ないものとみるのが相当である。

してみれば、本件商標は、その指定商品に使用されても、請求人又は請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品と出所について混同するおそれはないものといわなければならない。

そして、請求人は、登録第1761688号商標防護第1号においては、商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」について防護標章登録が認められているものであり、少なくとも当該防護標章登録の査定時である平成11年4月2日時点において、本件商標の指定商品と同一又は類似するこれら商品について請求人以外の者が「PILOT商標」を使用した場合には、出所の混同が生じるおそれがあると主張するが、本件商標は、その構成中「PILOT」の文字が含むとしても、本件商標の一体性に照らし、当該防護標章とはその構成、態様において、事案を異にするものであるから、その主張は採用できない。

(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び第15号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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