結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成7年審判第6848号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件は、「真▲葛▼」の漢字を左縦書きしてなり、第19類「台所用品(電気機械器具、手動利器および手動工具に属するものを除く)日用品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、平成3年12月13日に登録出願され、平成5年10月29日に設定登録された登録第2593798号商標(以下「本件商標」という)に関する商標法第46条の規定に基づく商標登録の無効審判請求(以下「本件請求」という)である。
I.請求人の主張等
請求人は、本件商標はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、次の趣旨の理由および弁駁を述べると共に、証拠方法として甲第1号証〜甲第11号証(枝番を含む)を提出している。
1.本件商標は、昭和58年8月24日に登録出願され、別紙に示すとおりの構成よりなり、旧第19類「陶磁器製の食器類」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録がなされ、現に有効に存続する登録第2247814号商標(以下「引用商標」という)と類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、その商標登録は無効とされるべきである。
(1)本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、前記構成のとおり、「真▲葛▼」の文字よりなり、該文字は、「▲葛▼の美称」「植物クズの美称」の意味を有する語として、株式会社岩波書店発行「広辞苑」(甲第3号証)ならびに株式会社三省堂発行「大辞林」(甲第4号証)に記載されているところであり、その読みも「マクズ」と称呼されるものである。
一方、引用商標をみるに、別紙に示すとおりの構成よりなるものであって、「真▲葛▼」の文字を草書体で表したものである。該文字は、上述したように「▲葛▼の美称」「植物クズの美称」の意味を有する語であり、「マクズ」と称呼されるものである。
(2)してみれば、本件商標と引用商標とは、漢字の「真▲葛▼」の書体が明朝と草書の差こそあれ、「▲葛▼の美称」「植物のクズの美称」の観念を共通にするものであり、称呼においても「マクズ」の称呼を共通にするものであるから、両者は称呼、観念ともに類似することは明白である。
(3)したがって、本件商標と引用商標は、商標において類似し、かつ、指定商品においても、本件商標の指定商品中の「食器類、パン入れ、つぼ、たる、菓子かん、茶かん」と引用商標の指定商品「陶磁器製の食器類」とは、商品において抵触し、同一又は類似の商品に使用するものであるから、指定商品も類似するものである。
2.下記II1に対する弁駁
(1)引用商標は、「真▲葛▼」の文字を草書体で縦書きしてなるものであり(甲第2号証の1)、書道家でなくとも通常の日本語の知識を有するものであれば、これを楷書では「真▲葛▼」と表されるものであることを容易に認識できるものであり、この「真▲葛▼」は本件商標を構成する文字と符合するものである。
ちなみに商願昭58−80967号の昭和60年3月25日付け拒絶理由通知書(甲第5号証)においては、引用商標は普通書体で「真▲葛▼」を表したものであると指摘されている。
(2)引用商標が、「真▲葛▼」の文字を草書体で縦書きしてなるものであることは通常の日本語の知識を有するものであれば容易に認識できるものであり、このことは、甲第6号証〜甲第10号証の証明書によっても立証される。
(3)したがって、本件商標は、書体に明朝と草書の差があるとはいえ、引用商標と称呼及び観念において同一であるので、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものである。
(4)なお、被請求人は、請求人が不正競争行為をしているかのように主張するが、被請求人が提出した乙第12号証の序文等を参照すれば、この点においても被請求人の主張が失当であることは明らかである。
(5)即ち、請求人が著者である、昭和63年5月23日毎日新聞社発行の「真▲葛▼」の第3〜15頁(甲第11号証)には序文等が掲載されており、ここには、請求人が京都の陶家宮川家の後継者であり、京都の真▲葛▼焼を承継するものであることが記載されている。
