結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35270号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第595694号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、昭和35年5月31日登録出願、同37年8月24日に登録されたもので、現に効力を有するものである。
本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(2)無効原因
(ア)本件商標は、1913年に米国人ローズ・オニールが発行した「キューピー」(KEWPIE)人形(甲第1号証及び同第2号証、以下「本件著作物」という。)に対する日本国著作権(以下「本件著作権」という。)の権利者ローズ・オニールに無断で登録出願されたものであり、その使用は本件著作権の侵害となる。また、本件商標は、その登録出願前に著名となった本件著作物の著名性にただ乗りすべく登録出願されたものであるから、その使用は不正競争防止法第2条第1項第2号に違反する。
かかる本件商標の登録を許しておくことはまさに法の矛盾であるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのあるものとして商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(イ)本件著作物の創作・発行
1874年6月25日米国ペンシルベニア州ウイルケス・バレ市で生まれた米国人ローズ・オニール(Rose O’Neill)は、1909年、「レディース・ホーム・ジャーナル」誌クリスマス特集号に初めて、「クリスマスでのキユーピーたちの戯れ」でキユーピーのイラストを発表した。以後、「レディース・ホーム・ジャーナル」誌及び「ウーマンズ・ホーム・コンパニオン」誌などにキューピー・シリーズを連載した(甲第3号証の24頁)。
このキューピーのイラストのヒットに引き続いて、1913年11月20日、その創作した「キューピー」(Kewpie)人形を米国にて発行する(甲第2号証及び同第3号証の24頁)とともに、日本においてもこれを製造、販売した(甲第1号証の写真D)。このキューピー人形が爆発的な人気を集め、米国のみならず日本で1913年から1918年にかけてキユーピーが大ブームとなり、以後今日までその人気・著名性は続いている(甲第3号証の24頁乃至25頁)。
(ウ)本件著作権の成立・存続
ローズ・オニールは、本件著作物に対して、1906(明治39)年4月28日以後に発行された(第3条)米国人の著作物に対して内国民待遇を与える(第1条)日米著作権条約に従い、旧著作権法に基づき、日本において著作権(以下「本件著作権」という。)を取得した。旧著作権法上、本件著作権の存続期間は、著作者の死後38年であった(第3条、第52条)。
日本国との平和条約の発効に伴い日米著作権条約は廃棄された(平和条約第7条)が、平和条約第12条(b)(1)(ii)、日米暫定協定、外務省告示第4号(昭和29年1月13日)に基づき、米国人の著作物に対して昭和27年4月28日から4年間、内国民待遇が与えられ、昭和27年4月27日までについても、日米著作権条約が有効であるとみなされた。また、昭和31年4月28日以降については、万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(以下「万国著作権条約特例法」という。)第11条に基づき、本件著作権は引き続き内国民待遇を受けている。なお、米国は、1989年にベルヌ条約に加盟したが、万国著作権条約特例法の施行前に発行された本件著作物については、万国著作権条約特例法第10条の適用を排除している(附則第2項)。
その結果、現行著作権法上、本件著作権は、著作者の死後50年間の保護を受けている(第51条)。
また、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律第4条に基づき本件著作物の保護期間には、3794日(10年5月弱)の戦時加算がある。
ローズ・オニールは、1944年4月6日、ミズーリ州スプリングフィールド市にて死去した(甲第3号証の28頁、同第4号証及び同第5号証)。
よって、ローズ・オニールは、前述のとおり1944年4月6日に死亡したので、本件著作権は、2005年5月まで存続する。
(エ)請求人による本件著作権の保有
ローズ・オニールの死後、本件著作権は、ローズ・オニールの遺産の管理を目的とする米国ミズーリ州法人であるローズ・オニール遺産財団(法定代理人デビッド・オニール)に承継された(甲第4号証及び同第5号証)。
請求人は、平成10年5月1日、ローズ・オニール遺産財団から本件著作権を譲り受けた(甲第6号証)。
(オ)著作権侵害
