Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90332(T2002−90332/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4545812号商標(以下「本件商標」という。)は、「CAMPAGNE」の欧文字と「カンパーニュ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、第3類「化粧品、せっけん類、香料類」を指定商品として、平成13年3月7日に登録出願され、同14年2月22日設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第2668385号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第4類「オードトワレ」を指定商品として、平成3年7月17日に登録出願され、同6年5月31日に設定登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標について
本件商標はその態様から自然に「カンパーニュ」なる称呼が生ずると言うべきである。また、本件商標における「CAMPAGNE」の文字部分はフランス語において「田舎、野戦場、キャンペーン」等の意味合いを有するものである。
(イ)引用商標について
フランスは化粧品を含めたファッションの本場として我が国においても知られていることから、引用商標の指定商品である「オードトワレ」の取引業界においては、一般に比してフランス語の理解力は高い。従って、引用商標における上記文字部分はフランス語によるものと認識されるものである。そして、引用商標に含まれる欧文字中、「eau de toilette」はその指定商品そのものを、「sisley」は申立人の名称を表したものであり、引用商標においては「eau de campagne」の文字部分が主要部として需要者・取引者に特徴的に認識されるものである。
この引用商標における「eau de campagne」の欧文字はフランス語において「水」等の意を有する「eau」、「〜の、〜でできた、〜から」等の意を有する「de」、及び「田舎、野戦場、キャンペーン」の意味合いを有する「campagne」の語からなり、全体で「田舎の水」等の意味合いを有する語である(甲第4号証)。この「eau de campagne」の構成部分においては、全ての構成文字が小文字で構成されており、「eau」、「de」及び「campagne」の文字間に1文字分のスペースを有して配され、「campagne」の文字部分が単独で−段に配されている二段書きの構成となっている。また、「Eau De Love」の欧文字からなる別件商標(昭和44年商標登録願第75837号)の拒絶査定不服審判(昭和46年審判第4181号)の審決中において、「『Eau De』及びその発音を表した『オード』の文字は、『......の水』の意味を有する仏語及びその外来語として一般に知られているものであり...(中略)...化粧品業界においては、たとえば、『eau de cologne』(オーデコロン又はオードコロン)、『eau de toilette』(オードトワレット)の如く、『eau de』(オード)の文字を他の文字と結合して水性の化粧品であることを表示するために普通に使用しているのが実情である。したがって、本願商標においても前半部分の『eau de』『オード』の文字の部分は、単に指定商品の品質を表示するにすぎないものであって、自他商品識別の機能を果たし得るのは後半部の『Love』『ラブ』の文字の部分にあると認めざるを得ない。」と認定している(甲第45号証)。また、指定商品に「化粧品」を含む商標で、その構成中に「eau de」、「オード」、又は「オーデ」を含む登録商標が多数並存登録されている(甲第46号証)。従って、「eau de」の文字部分は自他商品識別力のない或いは非常に弱い構成部分というべきであり、残りの構成部分が自他商品識別力を有しているものである。
以上のことを考慮すると、引用商標においては「campagne」の文字部分が自他識別力を有する文字部分であり、引用商標における主要部として特徴的に認識されるものである。また称呼に関しては、「eau de campagne」の構成から自然に「オーデカンパーニュ」との称呼が、また主要部として特徴的に認識されるというべき「campagne」の文字部分から「カンパーニュ」との称呼が生ずるものである。
(ウ)本件商標と引用商標との類否について
上述したように引用商標においてはその構成中において自他商品識別力があるのは「campagne」の文字部分であり、該文字部分が主要部として特徴的に認識されるものである。そして、称呼に関しては、本件商標からは自然に「カンパーニュ」との称呼が生ずるというべきであり、一方引用商標からはその主要部というべき文字部分から「カンパーニュ」との称呼が生ずるものである。
両商標から生ずる称呼は同一の「カンパーニュ」であり、両商標はその称呼において語韻語調が極めて相似のものとして聴取され、本件商標に接する取引者・需要者はその称呼から引用商標を容易に想起し、両商標を類似のものとして認識するものである。また、本件商標及び引用商標は、ともに「田舎、野戦場、キャンペーン」の観念を生ずる商標として認識されるものであるから観念においても類似するものである。
以上のことから、本件商標は引用商標とは、称呼及び観念において相紛れるおそれのある類似の商標といえ、かつ、本件商標及び引用商標の指定商品は同一又は類似のものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)申立人「セー エフ ウー ベー シスレー」の著名性について
