sokuhyo

Trademark Appeal Case

IKKとYKKの称呼・外観類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35163(T2000−35163/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4314064号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件審判請求に係る登録第4314064号商標(以下「本件商標」という。)は、「IKK」の欧文字を標準文字とし、平成9年7月31日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具」、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,駐車場用硬貨作動式ゲート,硬貨作動式駐車機械」、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「金属加工機械器具・鉱山機械器具・土木機械器具・荷役機械器具の修理又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守,金属加工機械器具・鉱山機械器具・土木機械器具・荷役機械器具の貸与」及び第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成11年9月10日に設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求める。と主張し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第24号証(枝番を含む。)を提出している。

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、請求人が所有する以下の登録商標と類似のものであって、それらの各登録商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務について使用するものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。

(1)無効理由に引用する登録商標

以下の登録商標は、いずれも「YKK」の欧文字を横書きしてなるものであって、その商標権は現に有効に存続しているものである。

(A)登録第2144919号商標(以下「引用A商標」という。)は、昭和60年9月14日に登録出願、第9類「産業機械器具、その他本類に属する商品(ただし、ミシン、動力機械器具(「水車」「風車」を除く)蒸気暖房装置、温水暖房装置、温気暖房装置、放熱器、温気炉を除く)」を指定商品として、平成元年6月23日に設定登録がされたものである。

(B)登録第3176502号商標(以下「引用B商標」という。)は、平成4年8月26日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,水車,風車その他の動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),風水力機械器具,耕うん機械器具(手持ち工具に当たるものを除く。),栽培機械器具,収穫機械器具,植物粗製繊維加工機械器具,飼料圧搾機,飼料裁断機,飼料配合機,飼料粉砕機,牛乳ろ過器,搾乳機,育雛器,ふ卵器,蚕種製造用又は養蚕用の機械器具,苗床幕,漁業用機械器具,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テ―プディスペンサ―,自動スタンプ打ち器,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用のものを除く。),交流発電機,直流発電機,芝刈機,修繕用機械器具,業務用電気洗濯機,家庭用電気洗濯機,電気ミキサ―,電機ブラシ,電動式カ―テン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,軸,軸受け,軸継ぎ手,ベアリング,動力伝導装置,緩衝器,ばね,制動装置,バルブ」を指定商品として、平成8年7月31日に設定登録がされたものである。

(C)登録第4021511号商標(以下「引用C商標」という。)は、平成7年3月8日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),風水力機械器具,農業用機械器具,漁業用機械器具,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用のものを除く。),交流発電機,直流発電機,芝刈機,修繕用機械器具,電気洗濯機,電気ミキサー,電機ブラシ,電動式カーテン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」を指定商品として、平成9年7月4日に設定登録がされたものである。

(D)登録第589952号商標(以下「引用D商標」という。)は、昭和36年2月2日に登録出願、第26類「カタログ、パンフレツト、カレンダー、その他の印刷物、スライドフイルム、映画フイルム、その他写真、書画、彫刻、これ等の附属品」を指定商品として、昭和37年6月15日に設定登録がされたものである。

(E)登録第3166927号商標(以下「引用E商標」という。)は、平成4年9月29日に登録出願、第36類「資金の貸付け及び手形の割引,債務の保証及び手形の引受け,生命保険契約の締結の媒介,損害保険契約の締結の媒介,建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、平成8年6月28日に設定登録がされたものである。

(2)そこで、先ず本件商標と引用AないしE商標の類否についてみると、本件商標が「アイケイケイ」、引用AないしE商標が「ワイケイケイ」の称呼を生ずるものであることは明らかであるところ、両称呼は、冒頭部において「ア」と「ワ」の差異を有するとはいえ、これに続く「イ」「ケ」「イ」「ケ」及び「イ」の音を同じくするものである。

しかして、差異音たる「ア」と「ワ」とても、後者が両唇を近よせて発する半母音「W」と母音「a」が結合した音節であって(甲第7号証)、「ア」とその調音方法もかなり似ており(甲第8号証)、子音の「W」よりは母音の「a」(母音の中で「a」は最も明瞭に響く音とされている。甲第9号証)が明瞭に響く音といえるものであってみれば、両者は極めて近似した音として聴取されるものとみるのが相当である。

