結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35734号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4264881号商標(以下「本件商標」という。」)は、別掲に表示したとおりの構成よりなる「たっしゃか」の文字を横書きしてなり、平成10年1月9日に登録出願、第31類「あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,うるしの実,コプラ,麦芽,ホップ,末加工のコルク,やしの葉,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。),蚕種,種繭,種卵,飼料,釣り用餌,果実,チンゲンサイ,まいたけ,アスパラガス,その他の野菜(「茶の葉」を除く。),茶の葉、糖料作物,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽,生花の花輪,飼料用たんぱく」を指定商品として、同11年4月23日に設定登録されたものである。
請求人(請求人らは横田信光外17名であるが、単に「請求人」という。)は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番も含む。)を提出するとともに、証人尋問の申請をした。
(1)請求の利益について
請求人は、商品「メロン、いちご、トマト、ピーマン、人参、舞茸、じやがいも等の果物及び野菜の農産物」について、標章「たっしゃか」を使用していたところ、平成11年6月上旬頃、被請求人から本件商標を使用する者は、農産物1箱当り10円の商標使用料を支払えと請求された〔甲第1号証ないし甲第4号証(上申書)〕ので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に該当するものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
ア 商標法4条1項第7号の該当性について
(ア)「たっしゃか」は、茨城県鹿島郡近辺では、「元気か?」という意味で日常の挨拶として使われていた。そして、同郡大洋村では、当時の村長の石津政雄氏(以下「石津村長」という。)の発案で「たっしゃか踊り」という夏祭が平成元年より行なわれており、同祭りのポスターは、同村に居住している著名な漫画家である桑田二郎氏(代表作「エイトマン」、以下「桑田氏」という。)が作成していた。平成元年から4年のポスターには、本件商標と殆ど同じ字体で「たっしゃか」と大きく描かれている〔甲第5号証の1ないし4(ポスター)〕。
(イ)平成5年に、同村では有機農法を研究していた農家を中心に、農協を通さずに農産物を直販する運動が始まり、そのために、独自の標章を用いた包装が必要となり、石津村長の助言に基づき、6名のいちご生産農家は、「たっしゃか」を用いることを決定した。この6名のうち、5名は請求人であり〔飯島正一、飯島郁彦、片岡美好、菅谷藤衛、和泉満(請求人は4名としているが甲第1号証によれば菅谷藤衛の記載漏れと認められる。)〕、残る1名は被請求人である。そして、いちごの段ボール箱に印刷する標章「たっしゃか」のロゴのデザインを、石津村長と前記6名で桑田氏に依頼したところ、同氏は承諾し、デザインを引き受けた。〔ところで、桑田氏が引き受けたデザインは、たいよう・たっしゃか・いちご(外にメロン、トマト、ピーマン等の農産物の名称)の各文字、メロンの蔓等の他の絵柄を組み合わせた図柄の標章(甲第6号証の1ないし23)である。以下、これら「たっしゃか」の文字を含む標章を「たっしゃか標章」または「たっしゃかブランド」などともいう。〕
(ウ)「たっしゃか標章」を使用した農作物の販売としては、平成5年にいちごが、同6年にメロンが、それぞれ始まり、同年5月には「たっしゃか標章」の下にメロンを東京築地の青果市場に出荷するようになった。メロン用の箱についても、桑田氏にデザイン画を描いてもらった。同9年にはじやがいも、ピーマン、トマトについても「たっしゃか標章」を用いて出荷するようになり、その他、人参、舞茸についても使用されている〔甲第6号証の1ないし23(段ボール箱、シール写真)〕。
(エ)平成9年になると、「たっしゃか標章」の下に販売される農産物は市場で好評を博し、高値で取引されるようになり、該標章の下に農産物の生産販売を行ってきた農家を構成員とした組合を結成すべく、同年6月に「たっしゃか組合設立準備委員会」が発足した。同年9月に「たっしゃかブランド」の農産物の共同出荷場の建設工事を始め、同年12月には、その竣工式と組合設立総会を開催し、役員の選出を行った。その結果、組合長に、横田信光、副組合長に飯島正一、深作秀喜、会計に横田俊一、和泉満が選任された。
このとき、たっしゃか組合では、「たっしゃか標章」を使用した段ボール箱等の包装物の発注は、組合を通すか、組合の承諾に基づいて行うことを決定し、その使用を組合の管理下に置き、独自の規制を設けて、該商標に対して形成された高品質である旨の信用を維持するように努めることとした〔甲第1号証ないし甲第4号証(上申書)〕。
(オ)平成5年から現在までに、「たっしゃか標章」の下に販売された農産物の数量は、判明しているだけで、以下のとおりである。
いちご...約47,000箱 メロン...平成9年28,208箱、同10年44,654箱、同11年38、501箱(7月まで) トマト...平成10年2,918箱 じゃがい...平成10年590箱 人参...平成10年1,174箱
以上は、いずれも東京築地及び日立青果市場に出荷されたものであり、この他に組合員各自が消費者や小売店に直販しており、実数はこれを上回る。
(カ)しかして、被請求人は、たっしゃか組合の副組合長として、前記出荷場建物建築費用の借入に際して連帯保証人となるなど〔甲第14号証(金銭消費貸借用証)〕、たっしゃか組合の中心人物としてその運営に深く関わり、「たっしゃか標章」の信用を維持していく立場にありながら、組合員中に商標制度に関する知識を有している者がいなかったことを奇貨として、他の組合員に秘して、本件商標をはじめとして、他の類にも「たっしゃか」をその独特のロゴを用いて出願していた。
そして、本件商標が平成11年4月に登録されると、同年6月に突如としてたっしゃか組合を脱退することを宣言し、組合員に対して、本件商標権に基づき使用料を請求するに至ったものである〔甲第1号証ないし同第4号証及び同第8号証(上申書)〕。かかる被請求人の行為は、先行する自己の行為に明らかに矛盾し、その行為を信頼して被請求人とともに、「たっしゃか標章」を使用し農産物を生産販売してきた他の農家の人々の利益を著しく害し、権利の濫用(民法1条3項)として法的に許されないものである。
また、もともと村興しとして始まった大洋村のたっしゃか踊りのポスターのロゴを、請求人が、その作者の同意を得て同村の農産物の商標として平成5年より使用し、年を経るごとに参加する農家数も増加して村の経済の活性化にも大いに寄与してきたところ、被請求人の行為は、たっしゃか組合が平成9年に組織を整えて一層の販売の拡大が見込まれる時期に、たっしゃか組合が使用してきた「たっしゃか標章」をその独特のロゴそのものを用いて出願して、「たっしゃか標章」の独占、ひいては、高品質との好評を博している大洋村のたっしゃかブランドの農産物の独占を図るものであり、大洋村の経済に影響を与えかねない点で、公序良俗に反するものであり、本件商標は、無効とされるべきものである(民法90条)。
