結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2001−35561(T2001−35561/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
第1.本件商標
本件登録第4485521号商標(以下「本件商標」という。)は、「TWIN Cast」の欧文字(「標準文字」による)を横書きしてなり、平成13年1月15日に登録出願、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,魚ぐし,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具,電気式歯ブラシ,デンタルフロス,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製包装用容器(「ガラス製栓・ガラス製ふた」を除く。),陶磁製包装用容器,ガラス製栓,ガラス製ふた,かいばおけ,家禽用リング,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),ねずみ取り器,はえたたき,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉」を指定商品として、同13年6月29日に設定登録されたものである。
第2.請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1275796号ー2商標(以下「引用商標」という。)は、「キャスト」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和49年11月15日に登録出願、同52年6月10日に設定登録された登録第1275796号商標の指定商品より、第19類「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」を同56年9月7日に分割譲渡されたものであり、その後、2回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ現に有効に存続しているものである。
第3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証(枝番含む。)を提出した。
1.請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標の構成及び指定商品等は上記したとおりである。
本件商標は、前半「TWIN」と後半「Cast」との間には、1文字分の空白が存在する。また、前半「TWIN」は、全て大文字であるのに対し、後半「Cast」は、頭文字のみ大文字で、他は全て小文字であるから、本件商標は、文法上及び構成外観上、明らかに分離されるものであり、称呼上も、一連でのみ判断されるとする必然性はない。
また、観念上も、全体として密接不可分な観念を有するとは認め難く、これを一連でのみ把握しなければならないとする必然性はないものであり、かつ、構成中の「TWIN」の文字は、「一対の、対のもの」の意味合いを有する語であって、当該商品が「対になっている」ことを表すに過ぎない識別力を欠く記述的表示であるから、要部「Cast」のみでも類否判断されると認められる。
してみれば、本件商標は、一連の外、後半部「Cast」のみでも判断されると認められ、当該英字から自然的称呼「キャスト」が生じると認められるのに対して、引用商標は、片仮名で「キャスト」と構成され、明らかに称呼「キャスト」が生じるから、両商標は、称呼「キャスト」において称呼上類似する商標と認められる。
さらに、本件商標は、指定商品中に「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」を含むところ、引用商標も指定商品中に「なべ類,湯沸かし類」を含むものであるから、両商標の指定商品は、同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、請求人の取り扱いに係る商品「なべ類」に関し、長年の使用により周知であると認められ、本件商標が、その指定商品中の「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」に使用された場合は、被請求人とは他人である請求人の業務に係る商品「なべ類」と混同を生ずるおそれがある。
請求人は、商品「アルミ家庭日用品」中、特に「なべ,フライパン」に関し、総合的な統一的商標として、引用商標を使用するものである(甲第9号証)。なお、平成9年作成のカタログ(甲第9号証の1)に於いては、カタログの総合的な商標として、表紙裏面に引用商標が明確に記載されており、平成13年作成のカタログ(甲第9号証の2)でも、同様に引用商標が記載されており、引用商標は現在も継続して使用しているものである。
