結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2001−30983(T2001−30983/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2449567号商標(以下「本件商標」という。)は、「きちんとちきん」の平仮名文字を横書きしてなり、平成1年10月24日登録出願、第32類「肉製品、その他本類に属する商品」を指定商品として、同4年8月31日に設定登録され、その後、同14年8月13日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1.被請求人は、本件商標をその指定商品中「加工穀物」について、継続して過去3年以上日本国内において使用した事実は存在しない。
また、本件商標には、専用使用権者も、通常使用権者も設定登録されておらず、これらの使用権者による本件商標の使用もない(甲第2号証)。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項に該当するものであり、同条第2項に定められる証明がない限り、その登録を取り消されるべきである。
2.答弁に対する弁駁
(1)使用に係る商品について
被請求人は、本件商標を「鶏ミンチ、鶏卵、野菜、小麦粉、調味料を大型攪拌機により混ぜ合わせたものを立方体状に成形し、加熱して焼き固めたものを冷凍状態にした加工食品」(以下「本件商品」という。)に使用してきたと主張する。
そこで、本件商品が「加工穀物」に該当するか否かについてみるに、本件商品は、「小麦粉」以外に「鶏ミンチ、鶏卵、野菜、調味料」が含まれており、それらの原材料及び食し方は、乙第3号証で被請求人自身が「ミニお好み焼」と述べているように、実質的にいわゆる「お好み焼き」に類似するものである。
ところで、旧32類の「加工穀物」には、穀粒・穀粉が明らかに主体となって加工されている商品のみが該当する。「うどんめん」、「そばめん」、「マカロニ」、「強化米」、「ふ」等、審査基準に列挙されている商品からしてもこのことは容易に類推できる。
一方、本件商品は、小麦粉が明らかに主体とは到底言い得ない。乙第3号証における原材料の記載も「鶏肉、鶏卵、野菜、小麦粉、調味料」の並びであり、どちらかといえば小麦粉以外の具材が主体であるように思われる。また、「冷凍のお好み焼き」は、「すし,たこ焼き,肉まんじゅう」等の範疇に分類されている。
とすれば、本件商品が「加工穀物」に属するとは到底思われず、当該商品に対する本件商標の使用は、請求人が取消請求した「加工穀物」に対する本件商標の使用にはあたらない。
(2)不使用の正当理由について
被請求人は、特別清算手続の続行中であり、本件商標の使用が禁止されていることから、これが不使用の正当理由に該当すると主張する。
たしかに、債務超過により破産等した会社には流動的でない資産を換金して清算する機会を与えることに一理があることは認める。
しかしながら、清算手続が行われなければ不使用を理由として取り消されていたはずの商標が、清算手続に入ったとたんに取り消され得ないとするのはあまりにも不合理である。清算手続に入っても商標権は譲渡等、移転することが可能であり、移転されれば当該商標を使用することは可能である。清算は、事業継続の断念であり、移転されることもない商標は使用再開の可能性が著しく低いことは容易に窺えるところである。まして、商標権は対世的効力を有するものであり、そこからしても清算手続に入ったことを無条件で不使用の正当理由とするのは不合理極まりない。
とくに本件商標は、審判請求の登録日前3年にあたる平成10年9月21日から清算手続の開始を命ぜられた平成12年10月25日までの間に、本件商標を「加工穀物」に使用していなかったのであるから、取り消されて然るべきものである。
さらに、本取消審判は、全指定商品に対してではなく、「加工穀物」に対してのみ請求されており、たとえ「加工穀物」が取り消されたとしても、未だ換金できる権利は残存するのだから、本取消審判が清算の趣旨に反するものともいい得ないと思料する。
よって、本件商標は、「加工穀物」につきその登録を取り消されるべきである。
被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証、及び別紙として本件商標の「称呼検索」(写し)を提出した。