本件商標の登録出願の経緯は次のとおりである。1916(大正5)年、件外高碕達之助(以下「高碕」という。)と小野金六が、国内販売用の缶詰に使用するラベルと商標について相談した結果、当時爆発的な人気のあった(日本における「キューピー狂時代」最中)「キューピーがいい」とする高碕によって、著作権者に無断で、「キューピー」が商標として採用され、はじめは「キューピー」印の鮭缶詰として売り出された(甲第7号証の46頁)。その商標は、輸出食品株式会社名義で、商標第84209号登録として登録された(甲第7号証の46頁及び同第8号証)。
一方、1922(大正11)年、被請求人の創業者である件外中島董一郎(以下「中島」という。)は、高碕の話を聞いて、かねてからマヨネーズを販売したいと考えていたところ、「かねてよりアメリカからやってきたキューピーが人気ももちろんのこと、愛と幸せを運ぶといわれいることから、自社の『マヨネーズ』の売り出しにぴったりで最高」と考え、そのブランドには是非『キューピー』を使いたいと思っていた。」(甲第7号証の46頁)。
そこで、中島は、高碕の承諾を得て、同社の主力商品である「マヨネーズ」の商標として「キューピー」を採用した(甲第7号証の46頁及び同第9号証)。
したがって、本件商標が本件著作物に依拠していることは、以上の経緯から明らかである。
そして、他人の著作物に依拠してその内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することは、著作権者の複製権の侵害を構成する(最高裁昭和53年9月7日第1小法廷判決、民集32巻6号1145頁)ところ、本件商標が本件著作物の内容及び形式を覚知させるに足るものの再製であることは、本件著作物と本件商標を比較すれば、明らかである。
よって、本件商標は、明らかに本件著作物を複製するものであって、本件著作権を侵害する。
(カ)不正競争防止法違反
ローズ・オニールは、1913年、本件著作物を「キューピー」(Kewpie)と名付け、その複製物に「キューピー」(Kewpie)の商品表示(以下「本件商品表示」という)を付して、製造、頒布した。
1913年に本件著作物が発行されて以来、米国のみならず日本においても、「キューピー・クレーズ」(キューピー狂時代)と呼ばれるほど、本件著作物が大流行した。「キューピー」(Kewpie)という本件商品表示は、日本においては、キューピーの歌が二つも作られ、小説にも登場するほど、著名なものとなった(甲第3号証の24頁乃至25頁及び同第10号証の2頁乃至3頁)。
一方、本件商標は、本件著作物が一般大衆に広く受け入れられた後である1960(昭和35)年に著作権者に何等の断りなく登録出願されたものであって、前述のとおり被請求人がキューピー・キャラクターをその商標として採用するに至った経緯からも本件著作物が有する著名性にただ乗りする意図で登録出願されたものであることが明らかである。著名な本件著作物は、強力な顧客吸収力を有するので、請求人は、本件著作物を自ら使用し又は第三者に使用させることによる経済的利益を有しているところ、被請求人が無断で本件著作物を使用することにより、請求人は被請求人に対する本件著作物使用許諾料相当の営業上の利益を侵害されている。
よって、被請求人による本件商標の使用は不正競争防止法第2条第1項第2号に該当する。そして、請求人は、不正競争防止法に基づき、本件商標の使用差止請求権(第3条)を保有する。
(キ)公序良俗違反
商標法は、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図るとともに、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することが目的とされている。そして、商標法第4条第1項第7号は、前記目的を具現する条項の1つとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない。」旨を規定している。
しかして、商標法の目的との関係に則すれば、同号中の「公の秩序」中には、商品又はサービスに関する取引上の秩序が包含されているものと解すべきである。
しかるところ、本件商標は、本件著作物の著名性にただ乗りする目的で、本件著作物を模倣・盗用して登録出願されたものである。
そうとすれば、かかる経緯によって登録を得た本件商標の登録を有効とし維持することは、本件著作物及び本件商品表示の信用力、顧客吸引力を無償で利用する結果を招来し、客観的に、公正な商品又はサービスに関する取引秩序を維持するという前述の法目的に合致しないものといわなければならない。
さらに、本件商標の使用は、前述のとおり著作権法及び不正競争防止法に違反するから、商標法第4条第1項第7号の運用指針の一つである「他の法律によって、その使用が禁止されている商標」に該当するものである。
(3)第一弁駁の理由
(ア)本件著作物の特定について