以上のとおり、本件商標は、請求人が使用していた標章を剽窃して出願したもので、かかる行為は社会の一般道徳観念に反し、かつ公序良俗に反するものであるから、商標法4条第1項第7号に該当する。
イ 商標法4条第1項第10号または第15号の該当性について
「たっしゃか標章」の下に販売された農産物の出荷は、前記のとおり平成5年以降多大な数量に及び、その出荷金額も莫大な金額となっている。
よって、現在のたっしゃか組合の設立に向けて準備が始まった平成9年の初めには、「たっしゃか標章」は、請求人の商品を示すものとして市場で知られていたものであって、地元である大洋村は勿論のこと、築地の市場や、直販先の百貨店でも広く知られていたものである。なお、たっしゃか組合が発足した平成9年12月以降の東京築地青果及び日立青果への売上げだけをあげても約2億2000万円以上ある〔甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第8号証(上申書)、甲第9号証(運送料請求書)、甲第10号証(運送料帳簿)、甲第11号証(預金通帳)〕。
被請求人は、かつてはたっしゃか組合の副組合長の地位にあり、自身も農家であることから、被請求人が本件商標をたっしゃか組合と無関係に使用すれば、被請求人は、たっしゃか組合による、たっしゃかブランドの下に農産物を販売するための品質に関する規制を免れることができる。その結果、取引者、需要者は、被請求人の商品を、高品質を博している請求人の商品と出所を混同するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。
(1)商標法第4条第1項第7号に基づく主張について
ア 被請求人は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」の意義について、出願され登録された商標の構成自体が公序良俗に反する商標か否かにより判断されるべきものであり、民法第90条の規定と同一次元で論じることは不可能である旨主張している。
しかしながら、同号の「公序良俗」の判断については、旧商標法第2条第1項第4号に関し、「(同号)の規定は、商標自体が矯激な文字や卑狼な図形等秩序又は風俗をみだすおそれのある文字、図形、記号又はその結合から構成されている場合及び商標自体はそのようなものではなくても、これを指定商品に商標として使用することが、社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳的観念に反するような場合に、その登録を拒否すべきことを定めるものと解するを相当とする。」(東京高裁判決 昭和27年10月10日行集3・10・2023)とされている。
また、現行法に関しても、ある公共団体において町興しのための施策として「母衣旗まつり」を催し、「母衣旗」に出展した業者等でその商品に「母衣旗」の商標を付したものがあり、被告が「母衣旗」から構成される商標を出願し、その設定登録後、「母衣旗」の商標を使用する業者に対し、使用中止と損害賠償を請求した事案において、「被告による本件商標の取得は、...原告による町の経済の振興を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、指定商品が限定されるとはいえ、該施策の中心に位置付けられている『母衣旗』の名称による利益の独占を図る意図でしたものといわざるを得ず、本件商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものというべきである。」(東京高裁判決 平成11年11月29日判時1710・141)とされている。
さらに、被請求人自身が引用する特許庁の審査基準においても、「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、その構成自体がきょう激、卑狼な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする。」と規定されている。
以上のとおり、商標法第4条第1項第7号の「公序良俗」の判断が、商標を構成する文字図形それ自体について公序良俗違反のおそれを判断するに止まるものではないことは、現在では異論のないところであって、これに反する被請求人の主張は、同号の趣旨、判例実務及び特許庁の審査基準に反するものであって、到底容認される余地のないものである。
イ そもそも「たっしゃか標章」を使用し始めた経緯は、既に提出した「上申書・ポスター」(甲第1号証ないし甲第5号証)により明らかであるが、さらに被請求人が提出した「茨城新聞平成5年6月7日版」、「日本農業新聞平成6年2月2日版」、「東京新聞平成6年3月7日版」、「読売新聞平成9年6月18日版」(以上、乙第5号証)、「家の光平成5年10月号」(乙第9号証)の関連する記載を引用する。そして、被請求人の答弁書における主張事実が真実に反することが、大洋村石津村長上申書(甲第19号証)において明白にされている。
以上から明らかなとおり、本件商標は、被請求人の商品を示すものとしてではなく、請求人や被請求人を含む組合の構成員が生産販売する農作物の統一ブランドとして、村興しの一環として大洋村の石津村長の尽力により創作され、同組合員が使用することを許された標章なのである。
ウ 被請求人は、「たっしゃか標章」を広く知らしめたのは、被請求人の努力であるとして、平成5年から同12年にかけて、被請求人が行った宣伝広告等の証拠を提出している。
しかしながら、問題となるのは、大洋村の組合員が使用するための「たっしゃか標章」を、被請求人が、あたかも自分だけの商標であるかのごとく使用してきた事実であって、かかる使用態様自体が権利の濫用なのであるから、それにいくら費用をかけようと、正当化される余地がないことは明白である。
被請求人による本件商標の濫用を如実に示しているのが、乙第11号証である。ここには、被請求人の生産物を販売する店舗の写真が示されており、その看板には、右上に「たいよう」と大洋村を示す表示がなされ、左から中央にかけて「たっしゃか」のロゴが描かれている。この表示に接した観光客等の需要者は、該店舗が、被請求人個人のものではなく、あたかも大洋村の公的な施設か、あるいは大洋村と資本関係がある施設であるかのごとき印象を受けるものである。かかる被請求人の行為は、元来、石津氏が村おこしのために制作を依頼し、組合員が使用してきた「たっしゃか」のロゴを、それを用いた農産物の売れ行きが好調になってきたことを見計らって、独り占めしようとする商標制度の濫用と相俟って、その反社会的、反道徳的な姿勢を如実に示すものである。
エ 被請求人は、本件商標権をたっしゃか組合の組合員に対して行使した事実を認めている。被請求人は、本件商標権のみならず、従前からたっしゃか組合の構成員が使用していたいちご及びメロンの箱に描かれた図案を、その後に商標登録出願し、それらが登録されるや警告書(甲第17、18号証)を送付してきた。被請求人は、本件商標に限らず、たっしゃか組合の組合員が商標登録制度に関する知識を全く有していなかったことを奇貨として、従来からたっしゃか組合の組合員が使用していたロゴ、図案等を次々と商標登録出願し、その独占を図ろうとしているものであって、本件商標の登録も、かかる商標登録制度濫用行為の一環としてなされたものである。
以上の次第であるから、被請求人の行為が権利の濫用を構成し、公序良俗に違反するものであることは明らかである。
(2)「たっしゃか」入りの絵柄、図案等の著作権譲渡の領収書及び念書について
