結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35013(T2002−35013/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4110098号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、平成8年3月4日登録出願、同10年2月6日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証を提出した。
1.請求人は、米国のNASDAQ(ナスダック)店頭株式市場を運営する法人であり、日本においてもナスダック・ジャパンの主要株主となっているものである。 「NASDAQ」の語は、請求人が運営する店頭株式市場を意味するものとして、また、請求人の業務に係る証券取引の役務を表示する商標として、日本及び米国を含む全世界において周知・著名となっている。
2.「NASDAQ」の周知性・著名性について
(1)全米証券業協会は、1971年2月8日、アメリカ合衆国で「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」、すなわち、「全米証券業協会による株式店頭相場自動表示システム」を確立した。このシステムはその頭文字をとって「NASDAQ」システムと名づけられた。請求人は、全米証券業協会が全株式を保有する同協会の子会社として、同システムを用いて取引を開始し、現在までこれを運営している。また、同システムによる株式店頭市場は、「NASDAQ」(ナスダック)と呼ばれているところである。
「NASDAQ」システムは、コンピューター上に株式市場を設け、投資家や証券業者は、店頭での株式に関する取引や情報の取得を全てコンピューターを通じてオンライン上で行うものである。同システムは、投資家や証券業者が自己のコンピューターから同市場にアクセスするだけで容易に株式取引や情報の取得ができる利便性があり、極めて画期的であった。また、このような画期的な株式相場であるため、日本においてもその新規性や将来性に注目が集まり、日本国内においても大きく報道されてきている。
「NASDAQ」市場における証券取引量は、1995年に取扱株式数量においてニューヨーク証券取引所を抜き、さらに、1998年には取扱金額においてもニューヨーク証券取引所を抜き、世界第1位の規模を誇るに至っているものである。また、同市場においては、経済のグローバル化に伴って、米国企業に限らず世界各国の優良企業の株式も広く取引されている。日本企業としては、三井物産、日産自動車、三洋電機、NEC、富士写真、日本航空、麒麟麦酒、イトーヨーカドー、CSK、ワコール、その他の株式が取引されているところである。
(2)日本と米国との緊密な経済関係からも、ナスダック株式市況についての情報は、そのナスダック創設時から日本においても常時報道されてきているものである(甲第2号証ないし甲第4号証)。同株式市況の記事は、ナスダック市場が営業を行った翌日には必ず掲載されているものである。また、ナスダック株式市況については、テレビやラジオの経済ニュースにおいても以前から常時報道されているところである。
「ナスダック」は、請求人の略称又は請求人の電子市場システムを表示するものとして、数多くの辞典類にも掲載されている(甲第5号証ないし甲第7号証)。
また、米国のナスダック市場についての記事は、日経ビジネス等の雑誌においても、本件商標の出願前から頻繁に掲載されているところである。
ちなみに、請求人は日本において、「NASDAQ」及びそれに関連する商標について種々の商標登録出願をなしているが、現在までに日本及び外国でも多数の商標登録を得ている(甲第8号証ないし甲第35号証)。
(3)上述のように、「NASDAQ」は、請求人の略称又は請求人の電子市場システムを表示するものとして、また、請求人の業務に係る証券取引の役務を表示する商標として、本件商標の出願前から、米国及び日本等において広く知られているところである。
さらに、「NASDAQ」は、コーヒーカップ、マグカップ、タンブラー、Tシャツ、ヴェスト、帽子、シャツ、スカーフ、ネクタイ、ゴルフボール、バスケットボール、その他のスポーツ用具、バッグ、傘、人形、時計、ラジオ、CDケース、写真たて等広範囲の商品に商標として使用されており、これらの商品は、請求人が開設するNASDAQのインターネット・サイトにおいて販売されている(甲第36号証)。当然ながら、日本においてもこれらの商品を購入することができる。また、請求人は、以前から「NASDAQ」と題するビジネス月刊誌を発行しており、同誌は日本を含む世界各国において広く購読されているところである(甲第37号証)。
3.商標法第4条第1項第19号について
「NASDAQ」は、日本語では「ナスダック」として表記されているところであるが、本件商標は、「NASDAQ」の片仮名表記と全く同一である。請求人の略称又は商標であるという観点、又は上記店頭市場であるという観点を離れた場合には、「ナスダック」という語は何ら特定の意味合いを有するものではない。また、日本語において「ナスダック」という固有の語が存在しないことは明らかであり、本件商標の出願人が独自に「ナスダック」という語を考え出すということは、現実には全く考えられないところである。
したがって、被請求人が「ナスダック」という極めて特異な名称をその商標として選択したという事実は、同人が請求人の「NASDAQ」(ナスダック)を前提として、それをそのまま瓢窃したものであるという事実、及び同人において請求人が運営する店頭市場の名称・商標の著名性にフリーライドしようとする不正の目的を有するものである事実を如実に物語るものである。このように、本件商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、日本国及び米国における需要者の間に広く認識されている「NASDAQ」と同一又は類似の商標であり、かつ不正の目的をもって使用をなすものであり、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
