結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35037(T2002−35037/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3246893号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲の1に示したとおりの構成よりなり、平成5年12月15日に登録出願、第31類「ペットフード,飼料添加物(医療用のものを除く)」を指定商品として、平成9年1月31日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第22号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)引用商標及びそれが世界的に著名であることについて
ア 請求人は、ペットフードの製造・販売などペットに関連した業務を世界的に行っている多国籍企業マース・グループ(以下「マース」という。)の日本支社であり、マースの商品の輸入販売を主に行っている(甲第3号証)。
マースは、1935年からペットフードの製造・販売を行っている(甲第4号証)。ペットフード「ベディグリー・チャム」「カルカン」などは日本でも広く知られている。ペットフード以外にも、動物用シャンプー、動物用薬剤、餌入れ・首輪などのペット用品の販売も行っている(甲第5号証)。
さらに、マースは、ペットショーを各国で開催又は共催しており、ペットショーに関連した定期出版物も発行している(甲第6号証)。動物愛護キャンペーンにもマースは積極的に参加している(甲第7号証)。
これらの事業の業界であるペットケアの業界において、マースは老舗であり、世界の最大手の企業でもある。
イ マースは、ペットケアの事業において、別掲の2及び別掲の3に示すとおりの構成よりなる商標(以下、これらの商標を一括して「引用商標」という。)を使用している。
(ア)マースは、いろいろなペットフードを製造・販売している。日本国内でも各種のペットフードが販売されているが、それらの中で最も販売量が多く、最も知られている「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」に共通して使用されているのが、引用商標である。引用商標は、これら各ブランドの商品の包装・カタログ・広告に使用されている。
引用商標は、1986年にはドッグフード「PedigreeChum」に使用されており、その後現在に至るまで継続的に使用されている。
「PedigreeChum」は、ペット関係(犬)の雑誌20誌及び一般の雑誌5誌並びに新聞において広告されており、それらの広告において引用商標が使用されている。
キャットフード「BREKKIES」、「KALKAN」にも、引用商標は使用されている。
これらの商品は、ペット関係(猫)の雑誌に広告がされている。
食餌療法用のペットフード「WALTHAM」 にも、遅くとも1989年には引用商標は使用されている。
「WALTHAM」 の商品は、獣医師向けの専門誌(大手4誌)に広告されている。
引用商標が使用されているペットフード「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」の売上高は、甲第9号証ないし甲第11号証に示すとおりであり、これらの売上げを合算すれば、1991年238億円、1992年274億円、1993年247億円、1994年283億円、1995年327億円、1996年351億円、1997年、357億円、1998年339億円、1999年341億円、2000年、349億円、2001年441億円である。
これらの商品の単価は、缶詰であれば200円前後、ドライフードであれば800円前後なので、販売個数が相当数に及ぶことは容易に推定することができる。それら販売された商品一つ一つに引用商標が使用されている。
以上の事実から、引用商標は、ペットフードを取り扱う取引者・需要者の間で、遅くとも本件商標出願時には広く知られており、現在においても著名であることは、明白である。
なお、請求人は、引用商標又はこれを要部とする図形商標を、「飼料」について複数登録している(甲第13号証)。
(イ)請求人のメインブランドのペットフードのパッケージに引用商標は使用されている。その引用商標とともに「WALTHAM」又は「ウォルサム研究所」、「ウォルサム」も使用されている。「WALTHAM(ウォルサム)」は、マースが所有するペットの研究所の名称である。