1.本件審判請求の利益の欠如−権利濫用
不使用取消審判の請求人は、その請求をする法律上の利益を有することを要し、登録商標の商標登録が取り消されることについて、何らかの個別的、具体的な法律上の利害関係を有するときに初めて請求の利益を有するとされている(東京高判、昭和60年5月14日;判例時報1166号152頁)。
しかるところ、請求人は、平成13年9月3日に、商品区分第30類「穀物の加工品」を指定商品とする商標(以下「請求人商標」という。)の出願をしたところ、請求人商標は、本件商標を引用商標とする拒絶理由の通知がなされた訳でも、請求人、被請求人間で本件商標や請求人商標に関し民事訴訟が係属している訳でもない(乙第1号証)。
さらに、本件審判請求は、請求人商標の指定商品である「穀物の加工品」とは敢えて異なる「加工穀物」についてのみ、本件商標の一部取消しを求めているものであって、仮に、この種の一部取消請求が、請求人により恣意的に繰り返されるとなれば、被請求人はその度ごと対応を強要されることになり、無用の手間・時間・費用を費やすことになり煩雑極まりないことが容易に予想される。
したがって、本件審判の請求は、一方で請求人に個別的・具体的な法律上の利害関係がなく、他方、被請求人を害することを目的とするものであるから、権利濫用として許され得ないものである。
2.第1次的主張−指定商品についての本件商標の使用(商標法第51条2項本文;「商標法51条」は、不正使用についての取消審判に関する規定であり、本件審判は同法50条に規定する不使用取消審判請求である。したがって、答弁書中にある「商標法51条」の記載はすべて「商標法50条」の誤記と認め、「商標法50条」に置き換える。)−同法第2条3項7号「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」
(1)被請求人は、原材料であるとり肉(ミンチ状)、鶏卵、野菜(5ミリメートル四方に切られたキャベツ)、小麦粉、調味料(乙第3号証)を大型攪拌機により混ぜ合わせたものを、10センチメートル×15センチメートル×2センチメートル(厚み)の立方体状に整え、加熱して軽く焼き固めたもの(約200グラム)を、透明ビニール袋にて1個ずつ真空パック処理したうえで、さらに冷凍して長期間保存できる状態にした冷凍食品(カレー味、サラダ味、中華味の3種類がある。;本件商品)を製造し、これを本件商標と同一の「きちんとちきん」という商品名により販売してきた。出荷の折には、本件商品10個ずつを、本件商標である「きちんとちきん」の文字が表示された包装用段ボール箱に詰め込んだうえ、これを小売業者や飲食業者等に卸売りしてきた。
本件商品は、穀物である小麦から生成される小麦粉を原材料として、他の原材料と混ぜ合わせてから加熱することにより製造し、冷凍保存されている食品であるところ、乙第3号証「広告文書」食べ方欄に記載されているように、さらにこれを油で揚げたり、電子レンジで加熱したり、火で焼いたり、炊くなどして食するいわゆる半調理済み食品であって、本件商標の指定商品中「加工穀物」に含まれることは明らかである。
被請求人は、平成元年10月ころより継続して本件商品を製造・販売してきたところ、平成11年3月ころ、奈良県磯城郡田原本町所在の「ダイショク株式会社」、奈良県大和郡山市稗田町所在の居酒屋「五百家(ゆうか)」、 奈良県奈良市富雄所在の居酒屋「いち」、奈良県奈良市大宮町所在の居酒屋「一条」外に対し、本件商品数個ずつとともに、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標である「きちんとちきん」の文字が表示され、かつ、その商品の特徴、食べ方などを説明した本件商品に関する広告文書(乙第3号証)数枚ずつを頒布している。
したがって、被請求人は、過去3年内日本国内において、本件商標を指定商品中「加工穀物」について使用していたことが明らかである。
(2)請求人は「旧32類の『加工穀物』には、穀粒・穀粉が明らかに主体となって加工されている商品のみが該当する。」と主張する。
しかし、本件商標は、昭和34年法第32類という広範な商品区分について登録されてきたものであるから、書換制度に伴い新たに細分化されたとしても、従前区分旧32類についての使用がある限り、本件商標の使用の事実を遡って覆すものではない。そして、従前区分に従えば、旧32類の「その他の加工食料品」として、ピザやミートパイ等が列挙されているところ、これらは穀粒・穀粉が主体でないことは明らかであり、むしろ本件商品である半調理済み冷凍お好み焼きとの類似性が認められる。
