結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成8年審判第11562号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件は、別紙に示すとおりの構成よりなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品とし、昭和58年1月12日に登録出願され、昭和60年6月25日に設定登録された登録第1777332号商標(以下「本件商標」という)に関し、平成7年9月28日付けでなされた商標権の存続期間の更新登録に係る商標法第48条第1項の規定に基づく無効審判請求(以下「本件請求」という)である。
I.請求の趣旨等
本件請求の請求人(以下「請求人」という)は、結論同旨の審決を求め、次の趣旨の理由および弁駁を述べると共に、証拠方法として甲第1号証〜甲第50号証を提出している。
1.本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、その商標登録は無効とされるべきである。
(1)審判請求の利益について
請求人は、イタリア国のプロサッカーチームである「JUVENTUS」(ユベントス)のオフィシャルグッズであるユニフォーム等の商品をイタリアから輸入し、販売している者である。
しかるところ、本件請求の被請求人(以下「被請求人」という。)は、請求人の前記販売行為を本件商標を含む商標権の侵害として東京地方裁判所に提訴(平成8年(ワ)第5748号)し、現在審理中である。
したがって、請求人は本件請求につき法律上の利害関係を有する者である。
(2)「JUVENTUS」(ユベントス)の標章の著名性について
本件商標の構成文字「Juventus」は、イタリア国のプロサッカーリーグであるセリAに属する「JUVENTUS FOOTBALL CLUB s.p.a」の著名な略称である「JUVENTUS」と同一の構成文字よりなるものである。
前記「JUVENTUS FOOTBALL CLUB s.p.a」は、1897年に創立されたイタリア国有数のプロサッカーチームであり、「欧州チャンピオンズリーグ」、「欧州カップ・ウイナーズカップ」及び「UEFAカップ」の欧州三大カップの全タイトルを最初に制し、イタリアのプロサッカーリーグであるセリエAにおいて過去22回の最多優勝(1995年時点)を成し遂げたチームとして、「JUVENTUS」(日本語の表記は「ユベントス」)の名の下に世界のサッカーファンに著名なプロサッカーチームである(甲第3号証及び甲第4号証)。
そして、近年わが国においても、プロサッカーリーグであるJリーグの開催によって、プロサッカー熱が非常な盛り上がりを見せているが、「JUVENTUS」(ユベントス)の名は、わが国で1リーグが開催される以前より、ワールドカップ等の国際試合を通じて、わが国のサッカーファンの間でも広く知られていたものである。
現在においては、「JUVENTUS」(ユベントス)の名は前記セリエAの名門チームの略称としてわが国においても著名となっているものである(甲第3号証〜甲第9号証)。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することについて
本件商標は、少なくとも本件商標の更新登録時点である平成7年9月28日時点では、「JUVENTUS」(ユベントス)の名称は、イタリア本国はいうまでもなく、わが国を含む世界中で広く知られるに至っていたものである。
しかるに、このような世界的にも著名な外国の団体の著名な略称を、当該団体以外の者がわが国で商標登録することは、わが国の国際信用を著しく害することになるものである。また、プロサッカーはそれ自体が営業活動として行われているから、公正であるべき商取引の秩序に反することになる。
すなわち、本件商標は明らかに世界的に著名な団体の名声を潜用せんとする不正な意図のもとで更新登録を受けたものである。
このような世界的に著名な名称を冒認した出願については、御庁の審決においても、世界的に著名な画家である「シャガール」の氏名に相当する「MARC CHAGALL」の文字よりなる商標の旧第17類での出願について、「シャガールの名声を冒認しようとするものであるから、かかる行為は、国際信義に反するものといわざるを得ず、公の秩序を害するおそれがあるとみるのを相当とする。」として、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断されている(甲第10号証)。