被請求人は、桑田氏の作成にかかる「たっしゃか」入りの絵柄、図案等の著作権について、被請求人が桑田氏に対価を支払って譲り受けたことを証明するものとして、各領収書(乙第12号証)及び念書(乙第13号証)を提出している。
そもそも、これらの書証が、桑田氏によって作成されたものかは明らかでないが、該書証が同人によって作成されたものであったとしても、被請求人の主張を裏付けるものではない。
すなわち、これらの領収書は、被請求人が生産販売する農産物用の箱や宣伝用のちらしのデザインに関するものであって、専ら被請求人のみが使用するものであるから、そのデザインについて、被請求人が桑田氏に使用料を支払うのは当然であって、これらの支払いの事実をもって、「たっしゃか標章」が、被請求人に専属することを何ら正当化するものではない。
そして、これらの領収書のうち、最も日付の古いものは、平成7年11月18日付のものであるが、その内容は、「たっしゃか・メロン・イチゴ・トマト・ミツバ・人参箱デザイン料」と記載されており、いずれも被請求人が自己の商品に使用するものである。その他の領収書も、その内容は、被請求人が自己の商品に用いる箱、パンフレット、看板等のデザインであるから、これらについて被請求人が費用を負担するのは当然である。
領収書中で、個々の製品と関係のないものとして、平成10年9月13日付金2万円の「たっしゃか文字デザイン」があるが、請求人が「たっしゃか標章」の使用を開始したのが平成5年であること、石津村長が「たっしゃか踊り」のポスター製作を桑田氏に依頼し、「たっしゃか」のロゴを含むポスターが製作されたのが平成1年であること、金額が2万円という低額であることに照らせば、該領収書が、「たっしゃか」のロゴを当初に作成したときのものでないことは明らかであり、平成10年9月13日頃に、被請求人が自己の商品用に桑田氏に「たっしゃか」のロゴを新たに描いてもらったことの謝礼として支払ったものであると考えられる。
また念書には、譲渡の対象となる権利について、「製作を依頼しました私儀深作秀喜に領収書に記載されている日付で譲渡したことに相違ありません。」と記載されており、この念書では、あくまでも、「領収書」(乙第12号証の各領収書を意味すると推認されるが、その点は念書自体からは明確ではない。)の対象について、桑田氏に著作権が生ずるものについて、その著作権を譲渡することを定めたものである。したがって、「領収書」の対象でないものについては、そもそも念書は、何も規定していない。また、念書は被請求人である深作秀喜が、桑田氏に対して製作を依頼したものについて、著作権を譲渡する旨規定しているのであるから、被請求人が制作を依頼していないものについても、そもそも念書の対象ではない。「たっしゃか」のロゴについては、その制作を桑田氏に依頼したのは、大洋村の石津村長であり、また、当初、このロゴを作成した際の謝礼については、領収書は発行されていないことから、「たっしゃか標章」のロゴデザインについて、念書は、何も規定していないと解される。
以上のとおり、被請求人の主張は、本来的に村興しのために石津村長によって発案された「たっしゃか踊り」のロゴのデザインを、同村長が桑田氏に依頼し、作成された「たっしゃか踊り」のロゴ中の「たっしゃか」の部分を組合員が農作物に使用できる権利と、その後に「たっしゃか」のロゴを組み込みながら種々の絵柄を付加して製作した、各組合員が使用する個々の化粧箱用のデザインの著作権とを混同したものであって、法的には全く無意味なものである。
(3)商標法第4条第1項第10号及び15号に基づく主張について
被請求人は、たっしゃか組合の預金通帳に「たっしゃか組合」、「タッシャカメロンクミアイ」等の記載はあるが「たっしゃか」との記載は一切ない旨主張するが、預金通帳に、取り扱った商品の標章が記載されていないのは当然であり、「たっしゃか組合」の取引であれば、「たっしゃか標章」を用いた商品を扱ったものと合理的に推認されるのであり、請求人としては、この点は、証人尋問によって一層明らかにする所存である。
各取引書類(甲第12号証)についても同様である。良識をもって取引活動を行っている者であれば、通常、被請求人のように商標制度を濫用するような行為にでることはないのであり、殊に、商標制度自体に対し全く疎い者たちで構成されている請求人側では、「たっしゃか標章」の使用の事実についての客観的証拠を保存しておく必要性があったなどということは、夢想だにしなかったことである。
被請求人は、「本件審判請求は、成り立たない、審判の費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第84号証を提出した。
請求人が、本件商標について商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に該当するという無効理由は、以下の理由により認めることはできないから、本件商標は、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。
(1)本号の規定は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は商標登録をうけることができない。」との規定であり、「商標審査基準(特許庁商標課編)」(乙第2号証)は、以下のように解説している。
すなわち、「...その構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする。また、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当する」としている。
このように、商標法第4条第1項第7号に該当する商標は、出願され登録された商標の「構成自体」が公序良俗に反する商標か否かにより判断されるべきものである。したがって、請求人が主張するような「大洋村の経済に影響を与えかねない」との理由が商標法第4条第1項第7号に該当することはできない。
請求人が主張する民法第90条の規定は、「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トスル」との規定である。そして、この規定に該当し公序良俗違反とされ無効とされる法律行為としては、妾契約、売春契約、かけ麻雀・かけ将棋、他人の困窮に乗じて暴利を得る目的で締結された契約、住職の地位の売買契約等がある。
よって、民法第90条の規定と商標法第4条第1項第7号の規定とを同一次元で論ずることが不可能なのである。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することを裏付ける証拠方法として、甲第14号証及び同第15号証が考えられるとしている。
すなわち、「金銭消費貸借証書中に連帯保証人として、被請求人の自署及び押印が存在すること」と「商標法第4条第1項第7号の規定に該当して拒絶される商標」と如何なる関係が存在するものであるか、請求人の主張には到底納得できるものではない。また同証拠中には、組合名を「たっしゃか組合」とすることは「たっしゃか組合規約(案)」には明記されているが、品名(標章)を「たっしゃか」とする旨が全く存在しない。
(2)請求人は、商標法第4条第1項第7号の解釈に関し、商標審査基準、東京高裁判決を引用し、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であると主張しているが、被請求人の上記主張は、以下の理由により正当である。
「大洋村」と「たっしゃか組合」との関係については、大洋村が「たっしゃか標章」をメロン、いちご、トマト、人参等の農産物に使用することを奨励し、積極的に援助した事実は存在しない。すなわち、「大洋村」と「たっしゃか組合」との会合、また、大洋村が発した文書、たっしゃか組合が承諾した書面等を被請求人は全く見たことがなく、甲各号証にも存在しない。