申立人「セー エフ ウー ベー シスレー」は、フランスの由緒ある貴族の家系である d’Ornano 伯爵夫妻により創設された化粧品等の製造販売を行うフランスにおける法人である(甲第5号証並びに甲第23号証乃至甲第30号証)。このd’ornano伯爵夫妻は化粧品づくりについて大変造詣の深い家系であり、フランスの2大名門化粧品会社といわれている「Lancome」及び「Orlane」を創設したのもこの家系である。このd’Ornano伯爵、皮膚学者、及び植物学者の三者が一体となって、申立人は1975年に設立されたものである(甲第5号証並びに甲第23号証乃至甲第30号証)。申立人の業務にかかる商品である化粧品はこの家系が有する豊かな知識と経験をもとに、その集大成としてつくられたものである。申立人の業務にかかる化粧品等の製品は、自然植物化粧品と呼ばれ、「phytocosmetology(植物美容学)」の研究に基づいて、医学的効果を有する45種の植物の植物エキスを原料としている。特に、有効成分を皮膚の深部まで浸透させ、新陳代謝を促進する「エッセンシャルオイル」を配合しているのは、世界で、申立人による製品が唯一であり、他の自然植物化粧品の追随を許さないものとなっている。また、肌にやさしく副作用もなく、敏感肌又はアレルギー体質の人も使用可能な製品であるとして好評を得ており、特にフランスにおいてはフランス皮膚医学協会から医学的に最高の化粧品であるとの推薦を受けており、その安全性には定評がある(甲第5号証並びに甲第23号証乃至甲第30号証)。
申立人による製品は現在世界50カ国以上で販売されており、フランス国内における厳しい品質管理、アレルギーテスト、無害テストを済ませ、全てパッケージごとの完成品として出荷されている。申立人の商品の愛用者には、例えばイギリスのアン皇女、ダイアナ妃、ジャクリーン・ケネディ元大統領夫人等、世界の著名人や知識人が多いことで知られている。この申立人による製品は多くの雑誌、書籍等の刊行物によって紹介されており、また世界の一流品を取り扱う書籍においても紹介され、我が国においても著名なものとなっている(甲第5号証乃至甲第37号証)。
(イ)引用商標「eau de campagne」の著名性について
引用商標が使用される商品である「オードトワレ」は、この上記した自然植物化粧品メーカーとして著名となっている申立人が展開する商品である。この商品は、南仏の田園を思わせるような、自然ですっきりとした心地よい安らぎを与える香りであり、気分転換やりフレッシュの効果がある。該製品は自然派化粧品メーカーである申立人のその他の製品と同じように、その成分に植物エキスを配合している。
該商品は自然植物化粧品メーカーである申立人らしい商品として、甲第38号証乃至甲第44号証に提出するとおり、多くの書籍及びインターネット上のWEB PAGE等において紹介されている。引用商標は様々な媒体によって取り上げられ、また申立人により広告宣伝されている。
ここに申立人が化粧品業界において本来的に有する著名性・信用・評判・名声が相まって、引用商標は化粧品業界において、本件商標の査定時においてはもちろんのこと、出願日である平成13年(2001)3月7日以前から、申立人の業務に係る商品を表わすものとして、その取引者・需要者間に知られており、周知著名になっていた(甲第5号証乃至甲第44号証)。
(ウ)構成について
この申立人の業務に係る「オードトワレ」等に使用される商標として周知・著名となっているというべき引用商標は、上述したように本件商標と引用商標の主要部が類似することから、本件商標に接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る「オードトワレ」等に使用される引用商標を容易に想起し、本件商標は引用商標と相紛れるおそれがある。
(エ)申立人の業務と本件指定商品の関連性について
引用商標が指定商品「オードトワレ」と本件商標の指定商品である「化粧品」と同一又は類似の商品である。加えて、申立人はその業務として化粧品等を取り扱うものとして、高度な著名性を有していることは上述したとおりであり、また引用商標は申立人の業務に係る「オードトワレ」等に使用される商標として著名となっているものである(甲第6号証乃至甲第45号証)。本件商標が化粧品に使用された場合には、この化粧品業界における申立人の著名性が相まって、本件商標の使用された商品が恰も申立人の業務に係る商品であるかの如く認識されるものである。従って、本件商標及び引用商標の指定商品は非常に高い関連性を有している。
(オ)出所混同について
以上の要素を総合的に勘案すると、「オードトワレ」等の商品に関し、申立人の業務にかかる商標として著名性を獲得している引用商標を容易に連想できる本件商標が、その指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、恰も申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(カ)なお、平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件(レールデュタン判決)においては、本条の趣旨が「周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の稀釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護すること」と判示されている。本件においても、申立人の業務に係る「オードトワレ」等に使用される引用商標の著名性に、本件商標がただ乗りすることにより引き起こされる引用商標の有する信用・評判・名声の稀釈化を防止し、引用商標の有する自他商品識別機能を保護し、申立人の業務上の信用を図り、需要者の利益を保護すべきである。この観点からも本件商標はその商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標といえる。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「CAMPAGNE」の欧文字と「カンパーニュ」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものであるところ、構成中下段の「カンパーニュ」の片仮名文字は上段の欧文字の読みを特定した振り仮名と認められるものである。