また、世界的に有名なスポーツ用品専門店であるロンドン所在の「リリーホワイツの店名表示「Lillywhites」を本人以外の者がわが国で商標登録するのは、「公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に即しない」として、前記事件と同様に商標法第4条第1項第7号に該当すると判断されている(甲第11号証)。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号の規定にも該当する。
2.請求の理由(補充)
(1)1985年(昭和60年)12月8日に、東京・国立競技場で開催された第6回トヨタ・カップの決勝戦で、「JUVENTUS」(ユベントス)・チームは優勝を飾り、この事実は、同年12月9日の朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞において全国的に報道された(甲第15号証〜甲第18号証)。
なお、このトヨタ・カップは、欧州と南米のそれぞれのチャンピオン同士が争う事実上のプロサッカー世界一決定戦であり、わが国のサッカーファンのみならず全世界のサッカーファンが注目しているものである(甲第16号証)。そして、1985年(昭和60年)12月8日のユベントスが優勝した第6回トヨタ・カップには、6万2千人の観衆が入場し、声援を送ったことが報道されている(甲第15号証)。
そして、この第6回トヨタ・カップの模様は、テレビ放送によってもわが国で全国的に放映されたものである(甲第19号証)。
(2)「JUVENTUS」(ユベントス)・チームは、イタリア有数のプロサッカーチームとして、上記第6回トヨタ・カップ以前より、わが国のサッカーファンに人気を博してきたものである。その事実を示すものとして、わが国のサッカーファンに愛読されている雑誌「サッカー・ダイジェスト」の1981年(昭和56年)以降の発行分から代表的なものを甲第20号証〜甲第40号証として提出する。
すなわち、「JUVENTUS」ユベントス・チームは、1981年〜82年に開催されたヨーロッパ(欧州)チャンピオンズ・カップに出場したが、そのことはわが国でも報道された(甲第20号証〜甲第24号証)。その他にも、地元のイタリア・リーグをはじめとして三大カップ等でのユベントスの活躍や、ユベントスの人気選手パオロ・ロッシやプラティニの記事が掲載されているように、ユベントス・チームがその選手とともにわが国でも広く知られ、人気を博してきたことが示されている(甲第25号証〜甲第40号証)。
また、この雑誌では、サッカー試合の報道ばかりでなく、ユベントス・チームのユニフォーム等がサッカーファンのためのいわゆるファングッズとして、わが国でも販売され、愛好されてきたことが示されている(甲第28号証、甲第34号証、甲第36号証、甲第38号証、甲第39号証)。
さらに、ユベントス・チームの人気選手を起用したスポーツウエアについての広告も掲載されている(甲第34号証、甲第36号証)。
(3)「JUVENTUS」(ユベントス)・チームは、1996年(平成8年)12月26日に東京・国立競技場で関催された第17回トヨタ・カップで2度目の優勝を飾ったことが報道され(甲第41号証〜甲第48号証)、現在でもわが国で高い人気を博していることが示されている。
3.下記II1に対する弁駁
(1)「Juventus」の著名性について
甲第15号証〜甲第40号証によれば、少なくとも本件商標の更新登録日である平成7年9月28日の遥か以前より、「Juventus」又はその日本語表記である「ユベントス」がわが国でも著名であったことは明らかである。
とりわけ、「Juventus」チームが優勝した昭和60年12月の第6回トヨタ・カップには、6万2千人の観衆が詰めかけ、その模様は全国紙、テレビ放送等によって全国的に報道された(甲第15号証〜甲第19号証)。
このように外国の商標を安易に借用してしまうという被請求人の態度自体も問題であるが、この昭和57年当時において、「Juventus」は、伝統あるプロサッカーチームとして、イタリア本国のみならず世界的にも知れ渡っていたものである。このことは例えば甲第3号証〜甲第5号証の文献の記載からも明らかである。被請求人は、これらを含む甲第3号証〜甲第9号証の文献の発行が比較的新しい旨述べているが、請求人がこれらの証拠で示しているのは、1897年の創立以来今日まで続く「Juventus」チームの著名な来歴である。
