結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35254号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4212030号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおり「白水酌人」の漢字を縦書きし、その下部に「ハクスイシャクビト」の片仮名文字を横書きした構成よりなり、平成9年2月10日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同10年11月20日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録無効に引用する登録第2563376号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおり「白水」の漢字を縦書きした構成よりなり、平成3年6月3日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同5年7月30日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1ないし同第56号証の7(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標は引用商標と出所の混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(イ)引用商標を構成する「白水」の文字は、「シロミズ」と訓読みして、「米をといで白く濁った水、米のとぎ汁」の意に使用されることもあるが(広辞苑第5版1366頁、甲第4号証の3)、もともとは、「ハクスイ」と音読みし、「澄んで清らかな水」、「流れ」を意味する語である(学研漢和辞典876頁、甲第3号証の2)。もっとも、このような意味からして、心が潔白であることを例える場合にも使用されることのある語でもあるが(同号証)、請求人は、引用商標を構成する「白水」の文字を、請求人が販売している商品「焼酎」を製造している、八代工場の北東部にある白水村の地名に由来し、本来の意味、すなわち「澄んで清らかな名水」をあらわす文字として採択したものである(甲第5号証の2)。すなわち熊本市を東西に流れる一級河川「白川」の水源は、阿蘇白水村の白川吉見神社の境内にあり、湧水量は毎分60トンに及び、かつその水質は阿蘇の恵まれた自然の故に、日本の名水100選のひとつに数えられているものである。請求人は、その製造販売にかかる商品「焼酎」を含む「日本酒」に、白水村の水源より流出する上記名水を使用したものであることを表すために、「白水」の商標を採択したものである(甲第6号証)。
(ロ)請求人はこのような主旨の下に採択した引用商標を、その指定商品中「焼酎」について、引用商標出願の直後、すなわち平成3年10月より使用を開始し、請求人の工場が存在する熊本県八代を中心とし、当初は主として同県及び大分県・福岡県等の北九州地域において販売していたものであるが、その後、平成7年頃よりは首都圏を中心とし、全国的にもその販路を拡げ、今日に到っている。
すなわち請求人は、焼酎「白水」の販売開始の直後より、引用商標「白水」を使用した焼酎を北九州地域において、熊本日日新開、大分合同新聞を始めとする多数の新聞に広告し、地元の各酒類販売店その他において焼酎「白水」のパンフレット等を頒布するとともに、熊本放送、ラジオ熊本、熊本朝日放送、大分放送、ラジオ大分、大分朝日放送等、テレビ、ラジオ等を通じ、毎年1億円を越える広告費をかけて宣伝広告を続けてきた。その結果、平成7年頃の販売数量は2079KL(約20万ケース)、販売額は庫出価格で10億2500万円となっており(甲第7号証)、「白水」の商標は、本件商標の出願時(平成9年)より数年前の平成5〜6年頃までには、熊本を中心とする北九州一円において、請求人の取扱にかかり、白水村の水源より湧出し、白川を流れる名水を使用した、なめらかで口当たりのよい商品「焼酎」を表す商標として、広く認識される周知商標となっていたものである。
さらに、請求人は、その前後より引用商標を使用する商品「焼酎」の販路を、首都圏を中心とし全国的規模に拡充し、その宣伝広告の規模や範囲も全国にわたったので、引用商標は本件商標の出願時の平成9年頃までには、全国的にも広く認識されている周知著名な商標となっていたものである。