被請求人は、「請求人は、その主張に係る本件著作物が何であるかを特定しているとはいえない」と主張する。
請求人は、本件著作物(人形)を、本弁駁書添付の別紙著作物目録(人形の写真)により特定する。
(イ)本件著作物の発行年月日について
ローズ・オニールが本件著作物を創作し、それを1913年11月20日に発行したことは、以下の各証拠から明らかである。
(i)米国著作権局の記録
米国著作権局著作権登録証(甲第2号証)は、「ROSE O’NEILL WILSON」が「KEWPIE」という名称の「DOLL」(人形)を創作し、それを「NOV.20.1913」(1913年11月20日)に発行したことを証明するものであり、米国著作権局発行の著作権登録記録には、次の事情から、権利帰属について強い証明力がある。
イ 米国著作権法上、最初の発行から5年以内に著作権登録のされた著作権登録証には記載事項についての法律上の推定が与えられている(第410条(c)項)。
ロ 米国著作権法上、1989年2月までは、著作権登録は著作権侵害訴訟を提起するために必要な要件であった(旧第411条)。また、1989年3月以降は、著作権登録は著作権侵害訴訟を提起するために必要な要件ではなくなったが、米国での弁護士費用が巨額に上ることが周知であるところ、発行後3ヶ月以内に著作権登録をした場合には弁護士費用の賠償請求権が付与される(第412条)。
ハ 米国著作権法上、著作権登録申請に当たって虚偽の事実を記載することには刑事罰が科されている(第506条(e)項)。
(4)第二弁駁の理由
(ア)被請求人は、乙第1号証に係る東京地方裁判所平成10年(ワ)第13236号事件(以下「著作権侵害差止等請求事件」という。)判決を引用し、同判決が本件商標に使用されているイラストが請求人保有の著作権を侵害しない旨判示したことをもって、本件商標の登録に無効原因は存在しないと主張する。
しかし、同判決のうち著作権に基づく請求に関する部分は、請求人が控訴した(甲第15号証及び同第16号証)。
したがって、本件商標の使用は著作権を侵害し、本件商標には公序良俗違反の無効原因が存在するから、被請求人の主張には理由がない。
(イ)被請求人は、著作権侵害差止等請求事件判決を引用し、同判決が、「『キューピー(kewpie)』という商品等表示につき、請求人には不正競争防止法第2条第1項第2号に基づく差止請求権はない」旨判示したことをもって、本件商標に無効原因は存在しないと主張する。
しかし、請求人主張の無効原因には、(i)著作権侵害に基づく公序良俗違反、(ii)請求人が不正競争防止法に基づく差止請求権を有すること及び(iii)ただ乗りによる公序良俗違反がある。
したがって、被請求人の主張には理由がない。
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。
(1)第一答弁の理由
(ア)請求人は、「本件著作物とは、甲第1号証及び同第2号証のキユーピー人形をいう。」と主張しているが、甲第3号証によれば、「ドイツで製作、アメリカで発売されたキューピー人形」が甲第2号証の著作権の対象たる著作物であるとも見られるものである。
そうしてみると、請求人は、その主張に係る本件著作物が何であるかを特定しているとはいえないものである。
(イ)請求人は、本件著作物が1913年11月20日にアメリカで発行されたことの証拠として甲第2号証を提出しているが、該書証は、「キユーピー人形又は小彫像(KEWPIE,FIGURE OR STATUETTE)」と表記した何らかの著作物について著作権登録をしたことを示すにすぎず、如何なる著作物について著作権登録をしたものであるかを特定するものとはいえないものである(アメリカの著作権登録には、原画若しくは人形の原型の図面等が添付されている。)。
(ウ)そうとすれば、本件審判の請求は、その理由の根拠となる本件著作物が特定されていないものであるから、本件商標は、著作権法及び不正競争防止法に違反するとはいえないものである。
(エ)したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものでないというべきものである。
(2)第二答弁の理由
(ア)被請求人は、著作権侵害差止等請求事件において、被告(被請求人)は、原告の主張、根拠等について釈明を求めているところでもあるので、これらの点について明確になり次第、詳細な答弁をする旨述べたところであるが、該著作権侵害差止等請求事件については、平成11年11月17日に、「原告の請求をいずれも棄却する。」との判決がなされた(乙第1号証)。
(イ)著作権侵害差止等請求事件判決における「争点に対する判断」の要旨は次のとおりである。
(i)『争点10(類似性)について
被告イラスト及び被告人形が本件人形に係る本件著作物を侵害する複製物等であるか否か(著作権の成否、著作権の帰属、保護期間の満了による著作権の消滅の有無の点はさておき)について検討する。
