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Trademark Appeal Case

商標の自己使用と不使用取消

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2001−30712(T2001−30712/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2076989号商標の指定商品中「電子応用機械器具(電子管・半導体素子・電子回路を含む、医療機械器具に属するものを除く)」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2076989号商標(以下「本件商標」という。)は、「HIPLANET」の欧文字を横書きしてなり、昭和60年11月18日登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、昭和63年9月30日設定登録され、その後平成10年5月19日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。

(1)本件商標は、その指定商品中「電子応用機械器具(電子管・半導体素子・電子回路を含む、医療機械器具に属するものを除く)」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

(2)弁駁の理由

(1)使用を精査すると、被請求人は、情管と略される事務局を設けて、自社及びグループ会社に共通する各種システムを開発・改良し、順次これを自社及びグループ会社に普及・拡張していることがわかる。

そのシステムの名称がHIPLANET事業所共通システムであるがこれは、開発・改良・拡張の途中にあり、その開発・改良・拡張等システム運用の経費は、共通システムを使用する各グループ会社にも分担させられることがわかる。したがって、被請求人の言う「HIPLANET」は、自社グループに共通するシステムの名称であり、被請求人が商品として他に購売する商品の出所を表示するものとして使用される商標ではないと言わざるをえない。

つぎに、この事実を各証拠にあたって検証する。

(3)乙第1号証

これは本文中の「情管は、SFA推進の事務局として活動」とあるが、この「情管」とは乙第1号証1枚目右上に「http://www.kyushu.hitachi.co.jp/jokan/...」の文字があることから、被請求人の事務部門の略称と認められる。本文中には、続いて共通システムの利用状況、システムの普及対応状況の説明がなされている。その中に「HIPLANET事業所共通システム」とあり、この対応プログラムが300本配布されたことが記載されている。即ち、これから「HIPLANET」が被請求人会社が自らのために開発・作成・改良しているシステムの名称であることを明らかにしているものと認めて誤りではない。したがって、この「HIPLANET」は被請求人が取引において使用したものではなく、また、被請求人の商品に使用されたものでもないことは明らかである。

(4)乙第2号証

本証に表示された「HIPLANET」の文字は、何時表示されたのか全く不明であり、本件の証拠となりうるものはない。また、「HIPLANET」が何であるのかを明らかにするため提出したものであるというならば、本証は、事務所処理システムを本社に集中するためのシステムであり、平成10年3月の時点でまだ改良する必要があることを示しているものである。前述の証拠と統合すると、これは、被請求人が自社のシステムとして開発・使用中のシステムについてを記載していることが明らかであるから、ここに記載の「HIPLANET」が出所を表示するために使用された商標でもないし、また、商品について使用されているものでもないことが明らかである。

(5)乙第3号証

本証は、上欄に 01−10−11と記載があるところから、本件審判請求後に作成されたものと認められるので、本件商標の使用を証するための証拠としては、日時が遅れている。また、そこに表示されている「HIPLANET」は、前項までの証拠を統合すると、単に被請求人の自己使用目的で開発したシステムにおいて利用されるコンピュータソフトのタイトルと認められる。自己使用の目的で自ら開発したコンピュータソフトは、商品ではないから、本証が商標の使用を証するものと言えないことも明らかである。

(6)乙第4号証

本証は、左上欄にあるとおり、被請求人の会社及びグループ会社との間で共同して使用している共通システムの費用を共通システム使用のグループ会社である(株)日立空調システムと日立総合経営研究所に分担して支払わせたことを証するものである。このことは、左上欄の「振替内容:HI−PLANET運用費」の記載からも明らかである。

したがって、本証は、商品販売を証する証拠でもないし、前述のところから明らかなとおり、本証に表示のHI−PLANETが商標でないことも明らかである。

(7)乙第5号証

本証は東海銀行に対するコンピュータによる手数料引落依頼の書類である。作成者は、乙第4号証においてHIPLANET事業所共通システムの運用費を分担することが記載されている(株)日立空調システムである。したがって、本証が商品の購入代金を支払うことを依頼したものでないことは明らかであり、逆にかかる手数料引落依頼書を作るのは継続して運用費を分担し続けることとなっている作成者の立場を明らかにしているものと言わざるをえない。また、データ接受取扱者の欄に「HIPLANET」の文字が見えるが、これは、前述のところから明らかなとおり、被請求人の会社内で、HIPLANET事業所共通システムの推進、サポートをしている担当を指し示すものであり、商標でないことは明らかある。

