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Trademark Appeal Case

「動く」の称呼・観念類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号判定2002−60069(T2002−60069/J6)
審判種別記載はありません。
結論other

結論テキスト

商品「3Dのデータから組立手順書やメンテナンスマニュアルを作成するための電子計算機用プログラム」に使用するイ号標章は、登録第4251824号商標の商標権の効力範囲に属しない。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4251824号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおり、「PKD 動く仕様書」の文字を横書きしてなり、平成9年1月23日に登録出願、第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として、同11年3月19日に設定登録されたものである。

2 イ号標章

被請求人が商品「3Dのデータから組立手順書やメンテナンスマニュアルを作成するための電子計算機用プログラム」(以下「電子計算機用プログラム」という。)に使用している標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲(2)に示すとおり、「easy driver」及び「動くマニュアルシリーズ」の文字を二段に横書きした構成よりなるものである(「easy driver」の英文字のうち、「y」以外の文字には下線が付記的に施されている。)。

3 請求人の主張

(1)請求人は、被請求人が商品「電子計算機用プログラム」に使用しているイ号標章が本件商標の商標権の効力範囲に属する、との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。

(注:請求人は、判定請求書(以下「請求書」という。)において、被請求人の使用商品「電子計算機用プログラム」を商品「easy driver 動くマニュアルシリーズ」と記述しているが、「easy driver 動くマニュアルシリーズ」は「イ号標章」である。したがって、以下、全てについて誤記の訂正がされたものとして取り扱う。

また、請求人は、提出証拠を「第1号証ないし第3号証」と記載しているが、これは「甲第1号証ないし甲第3号証」という記載があったものとして取り扱う。

さらに、請求人は、イ号標章「easy driver 動くマニュアルシリーズ」の構成文字中、「動くマニュアル」の文字も「イ号標章」である旨主張しているが、イ号標章は「easy driver 動くマニュアルシリーズ」の全体であり、「動くマニュアル」は、その構成要素の一にすぎない。

なおさらに、請求人は、請求書に「役務」と記載すべきにもかかわらず、「商品」と記載しているので、「役務」という記載があったものとして取り扱う。

ほかにも、請求人は、本件商標の指定役務を商品「PKD 動く仕様書」と記載しているが、当該指定役務は「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」である。したがって、以下、全てについて誤記の訂正がされたものとして取り扱う。)

(ア)判定請求の必要性

請求人は、本件商標の商標権者であって、問題(当事者紛争)解決のために、被請求人が商品「電子計算機用プログラム」(該パンフレット:甲第1号証)に使用するイ号標章「easy driver 動くマニュアルシリーズ」が本件商標の商標権の効力範囲に属するとの判定を求める。

(イ)イ号標章の説明

被請求人は、平成14年5月頃から、イ号標章「easy driver 動くマニュアルシリーズ」を商品「電子計算機用プログラム」に使用し販売している(甲第1号証及び甲第2号証)。

他方、請求人は、平成11年4月から、第42類に属する本件指定役務「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に本件商標を使用開始し、現在まで継続的に使用している。

(ウ)イ号標章が本件商標の商標権の効力範囲に属する理由

(a)本件商標は、「PKD 動く仕様書」の文字を書してなるから、これより「ピイケイデイウゴクシヨーショ」の称呼及び「動く」の観念を生ずるものである。

これに対し、イ号標章は、「easy driver 動くマニュアルシリーズ」の文字を書してなるから、これより「イージードライバウゴクマニュアルシリーズ」の称呼及び「動く」の観念を生ずる。

したがって、本件商標とイ号標章は、たとえ、外観が相違するとしても、「ウゴクシヨーショ」の称呼及び「動く」の観念を共通にするので、役務(商品)の出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標である。

(b)また、本件商標の指定役務である第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」と被請求人がイ号標章を使用している商品「電子計算機用プログラム」とは類似する。

(2)以上の点から、被請求人が商品「電子計算機用プログラム」に使用しているイ号標章は本件商標と類似するので、本件商標の商標権の効力範囲に属するものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として被請求人の乙第1号証(注:請求人提出の甲第1号証と同一の証拠)を提出した。

(注:被請求人は、イ号標章の使用商品が「電子計算機用プログラム」であるにもかかわらず、「easy driver 動くマニュアルシリーズ」と記載している。したがって、これについても誤記の訂正がされたものとして取り扱う。)