請求人は、平成8年後においても北九州を中心として、もとより上記新聞、雑誌、ラジオ、テレビ放送等を通じ広告するとともに、週刊朝日等を含む全国紙においても広告し、また、全国1万件の卸、12万〜13万の小売店を通じ、別添証拠に示されるような各種リーフレットを需要者層に販布し、その広告宣伝に努めた。その結果、販売数量、庫出し販売価格も平成8年には262,906ケース、13億2900万円、平成9年には299,229ケース、15億5800万円、平成10年には344,295ケース、19億6000万円と、逐年上昇している(甲第8号証)。このようにして、引用商標は、本件商標が登録出願された平成9年以降も逐年益々盛大に使用され、今日においては、請求人の製造販売する商品「焼酎」を表示する商標として全国的に周知著名な商標となっているものである。その宣伝広告の経過や現状は甲第9号証から甲第57号証までにより明らかである。
(ハ)本件商標は、上記周知著名商標を構成する「白水」の文字に「酌人」の文字を結合し、かつこれに「ハクスイヒャクビト」の片仮名文字を配してなるものである。
したがって、「白水」の文字自体の意味よりすれば、本件商標からは「清らかな流れのお酌をする人」「米のとぎ水をお酌する人」のような一連の称呼観念を生ずるものであって、「ハクスイ」(白水)のみの称呼観念は生じないから、引用商標とは、外観はもとより、称呼観念においても非類似の商標であり、したがって、出所の混同も生じない商標であるともいい得よう。
(ニ)しかしながら、「白水」の文字が、上述のように、商品「焼酎」を表示するものとして広く認識されている商標であることをも勘案すれば、本件商標はこれを構成する文字の意味からして、「周知著名な『白水』の商標で知られている商品『焼酎』を、お酌してサービスする人」のような意味を、世人に認識させる商標であると判断される。したがって、本件商標がその指定商品例えば「清酒」に使用されて市場に流通した場合においては、世人は該商標を、周知著名な商標「白水」で知られている商品「焼酎」の製造販売会社と同一の会社又はその関連会社により、その姉妹商品「清酒」について使用された商標であるかの如く認識し、商品の出所について混同するおそれが多いものと判断するのが経験則に照らし相当である。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、本件商標は引用商標が使用される商品と出所の混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)本件商標は更に、商標法第4条第1項第11号に該当する。
本件商標及び引用商標の構成は上記のとおりであるから、両者は、外観において相紛らわしいものではない。
しかしながら、本件商標及び引用商標の称呼について検討するに、本件商標を構成する文字中、「白水」は上述のように指定商品中「焼酎」について広く認識されている商標であるから、識別力の強い部分である。これに対し「酌人」は、お酌をする人、すなわち、指定商品「日本酒」をお酌する人をあらわす文字として、ありふれて使用されている観念であり(甲第4号証の2)、これを通例の読み(シャクニン)に対し「シャクビト」と読ませることにより、若干の識別性を強めたとしても、「白水」の部分に比べればはるかに識別力の弱い構成部分である。したがって、本件商標は、その片仮名部分にしたがって「ハクスイシャクビト」と称呼されるとともに、その称呼が長いことも影響し、「シャクビト」の部分を略して識別力の強い部分により「ハクスイ」とも称呼されるものであるとするのが取引の経験則に照らし相当である。したがって、本件商標からは、「ハクスイシャクビト」とともに「ハクスイ」の称呼をも生ずるから、「ハクスイ」の称呼が生ずることの明らかな引用商標とは称呼上類似する商標である。
そうだとすれば、本件商標からはその称呼に対応し「白水」の観念も生ずるから、「白水」の観念が生ずることの明らかな引用商標とは観念においても相類似する商標である。
すなわち、本件商標は、引用商標との関係においては、称呼・観念を共通にする相類似する商標である。かつ、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と相抵触するものであること上記において述べたとおりである。
よって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第19号証を提出した。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由について
請求人が引用商標「白水」を商品「焼酎」について、平成3年10月より使用した結果、今日においては全国的に周知著名な商標となっていると主張して提出した証拠書類についてみると、甲第7号証(本格焼酎「白水」販売実績)は、請求人会社の和酒事業部が作成した資料(一覧表)であるが、これらの事実を裏付ける印刷業者の証明、取引先又は代理店の証明、同業組合又は同業者の証明、需要者の証明、広告業者の証明、放送業者の証明、公的機関(税務署)の証明等を何ら提出していないので、直ちにこれらの事実を認めることはできない。