マースはペットフード事業を拡大するとともに、「ウォルサムペット栄養総合研究所(Waltham Centre For Pet Nutrition)」を1965年に設立した。同研究所は、獣医・科学者・栄養士・食物技術士・動物行動学者などで構成される研究者を中心に、ペットの食餌療法に適したペットフードの調査・研究などを行っている。同研究所は、大学の研究室や外部の研究機関と共同研究を行ったり、学術シンポジウムを定期的に企画・開催しており、その発表論文集を編集・発行している。同研究所の研究・調査活動は専門誌などにおいても数々紹介されているし、また同研究所自身でも動物の栄養学などに関する専門の雑誌を発行している。この本は8か国語に翻訳され、30か国で販売されている(甲第4号証、同第14号証及び同第15号証)。
このように、同研究所は、動物栄養学・獣医学の研究の権威として、関連分野の学会においても一目をおかれている。そして、同研究所に関連した印刷物のすべてに、引用商標は使用されている。したがって、引用商標は、ウォルサムペット栄養総合研究所を表示するものとして、専門分野において認識されている。
マースのペットフードはすべて、同研究所の研究・調査内容に基づいて、開発されている。そのことを明らかにするために、ウォルサムペット栄養総合研究所を表示する引用商標が、マースの主なペットフードについて使用されている。したがって、ペットケアフードとの関連で、引用商標は、品質保証機能を強く果たしている。
(ウ)さらに、マースの会社案内・機関誌・営業用パンフレットなどにも、引用商標は使用されている。しかも引用商標のすぐそばに、「日本エッフェム」(旧名称)あるいは「MasterFoods」(現名称)も付されている(甲第4号証、甲第15号証の1、甲第8号証の1ないし4、甲第15号証の2、甲第16号証の1ないし3)。商号の冠部分とともに引用商標が会社案内などに使用されていることから、引用商標は、マースのペットケア事業において、社標としての役割も果たしている。したがって、引用商標は、請求人ひいてはマースの出所を表示するものとしても認識されており、それが持つ出所表示力は強い。
(エ)引用商標は、日本国内のみならず、世界各国において使用されている。マースは世界48か国に支店を有しているが、アジア・ヨーロッパ・南米・中米・北米・ロシア・オセアニア(フィジーなど島国も含む)の世界全域において、マースはペットフードを販売している(甲第17号証)。これらの地域を網羅するために、マースは、世界各国(210以上の国又は多国間条約・広域条約など)で引用商標を登録している(甲第17号証及び同第18号証)。
ウ 以上のことから、引用商標は、ペットフードとの関係で、日本国内はもちろんのこと世界中において、マース又はウォルサムペット栄養総合研究所の出所を表示するものであることが広く知られている。世界的に共通して使用されている引用商標が持つ出所表示力は非常に強い。
しかも(イ)で述べた通り、引用商標は、ウォルサムペット栄養総合研究所の信用を表示するものであり、商品が学術的に裏付けられていることを示すものでもあるので、引用商標は品質保証機能も強く発揮している。
(2)引用商標はその構成において顕著な特徴を有する。
引用商標の構成には、右方向を向いた犬のシルエットの中に、これと同じ方向を向いた猫のシルエットを、前者とは対照の色で重ねた部分がある。
ペットフードとの関係で、犬と猫を取り合わせた商標は多い(甲第19号証)。
犬と猫のシルエットを描いた図形商標は、引用商標の登録前にはなく、請求人が初めて商標として使用したのであるが、現在では散見されるようになった(甲第19号証においてAと記されているもの)。
しかし、犬と猫など複数の動物のシルエットを重ね合わせた図形の商標は、これらの業界では非常に珍しいものであり、マースが引用商標を使用する以前には、そのような特徴を持った図形商標は日本国内で使用されていなかった。このことは、マースが引用商標を登録する以前には、このような特徴をもった商標は全く登録されてはいなかつたことから、十分に推察することができる。
引用商標の登録後であっても、複数の動物のシルエットが重なった商標が登録された例はわずかである。引用商標と同じように、犬と猫のシルエットが重なっている図形商標の登録は、請求人の商標登録以外には、本件商標及び登録第4241801号商標などわずか5つしかない(甲第19号証においてAB又はABCと記されているもの)。
しかも、引用商標は、犬と猫のシルエットが重なっているだけではなく、それらのシルエットが、同じ方向を向いていることにも特徴がある。上の5つの登録商標のうち、同じ方向を向いた動物のシルエットが重ね合わされているのものは、本件商標及び登録第4241801号だけである。それ以外の登録商標は、確かに複数の動物のシルエットが重なってはいるが、各動物が異なる方向を向いている。
