Trademark Appeal Case
生産方法表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−3786(T2000−3786/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「二度仕込み」の文字を横書きしてなり、願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成10年7月28日に登録出願、その後、指定商品については、原審における同11年9月22日付け手続補正書をもって、第30類「しょうゆ」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『二度仕込み』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、その指定商品中の『しょうゆ』との関係よりすれば、『醤油の仕込において、仕込工程を二度繰り返したものであること』を看取させるに止まるものである。このことは、出願人目身が請求人の平成6年第8222号拒絶査定不服審判においても、認定されている如く、例えば、『日本経済新聞』地方面/新潟1987年5月23日、同新聞地方面/茨城1998年4月4日、『日本食糧新聞』1997年10月17日:14面、同新聞1998年2月6日:5面の各新聞によっても明らかである。以上よりすれば、本願商標をその指定商品中、『再仕込みしょうゆ』に使用するときは、単に商品の生産方法を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。なお、出願人は、指定商品を『しょうゆ』に補正し、かつ意見書及び2度にわたる上申書において種々述べると共に、仮に本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、使用により、自他商品の識別性を有すに至ったものである(商標法第3条第2項の適用)旨主張しているが、商標法第3条第1項第3号に該当することは、先に述べたとおりであり、商標法第3条第2項の適用の可能性についてみるに、出願人のみが『二度仕込み』なる商標を使用しているものではないこと明らかであり、かつ、出願人の提出に係る証左によっても、他の文字(イチビキ、長熟)と共に使用されているものであって、本願商標単独での使用はほとんど認めることができない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張(要旨)
1.本願商標はその構成自体よりして自他商品識別力を有する点について
(1)本願商標の採択
a.本願商標「二度仕込み」は出願人が案出した造語であって、一般的用語ではない。「二度仕込み」は、平成2年、出願人がその新発売にかかる高級しょうゆの商標として採択したものである。出願人の「二度仕込み」は、一度しぼった生しょうゆにもう一度こうじを加えてつくった特別なしょうゆで、じっくり熟成させ、マイルドな味わい、さわやかな香りと豊なおいしさを特質とし、おさしみ、冷やっこ、おひたしなどに使用する高級しょうゆである。
b.ここで、「二度仕込み」の語が、「仕込み工程を二度繰り返す」ことを意味するものではない。仕込み工程を繰り返すなる概念はなく、上記工程の全体をして1回の「仕込工程」ということになる。「二度」を付したのは、一度しぼった生しょうゆにもう一度こうじを加えるという特別丁寧に熟成させる仕込み工程を暗示し、間接的に示唆すべく表現したものであって、実際に2回仕込むものではないし、2回仕込むといったしょうゆの製造方法もない。「二度仕込み」は、従来のしょうゆ業界において全く使用されていない出願人の創作にかかる商標である。
(2)「二度仕込み」は不可分一体に構成され、その構成上特徴ある商標である。
本願商標を分断してみた場合に、「二度」は回数、「仕込み」は味噌・醤油の製造方法として、その各々を分断してみれば、これが一般的な用語であることはこれを認める。しかしながら、これら各語が一体として結合した「二度仕込み」なる一般的用語はない。勿論、「二度仕込み」なる用語が一般用語として実際に通用しているものでもない。出願人は、各種大型辞書を調べたが、「二度仕込み」あるいはこれに類する用語が一般的用語として掲載されている例は一切なかった。
よって、本願商標「二度仕込み」に接する取引者、需要者は、常にこれを、その全体で一個の商標として認識し、これを特徴ある構成からなり特定人の業務にかかる商品を表示する商標として理解するものである。
(3)「再仕込みしょうゆ」について
「再仕込みしょうゆ」なる一般的な用語は、本願商標「二度仕込み」と比較的近似した印象を与えるかもしれないが、「再仕込みしょうゆ」は明確に定義される用語であって、仕込み工程における原料の特殊性をいう用語であり、仕込みを繰り返すといった概念ではない。この他、しょうゆに関し「二度仕込み」なる用語を、商品の内容、製造方法を表示するために使用している例は全くない。よって、「二度仕込み」が独占適応性を有しない用語であるとされるものでもない。
2.本願商標「二度仕込み」は出願人が広く使用し「使用による自他商品識別力」を取得している点について
(1)本件出願人、イチビキ株式会社は本願商標「二度仕込み」をしょうゆに使用し、当該商品は、本件出願人による広範な使用の結果、本願商標を付した商品は出願人の業務に係る商品であると認識されている。
(2)出願人、イチビキ株式会社は、同社の特級しょうゆに本願商標「二度仕込み」を使用し、広く宣伝広告している。出願人は、「二度仕込み」の広告を、読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、東海日々新聞、東愛知新聞、岐阜新聞、伊勢新聞などの各紙に掲載してきた。さらに、出願人は、「二度仕込み」に関するテレビ広告を「イチビキ長熟特級しょうゆ〈おいしいダンス編〉」として、東海テレビ放送、名古屋テレビ放送、中京テレビ放送、テレビ愛知、静岡放送、中部日本放送、テレビ静岡などを通じ、積極的に宣伝広告した。