すなわち、(イ)新発売日 1991年(平成3年)10月16日より(対外発表9月25日より)、(ロ)発売地域 九州地域より順次全国(首都圏1992年より)と記載されているが、印刷業者、取引者、需要者、同業者等の証明書もなく、広告業者による広告宣伝の方法、回数及び内容の証明もなく不明であり、上記書面の内容が事実であるとする具体的な証拠がない。(ハ)販売実績(95年度)平成7年の販売数量、販売金額についても、この事実を証明する書類もなく、販売数量について税務署の課税移出数量の証明も提出されていないので信憑性がない。(ニ)広告関係 実施地域、広告媒体について広告業者、放送業者(スポットCM)、印刷業者の証明書も何ら提出されていない。また、95年広告費約1億円と記載し、乙類平成7年1月〜6月出稿案、メルシャン(株)熊本支社の書類を添付しているが、新聞の広告宣伝の内容が全く不明であり、ラジオ、テレビ等の広告宣伝の方法、回数及び内容等も全く不明であるから、証拠として採用することができない。
甲第8号証(乙類焼酎「白水」の販売実績)についてみると、先ず、引用商標「白水」が商品「焼酎」に使用した結果、取引者及び需要者間に周知著名な商標となっているとして商標法第4条第1項第15号の規定を適用する判断時期は、本件商標の登録出願時平成9年2月10日である。したがって、この販売実績表に記載されている平成9年、平成10年については、本件商標の登録出願日以降のものであるから、これを採用することはできない。また、平成8年の販売実績(販売数量、販売金額)についても、甲第7号証と同様に請求人会社が作成した資料であって、これらの事実を裏付ける何らの証左の提出もないものであるから、これらの事実を認めることはできない。次に、甲第12号証(九州自動車道八代インターチェンジ出口付近広告写真)、甲第13号証(熊本市内酒販店広告写真)及び同第14号証(JR八代駅プラットフォーム広告写真)については、いずれも使用年月日、使用期間が不明であるから採用することができない。甲第15号証(酒サミット江津本店、県庁東門店チラシ写し)、甲第16号証(白水リーフレット業務用斡旋品のご案内)は、いずれも使用年月日、使用期間、配布数量が不明であるから採用することができない。甲第17号証(白水リーフレット店頭陳列会申込書)は、使用期間、配布数量が不明である。甲第18号証ないし甲第21号証(白水リーフレット)及び甲第22号証ないし甲第24号証(白水ポスター写、卓上用広告物写等)は、いずれも使用年月日、使用期間、配布数量、使用地域が不明であるから採用することができない。甲第25号証(白水ポスター大写真)は、使用期間、配布数量、使用地域が不明であるから採用することができない。甲第26号証ないし甲第30号証、甲第32号証、甲第34号証、甲第36号証ないし甲第49号証(サントップスチラシ写真、白水包装用箱写、白水リーフレット、スタンド)は、使用年月日、使用期間、配布数量、使用地域等が不明であるから採用することができない。
甲第31号証、甲第33号証、甲第35号証(白水リーフレット等)、甲第50号証(西日本新聞)、甲第51号証(熊本日日新聞)、甲第52号証の1ないし5(焼酎大名鑑)、甲第53号証の1ないし3(週刊朝日)、甲第54号証の1ないし3(週刊朝日)及び甲第55号証の1ないし4(財界九州)については、本件商標の登録出願日以降の発行のものであるから採用することができない。甲第56号証の1〜7(平成7年1月〜6月、熊本放送、テレビ熊本、熊本県民テレビ、熊本朝日放送、大分放送、テレビ大分、大分朝日放送等におけるコマーシャル放送のビデオの主要画面の写真)を提出しているが、各テレビ局が甲第56号証の1〜7のテレビスポットを広告放送した事実(放送年月日、放送番組名、毎週何曜日、スポット放映秒数等)の証明及び広告業者の証明が何らなされていないので、直ちにこれを認めることはできない。
また、請求人は熊本放送、ラジオ熊本、熊本朝日放送・・・テレビ、ラジオ等を通じ、毎年1億円を越える広告費をかけて宣伝広告を続けて来たと主張しているが、主張するのみでこれを立証する証拠を何ら提出していないので認められない。また、引用商標を使用する商品「焼酎」の販路を、首都圏を中心とし全国的規模に拡充し、その宣伝の広告の規模や範囲も全国にわたったと主張しているが、主張するのみでこれを立証する証拠を何ら提出していないので認められない。さらに、請求人は全国1万件の卸、12万〜13万の小売店を通じ、別添証拠に示されるような各種リーフレットを需要者層に販布し、その広告宣伝に努めたと主張しているが、卸売業者名、小売店名、配布年月日、配布数量、配布地域が全く不明でありこれを認めることができない。