してみれば、「アイケイケイ」と「ワイケイケイ」の両称呼それぞれを全体として称呼したとき、「ア」と「ワ」の差異は、明瞭には聴取され難いというべきである。

そうすると、本件商標と引用AないしE商標は、その称呼において紛らわしい類似のものといわざるを得ない。

ちなみに、審決においても上記の理由と同趣旨の理由で、「ア」と「ワ」の音の差異のみの商標を称呼上類似のものであると認定している(甲第10号証ないし同第23号証)。

つぎに、指定商品及び指定役務の類否についてみると、本件商標の指定商品中第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具」及び同第9類「駐車場用硬貨作動式ゲート,硬貨作動式駐車機械」は、引用A、B及びC商標の指定商品に含まれ、また、本件商標の指定商品中第9類「録面済みビデオディスク及びビデオテープ」は、引用D商標の指定商品に含まれているものである。さらに、本件商標の第36類の指定役務は、引用D商標の指定役務中「建物の管理,建物の貸与,土地の管理,土地の貸与,建物の又は土地の情報の提供」と同一又は類似のものである。

以上によると、本件商標は、引用AないしE商標と類似のものであって、上記の指定商品及び指定役務に限れば、引用AないしE商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものであるから、上記指定商品及び指定役務についての本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

したがって、上記指定商品及び指定役務についての本件商標の登録は、商標法第46条の規定により、無効とされるべきである。

2 商標法第4条第1項第15号について

請求人は、「YKK」の文字を左横書きしてなり、旧第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品とする登録第645398号商標(以下「引用F商標」という。)の商標権者であるところ、この引用F商標については、旧第1類ないし同第34類の全商品及び新第35類ないし同第42類の役務について防護標章の登録が認められている(甲第24号証の1及び2)。

しかして、これらの防護標章のうち旧第1類ないし同第34類の商品に関するものは昭和61年10月に登録出願し、昭和63年から平成6年の間に登録されたものであり、新第35類から同第42類の役務に関するものは平成4年5月26日に登録出願し、平成6年から平成8年の間に登録されたものである。

この事実は、引用F商標は、本件商標の登録出願の時(平成9年7月31日)には既に極めて著名なものであって、他人が引用F商標と同一又はこれと紛らわしい商標を、防護標章の登録が認められている前記の商品及び役務に使用したときは、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるということである。

しかして、本件商標と引用A商標がその称呼において紛らわしいものであることは前記したとおりであるから、本件商標が引用A商標と酷似の引用F商標とも、その称呼において紛らわしいものであることは明らかである。

また、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用F商標について防護標章の登録が認められている商品及び役務と同一の商品及び役務か(第7類、第9類、第36類、第37類の一部、第38類)、同一の分野の役務(第37類の一部)である。

してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品及び指定役務について使用したときは、需要者は、その商品・役務が請求人あるいは請求人となんらかの関係を有する者の業務に係るものではないかと、その出所を混同するおそれがあるといわざるを得ない。

そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきであり、その登録は、商標法第46条の規定により無効とされるべきである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。

1 類否の判断(商標法第4条第1項11号)

(1)外観上の類否

引用AないしE商標と本件商標とは、その最初の欧文字である「Y」と「I」とにおいて相違する。

ここで、少なくとも大部分の国民が中学・高校の6年間は英語を学んでいる我が国の英語教育の現状から、欧文字「Y」「I」を見誤ることは通常ありえず、これらが一見して彼此区別できることは明らかである。そして、その相違は、語頭の文字であるから、一般需要者(看者)に与える印象は大きく、引用AないしE商標と本件商標とを誤認混同するおそれはないというべきであり、本件商標は引用AないしE商標と外観上非類似の商標であることは疑いない。

(2)称呼上の類否

欧文字「YKK」の引用AないしE商標から「ワイケイケイ」の称呼が、欧文字「IKK」の本件商標から「アイケイケイ」の称呼が、それぞれ生じ、両称呼「ワイケイケイ」、「アイケイケイ」のうち、共通する称呼「ケイケイ」が、株式会社の略であると直感されるとともに、それらは中間音および語尾音であるからさほど印象に残らず、語頭音である前者の「ワイ」と後者の「アイ」とが聴者の耳に強く残るものである。

現在においては、多数の商標が日常生活に存在し氾濫することによって、一般需要者(聴者)の感覚が研ぎ澄まされ、自他商品の出所識別能力は従来になく向上している。

先般の総選挙における比例選挙区の投票では、選挙力ーからのジミントウ(自民党)、ジユウトウ(自由党)、ジユウレンゴウ(自由連合)という連呼を聞き分けるとともに、ジミントウ(自民党)、ミンシュトウ(民主党)、シャミントウ(社民党)を区別して選挙民は投票しており、これらを聞き分ける一般需要者(聴者)の力はかなりのものである。