したがって、請求人が取消請求している「加工穀物」に対する本件商標の使用がなかったとはいえない。
3.第2次的主張−不使用についての正当理由の存在(商標法第50条2項但書)
(1)仮に、指定商品中「加工穀物」についての本件商標の使用が認められないとしても、被請求人にあっては法令により本件商標の使用が全面的に禁止されており、これは商標法第50条2項但書の場合にあたる。
同条項但書にいう「正当な理由」とは、取消請求に係る指定商品についてその登録商標の使用を妨げる事情で、その不使用をもって当該商標権者の責に帰することが社会通念上酷であるような場合をいう(東京高判昭和60年7月30日−判例タイムス615号121頁)。
(2)被請求人は、平成12年10月7日株主総会決議により解散(同月25日登記)したところ、債務超過の疑いが認められたため(商法第431条1項後段)、奈良地方裁判所は同月25日弁護士吉井昭を清算人に選任するとともに、翌26日特別清算手続の開始を命じた(同月30日登記)ものである(乙第1号証)。現在、なお同清算手続が続行中であるところ、法律上その活動範囲は清算目的のみに減縮されていて(商法第116条)、営業を前提とする本件商標の使用は全面的に禁止されているのであって(審決昭和25年9月1日−判例工業所有権法216頁)、被請求人に帰属している工業所有権については、これを速やかに換価処分しなければならず、また、もし専用・通常実施権等の使用権を設定していたとしても速やかに当該工業所有権自体を譲渡するか、利用権を消滅させなければならない(そうでなければ使用料が継続的に発生する等、何時までも清算手続を完了させられない)状況にある。
したがって、仮に、指定商品中「加工穀物」についての本件商標の使用が認められないとしても、被請求人が本件商標を使用していないことについて正当な理由が存すること明らかである。
(3)請求人は、「清算手続が行われなければ不使用を理由として取り消されていたはずの商標が、清算手続に入ったとたんに取り消され得ないとするのはあまりにも不合理である。」と主張する。
しかしながら、清算手続続行中の会社に帰属している工業所有権に関しては「使用していないことについて正当な理由が存する」というのは、先例たる審決昭和25年9月1日が示すところである。すなわち、清算手続中は法律により営業を前提とする商標の使用が全面的に禁止されているためにこれを使用できないのであって、一方で法律により使用を禁止しながら、他方で法律が不使用を理由に取消請求を認め当該財産的価値を奪ってしまう、というのではあまりに不合理であるからこそ、商標法第50条2項但書が設けられているに外ならない。
また、請求人の、「本件商標は、審判請求の登録日前3年にあたる平成10年9月21日から清算手続の開始を命ぜられた平成12年10月25日までの間に、本件商標を『加工穀物』に使用していなかったのであるから、取消されて然るべきものである。」の主張は、請求人の主観的希望を述べた単なる立法論に過ぎず、法解釈に関わる主張ではないし、「本取消審判は、全指定商品に対してではなく、『加工穀物』に対してのみ請求されており、たとえ『加工穀物』が取り消されたとしても、未だ換金できる権利は残存するのだから、本取消審判が清算の趣旨に反するものともいい得ない。」旨の主張は、その根拠と合理性を欠くものであり、被請求人清算人においては本件商標の財産的価値を維持すべき法的責務があるところ、実際、従前区分全てをカバーできるよう、本件商標の更新申請と併せ、書換申請をも済ませたばかりである。
さらに、本件においては、法律が本件商標を使用する機会を奪っていたのであるから、第三者に譲渡されるなどして(そうでないと清算は結了しない)使用が可能となってから3年間日本国内において不使用であるという事実がない限り、不使用取消しの法定要件を充たす余地はない。そうすると、もし仮に清算結了の登記後直ぐに審決がなされるとしても、「本件審判の請求は、成り立たない。」という判断に至るだけである。
4.本件にあっては、前記のとおり、不使用の正当理由が存するから、3年内の使用の有無を審理するまでもなく、請求が成り立たないこと明らかである。
1.本件審判を請求することについての利益について
