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Trademark Appeal Case

著名商標と要部称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35024(T2002−35024/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4214064号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4214064号商標(以下「本件商標」という。)は、「サロニックマイボーグ」の文字を標準文字として、平成9年7月30日登録出願、第3類「シャンプー,その他のせっけん類,頭髪用化粧品,その他の化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、同10年11月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第655209号商標(以下「引用商標A」という。)は、「VOGUE」の欧文字を横書きしてなり、昭和36年10月23日登録出願、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として、同39年10月9日に設定登録されたものである。同じく登録第967284号商標(以下「引用商標B」という。)は、「ヴォーグ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和43年12月20日登録出願、第26類「雑誌、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年6月7日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第75号証(枝番を含む)を提出した。

1.商標法第4条第1項第15号該当について

(1)引用商標Aは、請求人の所有に係るファッション雑誌のタイトルとして、日本を含め世界的に著名となっている商標である(甲第3号証の1ないし3)。

また、引用商標Bは、引用商標Aの片仮名表記であって、わが国においては、第二次大戦以前より現在に至るまで、引用商標Aの片仮名表記として使用されている(甲第3号証の4及び5)。

引用商標A、Bからは「ヴォーグ」の称呼の他に「ボーグ」の称呼も生じる。

引用商標Aの称呼に関し、「日本語の感覚からすれば『ボーグ』と『ヴォーグ』の称呼の区別はつけにくいところである」点は、東京高裁によるVOGUE関連判決における認定でも明らかである。現に、わが国における「VOGUE」誌の説明においても「ボーグ」と表記している例も多くみられる。

しかも、「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し当該著名登録商標の称呼、観念が生じる」ことも裁判所においても明確に認定されているところである。

(2)本件商標は、「サロニックマイボーグ」の片仮名文字からなり、このうち、「サロニック」は「サロン、応接室」等を意味する英語の「salon」をもじって形容詞化した造語と思われ、この「サロニック」には何らかの意味があるとは認められないものであるから、本件商標からは「サロニックマイボーグ」の称呼の他に「サロニック」と「マイボーグ」とを分離した称呼も生ずる。

この点は、被請求人のホームページ中、本件商標は使用されてはいないが、前半部の「サロニック」に関する限り「サロニック」を分離して使用している現実の使用態様から判断して、「サロニック」の称呼と「マイボーグ」の称呼とが分離して生ずることは明らかである(甲第1号証の3)。

加えて、「マイボーグ」と「ヴォーグ」又は「ボーグ」とは、引用商標A、Bの著名性から判断すれば、その要部が「ヴォーグ」又は「ボーグ」の点にあることは明白であり、標章として両者は「ボーグ」と「ボーグ」(又はヴォーグ)の点で外観、称呼が同一である。

しかも、本件商標の指定商品は、「せっけん類,香料類,化粧品」を含むものであって、いずれもファッション関連商品の典型ともいうべきものである。

そして、「ヴォーグ」、「ボーグ」、「VOGUE」は、前記のように、わが国において、本件商標の登録出願時までに、ファッション雑誌の題号としてファッションに関連する商品の取引者、需要者に広く知られていたものである。

以上の事実からすると、ファッションに関連する商品である化粧品等の取引者、需要者が長音を含め8音と長い「サロニックマイボーグ」の称呼よりなる本件商標が付された化粧品等に接すれば、引用商標A、Bとの構成上の相違にもかかわらず、「ボーグ」の部分に着目して、ファッション雑誌である「VOGUE」誌を連想し、その「化粧品等」が請求人、又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。

(3)本件審判事件に関し、特筆すべき事実がある。すなわち、平成9年7月24日判決言渡しの「平成8年(行ケ)第302号審決取消請求事件」の判決(甲第2号証の1)とその原審である特許庁の「平成1年審判第12136号」の審決(甲第2号証の2)の客体及び不使用取消審判請求事件(平成8年審判第19736号;甲第2号証の6)で登録を取消された客体である登録第1700789号商標「マイヴォーグ」(第4類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」)に関する諸事実である。

本件商標と引用商標A、Bとの関係は、次のように要約することができる。

イ)本件商標は引用商標と同一の部分を含むこと

ロ)本件商標は全体として一体不可分の概念(観念)を示すものではない比較的長い商標であること

ハ)引用商標の著名性の程度が高いこと(この事実は被請求人自らが東京高裁における上記事件でも争っていないこと)

ニ)本件商標を使用したときに取引者、需要者が特に注意を引く要部は、「ボーグ」の点にあること

ホ)本件商標の指定商品には、前記のとおり、ファッション商標の典型である「化粧品,せっけん類」等を含むこと

へ)本件商標は、引用商標A、Bの持つ顧客吸引力(グッドウイル)へのただ乗り(フリーライド)及びその希釈化(ダイリューション)を招く危険が明白であること

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の混同を生ずるおそれがある商標に該当するものである。

2.商標法第4条第1項第19号該当について

被請求人は、前記東京高裁の「平成8年(行ケ)第302号事件」における平成9年1月30日付提出の「上申書」で明らかなとおり、請求人らとの間に生じた各費用の合計額184万円を和解の条件として意思表示した事実がある。

登録異議申立制度、登録無効審判制度、さらには審決取消訴訟制度は、いずれも商標法で権利救済制度として定められている正当権利者の保護規定であると共に、取引者、需要者保護の規定でもある。

上記事件について被請求人は、「VOGUE」標章の著名性を東京高裁において自認(甲第2号証の3)しているのであるから、その片仮名表記の標章「ヴォーグ」又は「ボーグ」が「VOGUE」と称呼、観念において同一であることも十分承知のはずである。