そして、引用商標が使用される商品は、「なべ類」に関し、平成10年から平成12年にかけて、概ね14%ないし18%の範囲での市場シェアを誇っており、さらにアルミ鋳造製品である「なべ類」に限ると、平成11年から平成12年にかけた実績で、35%ないし37%程度の市場シェアを獲得している(甲第15号証)。
なお、同号証は、第三者である「軽金属製品協会」による商品「なべ類」に関する板製品及び鋳造製品の平成10年から平成12年に至る全国生産重量及び請求人の生産量に関する統計資料に基づくものである。
以上の事実から、請求人は、わが国に於いて当該商品に関しては、およそ3分の1のシェアを誇るトップメーカーであるといえる。
また、引用商標に関しては、業界団体、同業他社及び取引業者が多数周知であることを証明している(甲第16号証ないし甲第20号証)。
引用商標の周知性に関しては、先ず、前記報告書の基礎となった統計資料を作成している「軽金属製品協会」や「高岡商工会議所」等の業界団体、公的機関が、証明を行っている。
さらに、請求人との関係では、競合する商品「アルミ製鍋」や「フライパン」、「ステンレス製調理器」その他を製造販売する同業他社である「三協アルミニウム工業株式会社」他6社が、周知性を証明している。
以上、引用商標は、その使用実績や宣伝広告及び請求人が前記商品で獲得しているシェア、及び、業界団体、同業他社をはじめとする多数の取引者の証明により、おそくとも平成12年12月頃までには、商品「なべ類」に含まれる商品「なべ,フライパン」に関して、請求人の業務に関わる商品であると広く認識されるにいたり、いわゆる周知性を獲得したものと認められる。
したがって、被請求人あるいは第三者が、商品「なべ類」に関して、本件商標を使用した場合は、あたかも請求人の製造販売に係る商品であるかのように混同し、あるいは、請求人と何らかの資本関係あるいは組織的関係を有する者の業務に係る商品であるかのように混同を生じるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、答弁の理由において、本件商標の登録出願から、本件無効審判請求に至るまでの経緯を説明し、参考資料1を提出しているが、この事実に関しては請求人は争わない。
本件審判請求は、商標権侵害訴訟(東京地裁 平成12年(ワ)第27776号)において、原告である請求人の主張が認められず、又、早期審査により、その判決言い渡し前に、本件商標の設定登録がなされているため、本件商標登録の無効性について、商標行政に関する専門官庁である特許庁に、更に改めて判断を求めるためになしたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、引用商標に対し、取消審判(取消2001−30498)を請求している旨を述べ、引用商標に、使用の実体がない可能性が高いと主張しているが、当該取消審判に関して、請求人は、既に答弁書を提出し、引用商標の使用事実を立証している。
また、被請求人は、「キャスト」が、英字「cast」を示し、「鋳造する、鋳込(いこみ)」を意味し、これをなべ類等に使用した場合は、「その商品の生産方法を示す標章」で、商標法第3条第1項第3号のいわゆる記述商標に該当し、識別力がないと主張する。
しかし、「cast」の英字は、被請求人指摘の「鋳造する」という意味以外にも多数の意味合いを有している。
したがって、「キャスト」は、多種多様の語義を有するために、必ずしもその意味合いを一つに固定することが困難であり、引用商標が「なべ類」等に関し、その生産方法などの品質を限定されることなく登録されている事実からすると、単純に引用商標が指定商品の生産方法を示す標章であるとすることはできない。
なお、被請求人は、甲第9号証の1カタログに「アルミキャスト《鋳造》製厚手調理器」と記載されている事実を掲げ、「キャスト」が「鋳造」の意味であることを、請求人自らが記載していると主張する。
しかし、請求人が、「アルミキャスト製厚手調理器」を「アルミ鋳造製厚手調理器」と同旨として記載し、その意味合い及び範囲にいて「キャスト」を「鋳造」の意味合いで使用しているとしても、それは「アルミ」という素材を付加しているからこそ、初めて特定できる意味合いである。
さらに、英語「cast」が辞書上前記意味を有することが事実であるとしても、商品「なべ類」等の需要者は、一般的な家庭の主婦その他であり、そもそも多種多様な語義を有することが認められる「cast」の表示に関して、即座に「鋳造する、鋳込」等の科学技術用語に該当すると認められる当該意味を、認識把握するか否かは、甚だ疑問である。