そして、イタリア本国において、プロサッカーと言えば、わが国のプロ野球や国技である相撲等とも比べられる大衆的スポーツである。つまり、被請求人が本件商標を採択したとする昭和57年当時では、「Juventus」がイタリア本国をはじめとして世界的に著名であったことは動かし難い事実なのである。そして、度々イタリアに旅行した被請求人代表者が「Juventus」の言葉に特別の関心を抱いたとするなら、それがイタリアの著名なプロサッカーチームの名称であることを知らなかったと考える方がむしろ不自然である。
(2)請求人と被請求人の係争関係について
▲1▼ 被請求人は、本件商標について、イタリアの「Juventus」チームから商品化の許諾を得ている伊藤忠に対して、本件商標の使用権を設定している旨述べている。
しかし、重要なのは被請求人が本件商標を出願し、登録するにあたって、「Juventus」チームから何らの承諾を得ていないことである。したがって、被請求人が伊藤忠に使用権を設定していることは本件商標の登録を何ら正当化するものではない。
そもそも、イタリアの「Juventus」チームは、本件商標の存在に拘わらず、自己の名称(著名な略称を含む。)を使用することができるのである(商標法第26条第1項)。伊藤忠等による「Juventus」の表示の使用も、それがイタリアの「Juventus」チームの商品化事業の一貫として、ユニフォーム等に「Juventus」チームのオフィシャルグッズであることを示すために使用されている限りは、前記の本人の名称使用の権原に基づくものであって、しかも、商標的な意味合いでの商品の出所(製造者、販売者等)を識別していないから、本件商標とは無関係である。
にもかかわらず、被請求人が使用権を設定して経済的な利得を得ているとすれば、伊藤忠等は、本件商標の不当な登録があるばかりに、無用な負担を強いられていることになる。被請求人の提出した契約書(乙第1号証)は、かかる本件商標の登録の不当性を示すものに過ぎない。
▲2▼ 乙第4号証〜乙第9号証に示されているのは、被請求人が本件商標を使用している商品と称するハンドバック等の写真のみであって、これらを直ちに信じることはできない。
しかも、本件商標に係る商標権については、平成7年6月12日付登録の専用使用権が設定されているから(甲第2号証)、少なくともそれ以降は、被請求人は本件商標を使用する権限を有しないことになる。仮に被請求人が本件商標を使用していたことがあるとしても、被請求人は、「Juventus」がイタリアのサッカーチーム名として広く知られている状況下においてもなお本件商標を使用し続けたことになる。このような被請求人の姿勢には、国際信義や国際的な商道徳を尊重するという態度が全く見られない。
▲3▼ 請求人は、イタリアの「Juventus」チームの名称使用との関係では、「Juventus」チームが公認したオフィシャル・グッズである「Juventus」のユニフォーム等のスポーツ関連商品の並行輸入業者である。すなわち、請求人は、イタリア国内で販売されたユベントス公認のオフィシャルグッズ(真正品)をイタリア国内で購入して、わが国に並行輸入しているものであって、このような並行輸入が正当であることは、あらためて言うまでもないところである。
しかるに、本件商標権は、請求人のこのような並行輸入行為を実質的に妨害する役割を果たすに至っているのである。つまり、本件商標はその登録と権利行使とにおいて、二重の不当性を帯びるに至っている。
II.答弁の趣旨
1.被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、次の趣旨の答弁をすると共に証拠方法として乙第1号証〜乙第15号証を提出している。
(1)本件商標の選択の経緯について
▲1▼ 被請求人は、衣料の製造卸販売を業とする会社であり、主として「婦人服」及びその関連商品を取り扱っており、業務との関係で被請求人代表者は度々イタリアに旅行をしている。
1982年(昭和57年)にイタリアに旅行をしたとき、「Juventus」という名前のブティックを知り、個人的に買物をしたことをきっかけとしてそのブティックの雰囲気と商品が気に入りイタリアへ行く度に買物をした、また、被請求人の代表者は、「Juventus」が「青春」を意味するものと、当時、聞き知っていたこともブティック「Juventus」に惹かれた理由でもあった。
