Trademark Appeal Case
植物名と品質表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年審判第1288号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ソープワート」の片仮名文字を横書してなり、第3類「せっけん類」を指定商品として、平成7年1月13日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、ナデシコ科の草で葉はせっけんの代用として用いられる『soap wort』の表音『ソープワート』の文字を書してなるものであるから、このようなものをその指定商品中上記文字に照応する商品(例えば、せっけん)について使用するも、単に該商品の品質・原材料を表示したにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、前記したとおり、「ソープワート」の文字を書してなるものであるところ、「ソープワート」の語については、株式会社誠文堂新光社昭和55年10月10日発行「原色版日本薬用植物事典」には、「サボンソウ(石鹸草)」の項に、「〔英名〕Soap wort・・・〔生育地〕ヨーロッパ原産で渡来は明治初年。〔性状〕多年草。・・・〔民間療法〕わが国では実用されていないが、古来、ヨーロッパでは洗剤に用いた。」との記載が、有限会社翠楊社昭和58年8月20日発行「薬用植物研究」には「サボンソウ」と題して、「〔産地・生態〕歐州原産の宿根草で、本邦では庭園等に裁植せられ、茎は高さ三〇−六〇糎位になる。・・・・〔薬用〕・・・又之れを石鹸に代用して洗濯に用いている。」との記載が、株式会社廣川書店平成3年3月25日発行「資源・応用 薬用植物学」には、「サボンソウ」の項に、「ヨーロツパ原産の多年草で、ヨーロッパから西アジアに分布し、日本でも観賞用に栽培される。・・・」との記載が、西村秀敏著平成8年12月20日発行「世界の薬用植物〔5〕ユリ科・ナデシコ科・ツヅラフジ科・トウダイグサ科・クマツヅラ科・ミカン科編」には、「サボンソウ」の項に、「ヨーロッパから中央アジアにかけて原産地。・・・根茎を細かく刻み、水に入れて強く振ると泡が立ち、これで布などを洗うと汚れが落ちるのでサボンソウの名が付けられた。・・・葉と根茎を煮沸し石鹸としての効能は認められる。」との記載が、誠文堂新光社2000年10月20日発行「世界薬用植物百科事典」には、「Saponaria officinalis サボンソウ属(ナデシコ科)」の項に、「英名:Soapwort(ソープワート)和名:サボンソウ・・・・歴史と民間伝承:サボンソウは洗剤の代わりとして、特に衣服の洗濯に用いられる。」との記載が認められ、「ソープワート」は、古来より薬(去痰剤)としての効能が伝承されているとともに洗浄剤に用いられていることを認めることができる。
上記実情よりすると、本願商標は、これをその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「ソープワート(サボンソウ)よりなる洗浄剤」なる意味合いを表したものと容易に理解し、自他商品を識別する標識たる商標とは認識し得ないものとみるのが相当である。
してみると、本願商標は、これをその指定商品中「ソープワート(サボンソウ)の成分が添加されたせっけん類」について使用しても、単にその商品の原材料、品質を表示するにすぎないものであって、それ以外のせっけん類について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、請求人は、「Soapwort」とその表音「ソープワート」は、一般的知名度が低いこと、「石鹸の代用としていたナデシコ科の草」は「サボン草」「石鹸草」と呼ばれ、「ソープワート」を示すものとして日本ではなじみがないこと、「せっけん類」を取り扱う業界においてせっけん類の原材料として用いられた事実はなく、品質表示として使用されている事実もない旨主張している。
しかしながら、「Soapwort」とその表音「ソープワート」の文字が「サボンソウ」「石鹸草」の語と共に使用されていること、そして本願商標が自他商品の識別標識としての機能を有しないことは前記したとおりである。また、商標法第3条第1項第3号の趣旨は、商品や役務を流通過程又は取引過程に置く場合に必要な表示であるから、何人も使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、また、現実に使用され、あるいは、将来一般的に使用されるものであることから、出所識別機能を認めることができないものと解されるものであり、仮に「ソープワート」が一般に知られていない場合であっても、前記認定のとおり、ソープワートは指定商品の原材料となり得るものであることから、第3号の趣旨からして特定人に独占させることは適切ではないものである。したがって、請求人の主張は採用することができない。
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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