(1)本件商標は、「PKD 動く仕様書」の文字を横書きしてなり、平成9(1997)年1月23日に登録出願、第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として、平成11(1999)年3月19日に登録されたものである。

これに対し、被請求人は、2002(平成14)年5月頃から、「easy driver/動くマニュアルシリーズ」の文字よりなるイ号標章を商品「電子計算機用プログラム」に使用している。

(2)請求人は、本件商標から「ピイケイデイウゴクシヨーショ」の称呼及び「動く」の観念を生ずる一方、イ号標章から「イージードライバウゴクマニュアルシリーズ」の称呼及び「動く」の観念を生ずると述べるほか、本件商標の指定役務「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とイ号標章の使用商品「電子計算機用プログラム」とが類似するので、両商標(標章)は称呼・観念類似であり、かつ、商品(役務)の出所について混同を生ずるおそれがある旨主張しているが、被請求人は、本件商標から「ピイケイデイウゴクシヨーショ」の称呼が生ずる点は認めるものの、「動く」の観念が生ずるという点には承服できない。

(ア)すなわち、本件商標は、欧文字の3字「PKD」と日本語の「動く仕様書」との間に間隔を設けた構成よりなるから、自然称呼は「ピイケイデイウゴクシヨーショ」、「ピイケイデイ」及び「ウゴクシヨーショ」である。

(イ)また、本件商標の構成中、前半の「PKD」は、欧文字の3字の組合せよりなる造語であり、特別の観念を有しないのに対し、後半の「動く仕様書」は、同書体、等間隔に書されているので、一連一体に認識されるものというべきである。

(ウ)さらに、「動く仕様書」の構成中、「動く」は「仕様書」がどのようなものかを表すにすぎないので、「動く仕様書」の文字より生ずる観念は、その全体と把握される。

(エ)そうとすれば、本件商標から単に「動く」のみの観念を生ずるとした請求人の主張には理由がなく、しかも、請求人は、「動く」の観念を生ずる根拠を何ら示していない。

(オ)なおかつ、本件商標の指定役務「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」との関係からみると、「動く仕様書」は、請求人の提供する役務の内容又はその対象物を表すので、本件商標中、自他役務識別標識としての機能を果たす文字部分は、前半部の「PKD」のみであるといわなければならない。

(3)請求人は、被請求人使用のイ号標章から「イージードライバウゴクマニュアルシリーズ」の称呼及び「動く」の観念を生ずると主張しているが、称呼の点については異論ないものの、「動く」の観念を生ずるという点については承服できない。

(ア)なぜならば、イ号標章は、別掲(2)に示すとおり、やや図案化し色彩を施した欧文字「easy driver」をアンダーラインで強調し、しかも、当該アンダーラインの下に「動くマニュアルシリーズ」の文字を小さく書してなるところ、これらの字体、文字の大きさや太さに差があるため、各々分離して認識されるというべきである。

(イ)してみると、イ号標章からは、「イージードライバー」、「ウゴクマニュアルシリーズ」の称呼のみを生ずる。

(ウ)また、「easy driver」の文字は、特別な観念を有しない造語であるのに対し、「動くマニュアルシリーズ」の文字は、「動くマニュアル」又は「動くマニュアルのシリーズ」という観念を生ずるというのが自然である。

(エ)そうとすれば、イ号標章から「動く」の観念を生ずるとした請求人の主張には理由がないものといわなければならない。

(オ)以上のとおり、被請求人は、本件商標とイ号標章のいずれからも「動く」の観念を生じないものと考える。

(4)さらに、被請求人としては、イ号標章の構成中、「動くマニュアルシリーズ」の文字は自他商品識別力を発揮せず、商品の内容を表す副標題的なものにすぎないので、あくまでも「easy driver」の文字部分のみが自他商品識別力を有するものとして認識されると考える。

してみると、本件商標とイ号標章において、自他商品(役務)識別標識として機能するのは、「PKD」と「easy driver」の文字部分のみであって、両者は、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似しない。

また、本件商標の指定役務は、第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」であるのに対して、イ号標章の使用商品は、第9類「電子計算機用プログラム」であるから、両者は役務と商品であり、各々の特性や取引形態も違うので類似するとはいえない。