(8)以上、述べたとおり、被請求人は、本件商標を商標として使用している事実はない。

3 被請求人の答弁

請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証を提出している。

(1)被請求人は、本件商標を取消請求に係る商品について使用している。すなわち、乙第1号証ないし乙第5号証に示すとおり、被請求人は、本件商標「HIPLANET」と社会通念上同一と認められる商標をその指定商品「電子計算機のプログラムを記憶させた磁気テープ、磁気ディスク(事業所共通システム)」について遅くとも平成10年3月以来、現在に至るまで継続して使用している。当該システムは、事業所を複数有する会社においてデータ、帳票等の共通化を図ることによって、業務管理を容易にするシステムであって、顧客会社との間に取引があったことは、乙第4号証及び乙第5号証により明らかである。よって、本件商標は、被請求人により本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件請求に係る指定商品について使用されている。

(2)弁駁書に対する答弁

請求人は、本件商標の不使用をいうために、本件商標「HIPLANET」が自社グループに共通するシステムの名称であるから、被請求人が商品として他に購売する商品の出所を表示するものとして使用される商標でない旨主張し、これを前提として各証拠について種々反論を試みている。

しかしながら、たとえ証拠に表示された会社がたまたまグループ会社であったとしても、それらの会社はあくまで被請求人とは別の法人格を有する全くの別会社であり、それら別会社との間に取引が成立しているのであるから、本件商標はその指定商品に含まれる電子計算機用プログラムの商標として十分に機能しているものである。

また、電子計算機用プログラムは、もともと電子計算機を用いて一定(共通)の効果を得るためのツールであって、近年、多法人間、多業種間における業務仕様の共通化、標準化によって労力の軽減と業務の効率化を図ろうとする業界の動向が認められるところである。そして、そのようなツールの使用により、業務上の共通の仕様が得られ、互いに省力と商取引上の円滑化が図られるとするならば、そのようなプログラムを利用しようとする者はグループ内にとどまるものではなく、また当然に他社グループとの間にも取引は成立するものである。

さらに、商品としての電子計算機用プログラムの取引を考えるときに、当該取引は、有体物である記録媒体によるものばかりでなく、むしろネットワークを通じた商品取引の形態が多いという取引上の特殊な実態も十分に考慮されるべきである。すなわち、共通化又は標準化を目的とする電子計算機用プログラムの取引においてはその後の仕様変更、メンテナンス、運用等とも密接に係わっており、それらもまたネットワークを通じて遂行されるのである。以下、乙各号証について説明する。

乙第1号証について

これは、被請求人が当該電子計算機用プログラムを利用したシステムを開発し、販売するにあたって、当初は自社内での運用により問題点を集約し、改良し、その効果を見極めるための情報の一つとして、2000年におけるその利用状況と対応状況を取りまとめたものであり、その結果をもとにさらに改良が加えられ、一般に使用し得るものとして他社販売に移行したものである。

乙第2号証について

当該システムの開発にあたって、一般に適用しうる基本的な考え方を要約したものである。

乙第3号証について

当該システムにおける端末の初期画面表示であり、そこには「HI−PLANET」と表示されている。そして、その出力日の表示は、本件審判の請求の登録後にあたる「01.10.11」ではあるが、乙第4号証及び乙第5号証の取引の事実を併せ考えるなら、本件商標は、その表示のわずかに前である本件審判の請求の登録前に使用されていなかったということはできない。

乙第4号証について

他社への販売拡張当初の2001年の取引書類である。ここには取引先の名称とともに本件商標と社会通念上同一といい得る商標が明示されている。請求人は「運用費」の表示について言及するが、顧客はネットワークから当該電子計算機用プログラムをダウンロードし、メンテナンス等爾後に生じた費用も含めて支払いをしているのであって、単に表記された文言のみをとらえて、「分担して支払わせた」というのは、あまりにも短絡的にすぎ、取引の実情に立脚していないものといわざるをえない。百歩譲って「分担して支払わせた」としても、その中に商品取引が存在しなかったということはできない。

乙第5号証について

請求人は「本証が購入代金を支払うことを依頼したものではなく、継続して運用費を分担し続けることとなっている作成者の立場を明らかにするものである。」旨主張するが、ここでも系列会社の間においては取引が成立しないことを前提に運用費の分担をいうものであり、「運用費」については前項で言及したとおりダウンロードその他を含むものである。また、「継続」することはこの種「共通化、標準化」に係る商品がよりその目的にかなうように改定されていくことを考えれば当然のことであって、その主張は成り立たない。

