Trademark Appeal Case
結合商標の分離観察
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90299(T2002−90299/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4542834号商標(以下「本件商標」という。)は、平成13年3月6日に登録出願され、「セルジェニック」の片仮名文字と「CELLGENIC」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第3類「化粧品、せっけん類、歯磨き、香料類、つけまつ毛」を指定商品として、同14年2月8日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
(1)引用商標
本件商標は、平成2年3月29日に登録出願され、「ジェニック」の片仮名文字と「GENIC」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同4年6月30日に設定登録され、その後、同14年3月19日に商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品については、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」と同14年4月10日に指定商品の書換登録がされた登録第2423017号商標及び平成9年8月29日に登録出願され、「ジェニック」の片仮名文字と「GENIC」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品として、同11年6月11日に設定登録された登録第4281523号商標(以下、これらを一括して「引用商標」という。)と類似し、その指定商品も同一または類似のものである。
(2)具体的理由
(ア)本件商標「セルジェニック」、「CELLGENIC」は、これより生ずる音の構成の組み合わせの特徴から、「セル」「CELL」と「ジェニック」「GENIC」と発せられる構成であり、二者に分断され把握されやすい商標である。すなわち、本件商標は、「セ」の文字が語頭にあり、「セ」の音は声帯の振動を伴わない無声音「セ」が属する「サ」行音で、とげとげしい音である。続く第2音「ル」は、声帯の振動を伴う有声音であるものの歯茎音であることから弱い音であり、その弱さの程度は同じ歯茎音であるタ行音などの音に比べ弱く、ラ行音の発生運動は歯茎音の中で最も弱い音である。その後に続く第3音が有声音の摩擦音で歯茎音で強く発せられる音である。第4音は有声音の通鼻音であり、柔らかな音である。第5音は無声音の破裂音であり軟□蓋音であって力の入る強い音である。
したがって、本件商標を全体的に見れば、第1音がとげとげしい「セ」音であり、第2音が弱い「ル」、次の第3音がとげとげしい音「ジェ」であり、第4音が柔らかい音「ニッ」、語尾音が力強い「ク」である音の構成であることから、本件商標を称呼した時には、弱く発せられる第2音の次が強い音であるから、音は「セル」でー旦区切られ、続いて「ジェニック」と発せられる事となりやすい構造の商標である。
(イ)我が国における外来語の使用状況、英語の我が国での普及状況からして、本件商標「セルジェニック」、「CELLGENIC」は、「セル」、「CELL」と「ジェニック」、「GENIC」部分とに分離されて把握されやすいといえる。
(a)「セル」、「CELL」の我が国での状況
引用商標における「セル」、「CELL」は、外来語として「細胞」等の意味であるとして、その種の辞典に記され、かつ、その種の多数の辞典に記載されていることからして、我が国に外来語として定着し知られている語であると言える(「コンサイスカタカナ語辞典、1998 年株式会社三省堂発行537頁左欄」、「カタカナ語・略語辞典、第三版2000年株式会社旺文社発行356頁右欄」、「カタカナ語・欧文略語辞典・imidasl997年別冊付録、株式会社集英社発行155頁左欄」)。
そして、これを英語としてみると、英語「CELL」は、「(大組織の)基本組織」、「(生物の)細胞」等の意味であり(「ランダムハウス英語辞典第2版、CD−ROM 版、株式会社小学館1998 年発行」、「カナ発音現代英和・和英辞典、2001 年株式会社三省堂発行82頁右欄」、「ジーニアス英和辞典改訂版1994年株式会社大修館発行285頁右欄」)、前記辞典中のジーニアス英和辞典をみると、語としての重要度は「中学基本語、約1100語」に続く「高校基本語、約4800語」に属する重要度である(285頁右欄)。
この外来語、英語の状況からすれば、「セル」、「CELL」は、我が国で知られていて、独立して把握されやすい語である。さらに、前記辞典によれば、「セル」、「CELL」が他語との結合語が多数存在している。これらを見ると、「セル(cell)」が語として持つ意味を離れて全く別の意味の語に変化するのではなく、「セル(cell)」の語が持つ意味と、結合した語との意味が結合したに過ぎないので、他語と結合した場合でも「セル(cell)」の語が持つ意味を離れて把握されることは無いのが通常である。
このような事情のため、「セル」、「CELL」は、他語と結合した場合、元から持つ意味を離れないため、「セル」、「CELL」は、結合したものから分離して把握されやすいものである。
したがって、本件商標の場合にも、このような事情から、同様に、「セル」、「CELL」が語頭に位置するので、同様に分離して把握されやすいものと言える。
(b)語「ジェニック」、「GENIC」の我が国での状況