請求人は、引用商標以外にも、同じ方向を向いた馬のシルエットが重なっている図形の商標(甲第20号証の1)、同じ方向を向いた鳥のシルエットが重なっている図形の商標(甲第20号証の2)を登録している。また、更新せずに消滅してしまったが、同じ方向を向いた犬・猫・魚・鳥が重なっている図形の商標も登録していたのである(甲第20号証の3)。このような事実から、ペットフードとの関係において、同じ方向を向いた複数の動物のシルエットが重なった図形は、請求人、正確にいうのであれば、これを世界で共通して便用するマースの商標に認められる、顕著かつ特有の特徴であることが明らかである。
以上の通り、日本国内では、同じ方向を向いた複数の動物のシルエットを重ね合わせた図形からなる商標は、ペットフードとの関係で非常に珍しく、そのような特徴をもった図形を商標として最初に用いたのは、請求人である。また現在でも、ペットフードについてこれと同じ特徴を持った図形商標の登録は、ペットフードの関係では、請求人の他には、被請求人のものしかない。したがって、同じ方向を向いた複数の動物のシルエットを重ね合わせた図形は、最初に国内で登録され、最初で国内で使用された引用商標の構成にのみ認められる、顕著かつ特有の特徴である。
(3)引用商標と本件商標との比較
本件商標は、左を向いた犬のシルエットの中に、同じ方向を向いた猫のシルエットを、犬のシルエットとは対照色で重ね合わせた図形と、「健やかなペットライフを育む」という文字とで構成されている。本件商標の図形は、複数の動物のシルエットが重なっていて、そのシルエットが同じ方向を向いているが、これらの点は、引用商標の構成においてみられる顕著な特徴と同じである。しかもシルエットに用いられているモチーフが、引用商標と同じ犬と猫であり、これらの動物がやや上向き加減で描かれている点までもが、引用商標と共通している。
したがって、本件商標は、商標の構成上の発想・特徴を引用商標と同じくするものである。
(4)出所の混同の可能性
引用商標は、ペットフードその他のペット関連商品との関係で、マースの商標として世界的に著名であるため、非常に出所表示力が強い。
また、引用商標が使用されているペットフードはすべて、専門の研究所による学術的な裏付けがされているので、引用商標は品質保証機能も強く発揮する。
しかも、引用商標は平凡な構成からなる商標ではなく、これらの商品との関係において、非常に珍しいものであり、マースが先駆的に独占して使用していたものである。したがって、引用商標が需要者・取引者に与える印象は非常に強い。
このような引用商標と同じ特徴を備えているだけではなくて、モチーフや上向き加減のフォルムまでもが共通する本件商標を、引用商標が使用されている商品と同一又は類似の「飼料,飼料用添加物」について使用された場合、著名な引用商標を連想させ、マースと何らかの関係のある者の業務に係る商品であるものと認識させ、ひいては商品の出所について混同させるおそれがある。
また、引用商標と発想を同じくする本件商標を、その使用商品又はこれに類似する商品に使用されれば、著名な引用商標に蓄積された出所表示力・顧客吸引力が弱まる。
さらに、引用商標は、世界でもトップクラスの学術研究に裏付けられた品質を保証する機能を有している。マース以外の者がこれと同じ品質の商品を製造することは容易なことではない。したがって、マースの商品とは異なる水準(品質)の商品について、本件商標が使用されることも十分に考えられる。本件商標が「ペットフード」等に使用されれば、引用商標が持っている品質保証機能も損なわれるおそれがある。
したがって、本件商標が「ペットフード,飼料用添加物」について使用されれば、需要者・取引者が惑うのみならず、引用商標が持っている本質的な自他商品識別機能が低下されるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)被請求人の答弁に対する弁駁
ア 引用商標の著名性について
(ア)商標の著名性の判断について
a 被請求人は、引用商標が著名であるとはいえないと主張し、その理由として、引用商標が容器などに小さく描かれていることを述べている。しかし商標は、長期間に亘り何度も回数を重ねて使用されることによって、広く知られるようになり、その出所表示機能が自ずと高まるのであって、商標の表し方の大小によって、商標の著名性が左右されるものではない。たとえ商標が小さく表されていても、継続的に反復して使用されていれば、その商標は広く知られる。一方、商標が大きく表されていても、その使用の期間が短かったり、販売量が少なければ、その商標が広く知られることはない。商標の著名性は、その商標の使用期間・使用範囲・使用された商品の販売量・宣伝広告の程度などを総合的にすべきものである。