(5)結論

以上の点からすれば、イ号標章は、本件商標と相紛れるおそれのない非類似の標章であるので、本件商標の商標権の効力範囲に属しない。

5 当審の判断

(1)本件商標とイ号標章の類否について

(ア)称呼について

(a)本件商標は、別掲(1)に示すとおり、「PKD 動く仕様書」の文字を横書きしてなるから、これより「ピイケイデイウゴクシヨーショ」又は「ピイケイデイ」あるいは「ウゴクシヨーショ」の称呼を生ずるものである。

他方、イ号標章は、別掲(2)に示すとおり、「easy driver」の文字と「動くマニュアルシリーズ」の文字を二段に横書きした構成よりなるものである。

してみると、イ号標章からは、「イージードライバーウゴクマニュアルシリーズ」、「イージードライバー」又は「ウゴクマニュアルシリーズ」あるいは「ウゴクマニュアル」の称呼を生ずるというべきところ、請求人は、イ号標章から「ウゴクシヨーショ」の称呼をも生ずると述べているので、この点について先ず判断するに、イ号標章は、上記したとおりの構成よりなるから、これより「ウゴクシヨーショ」の称呼を生じないことは明らかといわなければならない。

(b)次に、本件商標中の「動く仕様書」の文字から生ずる称呼「ウゴクシヨーショ」とイ号標章中の「動くマニュアル」の文字から生ずる称呼「ウゴクマニュアル」とは、その後半の「シヨーショ」と「マニュアル」の各構成音を異にし、称呼上互いに紛れるおそれのないものというべきである。

他に、それらを含む本件商標とイ号標章の全体が称呼上類似するとみるべき特段の理由も見当らない。

(イ)外観について

本件商標とイ号標章とは、外観上判然と区別し得るものであり、外観上紛らわしいところは見出せない。

(ウ)観念について

(a)請求人は、本件商標(「PKD 動く仕様書」)とイ号標章(「easy driver」「動くマニュアルシリーズ」の二段併記)から、いずれも「動く」の観念を生ずると述べているのに対し、被請求人は、それを否定するとともに、イ号標章の構成中、自他商品識別力を有するのは、あくまで「easy driver」の文字であって、「動くマニュアルシリーズ」の文字については、商品の内容又はその対象物の副標題的なものを表すにすぎず、自他商品識別力を有しないと述べているので、これらの点について、以下、インターネット等の調査を踏まえて検討する。

(b)「動くマニュアル」について

インターネットのホームページにおける、

(あ)「http://www.mbrain.com/spec.htm」には、「<用途>プレゼンテーション、オートデモ、電子広告、動くマニュアル、動くカタログ・・」という記載があり、

(い)同「http://members.jcom.home.ne.jp/e‐advance/」というアドレスの「動く電子マニュアルを制作(有)アドヴァンス」という表題下には、「・・・電子マニュアル・電子カタログ(動くマニュアル・動くカタログ)の制作会社です。」という記載があり、

(う)同「http://www.panafax.co.jp/products/easy_driver/joho.html」には、「・・・『動くマニュアル』を作成するソフトです・・・『動くマニュアル』を閲覧するソフトです」という記載があり、

(え)同じく、「http://www.japan.internet.com/research/20020329/1.html」には、「・・・とにかくマニュアル通りやれば動くマニュアルが欲しい。・・・動くマニュアル このアニメーションは・・・実際の商品にも搭載されています。」という記載があり、

(お)同「http://light‐on.net/pc/infoF.html」には、「携帯インターネット初心者のための動くマニュアル。」という記載があり、

(か)同「http://ra.sakura.ne.jp/ ̄taos/moswf/」には、「・・・動くマニュアルの実現など、様様な応用が期待できそうです。」という記載があり、

(き)同「http://www.ipcm.co.jp/web.htm」には、「・・・動くマニュアル作成などの・・・広告・宣伝等の営業支援サービスも行っております。」という記載がある。

上記記述を総合勘案すれば、イ号標章中の「動くマニュアル」の文字は、コンピュータを利用して動画で表示されるマニュアルがあることよりして、商品(「電子計算機用プログラムの内容」)が「動画で表示されるマニュアルに関するもの」、すなわち、商品の品質(内容)、機能、形式等を表示したものと容易に認識されるとみるのが相当である。

(c)「動く仕様書」について

インターネットのホームページにおける、

(あ)「http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/shoe/leaf/CID/onair/biztech/elec/210813」には、「動く仕様書で設計するソフト」という記載があり、

(い)「http://www.arsjp.com/totalsolution/GAIOARM.htm」には、「製品イメージ通りの『動く仕様書』・・・」という記載があり、