II.被請求人の主張等
被請求人は、結論同旨の審決を求め、次の趣旨の理由をもって答弁すると共に証拠方法として乙第1号証〜乙第21号証(枝番を含む)を提出している。
1.答弁の趣旨
(1)引用商標は、別紙に示すとおりの構成よりなり、何の文字かまた文字であるか否かも不明なものであり、「真▲葛▼」の文字の草書体ではない。これに対し、「真」の文字の草書体は、乙第1号証の4及び乙第2号証の3にある構成であるから、これらの対比から明らかなように、「真」の文字の草書体とは全く異なる。
(2)引用商標の下部の表示についても「▲葛▼」の文字の草書体とは異なる。「▲葛▼」の文字の草書体は乙第1号証の6及び乙第2号証の4に表示されているような文字であり、引用商標の下部の表示とは全く異なる。
(3)商標の称呼は、商標(その構成自体)より自然に流れ出るところによって判定されるものである。引用商標は文字として判読できないため、何らの称呼も生じないと考えるのが自然である。
(4)以上の点から考えて、引用商標から「▲葛▼の美称」「植物クズの美称」なる意味・観念も生じる余地もなく、引用商標と本件商標とは、外観、称呼および観念のいずれの点においても類似していないものである。
(5)そもそも、「真▲葛▼」及び「真▲葛▼焼」の商標は、被請求人の曾祖父である初代宮川香山(虎之助)及びその後継者の制作した陶器を表わす商標として日本のみならず世界的に周知・著名となっている商標である。初代宮川香山(虎之助)は、京都の真▲葛▼原に窯を有し陶器を制作していたが、従来の陶器を越えた本格的陶芸に挑戦せんと明治3年、妻子門弟とともに京都から横浜に移り、横浜の南太田(太田ともいわれている)という場所に開窯した。
横浜で開窯した初代宮川香山は「真▲葛▼」または「真▲葛▼焼」の商標(名称)の下に伝統的釉薬と化学的釉薬を用いて独自の陶器を作り出し、日本国内はもとより、世界各国でも高い評価を得た。
(6)3代目宮川香山である宮川▲葛▼之輔及び4代目宮川香山である宮川智之助の制作した「真▲葛▼」ないし「真▲葛▼焼」の陶器は、初代宮川香山の流れをくむ作品としてこれまた高い評価を得ている(乙第3号証の第76頁の「真▲葛▼香山略系譜」及び78頁〜79頁)。
(7)この結果、「真▲葛▼」または「真▲葛▼焼」といえば初代宮川香山(虎之助)及びその後継者の制作した陶器を表示する商標として日本国内はもとより国外でも周知・著名となっており(乙第3号証の第2頁〜第6頁)、乙第3号証の第73頁〜第75頁にあるように国外の美術館でも多数展示されている。また、代々の宮川香山らは横浜の南太田(太田ともいわれている)に窯を設けていたため「真▲葛▼焼」は「太田焼」と別称されることもあり、甲第3号証の広辞苑の第2243頁に明記されているほか乙第4号証にも記載されている。「真▲葛▼」及び「真▲葛▼焼」といえば、初代宮川香山及びその後継者の制作した陶器を表示するものとして現在においても周知・著名であることは、乙第3号証〜同第7号証の各証拠により明らかである。
(8)4代目宮川香山である宮川智之助は、昭和34年に他界しているが、請求人は、初代及び2代目宮川香山の家系にあり、3代目宮川香山である宮川▲葛▼之輔の4男で昭和20年に宮川▲葛▼之輔の後を継いで、同宮川家を家督相続をしている(乙第8号証〜乙第10号証)。
被請求人の3人の兄は、すでに他界しており、初代宮川香山の後継者としては被請求人を除いて存在しない。被請求人は5代目宮川香山として「真▲葛▼」及び「真▲葛▼焼」を復興中であり、「真▲葛▼」及び「真▲葛▼焼」の商標を正当に使用できるのは、被請求人のみである。
(9)被請求人の家系図は、乙第11号証の「宮川家々誌」中に記載されている。被請求人は宮川第7代小兵衛政一の次男長兵衛の子孫であり13代勝之助の4男に当る。ところが、請求人は、乙第12号証の「真▲葛▼」なる本を著し、その第85頁目(頁の表示はない)に宮川家系図なるものを記載し、自分が宮川小兵衛政一の3男の治兵衛政重の子孫であるかのように表示している。
2.上記I2に対する答弁
(1)引用商標における拒絶理由通知書(甲第5号証)には、「真▲葛▼原で焼かれた陶磁器製の商品である真▲葛▼焼の意を容易に認識させる「真▲葛▼」の文字を普通に用いられる方法で表わしなるもの」と記載されている。
しかしながら、これは被請求人の曾祖父である初代宮川香山(虎之助)及びその後継者の製作した陶器を表わす商標「真▲葛▼」または「真▲葛▼焼」があまりに著名であることによるものである。