請求人が提出した大洋村の宣広告用のチラシ「茨城県健康発信基地大洋村たっしゃかメロン」(甲第13号証)を作成したのは生産組合「たっしゃか畑」であり、大洋村自体が、作成したものとは考えられない。また、「たっしゃか組合 総会資料(平成11年3月)」(甲第15号証)における「たっしゃか組合員名簿(平成11年版)」中の組合員には、例えば、日向寺武光氏及び大槻勝利氏はいずれも茨城県鹿嶋市に在住しており、大洋村に在住のたっしゃか組合員ではない。さらに、大洋村が茨城県鹿島郡大洋村幡木1342−3に建設した農産物直売店施設である「さんて旬菜館」の施設案内チラシ(乙第21号証)、同館内に置かれている、アスパラ、メロン等の農産物販売用容器(乙第22号証ないし乙第24号証)及び大洋村が発行している「おらがたいよう村」の書籍(乙第25号証)の表紙には、「たっしゃか標章」が一切表示されていない。
(3)「たっしゃか組合員」から「使用料」を支払って欲しいとの被請求人の行為が「権利の濫用」(民法1条3号)に該当するとした請求人の主張は、以下の理由により否定する。
ここで、権利の濫用とは、外観上は権利の行使のように見えても、実質的には公共の福祉に反して権利行使とはいえない場合であり、このような権利の行使に対しては、これを認容しないとするものである。
ところで、被請求人は、請求人の何人かに対し、口頭で「使用料を支払って頂きたい」と申し上げたことはあるかも知れない。このような言動は、商標権を所有する者の当然の権利であり、商標法もこのことは容認している。
しかしながら、被請求人は「商標権の使用料」を請求人から頂いたことは全くないとともに、使用料の支払いに対して訴えを提起した事実もない。また警告書(甲第17号証)は、桑田氏に作成して頂いき、同氏から著作権を譲り受けた図柄について、請求人が無断で使用していることに対する著作権法上認められた警告であり、何ら権利の濫用に当たるものではない。
(4)以下に、本件商標に関して被請求人としてその他の主張を記述する。
ア 「たっしゃか組合」を脱退した理由
被請求人は、「たっしゃかメロン」を「たっしゃか組合」を通し「三徳スーパー」に販売しようとして「たっしゃか組合」の集荷場に出荷したところ、横田組合長及びその他の組合員から「三徳スーパーに出荷するメロンは、たっしゃか組合の集荷場には持ってくるな」と強く言われた。しかしながら、被請求人にとってはメロンを市場を経由するものは「三徳スーパー」だけであったために、やむを得ず「たっしゃか組合」を脱退しなければならなかった。
被請求人にとって、「三徳スーパー」への出荷を停止することは、経済的に極めて大きな打撃となるために困難であったのである。
イ 商品名である「たっしゃか」を広く知らしめたのは、以下(ア)ないし(サ)に示すように被請求人の努力によるものである。
(ア)1993年から2000年にかけて、茨城新聞、日本農業新聞、東京新聞、毎日新聞等に掲載し、「たっしゃか」の宣伝広告をしている(乙第5号証)。
(イ)平成5年以降には、「たっしゃかメロン」の広告用チラシを配布している。因みに、この広告用チラシは、平成5年及び同6年に約2万枚、同8年に2万枚、同10年には4万枚を印刷作成して配布した(乙第6号証)。
(ウ)葉書も印刷作成して、毎年、時期をみて全国のお客に郵送している(乙第7号証)。
(エ)案内書面(農園)を印刷し、全国のお客に郵送している(乙第8号証)。
(オ)雑誌である「家の光」、「Joyo ARC」等に、メロン、いちごを化学肥料を使用せずに土壌菌による有機栽培により栽培した努力が書かれている(乙第9、10号証)。
(カ)被請求人は、メロン、いちご、米等の農産物に使用する商標である「たっしゃか」の知名度を高めるために、看板、電柱広告、道案内標識等に「たっしゃか」を書くことにより広告をしているのである(乙第11号証)。
(キ)被請求人が、「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」、「たっしゃかじゃがいも」、「たっしゃかサツマイモ」、「たっしゃか印」等の出荷個数は以下の通り、膨大な個数である。
・「たっしゃかメロン」の出荷個数...平成6年約5,000箱、同7年約5,000箱、同8年約5,000箱、同9年15,000箱、同10年18,000箱、同11年20,995箱、同12年24,000箱
・「たっしゃかいちご」の出荷個数...平成5年3,000箱、同6年4,500箱、同7年5,000箱、同8年14,000箱、平成9年13,100箱、同10年13,000箱、同11年16,920箱
・「たっしゃかじゃがいも」の出荷個数...平成12年までに2,560箱
・「たっしゃかサツマイモ」の出荷個数...平成12年までに958箱
・その他「たっしゃか印」を付した商品...平成12年までに6,025箱
(ク)被請求人は、本件商標を付した農産物をヤマト運輸株式会社の鉾田営業所に依頼し、茨城県内は勿論県外の全国のお客に発送している。現在では、年間約1万件で約530万円の運賃を支払いしており、運送賃の請求書は乙第26号証ないし同第31号証のとおりである。乙第32号証は、ヤマト運輸株式会社の鉾田営業所の田口所長が平成12年7月から同13年6月までの「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」等の出荷個数を記載した書面であり、平成12年7月から同13年6月まで9964箱出荷した。
(ケ)被請求人が販売するメロン、いちご、トマト、人参等の農産物が、知られるようになり、被請求人に注文が殺到しているは、以下の理由による。
・EM自然農法という微生物農法を採用したこと(現実に、大洋村でEM菌 を有効に活用してメロン、いちご、トマト等を栽培している人は請求人の誰一人としていない。)、
・桑田氏に作成して頂いたデザインである「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」等のおもしろさがあったこと、
・生産した「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」等の商品の味がよく、消費者に受け入れられたこと、
・直売店によるお客様サービスが良かったこと、
・茨城は勿論のこと全国へのPR方法が極めて迅速に緻密にしたこと、
・請求人は、「たっしゃかメロン」の「プレゼントコーナー」を設けて、全国の消費者に、所定の問題に正解された10名の 顧客に「たっしゃかメロン」を無料で差し上げることを実施している。この「プレゼントコーナー」に全国から4000通もの葉書による応募があった(乙第33号証)、
・被請求人は、たっしゃかメロン、たっしゃかいちご、たっしゃかトマト、たっしゃかいちご等の農産物の直売店を有していること(同店には毎日多数のお客が茨城県内は勿論関東全域から来店されて購入していく)、
・「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」、「たっしゃかたまご」、「たっしゃかトマト」、「たっしゃかさつまいも」等には、各農産物を印象付ける容器を使用して販売及び発送をしていること(乙第34号証)、
(コ)被請求人は、平成12年4月5日から同13年4月20日までには、「たっしゃかメロン」、「たっしゃかいちご」、「たっしゃかさつまいも」、「たっしゃか干しいも」等の宣伝広告のために、少なくとも約112万円強を使用していること(乙第20号証)、