(1)商標法第50条による審判請求における請求人適格については、商標法の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、「利害関係人」に限定されることなく、「何人」にも認められることになった。したがって、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められるときには、その請求は権利濫用として認められない場合があるが、そうでない限り、商標法第50条による審判請求は、何人によってもなし得るところであり、利害関係は必要とされない。
(2)そこで、本件審判を請求するにつき、請求人に、被請求人を害することを目的としているような権利濫用があったか否かについてみるに、被請求人は、「請求人は、請求人商標を出願したところ、該請求人商標は、本件商標を引用商標とする拒絶理由の通知がなされた訳でも、請求人、被請求人間で本件商標や請求人商標に関し民事訴訟が係属している訳でもない。また、本件審判請求は、請求人商標の指定商品である『穀物の加工品』とは敢えて異なる『加工穀物』についてのみ、本件商標の一部取消しを求めているものである。仮に、このように請求人商標の指定商品区分とは異なった一部取消請求が、請求人により恣意的に繰り返されるとなれば、被請求人はその度ごと対応を強要されることになり、無用の手間・時間・費用を費やすことになる。」旨主張する。
しかしながら、職権でした調査によれば、請求人商標は、本件商標が引用された拒絶の理由通知を受けたこと、平成14年1月21日付けの請求人からの上申書及び同14年4月8日付け弁駁書によれば、請求人は、被請求人との間で、本件商標の商標権の譲渡について交渉をしたが、不調に終わったことが認められること、請求人は、本件商標に対し、本件審判の取消を求める「加工穀物」についての登録に関し、過去及び現在を通じて何度も取消審判を請求したことが認められないこと、及び本件審判の取消請求に係る第32類「加工穀物」と請求人商標の指定商品である第30類「穀物の加工品」との関係は、平成4年4月1日にわが国がニース協定で定める国際分類を採用し、これに即した分類体系を採ったため、昭和34年法における旧商品区分第32類に属していた「加工穀物」は、国際分類の商品区分においては、第30類に分類されたものであり、その商品内容は実質的に同一であることを総合して勘案すれば、本件審判を請求するにつき、請求人に、被請求人を害することを目的とする権利濫用があったとは到底認めることはできない。他に、これを覆すに足りる証拠は見出せない。
2.本件商品について
被請求人は、乙第3号証を示し、本件商標を「加工穀物」について使用している旨主張するので、以下検討する。
(1)乙第3号証によれば、鶏の図形、「ポスト チキンナゲット」、「きちんとちきん」(「と」の文字は、他の文字に比べ4分の1程度の大きさで書かれている。)、「カレー味、サラダ味、中華味」、「美容と健康/きちんとちきん(「と」の文字は、他の文字に比べ4分の1程度の大きさで書かれている。)/高蛋白/ベジタブル/低脂肪」、「食べ方/植物油で軽く揚げマヨネーズ・ケチャップ・マスタードなどお好みに応じて・・スナック、おやつ、お弁当のおかずに最高。/電子レンジで3分マスタードを付けてサンドイッチ・ホットドッグなど手軽な朝食に・又、トンカツソースを付けカツオ、ノリをふりかければミニお好み焼の出来上り。/串に刺してタレ焼き、ビールのおつまみに・又、水炊きなどの鍋物に。」、「(原材料/とり肉、鶏卵、野菜、小麦粉、調味料)」などの記述が認められる。
(2)上記した鶏の図形、「ポスト チキンナゲット」、「高蛋白/ベジタブル/低脂肪」の各文字、原材料の表示などからすると、本件商品は、鶏肉を主材料とした商品であって、小麦粉は、鶏肉や野菜などのつなぎの役目をするにとどまる材料と窺われるところである。
一方、第32類の「加工穀物」は、例示商品からも明らかなように、「強化米、米飯の缶詰、乾燥米等穀物を加工したものと、うどんめん、そばめん等穀粉を加工したものが含まれる」(「商品区分解説」昭和55年3月31日改訂版)概念である。
してみると、穀物及び穀粉を加工したものとは認められない本件商品は、第32類「加工穀物」の範疇には属しない商品といわなければならない。
(3)したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品「加工穀物」について使用していたことを証明していないといわざるを得ない。