すなわち、引用商標からは、「マクズ」の称呼は生じないが、周知著名な「真▲葛▼」ないし「真▲葛▼焼」の商標が刻み込まれていたため、引用商標と同一態様の商標を「マクズ」と読めるものとして拒絶理由通知を出したにすぎない。
これに対し、請求人は、「百数十年に亘る唯一の真▲葛▼焼の窯元として、その製造販売にかかる陶器真▲葛▼焼の優れた品質は広く世人に評価され古くより今日に至るまで『真▲葛▼焼』あるいは『真▲葛▼』といえば宮川香斎の商品としての出所の指標力を有する」(宮川香斎とは請求人をさす)と虚偽の主張と事実に反する証拠を提出して、商標法第3条第2項の要件を充足している旨の虚為の主張立証により引用商標の登録を受けたものである。
(2)商標の称呼は、商標(その構成自体)より自然に流れ出るところによって判定されるものであり、引用商標からは「マクズ」の称呼は生じない。
(3)請求人が提出した甲第6号証〜甲第10号証の「証明書」と題する書面の作成者はいずれも請求人と何らかの関係のある人物である。例えば、請求人の制作した陶器について推薦文を記載(いわゆる箱書き)して請求人の陶器の販売に協力している人物である。これらの人物が引用商標は「真▲葛▼」を表わしたものに相違ないことを証明しても何の意味ももたない。
(4)甲第11号証および乙第12号証は、請求人自らの手によって請求人である宮川香斎と(被請求人の曾祖父及びその後継者である)香山家及び(被請求人の曾祖父の初代香山の先代である)長造(長蔵)との関係をはじめて明らかにする為に出版されたとされる書籍である(甲第11号証の奥付に「著者宮川香斎」と記載されている)。同書において明らかにされたという請求人である宮川香斎と香山家及び長造との関係というのは、請求人(宮川香斎)は、被請求人の曾祖父初代宮川香山の先代である長造(長蔵)とも、香山家とも何らの関係もないのにもかかわらず、請求人が被請求人の家系と関係がある旨の虚偽の表示である。
III.判断
本件商標は、前記の構成のとおり、「真▲葛▼」の文字を書してなるところ、該文字(語)は、初代宮川香山(虎之助)が京都の東山真▲葛▼原に窯を有していたことに因み「真▲葛▼焼」と銘々されたことに由来し、明治3年に京都から横浜に移り、横浜の太田(南太田ともいわれる)という場所に開窯し、その後の2代目以降の宮川香山も横浜の大田の窯で陶器を制作してきていることから、初代宮川香山(虎之助)及びその後継者の制作した陶器は太田焼ともいわれるようになったもので、真▲葛▼焼が初代宮川香山(虎之助)およびその後継者が制作した陶器を表わす商標(名称)を認識させるものであることが乙第3号証〜乙第7号証および甲第11号証から窺える。
そして、本件請求は、この真▲葛▼焼の始祖宮川家7代小兵衛政一の次男長兵衛と三男治兵衛政重をそれぞれ祖先とする宮川香山と宮川香斎の家系であり真▲葛▼焼の制作者でもある者を当事者とするものであることが窺える。すなわち、乙第10号証(戸籍の除籍謄本)、乙第11号証(宮川家々誌)および乙第12号証(昭和63年5月23日毎日新聞社発行「真▲葛▼」の抜粋の写し)により、被請求人は、宮川香山の家系にあって、3代目宮川香山である宮川▲葛▼之輔の4男であり、宮川香山の後継者であること、また、甲第11号証および乙第12号証により、請求人は、「香斎を襲名」したことが窺える。
しかし、引用商標は、別紙に示すとおりの構成よりなるところ、甲第6号証〜甲第10号証も、証明書に表示されている商標とその証明書に添付された別紙写真の写しに認められる陶磁器の刻印およびその包装箱に筆書きされている文字とはその形状が相違するので、これをもって引用商標が「真▲葛▼」の文字を表示したものであって、「マクズ」と称呼されることを証するものとは認められず、その他その上部の文字が、草書体の「真」の文字であることを証する書証の提示がなく、職権をもって調査したがその事実は見当たらなかった。
そうとすれば、引用商標が「真▲葛▼」の文字と判読できることを前提とした請求人の主張は、採用できないといわざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるとすることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものとして、これを同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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