以上請求人の主張及び証拠書類を個別に判断すれば上記のとおりであり、これを総合判断するも、甲第9号証の1ないし3、甲第10号証の1ないし3、甲第11号証の証拠のみをもって、引用商標を商品「焼酎」に使用した結果、本件商標の登録出願時において、取引者及び需要者間に広く認識されるに至っている周知著名な商標と認めることはできない。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、該商品が請求人もしくは請求人と何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとは認められない。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
(2)次に、本件商標の採択の理由及び商取引の実情について陳述するに、被請求人会社の創業ははっきりしないが江戸時代の前半といわれている。当社の製造販売する清酒「峰の白梅」は、「越の寒梅」「雪中梅」とともに越の三梅のひとつとして最近とみに注目されている銘柄である(乙第3号証日本の酒、乙第4号証日本酒銘鑑、乙第5号証日本酒全蔵元全銘柄)。そして、本件商標「白水酌人」の由来は、「白水」とは酒の最高の水質の事。「酌人」とは多勢の人で酌みかわすこと。つまり最高の水質で仕上げられたお酒を多勢の人で酌みかわして人とのふれあいを大切にして楽しい一時が過ごせる旨いお酒になってほしいと考えて命名した。
新潟・蒲原平野の弥彦・角田山系の天然水を汲み、四季を通じて酒造りの良い環境の風土、そして、昔ながら守り続けられた越後杜氏伝統の酒造技術より生まれた新潟清酒が「白水酌人(はくすいしゃくびと)」である(乙第6号証パンフレット)。
しかして、被請求人は本件商標「白水酌人」「ハクスイシャクビト」を平成9年2月頃(商標登録出願以降)より商品「清酒」について今日まで使用し続けているものであり、盛大な宣伝と使用の実績により、現在では直ちに被請求人会社の製造販売に係る商品であることを認識し得るほどに、取引者、需要者間に周知著名な商標となっているものである。そして、その間、請求人の引用商標とは取引上出所の混同を生じた事実は全くない。以下、乙第7号証(清酒に使用しているラベル)、乙第8号証(肩貼り)、乙第6号証(パンフレット)を提出する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由について
本件商標及び引用商標は、その外観において相紛らわしいものでないことは、その構成に照らし明らかである。
次に、本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標は前記の構成よりなるものであるところ、前半の「白水」「ハクスイ」の文字と後半の「酌人」「シャクビト」の文字とは、同書、同大、同間隔で一連に書してなるばかりでなく、それぞれ漢字2字で同数をもって構成され、片仮名文字も前半4文字と後半5文字でほぼ均衡がとれているものであるから、外観上、主従・軽重の関係なく一体的に構成されているものであり、これを観念上よりみれば、前半の「白水」の文字は、(a)水の清らかな川の形容、(b)水面が白く光って見える川(乙第9号証旺文社漢和辞典第694頁)。(c)澄んだ清らかな川の流れ、(d)心が潔白であることのたとえ(甲第3号証の2学研漢和大辞典第876頁)を意味すると記載されている。しかし、他の広辞苑(乙第10号証第1919頁)、大辞林(乙第11号証第1929頁)、三省堂国語辞典(乙第12号証第870頁)、角川最新漢和辞典(乙第13号証第633頁)等には掲載されていない。そうとすれば、「白水」の文字の意味は日常一般に親しまれ使用されているとは言い得ないものと認められる。むしろ後半の「酌人」の文字が、「酒の酌をする人」(乙第14号証広辞苑第1113頁)を意味するものとして広く知られているものと認められるので、「白水」の文字部分が主で「酌人」の文字部分が従であるとは言い得ない。したがって、両者は主従・軽重の差があるということはできない。