(サ)被請求人は、「たっしゃか」ブランドを大事に考え、育ててきたことのを証明するために、多額の費用を使用している証拠を乙第35号証ないし乙第84号証として提出する。(詳細な内容の記述は省略した。)
このように、被請求人は、本件商標を使用して、北は北海道から南は沖縄に至るまで、全国に、メロン、いちご、トマト人参等の農産物を販売している。
被請求人は、「たっしゃかメロン」の販売、普及になみならぬ努力をし、全国の消費者を引きつけ、登録商標を有名にするために費用をかけている。したがって、被請求人が受注したメロン、トマト、人参等の農産物を全国の地域において、本心から顧客の引き留め及び普及、また、商標に関して紛争が生じることがないように、消費者及び請求人のために十分に配慮しなければならなかったため、本件商標の登録を是が非でも必要としたものである。
すなわち、本件商標を付した農産物を入れた包装容器3万ケース〜4万ケースを1年間で宅配しているとともに、各領収書から解るように被請求人は、一年間の間に5,329,082円もの金額を費やし、たっしゃか農産物のPR活動を行っている。また、広告等の掲載料を合わせると、被請求人は、1年半程度の間に8,349,882円もの費用を費やしているのであるから、万が一にも本件商標が、他社、他人等に登録されてしまったならば、今までの努力は水泡に帰すこととなり、他社等の商標権を侵害することになり、民事的責任及び刑事的責任を負わなければならず、本件商標を何としても登録する必要性があることを認識し、本件商標を商標登録出願をしたものである。
被請求人は、「たっしゃかのロゴを含む図柄」を桑田氏に依頼し、対価を支払い、多額の広告費を使って「たっしゃか」ブランドを有名にしてきたのは、被請求人の努力によるところが極めて大きいものであると自負している。請求人の中には誰一人として、被請求人を超える努力をされて「たっしゃか」ブランドを有名にしようとしている請求人はおられないものと思うのである。「たっしゃか」ブランドの農作物が有名になりつつあるのは、被請求人が毎年多額の費用をかけてPR活動を進めているからであるのは、証拠方法により明白である。これに対し、請求人がたっしゃか農産物を広めるために努力しているとの証拠は、全く提出されていない。
ウ ところで、請求人の出荷先は築地市場が殆どであり、全国に発送しているとは認められない。そのために、商標の必要性については認識されていたが、商標登録をする必要もないと安易に考えていたようにも推察される。
この点について、請求人は、「被請求人は、本件商標に限らず、たっしゃか組合の構成員が商標登録制度に関する知識を全く有していなかったことを奇貨として」とか、「殊に、商標制度自体に対し全く疎い者たちで構成されている請求人側では」とか主張して、恰も、被請求人が悪意で本件商標を登録したものであるかのよう言われるが、被請求人は、上記のように必要性があった故に本件商標を出願し登録を受けたものである。
請求人の前記主張は、法治国家では到底認められない。被請求人の商標に関する知識は、請求人の知識と同程度であったが、被請求人はメロン、いちご、トマト、人参等の農産物の名称を採択決定するために商標を知ろうと商標に関する情報を得るために努力をしたのである。
エ 請求人は、「“たっしゃか”は、被請求人の商品を示すものとしてではなく、請求人や被請求人を含む組合の構成員が生産販売する農作物の統一ブランドとして使用してきたものであって、村興しの一環として大洋村の石津村長の尽力により創作され、同組合員が使用することを許された標章なのである。」と主張している。
しかしながら、石津村長が「たっしゃか」についての商標権者でもないのであるから、商標法上は同村長が「たっしゃか組合」の組合員に商標の使用を許諾することはあり得ない。
オ (ア)被請求人は、桑田氏に描いて頂いた文字、絵柄等の著作権を譲り受けている。被請求人は、桑田氏が作成された「たっしゃか」入りの絵柄、図案等の著作権を、包装容器のデザイン料として総額467万円もの大金を支払い、その対価として著作権を譲り受けたものであり、譲り受けたものであることを証明する領収書(乙第12号証)及び譲渡した旨の念書(乙第13号証)も存在する。そして、いかなる絵図をいかなる対価を支払って、著作権を譲り受けたかを明確にするために証拠(乙第14号証ないし乙第19号証)を提出する。
このように、被請求人が桑田氏から領収書を受け取ることができたのは、請求人の誰一人として作成料を桑田氏に支払う意思がないためである。すなわち、桑田氏が「たっしゃか」に関する絵図の作成料の支払いを承諾したために被請求人に著作物の著作権の譲渡を快諾してくれたものである。
したがって、桑田氏が作成された「たっしゃか」入りの絵柄、図案等の著作権は被請求人が譲り受けたものであるからして、商標登録出願をし、登録をうける権原が存在するものである考えるものである。
しかして、請求人が提出した甲第6号証の1ないし4、7、8、10,11、14ないし16、18、19、21ないし23のロゴは、すべて被請求人が桑田氏に作成を依頼し、作成して頂いたデザインであり、本件商標は、甲第6号証の1「たっしゃか/いちご」のロゴをそのまま商標登録出願して、本件商標として登録されたものである。したがって、「たっしゃか踊り」のロゴ自体を本件商標としたものでない。
本件商標である「たっしゃか」の文字は、「たっしゃか踊り」から抜き出した文字ではなく、桑田氏に作成して頂いたものである。また、「たっしゃか踊り」と「たっしゃか」とは、商標法上は、称呼上、外観上及び観念上、非類似の商標であり、「たっしゃか踊り」中の文字である「たっしゃか」の文字のみを農産物を指定商品とすれば、当然に登録されるべき商標であると考える。
(イ)請求人は、「大洋村石津村長等が、桑田氏を訪ねて“たっしゃかのロゴ”を農産物に使用することの承諾を得た」とあるが、何年の何月何日に桑田氏を訪問し承諾を得たのかが不明であり、信用できない。被請求人は、桑田氏に描いて頂いた文字、絵柄の著作権を譲り受けている。したがって、桑田氏が著作権を譲渡した著作物の著作権に承諾することは、法的にはあり得ない。
また、大洋村石津村長が桑田氏に依頼されたロゴはあくまでも、「たっしゃか踊り」のロゴの依頼であり、本件商標のロゴの依頼ではかった筈である。「たっしゃか」のロゴのみのデザインを桑田氏に大洋村として依頼した事実はない。そして、その証拠は、全く提出されていない。
また、和泉満氏は、平成11年11月25日付の上申書中で、たっしゃかメロン箱のデザイン画(甲第6号証の4ないし13)について絵の具代7万円として桑田氏に支払ったと述べているが、このような事実は全くない。そのための証拠となる領収証が提出されていないとともに、何年の何月何日に支払った日付も明確には記載されていない。桑田氏に確認したところでは、絵の具代として和泉満氏から受け取ったことはないと言っている。
そして、この絵の具代は、領収証(乙第19号証)に示すように被請求人が支払い、領収書に添付の絵柄を譲り受けたものであることは明確である。
(ウ)請求人らが、被請求人の許可なく無断でメロンやいちごの包容容器のデザインの使用を続けている行為は著作権の侵害である。
カ 品名である「たっしゃか」標章を商標登録出願したのは、大洋村以外の者に登録されることを防止するためでもある。被請求人は、桑田氏に大金を支払い譲り受けた図柄等を第3者に商標登録出願され登録されたならば、被請求人は勿論のこと従来から使用し続けているメロン、いちご等の栽培者が「たっしゃか」なる標章を付して販売することができなくなるおそれがあり、このような状態を何としても回避したいと考えたからである。