本件人形に関しては、ローズオニールによって創作された先行著作物があること、その一例として1903年作品2(マル)及び1905年作品が存在すること、右作品は、いずれも日米著作権条約の効力発生前に発行され、我が国においてその著作権は保護されないことは、いずれも当事者間に争いがない。
ところで、原告が著作権法上の保護を求める著作物について、当該著作物が先行著作物を原著作物とする二次的著作物であると解される場合には、当該著作物の著作権は、二次的著作物において新たに加えられた創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解すべきである。
・・・中略・・・
本件人形と被告人形は、共通点を有するが、その共通点のほとんどは、既に1903年作品2(マル)及び1905年作品に現れているし、本件人形に付加された新たな創作的部分とはいえないこと、他方、右認定したとおり、両者には数多くの相違点が存在すること等の事実を総合判断すると、被告人形は、本件人形における本質的特徴を有しているとはいえず、両者は類似していないと解するのが相当である。
・・・中略・・・
本件人形と被告イラストは、共通点を有するが、その共通点のほとんどは、既に1903年作品2(マル)及び1905年作品に現れているし、本件人形に付加された新たな創作的部分とはいえないこと、他方、右認定したとおり、両者には数多くの相違点が存在すること等の事実を総合判断すると、被告イラストは、本件人形における本質的特徴を有しているとはいえず、両者は類似していないと解するのが相当である。』
(ii)『争点11(不正競争)について
原告は、「キューピー」(kewpie)という商品等表示(本件商品等表示)が著名であるとして、不正競争防止法第2条第1項第2号が適用されるべきであると主張する。
しかし、本件商品等表示が、原告ないしローズ・オニール関係者の商品ないし営業を示す商品表示ないし営業表示として著名ないし周知であると認めるに足りる証拠はない。したがって、この点についての原告の主張は理由がない。』
(iii)『争点13(権利濫用)について
以上のとおり、原告の本件請求は、その余の点を判断するまでもなく失当であるが、権利濫用の点についても、付加して検討する。
・・・中略・・・
事実に照らすならば、自らが本件著作権の侵害行為を行って利益を得ていた原告が、本訴において、被告に対し、本件著作権を侵害したと主張して、差止め及び損害賠償を請求することは、権利の濫用に該当すると解するのが相当である。したがって、この点からも、原告の請求は失当である。』
(ウ)前記判決における判断の要旨から見れば、本件審判の請求における無効理由として請求人が主張する著作権侵害、不正競争防止法違反又は公序良俗違反のいずれの主張についても、その根拠、理由が無いというべきものである。
(1) 本件審判の請求は、本件商標について商標法第4条第1項第7号違反を無効理由とするものであるところ、その具体的理由の前提として、請求人引用に係る本件著作物について、他人の著作権が存在するというものである。
そこで、商標法と著作権法下の著作権がいかなる関係にあるか、特に、標章について他人が著作権を有する場合について検討する。
ある標章について、著作権が発生することはあり得ることであるところ、商標法は商標権と著作権との調整については、同第29条において、指定商品等についての登録商標の使用が、商標登録出願前に発生した他人の著作権と抵触するときは、指定商品等のうち抵触する部分について、その使用の態様により登録商標の使用をすることができない旨規定しているが、登録要件や不登録事由としては著作権との抵触については何ら規定していない。
そうとすれば、商標法は、他人の著作権と抵触する標章に係る登録出願については、積極的に拒絶するとの規定を設けず、専ら登録後の使用の問題として捉え、しかも一律に使用を禁止するのではなくて、その使用態様により禁止されるときがあるとして、商標権と著作権を調整しているものである。
してみれば、単に、登録出願に係る商標又は登録商標が、他人の著作権に係る著作物と同一又は類似のものであることは、拒絶の理由でも登録無効の理由でもないことは明らかである。
しかしながら、他人の著作物が著作権者及びその許諾を得た者に係る標章又はキャラクターとして、商品又は役務について使用して周知、著名性を獲得した場合には、商標法第4条第1項第15号又は第19号に該当するときがあると解される。
また、前掲商標法第4条第1項第15号及び第19号に該当しない場合でも、登録の取得過程において不正の目的や商道徳違反、登録後の権利行使過程において信義則違反や権利の濫用がある場合には、商標法第4条第1項第7号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するときもあると解される。
