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Trademark Appeal Case

SAPとSUPの称呼類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35286(T2000−35286/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4328203号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年2月6日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスクその他のデータ記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同11年10月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録第2509560号商標(以下「引用商標」という。)は、昭和63年10月25日に登録出願され、「SUP」の欧文字を横書きしてなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、平成5年2月26日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第3号証を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。

(1)本件商標と引用商標との類否

本件商標は、そのローマ字「SAP」部分から、「サップ」の称呼が生じることは明らかである。

一方、引用商標は、既成語ではなく、ローマ字からなるので、われわれ日本人に馴染みの深い英語読みにあわせて称呼することは十分考えられる。

しかるに、英語においては「subject」を「サブジェクト」、「subway」を「サブウェイ」、「such」を「サッチ」、「success」を「サクセス」、「summer」を「サマー」、「sun」を「サン」、「Sunday」を「サンデー」の如く、「S∪」を「サ」と称呼することが非常に多い。そして、ここで挙げた英語の単語はいずれも日本においてよく知られたものであって、平均的知識水準の需要者であれば誰でもが知り得ているものである。そのため、引用商標「S∪P」は、これら英単語の発音に合わせて、「サップ」の称呼をもって取り扱われることは十分考えられる。

したがって、本件商標と引用商標は、「サップ」の称呼を共通にする称呼上相紛らわしい類似の商標といえる。

(2)特許庁における取り扱い

特許庁においても、請求人の出願に係る商願平11−53185号「EーSUP」に対して本件商標を引用した拒絶理由通知を発している(甲第3号証)ことからすれば、本件商標は当然引用商標とは類似のものとされるべきである。本件商標が「SUP」に「E−」を付加した商標に類似する以上「SUP」のみからなる引用商標と類似しないとは到底いえないところである。

(3)利害関係

請求人は、本件商標の登録により自己の出願商標の登録が阻害されているから、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有することは明らかである。

(4)まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、同法第46条第1項によって無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第70号証を提出した。

(1)本件商標と引用商標の類否について、

請求人は、本件商標は、そのローマ字「SAP」部分から「サップ」の称呼が生じることは明らかであり、一方、引用商標も「サップ」の称呼をもって取り扱われることは十分考えられ、よって、本件商標および引用商標は「サップ」の称呼を共通にする称呼上相紛らわしい類似の商標であると結論づけている。

しかるに、引用商標は、欧文字「S」、「U」、「P」を横書きに書してなる商標であり、かかる引用商標からは、「エスユーピー」又は「サップ」の称呼、観念が生じ得ると理解される。

これに対し、本件商標は、欧文字の「SAP」と図形からなり、文字のみで構成される引用商標とは、外観において明らかに異なるものである。

また、本件商標は、欧文字の「SAP」の部分は被請求人の社名である「SAP Aktiengesellschaft Systeme,Anwendungen,Produkte ln Der Datenverarbeitung」の略語を表すものであり、コーポレートマークとしても使用されることから、被請求人あるいはその日本法人である「エスエイピー・ジャパン株式会社」を観念するものであり、これに反して造語であり何らの観念も生ずることのない引用商標とでは、明らかに観念が異なるものである。

さらに、本件商標の「SAP」の文字部分からは「エスエイピー」の称呼が生じ、決して「サップ」なる称呼でもって取り扱われるものではない。

この点、被請求人の日本法人である「エスエイピー・ジャパン株式会社」の全部事項証明書及び現在事項証明書を乙第1号証として提出する。乙第1号証が示すように、商号の欄に「エスエイピー(・ジャパン株式会社)」と明記されており、被請求人社名の一部である「SAP」の部分を「サップ」なる称呼で取り扱うことはない。

また、本件商標が「サップ」ではなく、「エスエイピー」で取り扱われていることの証左として、乙第2号証ないし同第7号証を提出する。いずれも「SAP」の文字を「サップ」ではなく、「エスエイピー」と称呼する旨記載されている。

また、「SAP」の文字を「エスエーピー」と称呼するとの内容が、「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス」誌別冊(1999年9月号)にも記載されている(乙第8号証)。本件商標は、決して「サップ」なる称呼でもって取り引きされているのではなく、「エスエイピー」の称呼でもって取り引きされる商標である。とすれば、両者の称呼「エスエイピー」と「エスユーピー」とでは、発音上のアクセントおよび聴感が著しく異なることから、その称呼を比較した場合には、両者は非類似の商標である。

したがって、本件商標は、外観、観念及び称呼のいずれについても引用商標と非類似であり、本件商標をその指定商品について使用しても、引用商標に係る商品との関係で需要者、取引者が誤認混同を生ずるとは考えられない。

(2)請求人である「富士通株式会社」と被請求人の日本法人である「エスエイピー・ジャパン株式会社」とは、「ソフトウェア作成請負契約」に関して契約書を実際に交わしており、請求人は本件商標の「SAP」部分が「エスエイピー」と称呼することを十分認識しているところである。