他方、「ジェニック」、「GENIC」は、(生物学の)遺伝子を意味する語である。この語の意味について我が国における普及度の状況をみると前記とは状況を異にする。すなわち、外来語としての状況を把握するべく「コンサイスカタカナ語辞典(1998年株式会社三省堂発行)」、「カタカナ語・略語辞典第三版(2000年株式会社旺文社発行)」、「カタカナ語・欧文略語辞典・imidasl997年別冊付録(株式会社集英社発行)」を見ても「ジェニック」の語は、掲載されていない。そこで、英語辞典を見ると「GENIC」は、「...生成の、・・を作る(生み出す)」の意味の語であること、語としての重要度は「大学生・社会人に必要な語」よりも重要度が低いランクの語であることが記されている(ジーニアス英和辞典改訂版、1994年株式会社大修館発行752頁左欄)。
したがって、「ジェニック」、「GENIC」は、外来語として我が国で普及しておらず、英語としても重要度が低いから、我が国においてその意味を知られた語であるとは言い難い語であると言える。
以上のとおり、本件商標「セルジェニック」、「CELLGENIC」に接した者は、(一)商標中の「セル」、「CELL」が、我が国で知られていること、(二)これと結合した語が相当数存在し、それが通常は「セル」関連の語であることの事情、(三)「ジェニック」、「GENIC」は、我が国では知られている語であるとは言い難い事の事情、(四)「セル」、「CELL」は理解されるものの「ジェニック」、「GENIC」が理解されないこと、(五)二語の結合により固有の意味合いが生ずるものとも認められないこと、の事情を踏まえ把握することとなるので、二語は一体化せずに、それぞれ独立して把握されやすいと言える。
したがって、本件商標は、「セル」、「CELL」と「ジェニック」、「GENIC」部分とに分離されて把握されやすい商標である。
(c)本件商標が、同書、同大で記されているとしても、各文字の配置、商標を構成する文字数が比較的多いことからして、「セル」と「ジェニック」、「CELL」と「GENIC」とに外観上から分断されて把握されやすい構成である。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標と引用商標とは「ジェニック」の称呼を共通にし、「ジェニック」及び「GENIC」の観念を共通にする類似の商標であり、その指定商品も類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を取り消されるべきものである。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号の該当性について
(ア)「株式会社ジェニック」の営業内容
株式会社ジェニックは、美容サロン向け製品、すなわち、「パーマ剤」 「ヘアカラー」「ヘアケア製品」などの製品を、全国の美容サロンに販売すると共に、美容サロンを通じ来店者への販売を行っている(甲第4号証及び甲第5号証)。具体的には、美容サロンのための業務用と店舗販売用製品であり、パーマ液、ローション、ヘアカラー、コンディショナー、トリートメント、へアスプレー、クリーム等の化粧品、各種シャンプーのせっけん類の販売を行っている(甲4号証)。すなわち、株式会社ジェニックは、美容サロン向け専業企業である。
(イ)「株式会社ジェニック」の歴史
株式会社ジェニックが、美容サロン向け専業企業として全国的に取引を行っている根底には、美容業界向け商品専業メーカーとして我が国で長期にわたり美容サロンにおいて広く知られていた「日本へレンカーチス株式会社」の事業を受け継いだ事情が存在する(甲第4号証及び甲第5号証の表紙裏頁。甲第5号証の第14頁及び第15頁)。1955年(昭和30年)に設立された「日本へレンカーチス株式会社」は、日本初の加湿システムパーマを発売し、1978年には日本初のムース状トリートメントを導入するなど、我が国美容業界の発展と変革に寄与し広く知られていた。この事業が、1997年に株式会社資生堂のグループに属する事となった。そして、1998 年に社名を「株式会社ジェニック」に改めた。従前からの取引を引き継いでいることが全国的取引を可能にしている基礎となっている。
(ウ)社名変更後の事業活動
株式会社ジェニックは、1998年に林原生物科学研究所との提携によりメソポタミア文明から自然治癒薬として使用されているプロポリスを核とした商品を商品化した。そして、品質、衛生、倫理を考慮し、世界初の「ノンヒューマン・オリジン」、すなわち、人由来のシステインではなく酵素法による商品(ウェーブ・エッセンスEMZ)の開発に成功し販売している(甲第5号証の第7頁ほか、甲第4号証の第2頁)。このような、新技術の商品開発努力により全国の美容サロンにおける顧客サービスに貢献すると共に、商標「ジェニック」、「GENIC」製品の信用向上に努力している。そして、従前からの信用の上に、新たな信頼を築く努力を行っている。
(エ)「株式会社ジェニック」の商標
株式会社ジェニックが使用する商標は、「ジェニック」、「GENIC」である。そして、この商標は、「株式会社ジェニック」のハウスマークでもある(甲第4号証の表紙ほか、甲第5号証の表紙ほか、甲第6号証)。商標として使用をすると共に、ハウスマークとしても使用していることにより、ブランドとして浸透しやすい努力をしている。
(オ)「株式会社ジェニック」営業活動範囲
株式会社ジェニックは、本社を東京に、研究部門を神奈川県秦野市に置いているが、全国販売のために営業所を全国の6カ所に設置し、全国約210社の代理店、問屋等を通じ、全国津々浦々の美容サロンに製品を販売している(甲第5号証の16頁ほか)。このように、株式会社ジェニックは、全国に販売できる努力を行っている。
(カ)「株式会社ジェニック」の事業規模
株式会社ジェニックは、資本金2億5千万円、従業員数130名、年間売上高約42億円である(甲第5号証の第15頁及び第16頁)。同業他社の美容サロン向け商品の売上が公開されていないため、株式会社ジェニックの事業規模を他社比較で説明することはできないが美容サロン向け専売品のシャンプーを例にとって規模を把握するならば、シャンプーの売価は1個2200円(甲第6号証)であるから、年間売上高42億円を売り上げるには1年間に約200万個を売り上げなければならない。美容サロンに限定された事業活動であるが、上記から相当の規模と推定できるものと考えられる。全国の代理店の協力を得ながら、全国津々浦々の美容サロンをきめ細かく営業することで達成している。