そこで、日本でも「Juventus」の商標で商品を製造販売したいと考え昭和58年1月12日にまず旧第17類と本件旧第21類に商標登録出願をしたのである。本件商標のロゴは、イタリアのブティックのロゴと同じではなく、その店の雰囲気をイメージしてデザインしたものである。
また、被請求人の代表者は、商標登録出願後の1984年(昭和59年)に東京に本件商標と同一のロゴを用いた「Juventus」の名称のブティックを開いたが1990年(平成2年)(その後の答弁書において平成3年8月に訂正)にその店を閉じた。
なお、イタリアのブティックも現在はなくなっている。
▲2▼ 本件商標を選択した当時、わが国でイタリアのサッカーチームの名前などほとんど知られておらず、本件商標の選択はサッカーチームの名称とは全く関係ないものである。
(2)訴訟に至った経緯について
▲1▼ 本件商標は、甲第2号証の本件商標の登録原簿から明らかなように、伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下、単に「伊藤忠」という。)と専用使用権の設定契約をし、それに基づき平成7年6月12日および平成7年11月6日に専用使用権の設定登録をした。
このプロサッカー38チームが加盟するサッカー連盟(Italian Football League)からの許諾により、連盟のロゴマーク及び加盟チームのエンブレム等を使用した製品の日本における商品化を推進するに当り、日本における商標の調査をしたところ、「JUVENTUS」については、被請求人が本件商標を始め5件の商標権を所有していることが判明したからである。
そこで、伊藤忠は、例令、使用するのがイタリアのサッカーチームの名称であっても、一般の消費者を対象とした商品に「JUVENTUS」の文字を使用して販売することになるので、被請求人に無断で使用することはわが国の商標上適法とはいえないとの結論に達して、被請求人へ使用許諾を申し入れたのである。それまで、被請求人は、婦人服及び婦人用のハンドバッグなどについて継続して商標を使用してきており、主たる業務である婦人服関係については従前通り、今後も使用していくので商標登録第1795328号(旧第17類)についてのみ通常使用権を許諾し本件商標及び他の商標権すなわち登録第2585508号(旧第25類)、登録第2601213号(旧第24類)及び登録第2642697号(旧第23類)については専用使用権を設定したのである。
▲2▼ その後、イタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」のロゴマーク及びエンブレムの日本における商品化については、チームとの直接契約になり、伊藤忠は、繊維製品以外の商品についてはライセンスを有しているが繊維製品については直接「JUVENTUS」の商品化のライセンスを受けていないので繊維製品については、ライセンスを有している会社と契約し、かつ、日本での使用については、そのライセンスを受けている会社に対し、被請求人との契約により、通常使用権及び専用使用権に基づいてサブライセンスを与えている。
このように、イタリアのプロサッカーチームからチームのロゴマーク及びエンブレムを各種商品について使用する商品化契約を正式に交わしている伊藤忠を始めとする会社は、日本の商標法上の問題を十分検討し被請求人の商標権を尊重し、わが国の取引の秩序を維持し無用な紛争を未然に防ぐための最善の処置として被請求人と使用許諾及び使用権設定の措置をとったのである。
▲3▼ しかるに、請求人は、イタリアのサッカーチーム「JUVENTUS」から、日本における商品化については、合意なり契約は全くなく、イタリアで販売されている商品を単にわが国に輸入して販売しているのである。
そのため、わが国の商品化についての正当権利者との間における取引の秩序が乱される結果となり、かつ、被請求人は、商標権者としての責任から請求人に警告を発し、使用許諾についての交渉のテーブルに一度はついたがまとまらず、訴訟に至った次第である。