(4)上記に関し、被請求人は、「本件商標は、昭和34年法第32類という広範な商品区分について登録されてきたものであるから、書換制度に伴い新たに細分化されたとしても、従前区分旧第32類についての使用がある限り、本件商標の使用の事実を遡って覆すものではない。そして、従前区分に従えば、旧第32類の『その他の加工食料品』として、ピザやミートパイ等が列挙されているところ、これらは穀粒・穀粉が主体でないことは明らかであり、むしろ本件商品である半調理済み冷凍お好み焼きとの類似性が認められる。」旨主張する。
確かに、本件商標は、第32類(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による)の全商品を指定商品とするものであり、これらの商品が広範囲にわたるものであることは被請求人主張のとおりである。
しかしながら、広範囲にわたる商品を包含する商品区分第32類は、そこに属するすべての商品が原材料、用途、生産者、取引系統等を共通にする類似の商品ではなく、「加工食料品」の中でも、例えば、「加工穀物」と「すし、べんとう、サンドイッチ」の類、あるいは「鶏肉を加工した商品(肉製品)」とは生産者、取引系統等を異にする場合が多い非類似の商品ということができる。
そして、本件取消に係る指定商品は、「加工穀物」であることは明らかであり、被請求人は、本件商標を「加工穀物」の範疇には属しない本件商品の使用について述べるのみであって、本件商標が「加工穀物」について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたことを証明していないものである。
したがって、上記被請求人の主張は採用することができない。
なお、被請求人は、平成14年9月11日付けの答弁書において、本件商標が「加工穀物」について使用されていたことについて、販売先店主ら作成の報告書、営業許可証、写真入りメニュー、名刺、製造機器の写真等を提出する予定である旨述べているが、本件商品が「加工穀物」の範疇の属しないものであることは前記したとおりであり、提出予定の書類によってその認定が左右されるものではないと判断するのが相当である。
3.不使用についての正当理由の有無について
(1)乙第1号証及び答弁の理由によれば、被請求人は、平成12年10月7日株主総会の決議により解散し、その登記が同年10月25日にされたところ、債務超過の疑いが認められたため、奈良地方裁判所は、平成12年10月25日に清算人を選任するともに、同年10月26日特別清算手続の開始を命令し、その登記が同年10月30日にされたこと、及び被請求人に帰属する商標権は、使用が禁止されたことが認められる。
(2)ところで、商標法は、使用により商標に蓄積された信用を保護することにより、産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護すること目的としているものである。換言すれば、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものであって、一定期間登録商標を使用しない場合は、保護する対象がないものというべきであり、他方、不使用の登録商標を放置することは、商標の使用を欲する者の商標採択の範囲を狭める結果ともなり、国民一般の利益を損なうこととなる。
商標法第50条の立法趣旨は、上記のような一定期間登録商標を使用していない登録商標については、請求により、商標登録を取り消すことにあると解される。そして、上記商標法の目的、不使用取消審判制度の趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法第50条第2項但し書きにいう「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて、商標権者の責めに帰することができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該登録商標を取り消すことが社会通念上酷であるような場合をいうものと解すべきである。
(3)これを本件についてみると、前記(1)の認定の事実によれば、被請求人は、債務超過の疑いが認められたため、奈良地方裁判所は、平成12年10月25日に清算人を選任するともに、同年10月26日特別清算手続の開始を命令じたことにより、本件商標の使用が禁止された事実があるとしても、このような債務超過といった事情は、いわば私的事情により生じた事柄であり、被請求人が本件商標を使用しないことについて、その責めに帰すことができないやむを得ない事情があったものとは認め難いところである。