b また、商標の使用についての昨今の事情からみても、商標が小さく表されていることが、商標の著名性を否定する根拠にはならないことが、明らかである。すなわち、一つの商品の包装・容器などに、個々の商品を区別するための商標(商品名)と、商品の出所を表示するための商標(社標など)が、同一のパッケージに使用されることは、けっして珍しいことではない。このような場合に、後者が前者に比べて小さく表されることは、一般的なことである。例えば、商品名を表す商標「POCKY」と出所を表す商標「glico」がお菓子のパッケージで用いられているが、後者は小さな字で表されているとしても、それらは広く知られている。他にも花王の月の図形商標や、トヨタ自動車のTをロゴ化した図形の商標などは、商品に小さく表されることが殆どであるが、広く知られている。これらの商標が、長年に亘り継続的かつ反復して使用されているからである。
c 以上のことから、被請求人の上の主張は、商標法における一般的解釈とも、取引社会の実情や社会の常識とも合致しない、不合理なものであるといわざるを得ない。
(イ)被請求人の他の主張について
被請求人は、需要者は「PedigreeChum」等の名称で商品を購入するのが自然であって、引用商標をいちいち確認して購入することはなく、引用商標の存在など関知しないと述べている。
しかし、引用商標は、「飼料」のパッケージにおいて成分表示の近くに使用されていることが多い(甲第22号証)。
「飼料」はペットの食料であり、その栄養成分は需要者にとって重大な関心事である。特に近年は、栄養成分に特徴を持たせた飼料が数多く販売されるようになっている。同じブランドであっても、栄養成分がすべて同じというわけではない。このようにペットフードの栄養成分が多様化していることを考えれば、商品の購入に際してカロリーや成分表示を需要者が確認することは十分に考えられる。引用商標はその成分表示の近くにあり、しかもそれが独創的な図形であることとも相俟って、取引者・需要者は引用商標に目を止めるといえる。引用商標の存在を需要者が関知しないとする被請求人の主張は失当である。
また、一歩譲って被請求人が主張するように、「PedigreeChum」等の名称で商品が購入されることがあるとしても、それは「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」それぞれが既に著名になっており、これらの商標だけで商品の出所や品質を認識することができるので、いちいち引用商標で出所や品質を確認する必要がなくなったというだけのことである。したがって、被請求人が主張するようなことがあったとしても、それによって引用商標の出所表示力の高さや著名性を否定することはできない。
イ 混同の可能性について
(ア)本件商標と引用商標について
被請求人は、配色が逆転していることを相違点として挙げているが、モノトーンの商標の場合、使用に際して配色を逆転させることは一般に行われているし、また一色又は多色使いでなくモノトーンであるという共通点に比べれば、配色の逆転は微差にすぎない。
(イ)混同の可能性について
本件商標は、引用商標にしかみられなかった独創的な表現方法・顕著な特徴(同じ向きの犬と猫のシルエットを重ね合わせた表現)を備えている以上、上向き加減の動物をモノトーンで表現するという点においてまで、引用商標と同じ表現方法が用いられており、その結果、図形全体から引用商標と共通した印象を需要者・取引者に与えるといわねばならない。被請求人が主張する相違が本件商標と引用商標との間にみられるとしても、上述の共通点に比べればほんの微差にすぎない。
なお、被請求人は、本件商標は、「健やかなペットライフを育む・・・」の文字を配したものであり、かかる文字との兼ね合いで認識されるので、単なる図形からなる引用商標とは外観上の類似点は皆無であると主張するが、当該文字部分は、商品「飼料」との関係では、標語のように看取される、自他商品識別力が極めて弱いものであるので、この有無によって本件商標と引用商標とを識別することはできない。
(6)結論
以上の通り、本件商標は全指定商品について商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
(1)本件商標と引用商標の比較
まず、本件商標と引用商標は、共に図形を有する商標であって、視覚を通じて商品の出所表示機能を果たすものであり、かかる図形を有する商標にあっては、図形の表現手段、態様などにそれぞれの技巧を加え、そこに固有の特徴ある性格を打ち出し、視覚を通じて消費者にこれを鮮烈に印象づけようとするものである。