それ故、請求人が輪入販売する商品には、イタリアのサッカーチームの名称であっても、各種商品をわが国で販売するための商標として「JUVENTUS」が使用されている以上、被請求人及び専用使用権者の権利を侵害することになるので、被請求人は正当な権利行使をしたのであるが、請求人は訴訟への対抗手段として本件請求をしているのである。
(3) 上記I1(3)について
▲1▼ わが国では、平成5年5月から日本プロサッカーリーグが開催されたことにより、サッカーが非常に盛んになったが、それはわが国でのプロサッカーリーグであるJリーグの開催をきっかけにしたものであるのでここわずか3年余りのことである。
それに伴い、サッカーの歴史が長いイタリアやブラジルなどのチームや選手がわが国でも知られるようになったのである。
その証拠に、請求人が提出する甲第3号証〜甲第9号証の発行年月日をみると、甲第5号証が平成5年、それ以外は平成6年から平成7年にかけてのもので、本件商標の出願日以降の比較的新しいものばかりである。
▲2▼ 本件商標は、被請求人が独自にデザインして、昭和58年から婦人服、婦人用ハンドバッグなどに使用してきた商標であり、イタリアのサッカーチームの名称とは全く無関係であった。
しかしながら、被請求人は、イタリアのサッカーチーム「JUVENTUS」のロゴマーク及びエンブレム等を使用して各種商品を日本において輪入販売若しくは製造販売する商品化についてサッカーチーム「JUVENTUS」と正式ライセンス契約をしている伊藤忠に使用権を設定若しくは許諾したのであり、伊藤忠は更にわが国の製造若しくは販売者に対してサブライセンスを与え商品化を推進しているので、イタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」は、チームのロゴマークやエンブレム等を使用した各種商品の日本での商品化を正式に承諾しているのである。
▲3▼ サッカーチーム「JUVENTUS」の文字及びエンブレム等を使用した商品の日本における商品化については、伊藤忠を始めとする会社が正式にチームとライセンス契約をし、そのうえでわが国において商標上の問題が生じないように、類似の登録商標を所有している被請求人と使用契約をして商取引の秩序を維特しているのである。
▲4▼ イタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」と伊藤忠との間に交わされた「文房具」の製造販売に関する契約書には
『日本ではナショナル商事株式会社が、旧第25類(文房具及び紙類)において「JUVENTUS」の登録商標を所有していることを確認し「JUVENTUS」の使用に支障が生じないようにライセンシー(伊藤忠)はナショナル商事株式会社と登録商標の使用について契約する。』
趣旨の1項が入っており(乙第1号証)、サッカーチーム「JUVENTUS」は被請求人の登録商標には異議なく、これを尊重しているのである。
▲5▼ 請求人は「シャガール」の氏名に相当する「MARC CHAGALL」の商標と「リリーホワイツ」の店名表示「Lillywhites」の商標についての審決例を引用しているが、本件商標とは事例を異にするので考慮に価しないものである。
更に、請求人は、被請求人の出願が拒絶された例も引用しているが今後の商品化の関係で意見書を提出することなく見送ったものであり、これをもって、本件商標に対する請求人の主張と同等に論じることはできない。
▲6▼ 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて考慮されるべきは商標は商品の自他商品識別標識として使用するものであるところから、指定商品との関係も考慮して総合的に判断されるべきであるということである。
本件商標は、伊藤忠に対して通常使用権を許諾し、かつ再許諾する権利を認めているが、伊藤忠及びそのサブライセンシーの取扱に係る商品はイタリアのサッカーチーム「JUVENTUS」が正式に使用を容認しているところから、サッカーチームの信用を損なうことには決してならないのである。
▲7▼ 以上のような事情により、本件商標の更新登録時点で例令イタリアのプロサッカーチームの略称である「JUVENTUS」がわが国でも知られているものであっても、本件商標の商標登録および更新登録はサッカーチーム「JUVENTUS」とは全く無関係なものとして認められるべきであり、本件商標を指定商品に使用しても社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するようなことは決してない。