4.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、請求人が運営する「NASDAQ」(ナスダック)店頭市場の名称及び請求人の商標の著名性にフリーライドしようとする不正の目的の下に、それをそのまま瓢窃しようとするものであることは、前述のとおりであり、被請求人のこのような行為は、公正な競業秩序の維持を旨とする正常な取引慣行に違反するものであって、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
5.商標法第4条第1項第15号について
「NASDAQ」(ナスダック)という名称及び商標の著名性及びその称呼の特異性からしても、本件商標がその指定役務である「飲食物の提供」に使用された場合には、その役務が請求人の業務であるとか、又は請求人と何らかの関係を有する者の業務であるとの誤認、混同を生じさせるおそれが極めて高いものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものである。
ちなみに、本件商標は、「飲食物の提供」を指定役務とするものであり、一方、「NASDAQ」商標は、第36類の役務に関して極めて著名なものであるが、「飲食物の提供」に関しては現在のところ使用されていない。
しかしながら、「NASDAQ」商標は、上述のとおり、「コーヒーカップ、マグカップ、タンブラー」など、飲食物の提供の際に使用される商品について、以前から使用されているものである。また、引用商標は、第36類の役務に使用される以外にも、上記のように極めて広範囲の商品に現実に使用されているものである。このような事実と共に、「NASDAQ」商標の著名性及びその称呼の特異性を前提とすれば、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合には、その業務が請求人の業務であるとか、又は請求人と何らかの関係を有する者の業務であるとの誤認、混同が生じるおそれのある。
6.よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、及び同第19号に該当するものであり、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とさるべきものである。
被請求人は、請求人の上記第2の主張に対し、何ら答弁していない。
1.「NASDAQ」、「ナスダック」の著名性について
甲各号証及び請求の理由を総合すると、請求人は、米国の「NASDAQ」店頭株式市場を運営する法人であり、日本のナスダック・ジャパンの主要株主でもあること、上記「NASDAQ」の語は、「全米証券業協会(NASD)が店頭取り引きされる証券の相場情報を知らせるシステム」を意味し、該システムは、コンピューターを介して端末機に自動表示されるものとして、全米証券業協会が1971年に完成させたものであること、このようなコンピューターを介して行われる証券の相場情報を知らせるシステムは、画期的なものであったため、わが国においても注目され、マスメディアを通じて大きく報道され、1991年10月に、日本版NASDAQともいえる株式店頭市場の機械化システム(JASDAQ)が稼働を開始したことなどが認められる。
そして、「NASDAQ」の語は、わが国においては、「ナスダック」と表記及び称呼され、請求人が運営する店頭株式市場を表示するものとして、また、請求人の業務に係る「株式市況に関する情報の提供」等を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、テレビ、新聞、雑誌等を通じて報道されていたことは、顕著な事実といえる。
上記事情からすると、「NASDAQ」又は「ナスダック」は、請求人が運営する店頭株式市場を表示するものとして、また、請求人の業務に係る証券取引に関する役務を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、わが国においても広く認識されていたものと認め得るところである。
2.不正の目的について
甲第5号証ないし甲第7号証によれば、「NASDAQ」は、「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」(「全米証券業協会による株式店頭相場自動表示システム)」の語の頭文字をとったものであり、造語よりなるものと認められる。
一方、本件商標は、別掲のとおり、「ナスダック」の片仮名文字を書してなるものであり、該文字に相応して「ナスダック」の称呼を生ずるものである。
そして、本件商標を構成する「ナスダック」の文字及びこれより生ずる称呼からは、前記請求人が運営する店頭株式市場又は請求人の業務に係る証券取引に関する役務を表示するものとして、著名な「NASDAQ」又は「ナスダック」が想起される以外に、他の語義を有しないものであり、わが国において特異な語として印象付けられるものであって、何人もが容易に採択しうる語であるとはいい難く、「NASDAQ」と称呼において同一である本件商標を被請求人が採択したことが偶然の一致であるとは到底認め難いところである。
してみると、本件商標は、請求人の「NASDAQ」商標の著名性にただ乗りをする意図をもって、被請求人により登録出願されたものといわざるを得ず、その登録出願には不正の目的があったものといわなければならない。
3.むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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