したがって、本件商標よりは、該振り仮名に従って「カンパーニュ」の称呼を生ずるものと認められる。
また、「campagne」は、「田舎」の意味を有するフランス語であるところ、本件商標に係る指定商品を扱う業界において、フランス語が比較的なじまれている実情を考慮すると、当該文字部分は、「田舎」の意味合いを想起させるものといえる。
他方、引用商標は、別掲のとおり、欧紋章風の図形中に「eau de」、「campagne」、「eau de」、「 toilette」及び「sisley」の欧文字を六段に横書きしてなるものであるところ、図形部分と文字部分とは視覚的に分離して観察されるばかりでなく、これらを常に一体のものとしてのみ把握しなければならない格別な事情が存するとも認め得ないところである。
また、本件商標の構成中「eau de」の文字と「campagne」の文字とは、同一の書体をもって、同一の大きさで、まとまりよく書されているものであるから、外観上一体のものとして看取されるものであり、該文字に相応して生ずる「オーデカンパーニュ」又は「オードゥカンパーニュ」の称呼も淀みなく一連に称呼し得るものである。
また、該文字中の「eau de」は、「〜の水」の意味を有するフランス語であり、「campagne」は、「田舎」の意味を有するフランス語であるところ、引用商標に係る指定商品を扱う業界において、フランス語が比較的なじまれている実情を考慮すると、当該文字部分は、「田舎の水」の意味合いを想起させるものといえる。
したがって、本件商標は、「eau de campagne」の文字部分のみにおいても、独立して、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
また、「eau de campagne」の文字は、上記で述べた如く、外観上、称呼上及び観念上一体としてとらえるのが適当であるから、「eau de」の文字が、「eau de cologne」(オーデコロン)、「eau do toilette」(オードトワレット)等、商品名の一部に使用されている例があるとしても、「eau de」の文字部分のみが独立して認識されることはなく、「eau de campagne」の文字全体から、「オーデカンパーニュ」又は「オードゥカンパーニュ」の称呼のみが生ずるものといわなければならない。
してみると、本件商標より生ずる「カンパーニュ」の称呼と引用商標より生ずる「オーデカンパーニュ」又は「オードゥカンパーニュ」の称呼とは、称呼を識別する上で最も重要な要素となる語頭部において「オーデ」、「オードゥ」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、称呼上十分聴別し得るものである。
また、外観は、本件商標は、上記のとおり欧文字と片仮名文字を二段に表した構成よりなるものに対して、引用商標は幾何図形と欧文字を組み合わせた構成よりなるものであるから、外観上明らかに相違するものである。
さらに、観念は、本件商標は、「田舎の水」の観念を生ずるものであり、
引用商標は、「田舎」の観念を生ずるものであるから、観念上明らかに相違するものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念が著しく相違するものと認められるものであるから、これをその指定商品に使用しても相紛れるおそれはないものと認められる。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は引用商標の著名性を立証するため甲各号証を提出しているが、そのほとんどは、申立人の名称「SISLEY」の著名性に関するもので、引用商標に関するものは、そのうち、甲第38号証乃至甲第44号証である。
しかして、提出されている前記証拠のみによっては、本件商標の登録出願時に、引用商標が申立人の業務にかかる商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く知られるに至っていたものとは、認めるに足りない。
加えて、本件商標と引用商標とは、前記(1)認定のとおり明らかに区別し得る非類似の商標であるから、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が本件商標より申立人の商標を連想、想起したり、その商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の商品であるかの如く、その商品の出所について混同するおそれはないものと判断するのが相当である。
(3)結び
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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