Trademark Appeal Case
周知商標と混同のおそれ
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90325(T2002−90325/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4544166号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(ア)に表示したとおりの構成よりなり、第25類「パンツ、ジャケット、シャツ、スウェットシャツ、バンダナ、手袋、帽子、ずきん、山高帽、その他の被服、ベルト、バンド、ズボンつり」を指定商品として、平成13年4月18日に登録出願、同14年2月15日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
(1)引用商標
異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第4326071号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(イ)に表示したとおりの構成よりなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営、映画の上映・制作又は配給、演芸の上演、音楽の演奏、放送番組の制作、アメリカンフットボールの興行の企画・運営又は開催、その他のスポーツ大会の興行の企画・運営又は開催、運動施設の提供、娯楽施設の提供、興行場の座席の手配」を指定商品、指定役務として、平成10年9月17日に登録出願、同11年10月15日に設定登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(a)全米プロフットボールリーグ(NationaI FootbalI League)について
全米プロフットボールリーグ(NationaI FootbalI League、「NFL」と略称され親しまれている。)は、全米で最も人気のあるスポーツイベントの一つであり、特にそのリーグを二分するAFC(American Football Conference)とNFC(National Football Conference)のー位同士が対決するスーパーボールは、10万人の観衆を集め、近年では、170以上の国・地域でテレビ中継され、7億人以上が見ると言われるスーパー試合となっている。
我が国においてもアメリカンフットボールの人気は高く、スーパーボウルの模様等を含め全米プロフットボールの試合は、新聞・雑誌・テレビ等を通じて広く報道されている(甲第6号証はその試合結果を報道している全国的スポーツ新聞記事、甲第7号証はNHKの衛星放送番組欄であり、NFLの試合が我が国で放映されていることを示すものである)。
甲第4号証及び甲第5号証は、我が国で多数出版されているNFLに関する専門雑誌の一例である。また、上記のとおり、甲第6号証は、NFLの試合を報道する新聞記事である。さらに、NFLの試合自体、我が国においても衛星放送等で放映されている(甲第7号証の1)。甲第7号証の2として、NFLのホームページの、たとえば、平成11年(9月以降分)の我が国でのテレビ放映のスケジュール表を提出する。
各NFLの所属チームは、それぞれのチーム名をもち、同時に、それぞれのチームを象徴するキャラクターを有している。とくに、各チームを象徴するキャラクターは、各選手のヘルメットやユニホーム等に添付され、当該チームを象徴する目印として機能している(甲第10号証の1は、NFLのホームページであり、そこに示されるように各チームがそのキャラクターで示され、また、各チーム毎にホ一ムページが存在し、そこには、チーム名とともに、そのキャラクターが顕著に表されている。)。
全米プロフットボール(NFL)は、我が国においても人気あるプロスポーツのひとつとなっており、また、各チームはそのチーム名とともにチームを象徴するキャラクターを有し、NFLの人気の高さとともに、各チーム名及びそれを象徴するキャラクターはそれ自体広く知られるものとなっている。そして、引用商標は、このNFLの所属チームのひとつである「フィラデルフィア・イーグルス」のキャラクターであり、そのチームを象徴するものとして、選手のヘルメットやユニホームはもとより、そのチームに関わるすべてのものに使用、報道等されて、周知・著名なものとなっている。
なお、引用商標は、実際に出願された態様と公報に掲載された態様(甲第2号証の1)では、特許庁の公報発行の技術上の問題から若干の相違がある。すなわち、引用商標の図形中、鷲の首(襟)の部分にあるはずの白い細線が、商標公報には明瞭に現れていない。しかしながら、引用商標の権利範囲は、出願時の商標見本に基づくものであり(商標法27条1項)、よって、当該商標見本を甲第2号証の2として提出する。
(b)申立人の業務について
申立人「エヌエフエル プロパティーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー」は、全米プロフットボールリーグ(NFL)のメンバーチームによって、NFL及び各チームのシンボルマーク及び商標等の商業的利用のために設立された法人である。
甲第3号証は申立人が所有する引用商標と略同一の米国における登録商標である。
甲第9号証は、米国におけるNFLの公式ライセンス商品のカタログ等の抜粋である。ヘルメットのレプリカ、ラクビボール、ジャンパー、帽子、T−シャツ、子供用被服、手袋、バッグ、コップ、ぬいぐるみ、時計、カレンダー、靴下、サスペンダー等々広い範囲にわたって、NFLのチーム名やシンボルマーク(キャラクター)の使用の許諾が与えられている。甲第4号証及び甲第5号証は、我が国の雑誌であるが、その中の宣伝広告のページにもあるように、我が国においても、引用商標を始め、各チーム名及びそのキャラクターが、商標として、各ライセンス商品が現実に販売されている。
このような商品化ビジネスを通じても、引用商標は、全米のプロフットボールチームのキャラクターとして、我が国においても広く親しまれているというべきである。
(c)出所の混同について
以上のとおり、引用商標は、全米のプロフットボールの著名性とともにその所属チームのキャラクターとして広く知られており、商品化ビジネスを通じて、商標としても周知・著名である。
これに対して、本件商標は、引用商標と同様に、一見して容易に、「鷲」をモチーフにした図形商標と認識できるものであり、加えて、両商標とも、鷲の頭部のみからなり、かつ、黒色をベースにして、目から首の部分に懸けての羽毛が風になびくように、白色で描かれてなり、細部の点で相違はあるものの全体的に印象において、混同の生ずるおそれがある程類似するものである。すなわち、本件商標と引用商標は、「鷲」の称呼及び観念において同一であり、かつ、外観においても類似する類似商標である。