加えて、被請求人は、「TWIN」は著名性を獲得していると主張するが、被請求人提出に係る全証拠を検討考慮しても、「TWIN」が商標法で定めるところの、すなわち、商品、役務の類似範囲を越えてまで出所の混同が生じる程度の著名性を獲得していると認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
(ア)甲第9号証の1商品総合カタログは、引用商標の使用態様を証明するために提出したものである。請求人は、当該号証のみを以て、引用商標が周知性を有すると主張立証するものではなく、甲第9号証ないし甲第21号証の全証拠を総合的に検討考慮すれば、引用商標に周知性が認められると主張するものである。
なお、被請求人は、甲第9号証の1記載の「キャスト」の標章に対して、具体的な指定商品について付された商標ではなく、カタログの題名にすぎないと主張する。
しかし、カタログの題名は、通常その表紙に、あくまでカタログを表す名称として記載されるものであるところ、甲第9号証の1における引用商標の表示が、その様なカタログの題名に該当すると判断することは、到底不可能である。
また、被請求人は、甲第9号証の1において、引用商標が具体的な指定商品に付された商標ではないと主張するが、甲第9号証の1カタログは、請求人の商品総合カタログであり、その内容として各種「なべ類」が明確に記載されていることは明らかである。
請求人は、甲第9号証の1記載の各種なべ類の統一的なシリーズネーム・メインブランドとして、引用商標を用いているのであり、かつ、個別の商品を更に特定するために、サブブランドあるいはペットネームを用いるものである。
したがって、引用商標は、これらのペットネームをまとめる総合的なシリーズネームとしての商標であり、甲第9号証の1記載の個別の商品単位に記載されていないという事実をもって、引用商標が商標として使用されていないとするのは、失当である。
(イ)被請求人は、乙第8号証文献を掲げ、甲第9号証の1に関し、その1頁には標章「キャスト」を特定の商品に直接表示している事実がないとする。 また、同号証において特定の商品に直接表示されている商標が他に存在しており、これらが個性化された商品を他の商品と識別するための商標であるが、これらと引用商標「キャスト」とは社会通念上同一性が認められないと主張する。
しかし、被請求人は、乙第8号証文献の趣旨を誤解しており、又、甲第9号証の1における引用商標の使用状況に関しても、的確な把握を行っていないものと認められる。
さらに、甲第9号証の1カタログにおいて、引用商標その他の記載から、これを請求人が自己の登録商標として認識し使用していることは疑いようがないから、乙第8号証で述べられている商品識別の主観的要件が存在していることも明らかである。
以上、甲第9号証の1におけるように、請求人によって、引用商標は、使用されているものであり、その周知性に関しては、甲第10号証ないし甲第21号証に表されているとおりであり、甲第9号証の1の第1頁の記載のみを問題視して、引用商標が使用されていないとする被請求人主張は、失当である。
(ウ)甲第9号証の2に関し、被請求人は、本件商標の出願日以降の発行であるため、引用商標の周知性の証拠にはなり得ないと主張するが、本件商標を、引用商標の周知性により、商標法第4条第1項第15号で無効にするためには、本件商標の出願時に引用商標が周知であった事実が必要であると同時に、本件商標の設定登録処分時(登録査定時、設定登録時)においても、引用商標が周知である事実を要するものであり、請求人は、本件商標の出願前から現在に至るまでの連綿とした引用商標の周知性を立証する証拠の一つとして、甲第9号証の2を提出したものであり、これが周知性立証の証拠にはなり得ないとする被請求人主張は、失当である。
(エ)甲第14号証は、請求人の会社案内であり、これに「アルミキャスト製厚手調理器」や「アルマイト板製調理器」等の記載があることから、請求人が引用商標を記述標章として使用しているとする、被請求人主張は、失当である。
すなわち、甲第14号証会社案内記載の上記表示が、一般的な記述的表示として用いられていることは、請求人も否定しないが、それと引用商標「キャスト」がどの様な使用態様で用いられているかは、全く関連性のない問題である。少なくとも、甲第9号証の1における引用商標の使用態様をみれば、これが商標的使用態様として、当該カタログに記載された特定の商品群の識別標識として機能していることは明らかである。
(オ)甲第9号証ないし甲第21号証の全証拠を総合的に検討すれば、請求人所有に係る引用商標は、請求人の取り扱いに係る商品「なべ類」に関し、長年の使用により周知であると認められるものである。
3.むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号若しくは同第15号に該当するから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