キ 大洋村の村長が、無効審判の一方の当事者である請求人側の立場を養護されるような証拠(甲第19号証)を提出されることは、被請求人の村民の立場からすれば、いささか疑問を感じざるを得ない。何故ならば、公的立場におられる村長は、中立的立場におられるべきである。
ク 本件と母衣旗事件について
本件と母衣旗事件とは事件内容が異なり、本件に母衣旗判決(甲第16号証)の理由が適用されることは、適切でないから、この点について述べる。
(ア)大洋村は、村興しのための施策として「たっしゃか踊り」と共通した標章を商品に付することを奨励し、また出店した業者は、甲第1号証ないし同第16号証中には見当たらず、このような事実の証拠の提出もない。
(イ)平成元年から平成10年まで開催された「たっしゃか踊り」に参加した人数は、毎年500人〜1000人程度である。因みに、大洋村の総人ロは約1万人であり、該踊りに参加した人は、村民の1割にも満たない。
(ウ)被請求人が、本件商標を商標登録出願したのは平成10年1月9日で、最後の「たっしゃか踊り」が行われた年である。そして、前記商標が登録されたのは、平成11年4月23日であり、登録された時には、大洋村では「たっしゃか踊り」は開催されていないから、「たっしゃか標章」を大洋村の農産物、果実等に使用を奨励したものであるとは言えない。
(エ)本判決では被告は、「母衣旗」を使用する意思もないにも拘わらず、登録し、使用料の支払いを受け金銭のみを得ようとした不正な意思に基づく行為であり、本件事件の請求人が自己の権利を保全しようとしている態度とはかけ離れた行為の判決である。
以上に述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(1)請求人は、「『たっしゃか』は、茨城県鹿島郡近辺では、『元気か?』という意味で日常の挨拶として使われていた。」と主張するが、同近辺では、「おはようございます」、「こんにちわ」、「こんばんわ」と挨拶していることが一般的であり、「たっしゃか」と挨拶することは殆どあり得ないことである。
(2)商標法第4条第1項第10号の適用を受けるためには、第1に、本号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」は、「現実に使用されていた商標自体」であることが必要である。すなわち、保護される商標は、「たっしゃか」そのものなのである。
しかしながら、たっしゃか踊りポスター(甲第5号証の1ないし4)に表示されているものは、全て、「たいようたっしゃか踊り」であり、「たっしゃか標章」の構成態様と極めて異なる構成である。そして、平成5年度ないし同10年度の同ポスター(甲第5号証の5ないし10)中には「たっしゃか」、「たっしゃか踊り」等の文字は全く書かれていない。
また、段ボール箱(甲第6号証の1ないし21)及びシール(甲第6号証の22及び23)中に表示されている商標は、「たっしゃか標章」とは全く異なる構成である。
また、株式会社大貫運送の運送料請求書写しの明細書(甲第9号証)中には、「たっしゃかポテト」以外の農産物には「たっしゃか」なる品名は全く使用されてはいない。同様に、運送料帳簿(甲第10号証の1ないし12)中の品名に「たっしゃか」なる品名が付されたものは全くない。
そして、普通預金通帳(甲第11号証の1ないし17)、たっしゃかメロンパンフレットの請求書・納品書・領収書(甲第12号証の1ないし3)には「たっしゃか」の記載は全く存在しない、及び同パンフレット(甲第13号証)中にも「たっしゃかメロン」の記載があるのみで、請求人が周知商標と主張される「たっしゃか」のみの記載は全く存在しない。
第2に、本号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」には、最終消費者までのみならず、取引者の間に広く認識されている商標を含む。しかしながら、甲第1号証ないし甲第15号証は、最終消費者及び取引者の間に広く認識されている商標との証明としては極めて不十分である。
第3に、本号の規定を適用するために引用される商標は、商標登録出願の時に(第4条第3項参照)、我が国内の需要者の間に広く認識されていなければならない。しかし、甲第1号証ないし甲第15号証は、被請求人が「たっしゃか」を平成10年1月9日に商標登録出願した時には、「需要者の間に広く認識されている商標」であったとすることは到底認められない。また、「たっしゃか標章」が、需要者がメロン、いちご、舞たけ等の商品について、「広く認識されている商標」であるとの証明が全くされていない。
第4に、本号の規定に関し、「需要者の間に広く認識されている商標」の立証方法について、商標審査基準は商標法第3条第2項(使用による識別性)を準用する(乙第3号証)。このように、請求人が提出した証拠方法によっては、「たっしゃか標章」が商標登録出願時において、「需要者の間に広く認識されている商標」であるとは到底認めることはできないものである。
本号の規定により登録が認められない商標とは、需要者の間に広く認識されている商標の中で、特に著名である商標を指称するものである。したがって、請求人が使用する「たっしゃか標章」は、周知商標でもないのであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号の適用を論じる必要性は全くない。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであると主張するので、この点について検討する。
請求人及び被請求人の提出にかかる甲第1号証ないし甲第4号証、甲第5号証の1ないし10、甲第6号証の1ないし23、甲第7、8号証、甲9号証の1ないし31、甲第10号証の1ないし12、甲第11号証の1ないし17、甲第12号証の1ないし4、甲第13号証ないし甲第16号証、甲第19号証、乙第5号証、乙第9号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)「たっしゃか標章」の導入
平成元年、茨城県鹿島郡大洋村では、石津村長の発案により健康づくりと地域融和を図る観点から、「たっしゃか踊り」という村興しの夏祭りが行なわれ、これは平成10年まで続いた。その時の「たっしゃか踊り」のポスター(甲第5号証の1ないし4)は、大洋村に移住している漫画家である桑田氏が作成し、同ポスターには「たっしゃか踊り」文字等が表示されている。
平成4年頃、大洋村の営農者の間でも消費者の健康志向の高まり等により、有機農法が注目されていた。その折、石津村長が琉球大学で土壌活性法としてEM(有効微生物群)菌による有機農法の話を聞き、「村おこし塾」の農業部会に報告した。その後、有志農家らで組織した自然(じねん)農法研究会での研究により、当該農法は、発展してきた。そして、翌平成5年には、有機農法を研究していた営農者を中心に、大洋村農協と鉾田町農協との合併を契機として、有機農法によって栽培されるいちご、メロンの農産物を、JA大洋村を通じた出荷以外に、自家販売用として独自の標章を使用する動きが始まった。
そのような状況のもと、いちご栽培営農者で、飯島正一、飯島郁彦、片岡美好、菅谷藤衛、和泉満及び深作秀喜の6人の構成員(以下「営農構成員」又は「構成員」ともいう。)は、石津村長の助言を得て、農産物の独自の標章として大洋村をイメージした前記「たっしゃか踊り」に因み「たっしゃか」を採用することに決めた。そして、いちごの出荷用段ボール箱に印刷する「たっしゃか」のロゴのデザインは、石津村長の紹介で構成員の6人により桑田氏に依頼し、その際、石津村長は桑田氏に「『ロゴ』の使用について、いちご生産者が、段ボール箱や看板等に使用する」と説明した(甲第19号証)。