2.上記I2に対する答弁
(1)請求人が提出する証拠方法は、イタリアのプロサッカーチームである「JUVENTUS」に関する著名性を立証するための資料であるとしているが、請求人が提出する雑誌・新聞などに記事が掲載されていたことを争うものではない。
しかしながら、昭和50年代後半から昭和60年代におけるわが国のサッカー・ファンすなわちサッカー人口がどれ程のものであったか疑問である。
わが国でサッカーが広く知られるようになったのはいわゆるわが国のJリーグが開催されたことによる、という事実は広く報道されていることである。その後のサッカーブームの中でサッカーの歴史が長いブラジルやイタリアなどのプロ・チームが紹介され知られるようになったがイタリアなどはプロサッカーチームがわが国には比べようもない程数多くあり、「JUVENTUS」だけが突出している訳ではないはずである。
しかし、その後、例令、わが国においてイタリアのサッカーチーム「JUVENTUS」が知られるようになったとしても、本件商標はイタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」の名称とは全く関係ない。
(2)本件請求は、本件商標の更新登録に対する更新登録無効審判事件であるが、本件商標は、イタリアのプロサッカーチーム「Juventus」の名称とは全く関係ない。
第一に、ロゴマークが同一ではない。
第二に、被請求人は、スポーツシャツ、ユニフォームなどのスポーツ関連の商品は一切扱っておらず、昭和58年1月の本件商標の出願当初から、婦人用の衣類及びハンドバックなどを取り扱ってきたので、商品の出所を全く異にしている。
乙第4号証のハンドバックは本件商標の更新登録出願の際に使用説明書と共に提出したものであり、何の問題もなく更新登録が認められたものである。
また、乙第5号証〜乙第9号証の商品である婦人用のトレーナー、ブラウス、セーター、カーディガン等は被請求人の主力商品であり、今日まで継続して商品化している。
(4)本件商標の指定商品との関係も具体的に勘案されねばならないが、本件商標の指定商品その他、被請求人が長年取り扱っている乙第4号証〜乙第9号証等の商品との関係で、どのように社会公共の利益又は社会的の一般道徳観念に反するのか、具体的な主張立証は全くなされていない。
また、イタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」から、被請求人に対して何らかのクーレームが付いているわけでも決してない。乙第1号証のとおり、わが国では被請求人が「Juventus」の登録商標を有していることを承知し、かつ、権利を尊重しているのである。
3.上記I3に対する答弁
(1)被請求人の登録商標の使用について
商標「Juventus」は、昭和58年1月12日の商標登録出願後から婦人服、婦人用衣料については今日まで継続して使用しており、東京には「Juventus」のブティックを有していたことを主張した。
それは、銀座2丁目7番18号所在の「東京メルサ」内の店舗に出店したものであり、店名は「Juventus Boutique」で営業品目は、「Juventusブランドを中心とした衣料」の販売であり、昭和59年7月9日に店舗の賃貸借契約を締結して以後営業を継続し平成3年8月に閉店した(乙第10号証〜乙第11号証)。
このように、被請求人は、かつて約7年間もファッションの中心地の銀座しかも「東京メルサ」内において「Juventus」のブティックを開いていたが、その間はもちろん、その後もサッカーチーム「JUVENTUS」との関係で問題が生じたことは一度もない。
現在、被請求人は婦人用トレーナー、ブラウス、セータ、カーディガンなどを主として製造販売しており(乙第5号証〜乙第9号証)、それらの商品は、大阪の「泉北高島屋」、広島の「広島そごう」、東京の「日本橋高島屋」などでも販売している(乙第12号証〜乙第14号証)。
また、被請求人は、現在でも「東京メルサ」内に「NEVADA」という名称のブティックを有しており、そこでも「Juventus」の商品を販売している(乙第15号証)。
このように、本件商標は、長年、婦人服に使用してきた「Juventus」商標の商品展開の一環として旧第24類に出願して登録されたものであるが被請求人自身の商品化の前に伊藤忠から使用許諾の申し入れがあったので使用権を設定したものである。