第4.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番含む。)及び参考資料1を提出した。
1.本件商標の登録出願から本件無効審判請求に至るまでの経緯
被請求人の日本法人は、平成12年7月頃より国内で本件商標「TWIN Cast」の使用を開始したところ、平成12年12月27日に請求人から商標権侵害訴訟(東京地裁 平成12年(ワ)第27776号)を提起された。
被請求人は、請求人からの訴追に対抗するため、商標権侵害訴訟が提起された後に本件商標登録出願をし、早期審査に関する事情説明書を提出した。
特許庁は早期に審査を行い、平成13年6月29日に設定登録された。
前記侵害訴訟の判決は平成13年10月12日に言い渡された。この事実を参考資料1に示す。参考資料1から明らかなとおり、請求人の請求は棄却され、この判決は確定した。
その後、平成13年12月28日に本件無効審判請求がなされたという経緯がある。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標については、現在被請求人の日本法人(日本へンケルス株式会社)がその指定商品「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」について、取消審判(審判番号 取消2001−30498)を請求している。前記取消審判によれば、引用商標は、使用の実体がない可能性が高い。
また、「キャスト」は英文字「cast」を示し、「鋳造する」(乙第1号証)、「鋳込」、「鋳造する」(乙第2号証)という意味があり、これをなべ類等に使用した場合は、「その商品の生産方法を示す標章」ということができ、商標法第3条第1項第3号に規定の、いわゆる記述商標に該当し、識別力のない標章である。このことは、請求人のカタログ(甲第9号証の1)表紙裏1頁中段の「アルミキャスト《鋳造》製厚手調理器」と記載されていることからもわかる。すなわち、「キャスト」は「鋳造」の意味であることを、請求人は自ら記載している。
(2)商標の類似について
(ア)請求人は、本件商標は「TWIN」と「Cast」との間には、1字分の空白が存在し、「TWIN」はすべて大文字で、「Cast」は頭文字のみ大文字で他は小文字であるから、分離されると主張している。
しかし、本件商標は、「TWIN」と「Cast」の間に空白が設けられているものの、その空白は大きいものではなく、文字の書体が同一で、文字の大きさが均一であり、常に一体として表記され、略称されることがないから、外観は、全体として一体性を有している。
そのうえ、被請求人は、ドイツ国ゾーリンゲン地方を代表する刃物類を含む調理器具メーカーであり、日本を含む世界各国で「TWIN」の商標を付した商品を販売している。日本においては、明治時代から輸入商社によってその商品は輸入されており、昭和48年に日本法人が設立されて以来、各地のデパート、量販店等で、包丁を始めとする台所用品に「TWIN」、「Twin」、「ツイン」または双子のマークを付して販売している(乙第3号証:被請求人作成発行のカタログ)。また、本件商標を付したなべの取扱説明書を乙第4号証として提出する。
さらに、被請求人は、「TWIN」は、日本において商標登録第2163846号(乙第5号証の1及び乙第5号証の2)及び商標登録第4547934号(乙第6号証)として所有し、また世界各国において92件の登録を所有している(乙第7号証)。
以上から、被請求人が使用している「TWIN」は著名性を獲得している。
請求人は、「『TWIN』は、識別力を欠く記述的表示」と主張するが、前記のとおり、「TWIN」は著名性を獲得しており、請求人の前記主張は失当である。
以上のとおりであるから、本件商標は、「TWIN」部分と、それより識別力が劣り、識別力が高いとはいえない「Cast」部分が結合した標章であり、その結合は、外観において一体性を有しており、称呼においても分離、略称されることはないから、全体として一体をなしている。
(イ)請求人は、文法上及び構成外観上、「TWIN」と「Cast」は分離判断されると主張しているが、外観において一体性を有していることは前記で説明したとおりであり、商標法においては称呼、外観、観念によって類否を判断し、文法上の判断は必要としない。
(ウ)請求人は、「Cast」から固定的な観念を導き出すことは困難であると主張しているが、本件の指定商品「なべ類」との関係においては、前記したとおりの意味合いを有するものであるから、これをなべ類等に使用した場合は、「その商品の生産方法を示す標章」ということができ、商標法第3条第1項第3号に該当し、識別力のない標章である。