(う)「http://www.indexpro.co.jp/Magazine/j−back/2000/J−0001.htm」には、「動く仕様書“VMT”・・・」という記載があり、

(え)「http://www.firstnews.com/back/fn0193.htm」には、「製品企画から設計まで。組み込み開発者向け、動く仕様書・・・」という記載があり、

(お)「http://cheese.2ch.net/ghard/kako/974/974686327.html」には、「現場が動く仕様書・・・」という記載がある。

上記記述を総合勘案すれば、本件商標中の「動く仕様書」の文字は、コンピュータを利用して動画で表示される仕様書もあることよりして、役務(「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」)の対象となる当該プログラムが「動画で表示される仕様書に関するもの」、すなわち、役務の質(内容)、機能、形式等を表示したものと容易に認識されるというのが相当である。

(d)さらに、本件商標中の「仕様書」とイ号標章中の「マニュアル」の類否についても、以下、検討する。

(あ)岩波書店発行「広辞苑第五版」第2522頁の「マニュアル」の項には、「マニュアル[manual](1)『手の』『手動の』の意。特に自動車で、変速装置が手動式であること。『―操作』(2)手引き。便覧。取扱い説明書。」との記載があるのに対して、「仕様書」についての記載は見当たらない。

(い)株式会社エクスメディア発行「超図解パソコン用語事典2001年版」第473頁の「仕様書」の項には、「仕様書[specification]ハードウェアやソフトウェア、システムの仕様の明細を記した書類のこと。製品購入時の判断に利用される。」との記載がある。

一方、同第741頁の「マニュアル」の項には、「マニュアル[manual]システムの取り扱い方法、トラブル時の対処方法などが記載されている文書のことを指す。印刷されたものだけでなく、パソコン上で見ることのできるオンラインマニュアルやCD―ROMもある。」との記載がある。

(う)株式会社秀和システム発行の「標準パソコン用語事典2001年版」第232頁の「仕様書」の項には、「仕様書[specification]システムやプログラムの機能と、その詳細をまとめたもの。性能要求書。システムなどの受発注に際しては契約書の付属文書となる大切なもの。ISO9000に基づく品質管理では、管理文書のトップとなるもの。」との記載がある。

一方、同第525頁の「マニュアル」の項には、「マニュアル[manual]コンピュータシステムの取扱説明書。一般に、仕様や操作の概要などを説明するユーザーマニュアル(オペレーションマニュアル)と、機能ごとに詳細な使い方を説明するリファレンスマニュアルとに分類される。最近のアプリケーションソフトでは、オンラインヘルプを充実させることで、マニュアルの軽量化を図る傾向がある。また、チュートリアルプログラムやビデオなどによる操作ガイドもマニュアルに含めることができる。」との記載がある。

以上の(あ)ないし(う)の記載によれば、「仕様書」と「マニュアル」とは、たとえ、ごく一部において若干の共通性を有するとしても、区別し得るかなりの差異を有するものといわなければならない。

そうとすれば、たとえ、「仕様書」と「マニュアル」が同義と目される場合があるとしても、コンピュータ関連業界の取引者の全体のみならず、一般需要者の間において、常に「仕様書」と「マニュアル」とが同義のものとして認識されるということはできない。

むしろ、上記(c)ないし(d)のとおり、取引者、需要者は、本件商標の構成中の「動く仕様書」とイ号標章の構成中の「動くマニュアル」のいずれも、単に役務(商品)の質(品質)・内容、機能、形式等を表示したものと認識し、自他商品識別標識としての機能を有しないものとみるというのが相当である。

(e)また、「シリーズ」の文字は、岩波書店発行「広辞苑第五版」第1358頁の「シリーズ」の項における「連続性を持つ一連のもの」という意味からも明らかなように、各種商品(役務)の業界において普通に用いられ、自他商品識別力を有しないものである。

(2)結び

以上のとおり、本件商標中の「動く仕様書」とイ号標章中の「動くマニュアル」のいずれも自他役務(商品)識別力を有しないから、本件商標及び引用標章から、いずれも「動く」の観念を生ずるとした請求人の主張は妥当でなく、採用することができない。

したがって、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からしても非類似のものといわざるを得ないから、本件商標の指定役務と請求人の使用商品との類否について検討するまでもなく、イ号標章は、本件商標の商標権の効力範囲に属しないものと認める。

よって、結論のとおり判定する。

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