また、本件商標は、指定商品について周知、著名の商標であり、本件商標からは「サップ」の称呼は発生せず、「エスエイピー」の称呼でもって取り引きされていることを証明すべく、複数の団体からの証明書を乙第9号証ないし同第12号証として提出する。

さらに、例えば東京高等裁判所平成7年3月15日判決は、「これらの事実によれば、原告を含むMIKRONグループの製品は、......このようにわが国において既に30年以上の取引の実績がある本願商標の現実の使用状況にかんがみれば、初めて本願商標に接する取引者、需要者も、本願商標が当該業界において『ミクロン』として通用していることは容易に知ることができ、『マイクロン』と読んでは本願商標を示したことにはならないことは直ちに認識することと認められる。」と判示している。

本件商標についても、同様に、被請求人あるいは、その日本法人である「エスエイピー・ジャパン株式会社」の製品を表示する商標として、「エスエイピー」との称呼でもって、わが国の取引者、需要者に認識されており、さらに、上記した本件商標の現実の使用状況によると、初めて、本件商標に接する取引者、需要者も、本件商標が当該業界において「エスエイピー」として通用していることは容易に知り得ることができる。

(3)なお、請求人は、甲第3号証にて請求人の出願に係る商願平11−53185号「EーSUP」に対して本件商標を引用した拒絶理由通知を発していることからすれば、本件商標は当然引用商標とは類似のものとされるべき旨主張するが、上記より明らかなように、本件商標の著名性からして、「E−SUP」との商標を見たものは、「SAP」商標に係る商品と誤認混同する可能性があるといえるものであり、本件商標の登録と特許庁における「E−SUP」についての認定とは矛盾しない。

(4)むすび

以上のように、本件商標は「エスエイピー」の称呼で指定商品について取り扱われるものであり、引用商標とは全く異なる称呼、観念及び外観を有する非類似の商標である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の適用要件のうち、明らかに「商標の同一性又は類似性」の要件を欠くものであり、同法第46条の規定に該当しないから、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

5 当審の判断

本件商標は、別掲に示すとおり、白抜きの「SAP」の文字と図形の結合よりなるところ、該文字部分と該図形部分とを常に一体のものとしてのみ、把握、理解しなければならないとする格別の理由は見いだすことができない。

したがって、本件商標は、構成中「SAP」の文字部分のみにおいても独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

ところで、被請求人は、1972年創立のドイツのソフトウェア会社であり、現在では、世界の50カ国以上に子会社と関連会社を有する世界的なグループ企業に成長していることが認められる(乙第2号証、同第30号証及び同第31号証)。

また、平成4年(1992年)10月16日に、被請求人の日本法人が、設立されているところ、同法人の商号が「エスエイピー・ジャパン株式会社」であることから、該日本法人は、請求人の商号の要部である[SAP」を「エスエイピー」と称呼していることがうかがわれる(乙第1号証)。

さらに、我が国の情報技術関連企業を代表する団体が、被請求人の製品(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクほか、電子応用機械器具及びその部品)に使用された本件商標について、取引業界では、本件商標は、「サップ」の称呼ではなく「エスエイピー」の称呼を生ずるものとして認識されている旨、証明している(乙第9号証ないし同第12号証)。

また、請求人の製品を総称するドメインネーム「mySAP.com」は、(マイ・エスエーピー・ドット・コム)として紹介されている(乙第8号証、36頁)。

以上の取引の実情を総合的に勘案すれば、本件商標は、取引者、需要者において、「エスエイピー」の称呼のみをもって、通用し、認識されているとするのが相当である。

してみれば、本件商標は、その構成に係る「SAP」の欧文字に相応して「エスエイピー」の称呼のみを生ずる造語を表してなるものというべきである。

これに対して、引用商標は、前記したとおり「SUP」の欧文字よりなるから、その構成文字に相応して「エスユーピー」又は「サップ」の称呼を生ずる造語を表してなるものと認められる。

そこで、本件商標より生ずる「エスエイピー」の称呼と引用商標より生ずる「エスユーピー」又は「サップ」の称呼とを比較すると、両称呼は、音構成及び構成音数において顕著な差異を有するものであるから、称呼上、相紛れるおそれのないものといわなければならない。

また、本件商標と引用商標は、それぞれ前記のとおりの構成よりなるから、外観においては、十分に区別し得る差異を有するものであり、観念においては、比較することができない。

してみると、本件商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念のいずれからみても非類似の商標であるといわざるを得ない。

なお、請求人は、甲第3号証を提出して自己の出願に係る商標(商願平11−53185号)に対して本件商標を引用した拒絶理由通知を受けたものであるから、本件商標も引用商標と類似のものとされるべきである旨主張しているが、請求人の出願に係る上記商標は、本件商標を引用した拒絶理由通知が発せられたものであって、未だ査定がなされていない案件であり、加えて、本件商標については、前記の認定を妥当とするところであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでないから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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