このような観点から、両者を外観につき比較検討すると、本件商標は「角を丸くした正方形内に黒く塗りつぶした犬らしき図形と白抜きした猫らしき図形をシルエットで描き、その下部に「健やかなペットライフを育む・・・」の文字を配した構成」である。
他方、引用商標は2種類あり、その1つは「黒く塗りつぶした2重の長方形内に白抜きした犬らしき図形と黒く塗りつぶした猫らしき図形を描き、その上段に白抜きした人の手を配した構成」である。
もう1つは「黒く塗りつぶした円形内に白抜きした犬らしき図形と黒く塗りつぶした猫らしき図形を描き、その上段に白抜きした人の手を配した構成」である。
両者は、次の点において外観上顕著なる差異を有している。
ア 本件商標と引用商標は、犬と猫らしき図形の向きが左と右というように逆になっている。
イ 本件商標は、黒く塗りつぶした犬らしき図形と白抜きした猫らしき図形であるが、引用商標は白抜きした犬らしき図形と黒く塗りつぶした猫らしき図形であって、逆の配色になっている。
ウ 本件商標は、犬と猫らしき図形の全体を描いたものであるのに対し、引用商標は、犬と猫らしき図形の首の部分から上を描いたものであるから、見た印象が全く異なる。
エ 本件商標は、背景が白抜きであるのに対し、引用商標は黒く塗りつぶしてある。
オ 本件商標は、目がないのに対し、引用商標は目が描かれている。
カ 白抜きした手の有無。
キ 「健やかなペットライフを育む・・・」の文字の有無
ク 本件商標は、角を丸くした正方形であるのに対し、引用商標は長方形と円形である。
このように、本件商標と引用商標はその基本的な構成態様において、十分かつ明確に異なっており、看者は時と所を異にして離隔観察するも、決して彼此誤認混同することなく極めて容易に判別できるものと思料する。
なお、本件商標は「犬らしき図形と白抜きした猫らしき図形をシルエットで描いたものと「健やかなペットライフを育む・・・」の文字を配したものが正方形内に一体に組み合わせて構成」されており、かかる文字との兼ね合いで認識されるから、単なる図形からなる引用商標とは、外観上の類似点は皆無といえる。
また、本件商標と引用商標は、各々の図形部分からは特定した称呼は生じないし、かつ、観念も何ら格別した意味合いは看取し得ないから、称呼、観念上も別異である。
さらに、引用商標をみた場合、顕著なデフォルメ化が施されていることからして、これは何の動物を描いたのか不明ともいえるのであって、共にシルエットで描いたことをもって、本件商標との間に出所につき混同を生ずることはあり得ないと断言できる。
(2)引用商標の著名性
ア 次に、請求人は、引用商標が商品「ペットフード」との関係において、日本国内はもちろんのこと世界中で広く知られていると述べているが、前述した如く、本件商標と引用商標が外観、称呼、観念のいずれにおいても非類似である以上、何ら出所の混同を生ずるおそれはあり得ない。
請求人は、引用商標が著名である旨主張するが、請求人提出の証拠資料を見た場合、著名といえるのは「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」等の名称であって、引用商標は、これら名称の容器や袋に小さく描かれているのみで、これに接する需要者、取引者は注意深く観察しなければみ過ごすことが多いと思われるし、かつ、引用商標がこれらに使用されているからといって著名性を確立していると認識することはないと思われる。
このように、引用商標が「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」等に共通して使用されているとしても、引用商標を需要者、取引者が著名と認識することはあり得ないのである。
したがって、請求人がペットフードに使用している「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」等の著名性は認められるが、引用商標の著名性については否定せざるを得ない。
イ さらに、請求人は、ドッグフード「Pedigree Chum」、キャットフード「BREKKIES」、「KALKAN」、食餌療法用のペットフード「WALTHAM」の売上高を挙げている。
確かに、これらの名称が広く知られているに至ったとしても、引用商標までが広く知られていると認めることはできない。
何となれば、「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」等に接する需要者、取引者はこれらの名称で商品を購入するのが自然であって、引用商標をいちいち確認して購入することはないといえるし、引用商標の存在など関知しないとするのが一般的である。