これに対して「TWIN」は、請求人が主張するような「対の」又は「二つの」という観念の他、被請求人が昭和48年に日本法人が設立されて以来使用している独特の「双子」マークの著名性から、「双子の」という観念を生ずるから、本件商標は、「対の鋳造品」、「二つの鋳造品」または「双子の鋳造品」という一体の観念が生ずる。そして、「対の」、「二つの」または「双子の」という観念は、本件の指定商品「なべ類」との関係がないから、識別力は高い。
(エ)請求人は、甲第3ないし甲第7号証を用いて、「TWIN」には識別力がないと主張しているが、甲第3号証は旧法の第9類、甲第4号証は旧法の第11類、甲第5号証は旧法の第25類、甲第6号証は旧法の第11類、甲第7号証は旧法の第11類に関するもので、指定商品が異なる。商標法第3条第1項第1ないし同3号の冒頭には、「その商品の」とされており、指定商品との関係において識別力を判断する必要がある。
(オ)そこで、本件商標全体を一体として、引用商標と対比すると、以下のとおりとなる。
(a)引用商標は片仮名で「キャスト」と横書きして構成したものであるのに対し、本件商標は欧文字で「TWIN Cast」と横書きして構成したものであるから、両者の外観は全く異なる。
(b)引用商標は「キャスト」の称呼を生じるのに対し、本件商標は「ツインキャスト」の称呼を生じるのであるから、両者の称呼は異なる。
(c)引用商標は、英単語の「cast」に由来し、英単語の「cast」には、「鋳造物」又は「鋳造する」という意味があるから、引用商標は、そのような観念を生じるのに対し、本件商標は、英語としては、「双子の鋳造物」という意味があるから、そのような観念を生じるところ、これらの観念は異なる。
以上のとおり、引用商標と本件商標が類似するとは認められない。
3.商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、甲第9号証の1(商品総合カタログ)をもって、引用商標は周知だと主張しているが、甲第9号証の1の1頁左上には「キャスト」の標章が記載され、「キャストは当社の登録商標です。」との説明文字が付加されているが、具体的な指定商品について付された商標ではない。まさに、カタログの題名にすぎない、すなわち、引用商標の指定商品は「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」であるから、例えば「なべ類」を取り上げると、どのような具体的な「なべ」商品に使用されているのかが明らかでなければならないところ、甲第9号証の1の1頁に記載されている「キャスト」には、具体的な指定商品が全く存在しない。
以上のように、標章「キャスト」は、具体的な商品に使用された実績がないことが明らかであるから、周知であるはずがない。
(2)甲第9号証の1中、特定の商品に直接表示されている標章(商標)は、「fattie/ファテイ工」、「CASTAGE/キャステージ」、「SINE QUA NON/シーネ・クワ・ノン」、「PURECAST/ピュアキャスト」等である。これらの商標が付与された商品は、それぞれデザインも色調も材質も異なり、個性化された商品を他の商品と識別されるために使用されていることがわかる。参考までに、甲第9号証の1の2頁以降の商標は、「キャスト」とは社会通念上の同一性は認められない。
そうとすれば、甲第9号証の1の1頁「キャスト」には、商品識別の主観的要件の存在は認められず、社会通念上、商標の使用ということはできない。すなわち、商品識別の主観的要件が欠如しているため、識別標識たる商標としての機能を失っており、商標の使用とは認められない。
加えて、甲第9号証の1の表紙裏1頁中段には、「アルミキャスト《鋳造》製厚手調理器」と記載され、「キャスト」は「鋳造」の意味であるから、請求人は「キャスト」に識別力がないことを自白している。
また、本件商標が専用使用権者または通常使用権者によって使用されていたとの事実もない。
したがって、本件商標は、その指定商品中の「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」について使用されておらず、周知であるという事実はない。
(3)請求人は、甲第9号証の2(商品総合カタログ)は、平成13年作成と主張しているが、本件商標の出願日より後の発行と思われるので、周知性の証拠にはなり得ない。
以上のとおり、請求人の引用商標「キャスト」が使用されていなかったことは明らかであり、周知性も発生していないから出所混同のおそれもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。
4.むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
第5.当審の判断
1.商標法第4条第1項第11号について