(2)著作権侵害の主張について
請求人は、本件商標の使用は著作権を侵害するから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。
前示(1)の商標法上の著作権の扱いを踏まえて、本件商標の無効理由を判断すれば、著作権侵害を理由とする本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであったとの主張は理由がないといわなければならない。
すなわち、商標法は、他人の著作権との抵触は無効理由としていないこと明らかである。また、公序良俗を害するおそれがある商標の解釈の一つとして、他の法律(以下「商標法以外の法律」という。)で使用等が禁止されている商標があるが、前示(1)のとおり、同法第29条において規定するように他人の著作権に抵触する商標が一般的にその使用が禁止されるわけではないから、登録出願に係る商標について、職権により一律に審査、審判の対象とすべきである前掲商標法以外の法律に著作権法が該当するとは解すことができない。
なお、前掲商標法以外の法律には、名称等の使用制限規定を有する銀行法(昭和56年法律第59号)等が該当するものである(銀行法第6条第2項参照)。
(3)不正競争防止法違反の主張について
請求人は、本件商標の使用は、不正競争防止法第2条第1条第2号に該当し同法に違反するから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。具体的には、公序良俗を害するおそれがある商標の解釈の一つとして、前掲商標法以外の法律で使用等が禁止されている商標があり、その法律に不正競争防止法が該当するとの趣旨と解される。
しかしながら、不正競争防止法は、商標の使用については、他人の商品等表示として周知又は著名を要件として、差止請求権等を付与している法律であるところ、同法においては裁判規範として、不正競争と目される事案ごとに、他人の商品等表示について周知、著名性を認定して、不正競争行為か否かが判断されるものであり、同行為に該当すると判断されたときは当該行為及び行為者にのみに対して差止等の効力が生ずるものである。
そうとすれば、特許庁において、登録出願に係る商標について、職権により一律に審査、審判の対象とすべきである前掲商標法以外の法律に、不正競争防止法が該当するとは解すことができないばかりでなく、仮に該当するとしても、請求人引用に係る著作物が同法第2条第1項第1号及び同第2号に規定する商品等表示に該当するとも認め難いものであるから、請求人のこの点に関する主張は理由がないといわなければならない。
(4)公序良俗違反の主張について
請求人は、本件商標は、引用に係る本件著作物の著名性にただ乗りするものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。
前示(1)のとおり、登録の取得過程において不正の目的や商道徳違反、登録後の権利行使過程において信義則違反や権利の濫用がある場合には、商標法第4条第1項第7号に該当するときもあると解されるところ、本件商標の登録時以前、我が国一般において本件著作物を含めいわゆるキューピー人形については、「(キューピーッドの転)キューピッドを滑稽化した頭の尖ったセルロイド製・陶製・ゴム製の人形」として知られていたものであり(「広辞苑」昭和30年第一版第29刷539頁)、これが著作権の対象に係るものとして認識されていたこと、及び商標第84209号登録やその他の登録を含めてキューピー人形について商標登録されて問題が生じていたことは、甲各号証によっては窺うことはできないから、被請求人は、本件商標について、著作権の存在を認識していたことはなかったものと推認され、その他、被請求人が本件商標の取得について商道徳上等において非難されるべき事情があったとは認められない。
そうとすれば、本件商標の取得の過程において、被請求人について、特段、不正の目的や商道徳違反があったとは認められないというべきである。
また、本件商標の登録後も、被請求人が信義則に反する又は権利濫用的な権利行使をしたとの主張、立証もない。
してみれば、本件商標又はその登録について公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあったということはできないから、請求人の主張は、この点においても理由がない。
(5)以上のとおり、本件商標は、請求人主張のいずれの点においても、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものではないから、同法第46条第1項第1号に該当しない。
よって結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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