そもそも、本件商標が新聞、雑誌、テレビ等で宣伝、広告されたとしても、これは当然被請求人名でなされるから、被請求人が本件商標を指定商品に使用した場合、需要者、取引者間において引用商標との間に出所につき混同を生ずる余地はないこと明らかである。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号には違反していないから、無効にされるべきものではない。
本件商標は、別掲の1に示すとおり、角丸正方形内に、いずれも上を向いた左向きの全身像からなる、犬と思しき黒色の図形と猫と思しき白色の図形(以下「犬と猫の図形」という。)をシルエットで表裏の関係にあるように重ねて表し、その下部に二本の線を上下に有する「健やかなペットライフを育む・・・」の文字を配してなるものであり、その構成よりすると、本件商標の犬と猫の図形は、独立して自他商品の識別力を有するものと認められるものである。
これに対し、引用商標は、上部に人の手を白抜きで表し、その下部に、いずれも上を向いた右向きの首から上の目を有する頭部からなる、犬と思しき白抜きの図形と猫と思しき黒色の図形(以下「手及び犬と猫の図形」という。)を表裏の関係にあるように重ねて表し、これらの図形は、別掲の2に示した引用商標は二重の角丸長方形の内側を黒く塗りつぶした図形内に、また、別掲の3に示した引用商標は黒く塗りつぶした円図形内に配してなるものであって、引用商標の「手及び犬と猫の図形」は、その形象のみでも独立して自他商品の識別力を有するものと認められるものである。
そこで、本件商標の「犬と猫の図形」と引用商標の「手及び犬と猫の図形」とを比較すると、前者は、犬と猫が左向きに座って左上部を眺めている様子を描いた図形という印象を受けるのに対し、後者は、犬と猫に手を差し伸べている様子をクローズアップで描いた図形、あるいは、人が手で犬と猫をかわいがっている様子をクローズアップで描いた図形という印象を受けるものである。
そうすると、本件商標の「犬と猫の図形」と引用商標の「手及び犬と猫の図形」の両図形より受ける印象は、自ずと大きく異なるものといわざるを得ないし、かつ、両商標間には他にこれらの図形を凌駕するほどに強く印象付けられる共通した構成要素は見当たらないから、両商標は、離隔的に観察しても、見誤るおそれのない非類似の商標と判断するのが相当であり、他に類似の商標と認め得る点は見出せない。
してみれば、請求人の提出に係る証拠により、本件商標の登録出願日前に、引用商標が請求人のペットフード「PedigreeChum」、「BREKKIES」、「KALKAN」、「WALTHAM」を表示する商標として需要者の間に広く認識されるに至っていたと認められるとしても、本件商標は、引用商標と類似する商標ではなく、それぞれの構成よりすれば別異の商標といわなければならないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者がこれより引用商標を直ちに連想、想起するものとは判断することができない。
請求人は、同じ方向を向いた複数の動物のシルエットを重ね合わせた図形からなる商標は、ペットフードとの関係で非常に珍しく、そのような特徴をもった図形を商標として最初に用いたのは、請求人である。また現在でも、ペットフードについてこれと同じ特徴を持った図形商標の登録は、ペットフードの関係では、請求人の他には、被請求人のものしかない。したがって、同じ方向を向いた複数の動物のシルエットを重ね合わせた図形は、最初に国内で登録され、最初で国内で使用された引用商標の構成にのみ認められる、顕著かつ特有の特徴である旨述べる。
登録商標との関連からみれば、ペットフードについて、同じ方向を向いた犬と猫のシルエットを重ね合わせた図形からなる登録商標の存否の事情は請求人の主張のとおりであるとしても、取引社会の実情からすると、商品の属性、機能、用途などに由来した図形を商標として採択することは普通に行われている手法といえる。そうすると、犬や猫はごく一般的に飼育されているペットであって、ペットフードについて、これらをモチーフとする図形を商標として採択すること自体には、登録商標の有無の如何にかかわらず、高い独創性、創作性があるとは認め難い。また、これらをシルエットで同じ方向を向いて重ねて描くことも、描出方法としてみた場合、その方法にはさほど困難性はないというべきである。かえって、引用商標の特徴的なところは、上記のとおり、犬と猫に手を差し伸べている様子をクローズアップで描いた点、すなわち、その背景に人の気配が感じられる点にあると認められるから、引用商標の顕著かつ特有の特徴が申立人の上記主張の点にあるとする請求人の主張は採用できない。
してみれば、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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