また、本件商標の指定商品は、第25類「被服、ベルト、バンド、ズボンつり」を指定するものであり、上述のNFL及び各チームの著名性から、これらの商品に本件商標が使用された場合には、その商品は、容易に申立人ないしNFLの公式の許諾を受けたライセンス商品と認識されるものであって、申立人ないしそれと経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品と誤認・混同が生じるのは明らかである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、引用商標は、世界的に著名な全米プロフットボールチームの名称であり、また、この名称を使用した被服等の商品化ビジネスも活発に行われている。
これに対して、本件商標は、引用商標と同様に、一見して容易に、「鷲」をモチーフにした図形商標と認識できるものであり、加えて、両商標とも、鷲の頭部のみからなり、かつ、黒色をベースにして、目から首の部分に懸けての羽毛が風になびくように、白色で描かれてなり、細部の点で相違はあるものの全体的に印象において、混同の生ずるおそれがある程類似するものである。
前述のとおり、NFLの試合の模様は、我が国においてもテレビ・新聞・雑誌等を通じて広く報道されており、本件引用商標は、そのチームキャラクターとして、チームを象徴する存在として広く知られている。また、チームキャラクターは、各チームを象徴するものとして、各選手のヘルメット等に使用され、また、各種キャラクター商品に使用されている。このような状況にあって、NFLと何らの関係のない本件商標権者が、このチームキャラクターと相類似する本件商標をその指定商品「被服」等に使用する行為は、本件引用商標のもつ顧客吸引力を不当に利用する行為であって、正当な商慣習に反し、かつ、国際信義に反する行為でもある。
(5)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、世界的に著名な全米プロフットボルリーグのNFLに所属する人気チームのキャラクターであり、かつ、商品化事業を通して、商標としても周知・著名なものとなっており、このような商標について、いわゆる典型的なライセンス商品である「被服」等について、本来の権利者に無断で登録・出願する行為は、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」を有するものであることが客観的に明らかである。
(6)商標法第4条第1項第11号について
引用商標は、本件商標より先願・先登録に係るものであり、かつ、引用商標の指定商品と本件商標の指定商品とは抵触しているものである。
そこで、本件商標と引用商標の類似性をみると、両商標は、一見して容易に「鷲」をモチーフにした図形商標と認識できるものであり、加えて、両商標とも、鷲の頭部のみからなり、かつ、黒色をベースにして、目から首の部分に懸けての羽毛が風になびくように、白色で描かれてなり、細部の点で相違はあるものの全体的に印象において、混同の生ずるおそれがある程類似するものである。
すなわち、本件商標と引用商標は、「鷲」の称呼及び観念において同一であり、かつ、外観においても類似する商標である。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(ア)のとおり、先端が鉤形に曲がった太くて長い上嘴、先端が細い略三角形の短い下嘴、鋭い目及び白と黒の横縞模様よりなる羽毛を有し、その羽毛を炎のようになびかせた猛禽類と思しき鳥類の頭部を描いてなるものであるところ、当該図形は、全体を抽象的に描いているために、如何なる種類の猛禽類を描いた図形か、俄には、判断し得ないものである。
したがって、本件商標は、特定の称呼、観念を生じない商標であるとするのが相当である。
他方、引用商標は、別掲(イ)のとおり、先端が鉤形に曲がった太くて短い嘴、鋭い目、白い羽毛及び目の回りの黒い模様を有する猛禽類と思しき鳥類の頭部を描いてなるものであるところ、当該図形は、必ずしも写実的に描かれているわけではないので、如何なる種類の猛禽類を描いた図形か、俄には、判断し得ないものである。
したがって、引用商標は、特定の称呼、観念を生じない商標であるとするのが相当である。
そこで、本件商標と引用商標の類否について検討するに、両商標は特定の称呼及び観念を生じさせないものであるから、称呼、観念において比較することができない。
また、本件商標と引用商標は、ともに、猛禽類と思しき鳥類を描いたものであったとしても、くちばしの大きさや形状、羽毛の描き方等が著しく相違しているために、外観上、判然と識別できる差異を有しているものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標が非類似の商標であること、上記(1)認定のとおりである。
また、我が国において、「全米プロフットボールリーグ(NFL)」の名は、ある程度知られているとしても、それに属する個々のチーム名までを知る者は少ない。加えて、申立人が提出している証拠だけでは、引用商標が上記「全米プロフットボールリーグ(NFL)」に属するチームの一つ「フィデルフィア・イーグル」のチームキャラクターであると、本件商標の登録出願時に、我が国の取引者、需要者間に広く認識されていたものとは認め難い。
したがって、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が、本件商標より、申立人の商標を連想、想起し、その商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の商品であるかの如く、その商品の出所について誤認・混同するおそれはないものと認められる。
(3)商標法第4条第1項第7号及び第19号について
本件商標は、別掲(ア)に示すとおりの構成よりなるところ、その構成自体が矯激的、卑猥、差別的な印象を与える図形からなるものではなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものではなく、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
また、本件商標は、引用商標と類似するものでなく、また、引用商標を想起させるものでもないから、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に合いを与える目的その他の不正の目的)をもって使用するものとは認められず、また、その証左も見出せない。
(4)結び
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、第15号、第7号及び第19号の規定に違反してされたと認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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