上記書証から明らかなように、本件商標は、被請求人自身が適法かつ正当に使用してきたものであり、かつ、今日まで婦人服などに使用している商標と同一の商標であり、イタリアのサッカーチームの名称との関係でその更新登録が無効にされる理由は全く考えられない。
(2)「真正商品の並行輪入」は成り立たない。
「真正商品の並行輪入」がどのようなものであるか昭和45年2月のパーカー事件判決以後今日では広く知られるようになり、大蔵省関税局の新通達では、商標権を侵害しない真正商品の並行輸入の範囲として以下の条件があげられている。
▲1▼ 当該標章を付して拡布した者とわが国の商標権者が同一人であること又は同一人と同視されるような特殊な関係があること。
▲2▼ 商品が同一であること。
▲3▼ 当該商品に付された商標が同一の出所を表示し商品の品質も同一の品質を表示して品質保証機能も害されていないこと。
しかるに被請求人はサッカーチーム「JUVENTUS」とは全く無縁の存在であり、反対にサッカーチーム「JUVENTUS」はわが国の商標権者でもない。
従って、請求人が扱う商品がサッカーチーム「JUVENTUS」から承諾を得たものであっても、上記▲1▼の条件は具備していない。
しかしながら、請求人は、サッカーチーム「JUVENTUS」から、わが国における商品の販売について、正式に承諾も得ていないし、契約もしていない。このことは、現在、東京地方裁判所で係争中の裁判の中で、請求人が明言している。
(3)請求人と被請求人との係争関係について
被請求人は、イタリアのプロサッカーチーム「JUVENTUS」とは法律的、経済的に全く別個の存在であり、本件商標もユベントス・チームとは全く関係なく採択されたものである。
それ故、適法かつ正当な商標権者として、商標法上の権利行使をすることができる地位にある。
(4)以上の通り、イタリアのプロサッカーチームの略称である「JUVENTUS」が、例令、ある程度わが国において知られていたとしても、本件商標は、イタリアのサッカーチームの名称とは無関係に採択され、長年、使用されている商標であり、本件商標の更新登録は、公序良俗に反するものではなく、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、本件商標の更新登録が無効にされる理由は全くない。
III.判断
わが国におけるサッカーの歩みを振り返るに明治6年に英国人「ダグラス少佐」が兵学寮の生徒に教えたのを嚆矢とし、大正10年に大日本蹴球協会(昭和49年に現在の日本サッカー協会となる)が創設され、昭和39年オリンピック東京大会において南米随一と言われたアルゼンチンに勝利、昭和40年から春と秋に日本サッカーリーグを開始、昭和41年においての当該協会への競技者としての登録人数は26,832人(大学生4,749人、一般22,083人)に達し、昭和43年オリンピック・メキシコ大会において三位に入賞、昭和54年には当該協会への競技者としての登録人数は273,887人(一般・大学生74,668人、高校生83,741人、中学生45,609人、小学生68,950人、女性919人)に達し、この年に女子サッカー連盟が創設され、昭和55年より欧州と南米のチャンピオンが世界一をかけるトヨタ・カップ(正式にはヨーロッパ・サウスアメリカ・カップ)が東京において開催されることになり、平成1年には当該協会への競技者としての登録人数は661,509人(一般・大学生106,569人、高校生141,335人、中学生155,029人、小学生248,167人、女性10,409人)に達し、この年に日本女子サッカーリーグが開始され、平成3年には当該協会への競技者としての登録人数は628,663人(一般・大学生121,055人、高校生142,303人、中学生127,846人、小学生222,396人、女性15,063人)に達し、この年にJリーグが創設され、平成8年には当該協会への競技者としての登録人数は902,649人(一般・大学生192,988人、高校生170,421人、中学生221,424人、小学生294,020人、女性23,796人)に達し、現在では、毎日、サッカーに関する何らかの記事が新聞および雑誌に掲載され、或いはテレビで報じられるに至っている。