しかも、被請求人は、その債務超過の疑いが認められ、奈良地方裁判所により、特別清算手続の開始を命令じられたのは平成12年10月26日のことであり、この日付から本件審判の請求の登録日(平成13年10月3日)の3年前である平成10年10月まで溯ったおよそ2年の間に、被請求人の主張によれば、平成11年3月本件商品数個と広告ちらし(乙第3号証)を数枚を4業者に頒布したというものであって、本件取消に係る「加工穀物」についての取引等があり、本件商標が使用されたと認めるに足りる証拠の提出は一切なく、したがって、本件商標を取消に係る「加工穀物」について1度も使用していなかったものであって、特別清算手続の開始を命令じられたことが直接的な原因となって本件商標を使用しないことになったというような事情を認める証拠は見出せない。
してみれば、上記した事情があったからといって、本件商標の不使用を理由に本件商標の登録を取り消すことが、社会通念上被請求人に酷であると認めることはできない。
したがって、被請求人は、本件商標をその指定商品に使用していないことについて、商標法第50条第2項但し書きにいう「正当な理由」があるものということはできない。
(4)上記の点に関し、被請求人は、昭和25年9月1日付けの審決を挙げ、「清算手続中は法律により営業を前提とする商標の使用が全面的に禁止されているためにこれを使用できないのであって、一方で法律により使用を禁止しながら、他方で法律が不使用を理由に取消請求を認め当該財産的価値を奪ってしまう、というのではあまりに不合理であるからこそ、商標法第50条2項但書が設けられているに外ならない。」旨主張する。
しかしながら、昭和25年における旧法下の商標権は、その営業を廃止したときは消滅することになっており、商標権の自由譲渡を認めていなかったため、被請求人が挙げた事例における農業団体法による解散以来本来の目的たる事業を遂行することができない商標権者は、第三者に当該登録商標を譲渡することができないという背景事情が存在したことにより、登録商標の不使用につき正当な理由があったと認められたものと解されるところ、現行法においては、商標権の自由譲渡が認められており、商標権者が業務を廃止したからといって必ずしも商標権が消滅しなければならない事情は存在しない。このような現行法のもとで、商標法第50条第2項但し書きにおける「正当な理由」は、上記(2)のように解するのが合理的ということができる。
また、被請求人は、本件商標の不使用につき、「法律が本件商標を使用する機会を奪っていたのであるから、第三者に譲渡されるなどして(そうでないと清算は結了しない)使用が可能となってから3年間日本国内において不使用であるという事実がない限り、不使用取消しの法定要件を充たす余地はない。」旨主張するが、前記したとおり、本件においては、商標権者の「債務超過」が原因で、平成12年10月26日に奈良地方裁判所により特別清算手続の開始を命令じられた結果、被請求人が主張するところの「法律が本件商標を使用する機会を奪っていた」のであって、時限立法により一定期間、登録商標の使用が禁止されたというものではないし、少なくとも、特別清算手続の開始を命令じられた平成12年10月26日以降、本件商標を第三者に譲渡する方法が取れたにもかかわらず、これをなさなかったものである。
そして、商標法第50条に基づく本件審判は、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標の使用を証明しなければ、商標登録の取消を免れないのであって、将来的に本件商標が第三者に譲渡され使用されたとしても、本件商標を本件審判の請求の登録前3年以内に使用したことにならないことは明らかである。
したがって、被請求人の主張はいずれも採用することができない。
4.以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「加工穀物」について取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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