しかして、本件商標を構成する「白水」及び「酌人」の文字について辞書に徴すれば上記の意味に解されるものであるが、被請求人は前項(2)で述べたとおり、本件商標「白水酌人」を商品「清酒」について平成9年2月頃から今日に至るまで盛大に使用し続けているものであり、現在では取引者、需要者間に広く認識されるに至っている取引の実情よりすれば、これに接すると取引者、需要者は、全体として「最高の水質で仕上げられたお酒を多勢の人で酌みかわす」の如き上品で風流な一つの意味合を把握することができるものと認められる。また、これより生ずると認められる「ハクスイシャクビト」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、さらに、請求人が使用する「白水」の文字が、商品「焼酎」について使用した結果、周知著名な商標になったものとは認められないことは、前項(1)において述べたとおりである。他に構成中の「白水」の文字部分のみが、独立して認識されるとみるべき特段の事情は見出せないところである。そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ハクスイシャクビト」の称呼のみを生ずるものと認められる。
他方、引用商標は「白水」の文字を書してなるものであるから、「ハクスイ」(水の清らかな川又は澄んだ清らかな川の流れ)等の称呼、観念を生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標と引用商標とはその構成音数に顕著な差異を有するものであるから、それぞれ一連に称呼するも聴感明らかに相違し称呼上別異の商標と認められる。また、観念上も前記のとおり意味合いを全く異にするものであるから相紛れるおそれはないものと認められる。さらに、両商標は前記の構成よりみて外観においても相紛れるおそれはないこと明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても別異であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
なお、商品の区分第33類において、本件商標の構成と同様に「白水」の文字に後置語として他の語句を付随してなる商標「白水木」(乙第15号証)、「白水郷」(乙第16号証)等の登録例がある。
(4) むすび
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当しないものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効にされるべきでない。
請求人の提出した甲第9号証及び同第10号証(情報誌「Home.Home」(1996年10月号及び11月号)、甲第17号証(1996年11月の注文書付きチラシ)、甲第25号証(1996年「天草メモリアルイヤー’96」の広告)等によれば、請求人は、本件商標の登録出願前より現在まで、筆書きした「白水」の文字よりなる商標を商品「焼酎」に使用してきた事実を認めることができる。
また、甲第17号証及び同第20号証によれば、上記「白水」の商標が付された焼酎は、平成7年度、平成8年度に熊本国税局酒類鑑評会で「優等賞」を受賞し、1995年・1996年度酒類鑑評会では、2年連続優等賞を受賞している事実が認められる。
さらに、請求人は、「白水」販売額が平成8年には実績で約13億円(甲第8号証)であるとも述べている。
しかして、請求人が提出している甲各号証を総合勘案すれば、「白水」なる商標は、本件商標の登録出願時である平成9年2月10日には、請求人の取扱に係る商品「焼酎」を表す商標として、取引者・需要者間に周知・著名であったものと認められ、これは現在も継続しているものというのが相当である。
ところで、本件商標は、別掲に示すとおり縦書きした「白水酌人」の文字の下にやや小さめな横書の「ハクスイシャクビト」の文字を表してなるところ、構成中の「白水」の文字は「澄んだ清らかな川の流れ、心が潔白であることのたとえ」等を、また、「酌人」の文字は「酒のお酌をする人」をそれぞれ意味する語であるとしても、これら両語を結合してなる本件商標よりは、被請求人がいうような「最高の水質で仕上げられたお酒を多勢の人で酌みかわす」の如き一連の意味合いを看取させるものとは言い得ないものである。
そうとすれば、これらの語は観念上において結びつきが強いものとはいえず、たとえ、一連に書されているものであるとしても、これが、常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の事由は見出せないものである。
してみれば、本件商標は、その構成中の一部に請求人が「焼酎」に使用する商標として取引者・需要者間に広く認識されている著名な「白水」の文字を有してなるものであるから、これを酒類として共通する本件の指定商品に使用した場合、取引者・需要者は、請求人の上記「白水」の商標を想起し、該商品が請求人若しくは同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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