また、スポーツの世界では、格闘技の「ケイワン(K−1)」、モ−タ−スポ−ツの「エフワン(FI)」なども、彼此区別されている。

さらに、プロサッカーにおける「Jリーグ」は有名であり、プロのバレ−ボ−ルでは「Vリ−グ」が、アメリカンフットボールの社会人リ−グでは「Xリ−グ」が組織されている。最近では、「Jリーグ」も「J1リーグ」と「J2リーグ」とに分けられ、さらに、女子サッカーの「Lリ−グ」も組織され活躍している。「Jリーグ」「Kリーグ」「Vリーグ」「Xリーグ」の差異は、語頭の欧文字「J」「K」「V」「X」にすぎないとはいえ、彼此十分識別できることはいうまでもない。また、プロ野球においては、欧文字でなく片仮名の「セ」「パ」を付した「セリ−グ(セントラルリ−グの略)」「パリ−グ(パシフィックリーグの略)」が従来から存在し、アメリカのプロ野球(大リーグ)においては、ナショナルリーグを「ナリーグ」、アメリカンリ−グを「アリーグ」と呼んでおり、野茂、伊良部、長谷川など日本人選手の登板が予想される場合においては、大リ−グがしばしばテレビ中継されている。そして、土曜日や日曜日でのスポ−ツの結果を報じる翌日の新聞のスポ−ツ面では、「Jリーグ」「Vリーグ」「Xリーグ」「セリ−グ」「パリーグ」「ナリーグ」「アリーグ」の文字があふれている。このように、「Jリーグ」「Vリーグ」「Xリーグ」「セリーグ」「パリーグ」「ナリーグ」、「アリーグ」など、欧文字または仮名文字の一字を共通の「リーグ」の前においた称呼が、同日のスポ−ツ面でこれほど多数混在しても、これはサッ力ー、これはバレー、これは日本の野球、これは大リーグなどと、一般需要者は彼此十分識別しており、何らの混乱も生じていない。

多数の商標が日常生活に存在し氾濫することによって、一般需要者(聴者)の感覚が研ぎ澄まされ、自他商品の出所識別能力は従来になく向上している現状を考慮すれば、一般需要者(聴者)の耳に強く印象付けられた引用AないしE商標の「ワイ」と本件商標の「アイ」という称呼の相違は、一般需要者(聴者)をしてこれらを困難なく区別できるものといえる。

さらに、共通する称呼「ケイケイ」を株式会社の略と直感せず、たとえ「ワイケイケイ」、「アイケイケイ」という称呼が生じると考えた場合でも、語頭音の「ワイ」「アイ」の相違に容易に気付き、両者を区別し得る能力が、現在の一般需要者は十分に備えているものである。

してみれば、本件商標は、引用AないしE商標と称呼上彼此区別し得る非類似商標である。

(3)観念上の類否

引用AないしE商標「YKK」、本件商標「IKK」のうち、「KK」が株式会社の略であることは直感でき、前者から「Y」音で始まる会社、後者から「I」音で始まる会社と一般需要者は認識し、これらは観念上確実に区別できる。

現実に、引用AないしE商標の所有者である請求人(「ワイケイケイ」株式会社)の以前の社名は「吉田工業株式会社」(甲第24号証の1参照)であるとともに、本件商標の商標権者は「石原機械工業株式会社」であり、「Y」音で始まる会社、「I」音で始まる会社という認識の正しさが証明される。

(4)まとめ

上記のように、本件商標は、引用AないしE商標と、外観、称呼、観念のいずれにおいても彼此区別できる非類似の商標というべきであり、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。

2 商標法第4条第1項第15号について

請求人は引用F商標について防護標章登録が広範囲に認められ、本件商標の指定商品及び指定役務の一部がそれらと重複しているから、出所混同のおそれがあると主張している。

しかしながら、本件商標権者(被請求人)である「石原機械工業株式会社 Ishihara Kikai Kogyo」は、昭和34年に設立されており、引用F商標はもちろん、防護標章の出願日以前から、「Ishihara Kikai Kogyo」の表記を採用し、以後、40年以上継続して使用している。

そして、本件商標権者の表記が「石原機械工業株式会社 Ishihara Kikai Kogyo」であることからわかるように、本件商標は、会社名の略称にすぎず、請求人を意識したものではない。

