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Trademark Appeal Case

著名人名と商標の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35145(T2002−35145/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4032191号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4032191号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年7月13日に登録出願、「Coline」と「Valentino」の各欧文字を二段に横書きしてなり、第18類「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘」を指定商品として、同9年7月25日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標

請求人が引用する登録第972813号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和45年4月16日に登録出願、同47年7月20日に設定登録されたものであるが、その後、指定商品中「かばん類、袋物」につき商標権の一部放棄がされ、平成2年6月25日、その旨の一部抹消登録がされたものであり、同じく、登録第1793465号商標(以下、「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和49年10月1日に登録出願、同60年7月29日に設定登録されたものであり、同じく、登録第1786820号商標(以下、「引用C商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和49年10月1日に登録出願、同60年6月25日に設定登録されたものであり、同じく、登録第852071号(以下、「引用D商標」という。)は、やや図案化した「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和43年6月5日に登録出願、同45年4月8日に設定登録されたものであり、同じく、登録第1415314号商標(以下、「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和49年10月1日に登録出願、同55年4月30日に設定登録されたものであり、同じく、登録第1402916号(以下、「引用F商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、昭和49年10月1日に登録出願、同54年12月27日に設定登録されたものである。

そして、上記各引用商標は、いずれも商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第一号証ないし同第六十二号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第8号について

審判請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」あるいは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記各種商品について使用している者であるところ、上記の「VALENTINO GARAYANI」(ヴァレンテイノ・ガラヴァー二)氏の氏名は単に「VALENTINO」「ヴァレンテイノ」と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。

すなわち、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17歳の時パリに行き「パリ洋裁学院」でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られている。この「ファッションオスカー」は無彩色である白を基調にまとめた「白のコレクション」に与えられたものである。その後も同氏の作品は無地の服を得意とし、大胆な「白」と「素材」を特徴とし、その服飾品は芸術に値すると賞賛されており、その顧客には、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリ・ヘップパーンなどの著名人も多い。同氏のデザイン活動は婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ・シャツ・ハンカチ・マフラー・ショール・ブラウスなどの衣料用小物、バンド・ベルト・ネックレス・ペンダントなどの装身具、バッグ・さいふ・名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。

我が国においても、ヴァレンティノ・ガラヴァー二の名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はVogue(ヴオーグ)誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社(千代田区大手町1−2−1)の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴテイックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファツンョン雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。

以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。同氏の名前は「VALENTINO GARAYANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァー二」とフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられたことの多いことは甲第七号証のーないし同第七号証の三十二及び同第八号証、同第九号証及び同第十号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第十三号証の二、同第十五号証の二、同第十五号証の三、同第十六号証の二、同第二十二号証の二、同第二十五号証の三、同第三十号証の二、同第三十号証の三、同第三十号証の五、同第四十八号証(報知新聞)によっても明らかである。

しかるところ、本件商標は、その構成が甲第一号証の一に示すとおりのものであって、大きく二段に横書きされた「Coline」「Valentino」の文字の下段部分である「Valentino」の文字が「ヴァレンテイノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反してなされたものであるから無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項11号について

本件商標と引用A、B、C商標とを比較検討するに、本件商標は、その構成が甲第一号証の一に示すとおりのものであって、「Coline Valentino」の欧文字は、全体が一つの語として知られているものではなく、その全体を称呼するときは「コリンヴァレンティノ」の8音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、外観構成上「Coline」の文字と「Valentino」の文字とが上下二段に表示されていることもあって、「コリン」と「ヴァレンティノ」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも、上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相まって、これに接する取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が決して少なくないものとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。

したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。

一方、引用商標は、引用A商標ないし引用C商標が何れもその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは甲第九号証及び甲第十号証(審決謄本写し)をはじめとして、同第六十二号証までの書証によっても明らかなところであって、引用A商標は、「VALENTINO」の文字よりなるものであり、その構成上「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。