次に、「JUVENTUS」の文字についてみるに、昭和46年発行の新伊和辞典第5版(昭和46年1月5日(株)白水社発行)以後の同辞典には「ユヴェントゥス(トリーノ市を代表するフットボール・チームの名前)、そのチームの選手を「JUVENTINO」と言う」との記載はあるが、その他の語意の記載はない。なお、スペイン語辞典等には「青春、青年時代、青春期、若さ、新鮮さ、活力」等の語意を有するラテン語「JU
請求人の提出に係る甲第各号証によれば、いわゆる「JUVENTUS」或いは「ユベントス」なる名称は、明治30年にイタリア国トリノ市に創設され、欧州三大カップ(欧州チャンピオンズ・カップ、欧州ウィナーズ・カップ、欧州スーパー・カップ)の全タイトルを最初に制したイタリアリーグ一部チームの中で二番目に古い創立のサッカーチーム「JUVENTUS FOOTBALL CLUB S.P.A.」名を指称するものとしてサッカーに関心のある人々を始めとするスポーツ愛好者の間において使用され、認識されている世界的に著名な当該チーム名の著名な略称を想起させるものであることが認められる。
そして、わが国においてもサッカー専門誌「サッカー ダイジェスト」の昭和58年4月号(甲第23号証)には『「青春チーム」ユベントス 世界一の単独クラブ・チーム、それが「青春」という意味のユベントスだ。』と掲載されており、同誌の昭和59年9月号(甲第28号証)、昭和62年6月号(甲第38号証)、同年7月号(甲第39号証)にはサッカー少年用ウェアー及びストッキングの宣伝広告中に「ユベントス型」及び「ユベントスモデル」なるウェアー、パンツ及びストッキングが掲載されており、同誌の昭和60年12月号(甲第32号証)には『「青春」という言葉をチーム名とするイタリアの強豪、ユベントスが12月のトヨタカップで来日の予定だ。』と掲載されていると共に同月9日の朝日新聞(甲第15号証)には「国立競技場に6万2千の観衆。ユベントスが南米の6連覇を阻んで優勝」した旨の記事が掲載されていること等とわが国のサッカーの歩みとを総合勘案するに、本件商標の存続期間の更新登録時(平成7年)において「Juventus」及び「ユへ ゙ントス」は、サッカーファンを始めとするスポーツ愛好者の間において周知・著名であったことが窺える。
被請求人は、本件商標を「婦人用ハンドバッグ」に使用してきたとして乙第4号証を提出しているが、乙第4号証の写真に示されている本件商標の表示はファッションを旨とする「婦人用ハンドバッグ」への商標の表示方法としてはあまりにも粗雑すぎるものであり、かつ、その数量、価格、販売先等を示す取引書類等の提示がないので、本件商標を「婦人用ハンドバッグ」に使用してきたとは認めがたく、さらに、本件商標が「婦人用ハンドバッグ」の取引者および需要者の間において被請求人の業務に係る商品を表すものとして知られていたとも認められない。
そうとすれば、「JUVENTUS」或いは「ユベントス」なる文字を本件商標に係る指定商品に使用するときは、これに接する取引者および需要者をして、その商品が恰も上記イタリア国の著名なサッカーチーム或いはそのチームと関係のある者の業務に係るものと、その出所について混同を生ずる虞があるといわざるを得ない。
然るに、本件商標は、別紙のとおりの構成よりなり、「ユヘ ゙ントス」と称呼されるものであることは、当事者間に争いのないところであって、上記イタリア国のサッカーチームの著名な略称「JUVENTUS」と類似するものであり、かつ、被請求人は上記イタリア国の著名なサッカーチームから承諾を得ている等、そのチームとは何ら関係のない者であることから、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者および需要者をして、その商品が恰も上記イタリア国の著名なサッカーチーム或いはそのチームと関係のある者の業務に係るものと、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めざるを得ないので、このような本件商標を被請求人の商標権として登録しておくことは、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に則しないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当し、その更新登録は同法第48条の規定により無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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