また、請求人が、ファスナーの製造・販売において著名であり、近年、建築用窓枠など(アルミサッシ)に進出しているとはいえ、本件商標権者の主要業務である鉄筋カッターなどの金属加工機械器具はもちろんその他の指定商品、指定役務との関連は皆無か皆無に近い状態であり、引用F商標そのものならともかく、外観上明らかに異なる「IKK」を商標権者が使用したとしても、請求人との関連があるとして出所の混同を生じることはあり得ないものと言わざるを得ない。特に上記のように、本件商標権者は、引用F商標やその防護標章の出願以前に設立され、現在まで継続して営業を行っており、本件商標が会社名の略称であることを考慮すれば、本件商標が、請求人の顧客吸引力を不正に利用して不当な利益を得ようなどというフリーライドを目的としたものでないことは明らかである。

また、別の観点から論じれば、上記のように、本件商標は外観、観念においてはもちろん、称呼においても、最近の一般需要者の自他商品の出所識別能力を考慮すれば、十分に区別でき、引用F商標と非類似の商標であり、請求人との間で出所の混同を生じることはないものである。

してみれば、本件商標は、請求人との間で出所の混同を生じるおそれはないものといわざるを得ず、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

第3 当審の判断

1 本件商標は、その構成第1の項で述べたとおり「IKK」の欧文字を一連に横書きしてなるものであり、引用AないしE商標は、その構成は前項第2の項1(1)で述べたとおり、いずれの商標も「YKK」の欧文字を一連に横書きしてなるもので、両商標とも特定の意味合いを看取し得るものではなく、その綴り文字は、前半の「I」と「Y」の文字に違いがあるが、後半の「KK」の文字を共通にし、3文字中2文字を同じくする比較的近似した構成といえるものである。

しかしながら、両商標から生じる称呼についてみるに、それらの構成文字に相応して本件商標からは、「アイケイケイ」と称呼されるのに対し、引用AないしE商標は、いずれの商標からもその構成文字に相応して「ワイケイケイ」と称呼されるのが自然である。しかして、両商標の称呼「アイケイケイ」と「ワイケイケイ」とは、二音目以降の「イケイケイ」の音を共通にし、その差異は語頭の「ア」と「ワ」の音にあるが、前者の「ア」(a)の音は口を広く開いて発音される母音であり、後者の「ワ」(wa)の音は、両唇を近づけて発する半母音(w)と母音(a)との結合により発せられるので、発音方法の関係上、半母音(w)の部分は母音(a)に吸収され明確に聴取し難く、むしろ母音(a)が聴覚に強く印象を与え「ア」の音に近似する音といい得るものである。

してみれば、両称呼は、近似した音の差異にすぎず、その差異音に続く音が「ケイ」「ケイ」と反復していることからより印象に残りやすいことも相俟って、その差異音の称呼全体への影響は比較的弱いものとなり、これらをそれぞれ一連に称呼するときは、彼此相紛らわしいものといえる。

したがって、本件商標と引用AないしE商標とは、観念については比較することができないが、近似した外観であって、相紛らわしい称呼が生じることから類似する商標とみるのが相当である。

また、指定商品及び指定役務についても、本件商標の指定商品中第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具」は、引用AないしC商標の指定商品に含まれ、同第9類「録画済みビデオディスク及びビデオテープ」は、引用D商標の指定商品に含まれ、同第9類「駐車場用硬貨作動式ゲート,硬貨作動式駐車機械」は、引用A商標の指定商品に含まれ、また、同指定役務中第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」は、引用E商標の指定役務に含まれるものとそれぞれ認められる。

そうしてみると、本件商標の指定商品又は指定役務中第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具」、第9類「録画済みビデオディスク及びビデオテープ,駐車場用硬貨作動式ゲート,硬貨作動式駐車機械」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」は、引用AないしE商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似する商品又は役務である。

なお、被請求人は、「ケイケイ(KK)」の部分は株式会社の略称を直感させ、語頭音の「アイ(I)」又は「ワイ(Y)」が印象に強く残るものと主張するが、本件商標及び引用AないしE商標はいずれも欧文字3字をまとまりよく一体に表されており、その称呼も「アイケイケイ」又は「ワイケイケイ」と一連によどみなく称呼されることから、被請求人が主張するとおり「KK」の欧文字が株式会社の略称として使用されているとしても、必ずしも、「KK」の部分は株式会社の略称を想起し、それぞれ「I」又は「Y」から始まる会社の略称を表したものと理解されるというよりも、それぞれ欧文字3字からなる一体の商標として把握し、印象をもたれるとみるのが自然であるので、この被請求人の主張は採用できない。