その上で、被請求人が不使用取消審決により取消された標章「マイヴォーグ」に代えて「ボーグ」に類似する本件商標を登録したという事実に対し、請求人は、被請求人が「VOGUE」、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の著名性にフリーライドし、不正の利益を得る目的を有しているか、あるいは上記著名商標のグッドウィルを希釈化する不正目的を有しているものといわざるを得ない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定にも該当し、その登録の無効は免れ得ないものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、第3の請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断

1.引用A、B商標の著名性について

(1)甲第7号証ないし甲第51号証、甲第54号証、甲第57号証ないし甲第59号証、甲第70号証及び甲第71号証(枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略した。)を総合すると、以下の事実が認められる。

「VOGUE」誌は、1892年にアメリカで週刊誌として創刊され、1909年にファッション雑誌として発行されるようになった。該「VOGUE」誌は、イギリス、イタリア、フランス等世界の11カ国から発刊され(1999年9月1日現在;甲第10号証)、わが国においても1999年9月1日に「VOGUE NIPPON」(ヴォーグ ニッポン)が発行されたが、それ以前にも海外版の「VOGUE」誌が輸入されていた。例えば、昭和24年10月3日付け朝日新聞(甲第11号証)によれば、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル雑誌『ヴォーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」との記載がある。

わが国において、本件商標の登録出願前に発行された百科事典類には、「ヴォーグ Vogue 最も知られた流行服飾雑誌の名。」(甲第12、17号証)、「ボーグ Vogue フランスの服飾雑誌。」(甲第13、15号証)、「ボーグ Vogue 婦人服飾流行雑誌。・・・ファッション雑誌としては高水準のものを紹介している・・」(甲第14号証)などのように記載している。また、「アメリカ州別文化事典」(甲第21号証)には「Vogue ボーグ。月刊ファッション誌。ファッションマガジンの代名詞と言われる高い評価を獲得した。」と、「アメリカを知る事典」(甲第22号証)には「ボーグ|Vogue 1893年に発刊されたファッション雑誌。・・《ボーグ》は代表的なファッション誌となった。」と、「現代用の基礎知識1959年版」(甲第23号証)には「外国の代表的なものとしては、『ヴォーグ』(Vogue米、仏、英版)」、「現代用の基礎知識1980年版」(甲第24号証)には「ボーグ(vogue) 流行。服飾雑誌の名。」との記載がある。

また、服飾関係の事典類等にも、「ヴォーグ(Vogue)」に関し、著名なファッション雑誌である旨の記載がある。

さらに、わが国の著名な週刊誌、全国紙等にも、例えば、「世界的なハイファッション誌、フランスの『ボーグ』が・・〈パリモードを魅惑の日本で・・〉という・・日本特集を企画。」(甲第29号証、同様の記事で甲第30号証)、「フランスのファッション誌『ボーグ』の編集長のフランソワーズ・モー夫人が来日した。」(甲第34号証)などのように、その時々の話題として記事が掲載されたほか、「ヴォーグ60年展」の関する記事も多くの新聞、雑誌で特集された(甲第37号証ないし甲第46号証)。

そして、「VOGUE」誌に関する上記事典類、新聞、雑誌等においての掲載は、「VOGUE」、「vogue」、「Vogue」の文字のほか、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の文字が併記されていたり、あるいは「ヴォーグ」又は「ボーグ」の文字が単独で使用されていた。

(2)上記(1)の事実からすると、請求人(請求人が合併する前はザ.コンド・ナスト・バプリケーションズ・インコーポレーテッド社)の発行するファッション雑誌の題号である「VOGUE」の表示は、本件商標の登録出願時(平成9年7月30日)においてはいうまでもなく、その登録査定時(平成10年10月1日)においても、わが国の服飾関係のデザイナーをはじめとして、ファッションに関連する商品の取引者、需要者の間で広く知られていたと認められる。のみならず、わが国においては、上記「VOGUE」誌を紹介するものとして、該「VOGUE」の表音文字である「ヴォーグ」、ないし「ボーグ」が多く使用されていた事実を考えると、「ヴォーグ」、ないし「ボーグ」の表示からは、請求人の取扱いに係るファッション雑誌の題号が容易に想起され、これらの表示は、「VOGUE」の表示と同様に、本件商標の登録出願前より、わが国のファッション関連の商品の分野において広く認識されていたというべきであり、その著名性は、登録査定時においても継続していたものである。

2.本件商標について

本件商標は、前記したとおり、「サロニックマイボーグ」の片仮名文字を横書きしてなるものであるところ、その構成文字全体として、特定の語意を有するものとして一般に親しまれているものとは認め難いばかりでなく、該文字及びこれより生ずる「サロニックマイボーグ」の称呼は、冗長といえるものであるから、これに接する取引者、需要者には、その構成中に請求人の取扱いに係るファッション誌の題号を表示するものとして、わが国において著名な「ボーグ」の文字部分に注意を強く惹きつけられファッション雑誌「VOGUE」誌を連想、想起するというべきである。

3.出所の混同について

前記1.及び2.で認定したとおり、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の表示は、請求人の取扱いに係るファッション誌の題号として本件商標の登録出願前より、わが国においてファッション関連の取引者、需要者の間で広く認識されているものであり、かつ、本件商標は、その構成中に他人の業務に係る商品を表示するものとして著名な「ボーグ」の文字を有してなるものである。

また、請求人の業務に係る前記ファッション誌の主たる掲載内容は「婦人服飾関係をはじめファッションに関する記事」であり、本件商標の指定商品中に含まれる香料類、化粧品等と密接に関連するといえるものである。

さらに、近時の経営の多角化により、企業が異業種分野に進出する例もみられるところである。

上記した状況にあって、被請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者若しくは請求人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

4.むすび

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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