しかして、桑田氏が作成したロゴは、いちご用「たっしゃか標章」、すなわち、「たいよう・たっしゃか・いちごの文字、他の絵柄を組み合わせた標章」(甲第6号証の1ないし3)である。
平成5年秋から、飯島正一、飯島郁彦、片岡美好、菅谷藤衛、和泉満及び深作秀喜は、該いちご用「たっしゃか標章」を付したいちご出荷用段ボール箱を協同で業者に注文し、いちごの販売を始めた。
平成5年12月には、菅谷良市、菅谷彰男が、同6年に藤崎秀夫が構成員に加わり、「たっしゃか標章」を使用したいちごの販売構成員は9人となった(乙第5号証)。
平成6年は、営農構成員のもとにメロン出荷用段ボール箱及びシールのデザイン画を、青果仲買業を営んでいた元大洋村村会議員の波見勝久を介して桑田氏に依頼し、いちご用「たっしゃか標章」、すなわち、「たっしゃか・メロンの文字、他の絵柄を組み合わせた標章」(甲第6号証の4ないし13、22及び23)を作成した。そして、同年5月から飯島正一、飯島郁彦、深作秀喜の3人と、それに構成員に加わった小見洋市尾及び小野和夫(小見洋市、小野和夫は請求人ではない)は該標章が印刷されたメロン出荷用段ボール箱を用いてメロンの出荷及び直販を始め、その時の組合名は、「たっしゃかメロン組合」または「生産者組合たっしゃか畑」という名称を使用した。
平成8年は、小沼正一、佐藤恭一、横田信光、横田俊一が構成員に加わり、同年5月から協同して東京築地の青果市場にメロンを、また、いちごを日立市の青果市場に出荷した。
平成9年は、東峰操、菅谷俊雄、風間周が構成員に加わり、トマト、ピーマン・舞たけ用の「たっしゃか標章」、すなわち、「たっしゃか・トマト・ピーマン・舞たけの文字、トマト・ピーマンのキャラクター外、他の絵柄を組み合わせた標章」を付した出荷用段ボール箱及びシール(甲第6号証の14ないし21)を用い、東峰操がじゃがいも、菅谷俊雄がピーマン、風間周がトマトを出荷し、他に、人参、舞茸の出荷をした。
(2)たっしゃか組合の設立から現在まで
平成9年6月には、「たっしゃか標章」を使用して農産物の生産、販売を行なってきた営農構成員は、組合を結成すべく、たっしゃか組合設立準備委員会を発足させ、委員には、深作秀喜、横田信光、横田俊一、飯島正一、和泉満の5名がなった。
同年9月上旬に、農産物出荷場の建設工事を始め、同年12月竣工式と組合設立総会を開催し役員の選出を行い、組合長に横田信光、副組合長に深作秀喜及び飯島正一氏、会計に横田俊一氏及び和泉満が就任した(甲第14、15号証)。
(3)たっしゃか組合の「たっしゃか標章」による農産物の出荷状況は、請求人の主張によれば、平成5年から本件商標の査定時(平成11年3月5日)までのいちご、メロン外の農産物の出荷数量は(ただし、平成11年分の3月までの分は不明であるので、平成10年までとし、出荷年数が不明なものは表示されている数値とした)、概ね合計124,500箱である。
請求人は、「たっしゃか標章」、すなわち、「たっしゃか」の文字のロゴ、いちご・メロン・トマト・舞たけ等の農産物の名称の文字、農産物のキャラクター及びメロンの蔓等の絵柄を組み合わせた図柄の構成よりなる各標章を桑田氏に作成してもらい、それを農産物に使用しているところ、該標章を示すために、いちご、メロン出荷用段ボール箱に印刷した標章(甲第6号証の1ないし13号証)、ピーマン、トマト、舞たけ出荷用段ボール箱に印刷した標章(甲第6号証の14ないし21)及びシールに印刷した標章(甲第6号証の22、23)を提出している。なお、段ボール箱には別個に、茨城県・大洋村、自然(じねん)農法研究会の文字等も印刷されている。
してみると、桑田氏が作成した標章は、「たっしゃか」の文字のロゴのみであるということではない。
ところで、前記図柄中、「たっしゃか」の文字(語)は、「元気か?」の意味として親しまれているものである。そして、「たっしゃか」の文字のロゴの態様について、甲第6号証の1の「たっしゃか」の文字をみるに、各文字を構成する線の筆致は、その始筆部を鈍角に尖らせ、次には急激に太くて丸みをもたせ中央へ、これをすぎてから次第に細めに終端部へと運び、終端部は始筆部より鋭角に先細りとなることを特徴とする態様から構成され、文字全体としては、線の境界に切り絵的な鮮明感を印象付けるものである。また、甲第6号証の1以外の2ないし23標章の「たっしゃか」の文字の態様にしても、構成する線の特徴を簡略しつつも全体として前記文字と同一の描出法は保たれているものである。しかして、「たっしゃか」のかかる意味及び特徴あるロゴの態様よりなる文字部分は、これ自体が他の文字、絵柄等から独立して識別力を果たす標章の要部と認識、把握され、この部分をもって商取引に資されることが少なくないものであるというのが相当である。それ故に、この「たっしゃか文字のロゴ」部分をもって「たっしゃか標章」又は「たっしゃかブランド」等とされる。
さらに、該「たっしゃか」の文字ロゴの態様は、たっしゃか踊りポスター中の「たっしゃか」のロゴの態様(甲第5号証1ないし4)と、同一または類似するものと認められるところ、結果的にそのように描出されているが、桑田氏は、他の文字、絵柄とともに同ポスターとは別個に創作したこと明らかである。
これに対し、本件商標は、別掲に示したとおりの構成よりなるものである。
そこで、請求人が使用してきた「たっしゃか標章」と本件商標とを比較するに、両者は、それ自体で自他商品の識別力を有する「たっしゃか」の文字について、ロゴの態様に若干の差異があるとしても、外観、称呼及び観念が同一または類似するものであること明らかである。
しかるところ、被請求人は、該営農者及びたっしゃか組合員であるが、「たっしゃか標章」の採用及び該標章の営農構成員による使用の過程も十分認識しており、しかも、その後に設立したたっしゃか組合の副組合長という立場で、「たっしゃか標章」が組合員の使用にかかるものと十分認識していたにも拘わらず、被請求人のみが、「たっしゃか標章」にあって、その識別力の要部といえる「たっしゃか」の文字のロゴの態様と同一または類似する本件商標について、組合員に秘して商標登録出願をし、商標登録を受けたものである。
しかして、本件商標は、その登録により、指定商品について被請求人が専有し、他人の使用を排除できる効果を有するものであって、たっしゃか組合の組合員がいちご、メロン等の農産物に使用してきたものが、使用できなくなるものであるから、本来、「たっしゃか標章」を使用して事業活動が可能な組合員の利益を著しく害し、本件商標について商標登録出願し、登録を受けた行為は公正な競業秩序・商道徳、そして信義則に反し、公の秩序を害するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項の第7号に違反して登録されたものといわなければならない。
被請求人は、本件商標が商標法第4条第1項の第7号に違反して登録されたものでないとして、大洋村が「たっしゃか標章」を農産物に使用することを奨励し、積極的に援助した事実は存在しないと主張しているところ、大洋村自体の係り方については、認められるとしても、本件商標は、請求人と被請求人との関係において上記のとおり判断され、その主張は、採用できない。
(1)「たっしゃかの文字のロゴデザインを桑田氏に大洋村として依頼し、また、たっしゃかメロン箱のデザイン画の絵の具代の支払の事実もない」について
たっしゃか文字のロゴの作成は、絵の具代はともかく、大洋村としてではなく、石津村長の紹介により請求人及び被請求人を含む営農者6名の名義のもとに、波見勝久を介して桑田氏に依頼し、「たっしゃか標章」が作成され、それを営農構成員、たっしゃか組合員が使用してきたこと、前示に認定したとおりである。