(3)これらの活発な宣伝広告活動、販売促進活動の結果、出願人の「二度仕込み」は、中京地区の消費者の支持を受けている。出願人の「二度仕込み」の各年度別販売額は次の通りである。平成2年度1億1000万円平成3年度3億6000万円平成4年度4億0000万円平成5年度4億5000万円その後も毎年高い販売額を維持している。
(4)しょうゆは、伝統的な味覚に関し、地域性の高い商品であるところ、上述した活発な宣伝広告活動、販売促進活動、販売額は、出願人の商品「二度仕込み」が、特に、中京地区の消費者、取引者に広く認識され、愛好されていることを示している。上記地域を中心に、「二度仕込み」といえば、商品の内容に関する一般的用語ではなく、出願人の商品を指称する商標として広く認識され、「二度仕込み」は出願人の商標として現に機能している。よって、本願商標は、出願人による大規模な使用の結果、出願人の商標として認識されるに致っており、自他商品識別力を有する商標として現に市場において商標として機能しているものである。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号について
本願商標の「二度仕込み」の文字については、「食品知識ミニブックシリーズ『味噌・醤油入門』」(発行所:株式会社日本食糧新聞社)173頁「さいしこみしょうゆ」の項に「仕込み食塩水のかわりに生しょうゆを使って二度仕込みを行うので、この名称がある。・・・」と記載されており、また「再仕込みしょうゆ」に関しては、上記に加えて「調味料 新・食品事典7」(発行者:真珠書院 代表 三樹 彰)133頁「再仕込みしょうゆ」の項に「甘露しょうゆともいう。食塩水の代わりに生揚げしょうゆを使って仕込んだもので、しょうゆを二度醸造するような形になるので、再仕込みしょうゆという。・・・」の記載もある。
なお、「仕込み」の文字は「酒や味噌・醤油などの醸造で、原料を混ぜて桶などにつめること。」(広辞苑第五版 発行所:岩波書店)を意味する。
そして、該「二度仕込み」の文字は、原審における拒絶の理由に掲げた新聞記事において、「天然醸造で仕込みを二回行う『丸大豆二度じこみ』・・・」(日本経済新聞社地方面/新潟1987年5月23日)、「・・・天然醸造でゆったりと年月をかけて仕込みを二回行い発酵熟成させた、まろやかでコクのある昔ながらの醤油『丸大豆二度じこみ』」(日本食糧新聞、1997年10月17日)、「『二度仕込み』で濃厚・芳醇な味わい・・・塩水の代わりに本醸造醤油を使って麹を仕込み、再び再発酵させた超特選醤油・・・」(日本食糧新聞、1998年2月6日)、「『二度仕込み醤油』など同社製品・・・」(日本経済新聞社地方面/茨城1998年4月4日)のように同業他社の新製品の醤油の仕込みの説明記事として使用されているものである。
さらに、「しょうゆ」の製造者、販売者の提供するインターネットのホームページ(例:静岡県産醤油協業組合のホームページ[http://www.syouyu.com/syoyu1.html]「醤油の紹介 醤油の種類 さいしこみしょうゆ」の項「・・・原料はこいくちしょうゆと同じですが、仕込に食塩水の代りに生しょうゆを使い、二度仕込みを行いますのでこの名称がつけられてます。・・・」)においても、多数の者が「二度仕込み」の文字を生産方法を表すものとして使用していることは、枚挙にいとまが無いというほどのものである。
そうしてみると、本願商標を構成する「二度仕込み」の文字は、指定商品「しょうゆ」との関係において、全体として、「醤油の仕込みにおいて、仕込み工程を二度繰り返したもの」程度の意味合いしか認識させ得ないものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、これを指定商品中「再仕込みしょうゆ」に使用したときは、単に商品の生産方法を表示するにすぎないものであり、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の「しょうゆ」に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するといわざるを得ない。
(2)商標法第3条第2項について
請求人(出願人)は、本願商標について使用による顕著性を取得したとして、原審において提出した、平成11年9月22日付意見書に添付した甲第3号証ないし同第7号証、平成11年10月14日付上申書に添付した同第8号証ないし同第35号証、平成11年12月20日付上申書に添付した同第36号証、添付資料(1)ないし(11)及び別表1ないし3を援用している。
そこで、請求人(出願人)提出の甲各号証、添付資料、別表について検討すると、本願商標が請求人(出願人)の業務に係る指定商品に使用されてきたことは確認し得るが、それらは全て、「イチビキ」の片仮名文字と共に使用されているものであって、本願商標のみが独立して指定商品に使用されて社会的に自他商品識別標識機能を備えるに至ったという本願商標の使用例は確認することができなかったものである。
また、前記各書籍、新聞等の記載内容及び記事等を勘案すれば、請求人(出願人)のみが「二度仕込み」の文字を使用し、他人は使用していないとはいえないものである。
そうとすると、本願商標が、その指定商品に使用され、請求人(出願人)の業務に係るものとして、取引者、需要者間に広く認識されるに至っているとは認められないものであるから、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものであるとする請求人(出願人)の主張は、これを採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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