また、引用B商標及び引用C商標は「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものであるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァ一二」の称呼を生ずるが、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAYANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相まって、引用B商標及び引用C商標は、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用B商標及び引用C商標は、何れも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。

してみると、本件商標は、引用A商標ないし引用C商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は各引用商標のそれと抵触するものであることは明らかである。結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものであるから、無効とされるべきものである。

(3)商標法第4条第1項第15号について

審判請求人は、上記の各引用商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用している。

しかして、審判請求人提出の甲第九号証及び同第十号証(審決謄本写し)ないし同第六十二号証のよって、引用E商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること及び引用F商標がライターについて使用されていること、引用E、F商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは、明らかである。そして、本件商標と引用A商標ないし引用F商標がその称呼を共通にする類似する商標であることは上述のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用D商標ないし引用F商標とは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている上記の商品は、何れも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品である。

したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも審判請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は上記3に対し、何ら答弁していない。

5 当審の判断

(1)VALENTINO標章の著名性について

本件審判請求の理由及び甲第七号証及び同第十三号証ないし同第五十六号証(枝番号を含む。)を総合してみるに、以下の事実が認められる。

a)ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌などの新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッション界の第1人者となり、サンローランなどと並んで世界三大デザイナーとも呼ばれるようになった。そして、請求人は、ヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売していて、その商品に「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用している。

b)我が国においては、昭和49年に「株式会社ヴァレンティノヴティックジャパン」が設立され、以来、ヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服等の商品が同社により輸入、販売されている。

c)例えば、甲第七号証の四ないし三十二は、主に昭和51年9月〜同11月にかけて発行された新聞等におけるヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服の紹介記事を抜粋したと認められるものであるが、その紹介記事の見出しに、「鮮やか黒いファッション ヴァレンティノ秋冬ショー」(甲第七号証の七)、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表」(甲第七号証の十五)、「伊の鬼才ヴァレンティノ これが76年秋冬の新作」(甲第七号証の二十二)との記載があり、また、「世界の一流品大図鑑’85年版」(甲第十五号証)中の「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の標章が記載された項における紹介記事においては、「・・・魅惑的で優美な衣裳作りを心がけているというヴァレンティノ(婦人服)」(甲第十五号証の二)、「シーズン毎にカジュアルシューズも発表しているヴァレンティノですが、・・・(紳士靴)」(甲第十五号証の三)との記載、同じく「男の一流品大図鑑’85年版」(甲第十六号証)においては、「・・・オフタイムこそ、ヴァレンティノで洒落てみたい。(紳士用ベルト)」(第十六号証の二)との記載、さらに、「25ans 1987年10月号」(甲第二十二号証)においても、「・・・ヴァレンティノの服は、このスカート丈とニット素材というカジュアル要素を持ちながらも、・・・」(甲第二十二号証の二)等の記載があるように、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と呼ばれ、そのデザイナーである「Valentino Garavani」も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれ、その名で知られていることを前提とした記事が多数掲載されている。

以上の事実によれば、本件商標の登録出願時の平成7年7月頃には、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、また、デザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は、現在も継続していると認められるものである。

(2)出所の混同について

本件商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、「Coline」の文字と「Valentino」の文字とは二段に書されているため、視覚上分離して認識し得るものである。また、「Coline Valentino」の欧文字が15文字であり、これより生ずる「コーリンバレンティノ」の称呼も9音であって、その構成文字又は称呼のいずれよりみても、一つの名称のものとしては冗長というべきである。さらに、本件商標は、全体として特定の熟語や氏名を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているというような事情も認められない。

そして、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったこと及びVALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品は、共にファッション関連の商品であって、同一又は高い関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中上段の「VALENTINO」「バレンティノ」の文字のみをとらえ、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それがヴァレンティノ ガラヴァーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。

また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から現在においても継続しているものと認められる。

したがって、本件商標は、他の無効理由について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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