(2)「『たっしゃか組合の規約』には品名(標章)を『たっしゃか』とする旨が全く存在しない」について
該主張についても、前示にて認定した。
(3)「被請求人が、たっしゃか組合を脱退した理由」について
被請求人は、脱退の理由を「横田組合長及びその他の組合員から『三徳スーパーに出荷するメロンは、たっしゃか組合の集荷場には持ってくるな』と強く言われた。しかしながら、被請求人にとってはメロンを市場を経由するものは三徳スーパーだけであったために、やむを得ずたっしゃか組合を脱退しなければならなかった。」としている。
しかしながら、被請求人と請求人の信頼関係が損われ、前記事実が生じ、そして、被請求人が言うように、被請求人にとって、三徳スーパーへの出荷を停止することは、経済的に極めて大きな打撃となるために困難であったことは首肯できるとしても、組合組織の問題と、被請求人のみが本件商標を出願し登録を得、他人の使用を排除できる効果を有する権利を取得することとは別の問題というべきであり、本件商標の出願がたっしゃか組合設立の平成9年12月以降、約1ヶ月後になされていることが、前記事実が一つの原因とも考えられなくもないが、そのことにより、本件商標の商標登録出願が正当化されるものではない。
(4)「『たっしゃか』を広く知らしめたのは、被請求人のなみならぬ努力であり、請求人の誰一人として努力をしていないこと、本心から顧客の引き留め普及のため、商標に関して紛争が生じることがないように配慮しなければならなかった」旨について
乙第5号証ないし乙第11号証、乙第20号証、乙第26号証ないし乙第84号証によれば、被請求人は、平成4年頃、EM(有効微生物群)菌による有機農法を積極的に研究し、ノウハウを有して、大洋村ではいちご、メロン等の農産物を栽培・販売する営農者のリーダー格として活動し、そのことは、平成9年までの、この間に、新聞報道として、営農者が農産物に使用する「たっしゃかいちご」「たっしゃかメロン」の標章の由来とともにも取り上げられるに至った。そして、被請求人は、「たっしゃかいちご」「たっしゃかメロン」等に他の文字及び絵柄を組み合わせてなる図案の標章(以下「被請求人使用たっしゃか標章」という。)を農産物に付して、農産物の販売を個人としては相当量行い、また、その広告宣伝についても新聞、雑誌、タウンページ、ハローページ、テレ&パル、葉書、農園案内書、看板、電柱、チラシ、車内ステッカー、活力自治体フェア2002の出展、放送メディア等の様々な方法により相当、努力し、費用をかけていることが認められる。そして、被請求人による農産物の出荷状況は、被請求人の答弁によれば、本件商標の査定時まで請求人の場合と同じ基準で、概ね合計110,000箱と認められる。
しかして、「被請求人使用たっしゃか標章」と「たっしゃか標章」とは前記のとおりの構成であるから、実質同一又は類似するものであるところ、被請求人がたっしゃか組合を脱退する前の該標章を用いての農産物の販売活動は、明らかに営農構成員及び組合員としてのことである上に、本件商標の査定時において、「たっしゃか標章」と「被請求人使用たっしゃか標章」による農産物の出荷量を比較してみても、格段の差があるものでもなく、被請求人のみが「たっしゃか」を有名にする努力をしているものとは一概にいえない。
さらに、被請求人による「被請求人使用たっしゃか標章」の広告、宣伝を示す証拠の大部分は、本件商標の査定後のものであって、本件商標の登録は、その後における該標章にかかる農産物の販売量及び広告宣伝の多寡により、その正当化がなされるものではない。
(5)「被請求人は、桑田氏から『たっしゃか』入りの文字、図柄等の著作権を譲り受けたことから、本件商標を商標登録出願をし、登録をうける権原が存在するものである」について
乙第12号証ないし乙第19号証によれば、被請求人は、確かに、桑田氏へ平成7年11月18日から同年12月6日間における各領収書に表示の金額を「たっしゃかメロン・イチゴ・トマト・ミツバ・人参箱デザイン料」等の名目で、都合15回の467万円を支払ったこと、乙第13号証の念書には、「メロン、イチゴ等の生産、販売、広告等をする際に使用するために桑田二郎先生に制作を依頼し、...当該製作の対価としての金品を支払いしました全ての図柄、絵、キャラクター等の著作権は、制作を依頼しました私儀深作秀喜に領収書に記載されている日付で譲渡したことに相違ありません。」と記載されていること、乙第14号証ないし乙第19号証の領収書に添付の図柄標章の9枚中、5枚が甲第6号証の2、4、7、13、17、22の標章と対応し、同一又は類似していることが認められる。
しかしながら、各領収書は、明らかにそれぞれの日付及び各農産物における図柄について依頼を受けた対価を示し、また、そのデザインの著作権の譲渡を受けたとする念書も各日付の図柄の著作権譲渡に関するものと認められ、被請求人が自己のために制作を依頼した図柄を対象とするものである。なお、「たっしゃかの文字デザイン」と記載されている名目の領収書(平成10年9月13日)は、「たっしゃか」文字を含んだ図柄は外にもあり、これのみにより「たっしゃか」の文字のロゴにかかる著作権が譲渡されたものとみるべき特段の事情がみえず、他の領収書と同様の性格のものである。
してみると、結局、被請求人が桑田氏から譲り受けたとする図柄標章中、「たっしゃか標章」と同一又は類似するものは、そもそも、営農構成員及びたっしゃか組合員として、共通に使用しているものにかかり、被請求人の上記図柄も該構成員及び組合の一員として、自己が使用するものにすぎない。
以上のことから、被請求人が主張する、「桑田氏が『たっしゃか』に関する絵図の作成料の支払いを承諾したために被請求人に著作物の著作権の譲渡の快諾をしてくれたものである。したがって、被請求人は、桑田氏が作成された『たっしゃか』入りの絵柄、図案等の著作権は被請求人が譲り受けたものであるから、商標登録出願をし、登録をうける権原が存在するものである」との理由は、認められない。
(6)「『たっしゃか』の文字よりなる標章を商標登録出願したのは、その標章が大洋村以外の者に登録されることを防止するためである」について
「たっしゃか標章」は、たっしゃか組合の組合員が使用してきたものであるところ、該標章を組合員以外の他人の使用から防止することは理解されるとしても、被請求人のみが本件商標を商標出願し、登録することは、他人使用を排除できる効果が請求人にも及ぶこととなり、前示認定したとおり認められない。
(7)「請求人が、本件商標を被請求人の許可なくメロンやいちごの包装容器のデザインの使用を続けている行為は著作権の侵害である」について
本件は、本件商標が商標法第4条第1項の第7号に違反して登録されたものか否かについて判断されるものであり、請求人の使用行為が被請求人のいう著作権に抵触するか否かには直接係わりがないものというべきである。
(8)以上、被請求人は上記(1)ないし(7)のとおり主張するが、本件商標がたっしゃか組合の組合員の使用にかかり、被請求人による登録として認める正当な理由がないものであり、さらに、その登録が正当化されるべき特段の事情もないから、被請求人の前記主張は、いずれも採用できない。
したがって、本件商標は、その余の理由について判断するまでもなく商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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