本証は、被請求人と顧客の関係及び本件商標の使用事実、使用年月日を確実に証明し得る書面である。

被請求人は、前記のとおり本件商標を取引において使用しており、それによって、商標法の目的とする 「業務上の信用の維持」を図るとともに、現実に取引上の利益を享受しているのであるから、商標法第50条が登録商標を(正当理由による不使用を除き)3年間継続して「使用していない」場合の商標登録の取消を規定していることからしても、「使用していない」ことが明白でない限り、権利の安定性、将来にわたる取引上の利益等の観点から、その登録はみだりに取り消されるべきものではない。

よって、本件商標は、被請求人により本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件請求に係る指定商品について使用されているから、本件審判は答弁の趣旨のとおり審決されるべきものである。

4 当審の判断

(1)被請求人が、本件商標をその指定商品中の「電子計算機のプログラムを記憶させた磁気テープ、磁気ディスク(事業所共通システム)」(以下「使用商品」という。)」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用しているとして提出した乙第1号証ないし同第5号証から、以下の事実を認めることができる。

(a)乙第1号証は、「(情シ事)九州G 2001年4月」と題する「HIPLANET事業所共通システム」「資材VAN伝送共通システム(HITVAN)」をシステム名称とする全社共通システム2000年対応状況取り纏め(マネジメント)等の事業所(グループ)間の利用状況に関する報告書と認められる。

(b)乙第2号証は、「HIPLANET」に関する改善ポイントについての内容が記載された説明書と認められる。

(c)乙第3号証は、「HI−PLANET」の初期画面を表したものであり、出力日・時間と認められる「01−10−11 13:45:07」が記載されている。

(d)乙第4号証は、「01/上期定額関連会社振替表」と題する「2001年4月9日」付のものであり、「振替内容:HI−PLANET運用費」、「(依頼元)(業革推)HI−PLANET」及び関連会社名が記載されている。

(e)乙第5号証は、「東海コンピュータサービス(東海接続型)申込書兼手数料引落依頼書(お客様控)」と題する日付不明のもので、ご利用者を「株式会社日立空調システム」、データ機受取扱者を「株式会社日立製作所業務サポート事業部勤労業務サポートセンタHIPLANET」との記載がされている。

(2)前記認定の事実よりすると、使用商品は、グループ会社間における事業内容を共通のシステムで管理する電子計算機用プログラムと認められ、被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用商品について使用していることは認め得るところである。

(3)この点に関し、請求人は、使用商品は自社グループに共通するシステムの名称であり、商品として他に購売する商品の出所を表示するものとして使用されていないものである旨主張するのに対し、被請求人はグループ会社であったとしても、それらの会社はあくまで被請求人とは別の法人格を有する全くの別会社であり、それら別会社との間に取引が成立しているのであるから、本件商標はその指定商品に含まれる電子計算機用プログラムの商標として十分に機能しているものであり、それら別会社との間に取引が成立しているのであるから、顧客はネットワークから当該電子計算機用プログラムをダウンロードし、メンテナンス等その後に生じた費用も含めて運用費として支払いをしているのである。商品としての電子計算機用プログラムの取引は、有体物である記録媒体によるものばかりでなく、むしろネットワークを通じた商品取引の形態が多いという取引上の特殊な実態も十分に考慮されるべきである旨主張しているので、この点につき判断する。

(4)被請求人が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用商品について使用していることは前記したとおりである。しかしながら、以下の理由により、使用商品は請求に係る商品の範疇に属する商品と認めることはできない。

すなわち、被請求人の主張するようにグループ会社間であっても、一定の交換価値をもって取引が成立し、また、電子計算機用プログラムが、常に記録媒体として流通されるものではなく、電磁的方法いわゆるダウンロードにより取引に資される場合のあることは認められるとしても、被請求人は、弁駁書においてダウンロードにより取引があった旨を主張するのみであり、かつ前記乙各号証からは、使用商品がダウンロードにより販売されていること、運用費の中にダウンロードの販売価格が含まれていることを窺うことができないから、使用商品が取引の対象物として市場の流通に供されているものとみることが困難であり、本件商標の使用は客観的に立証し得なかったものといわなければならない。また、その使用の時期についても本件審判の請求の登録(平成13年8月1日)前3年以内に使用されていたものと窺うこともできない。そして、上記認定を覆すに足りる証拠は見出せない。

(4)以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその請求に係る指定商品について使用していたと認めることができない。また、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、「結論掲記の商品」についての登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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