本件商標は「TWIN Cast」の文字を標準文字で書してなるところ、構成各文字は大文字と小文字の差違はあるが、同書、同大にまとまりよく一体的に構成されており、特に軽重の差を見出すことができないばかりでなく、これより生ずると認められる「ツインキャスト」の称呼も格別冗長とはいえず、よどみなく一連に称呼し得るものである。
この点に関し、請求人は、「本件商標中の『TWIN』の文字は、『一対の、対のもの』の意味合いを有する語であって、当該商品が『対になっている』ことを表すにすぎない識別力を欠く記述的表示であるから、要部『Cast』のみでも類否判断されると認められる。」旨主張しているが、かかる構成においては商品の品質を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい得ないところである。
また、請求人は、その主張を裏付けるために審決例(甲第3号証ないし甲第7号証)を提出したが、それらは、本件商標とは指定商品を異にするものであり、本件とは事案を異にするものといえるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ツインキャスト」の一連の称呼のみを生ずるものというべきである。
これに対し、引用商標は、「キャスト」の文字よりなるものであるから、構成文字に相応して「キャスト」の称呼を生ずること明らかである。
そこで、本件商標より生ずる「ツインキャスト」の称呼と引用商標より生ずる「キャスト」の称呼とを比較するに、両者は、前半部における「ツイン」の音の有無に顕著な差違を有するものであるから、称呼上明らかに聴別し得るものである。
また、本件商標からは「双子の鋳造物」程度の意味合いが生ずるものと認められるのに対して、引用商標よりは「鋳造物」の意味合いが生ずるから、両者は観念上相違するものである。
さらに、両商標は、前記のとおりの構成よりなるから、外観において互いに区別し得る差異を有する。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれ
の点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
2.商標法第4条第1項第15号について
請求人は、「引用商標は、請求人の取り扱いに係る商品『なべ類』に関し、長年の使用により周知であると認められ、本件商標が、その指定商品中の『なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん』に使用された場合は、被請求人とは他人である請求人の業務に係る商品『なべ類』と混同を生ずるおそれがある。」旨主張し、証拠資料として甲第9号証ないし甲第20号証(枝番含む。)を提出した。
しかるところ、請求人がその使用の事実を証する書面として提出した甲第9号証の1及び2(商品総合カタログ)の表紙裏の1頁には「キャスト」の文字と「丸にR」の記号が表示され、「キャストは当社の登録商標です。」と記載されているが、3頁以降に掲載されている商品「なべ類」の項には、それぞれに、「fattie(ファティエ)」、「CASTAGE(キャステージ)」、「mystar(マイスター)」、「SINE QUA NON(シーネ・クワ・ノン)」、「PICCADILLY(ピカデリー)」等の具体的な商標名が表示されている。
そして、引用商標「キャスト」の文字が、「鋳造物」を意味する英語「cast」のカタカナ表示であって、商品「なべ類」との関係においてはその商品の品質、製造方法を表示するものとして認識され、自他商品識別標識としての機能が薄い語であるという事実よりすれば、商品総合カタログに表示された引用商標は商品「なべ類」全般の品質、製造方法を表示したものとして認識される場合が少なからずあるものというべきである。
これに対して請求人は、「甲第9号証の1記載の各種なべ類の統一的なシリーズネーム、メインブランドとして、引用商標を用いているのであり、かつ、個別の商品をさらに特定するために、サブブランドあるいはペットネームを用いるものである。」旨主張しているが、引用商標の係る使用がその後に掲載されている「各種なべ類」の統一的なシリーズネーム、メインブランドとしての使用として容易に認識され得るとはいい難いところである。
そうとすれば、引用商標は請求人の業務に係る商品「なべ類」を表示する商標として使用されていたとはいえないものというのが相当であり、このことは、請求人自身が商品総合カタログに「アルミキャスト《鋳造》製厚手調理器」として表示し、引用商標である「キャスト」を「鋳造」の意味合いをもって使用している事実からも十分に伺える。
加えて、前記したとおり、本件商標と引用商標とは、商標において別異のものであって、他に商標について混同を生じさせるおそれもないものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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