また、被請求人は、政党名やJリーグ、Vリーグ、Xリーグ等の名称を挙げ語頭部分の違いで十分識別されている旨主張しているが、迅速かつ確実な取引を尊ぶ商取引の場において商標のみによって複数ある同種商品から混同することなく当該商品の取引を行うことができることが必要であり、被請求人の挙げる政党名やJリーグ、Vリーグ、Xリーグ等の名称の使用されている状況また文字列も相違することから、その事案をもって、本件における商標の類否(混同のおそれ)判断に影響させることは妥当ではなく、この被請求人の主張は採用できない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

2 次に、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録第645398号商標(引用F商標)は、第2の項2で述べたとおり「YKK」の欧文字を横書きしてなるものであり、当該商標登録原簿に徴すれば、昭和38年5月9日に登録出願され、平成3年9月政令299号による改正前の商品の区分(以下、第1類ないし第34類は同じ商品の区分である。)第21類「装身具,ボタン類,かはん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として昭和39年6月22日に商標権の設定登録がされたものであるところ、その後、引用F商標は、第14類「原料繊維」を指定商品とする防護標章登録第1号が昭和63年3月23日に登録され、これに引き続き、昭和63年に第5類、第15類、第16類、第17類、第34類及び第8類、平成元年に第2類、第3類、第24類、第26類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第11類、第19類、第25類及び第28類、同2年に第1類、第10類、第23類、第27類、第6類、第4類、第22類、同3年に第18類、同5年に第13類、同6年に第7類、第9類、第12類、第20類にそれぞれ属する商標登録原簿記載の商品を指定商品としてそれぞれ防護標章の登録がされ、更に同6年及び7年には平成3年9月政令299号による改正後の商品及び役務の区分第35類ないし第42類にそれぞれ属する商標登録原簿記載の役務を指定役務としてそれぞれ防護標章の登録がされ、いずれの防護標章登録も有効に存続しているものである。

ところで、登録商標における防護標章の登録は、当該登録商標が商標権者の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合に、他人がその登録商標の使用をすることにより商標権者の業務に係る指定商品又は指定役務とが混同を生じるおそれがある商品又は役務については、その商品又は役務について、その登録商標と同一の標章について防護標章の登録を受けることができるものである。

してみれば、「YKK」の文字からなる引用F商標は、その指定商品(第21類に属する商品「ファスナー」)について、需要者間に広く認識されているものであって、この登録商標を他人が使用することにより商品又は役務の出所の混同を生じさせるおそれがあるものと認定され防護標章登録がされたものであり、その防護標章の登録は、昭和63年から平成7年までの間にされたもので、本件商標の指定商品である第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具」、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,駐車場用硬貨作動式ゲート,硬貨作動式駐車機械」、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「土木機械器具の修理又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守,土木機械器具の貸与」及び第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」について防護標章の登録がされていることを認めることができる。

その事実からすると、本件商標が登録出願された平成9年7月31日には、既に、「YKK」の欧文字からなる引用F商標は、請求人(引用F商標の商標権者)が第21類に属する商品(ボタン類に含まれるファスナー)について使用し、需要者の間に広く認識されるに至っており、かつ、該防護標章登録におけるそれぞれの指定商品及び指定役務について他人が該登録商標を使用するときは商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあったものと推認されるところである。また、その防護標章の登録の状況や引用F商標が請求人の名称であるワイケイケイ株式会社の略称につうじる「YKK」の欧文字であること、また、近時の企業における事業の多角化傾向を考慮すると、防護標章の登録がされていない第37類「金属加工機械器具・鉱山機械器具・荷役機械器具の修理又は保守」や「金属加工機械器具・鉱山機械器具・荷役機械器具の貸与」の役務についても、防護標章登録されている指定役務と同様に出所について混同を生じるおそれがあるものとみられ、それが本件商標の登録時においても継続されていたものと推認できるものである。

しかして、「YKK」の欧文字からなる引用F商標は需要者の間に広く認識されていたことは前記のとおりであり、また、本件商標「IKK」と引用F商標「YKK」とは、語頭部分が「I」と「Y」の違いがあるとしても、「K」「K」の2文字を共通にする構成であり、前項1で述べたとおり両商標は類似するものであることから、本件商標を被請求人がその指定商品又は指定役務に使用したときは、その商品又は役務が請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、商品又は役務の出所の混同を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当である。

してみれば、本件商標の指定商品中前項1において商標法第4条第1項第11号に該当するとした指定商品又は指定役務を除いて商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであったにもかかわらず登録されたものであるから、この登録を同法第46条第1項第1号により無効とする。

よって、結論掲記のとおり審決する。

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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

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商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。