(キ)「株式会社ジェニック」の付帯事業
株式会社ジェニックは、商品販売だけではなく、美容サロンの活動を支援する各種事業を行っており、その事業を通じ美容業界の技術向上、経営工場のための支援活動を行うと共に全国の美容サロンの経営、管理者、スタイリスト、スタッフ等の交流に努力している。現時点でのプログラムは、甲7号証のとおりである。
以上の活動、努力等により、「株式会社ジェニック」が美容サロン等向けの商品に使用する商標「ジェニック」、「GENIC」は、全国的に広く知られていると言える。
以上をまとめてみると、この商標で全国各地での美容サロンでの取引を可能としている事情としては、まずは、日本へレン力一チス株式会社が我が国で創業時代から美容業界において蓄積した業務上の信用を受け継いだことにある。そして、その上に、株式会社ジェニックが行った前記の新商品開発等の新たな事業活動や、美容サロンへの支援活動によって、また、全国に6カ所に設置された営業所、全国225社の美容サロン、美容関係者、美容サロン向け材料・店販品取扱店(代理店等)において「ジェニック」、「GENIC」商品が流通し(甲第8号証)、全国の美容サロン等で商品が店内使用され、来店者に販売されている状況にある。
その量は、前記に記すとおりですあるが、毎日多量の「ジェニック」、「GENIC」印のシャンプー等商品が全国各地に流通しており、広告(甲第9号証)も行っている。したがって、事業内容は、美容サロン向け中心の限定された市場を対象としているが、前記の状況を総合すれば、商標「ジェニック」、「GENIC」は、株式会社ジェニックの商標として全国に広く知られていると言うべき商標である。
(4)商標法第4条第1項第10号、同第15号の該当性について
商標「ジェニック」、「GENIC」は、株式会社ジェニックが使用権を有する商標であるが、美容業界向け商品に使用してきた事により、株式会社ジェニックの業務に係る商品であることを表示する商標として広く知られており、本件商標は、その商標を含む類似の商標であって、その商品も類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項10号に該当し登録を取り消されるべきものである。
また、本件商標「セルジェニック」「CELLGENIC」は、株式会社ジェニックが商標の使用権を有し、使用する美容業界において、株式会社ジエニックの業務に係る商品であることを表示する商標として広く知られている商標「ジェニック」、「GENIC」を含む商標であり、「ジェニック」、「GENIC」部分が分離して認識される商標であるから、混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標を指定商品「化粧品、せっけん類、歯磨き、香料類、つけまつ毛」に使用した場合には、その商品に接する需要者が、たとえ美容業界向けの商品ではないと認識したとしても、株式会社ジェニックと何らかの関係がある商品であると誤認し商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
本件商標は、「セルジェニック」の片仮名文字と「CELLGENIC」の欧文字を二段に書してなるところ、各文字は、同書、同大、同間隔で書されており、殊更、これを「セル」、「CELL」と「ジェニック」、「GENIC」との各文字部分に分離し称呼、観念しなければならない特段の事情が存するとも認められないものである。
そして、これより生ずると認められる「セルジェニック」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そうとすれば、本件商標は、書された文字全体に相応して「セルジェニック」の一連の称呼のみを生じ、特定の語義を有しない造語を表したものとみるのが相当である。
他方、各引用商標は、「ジェニック」の片仮名文字と「GENIC」の欧文字を二段に書してなるものであるから、これよりは「ジェニック」の称呼と「遺伝子の」の観念を生じさせる商標であるというのが相当である。
そして、本件商標より生ずる「セルジェニック」の称呼と各引用商標より生ずる「ジェニック」の称呼とは、語頭部において「セル」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、両称呼は構成音及び構成音数の差異において明らかに相違し、判然と区別し得るものである。
また、本件商標と各引用商標とは、外観及び観念において類似とすべき点は見出せない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても非類似の商標であるといわざるを得ない。
2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
本件商標と各引用商標とが、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違し、相紛れるおそれのないこと、上記(1)で述べたとおりである。
また、申立人の提出している証拠によっては、引用商標が申立人の販売に係る商品「パーマ剤、ヘアカラー」等を表示するものとして、本件商標の登録出願時、既に我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたことを証明するには不十分なものであって、これを認めることができない。
したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が申立人及び申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同するおそれはないものといわなければならない。
(3)結び
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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