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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年判定請求第60021号
審判種別記載はありません。
結論other

結論テキスト

商品「化粧品」に使用する(イ)号標章は、登録第1727253号商標の商標権の効力の範囲に属しない。

理由テキスト

1.本件登録第1727253号(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、第4類「せっけん、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、昭和52年7月19日に登録出願、昭和59年10月31日に登録され、現に有効に存続しているものである。

2.被請求人の所有に係る登録第4130756号(以下、「イ号標章」という。)は、別紙(2)に表示したとおりの構成よりなり、第3類「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き、つや出し剤」を指定商品として、平成8年7月17日に登録出願、平成10年4月3日に登録されたものである。

3.請求人は、「商品『化粧品』に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する」との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第10号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)判定請求の必要性

請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「化粧品」にイ号標章の使用をしていることによって、請求人の業務に係る商品と、イ号標章を付した商品との間で、出所の混同が生じている(実際に、被請求人の商品に関する問い合わせ等が請求人に対してきている。)ことが明らかになった。

(2)イ号標章の説明

被請求人は、平成9年頃より、イ号標章を付した商品「化粧品」を製造し、全国的に販売している(甲第2号証)。

なお、イ号標章は、本件商標の存在が全く考慮されずに登録されたこと明らかである(甲第3号証、同第4号証の1乃至同第4号証3)。

(3)本件商標の説明

請求人は、昭和50年頃より本件商標を商品「化粧品」等について、請求人のハウスマークとして使用を開始し、その後も継続して使用し、現在に至っている(甲第5号証、同第6号証の1乃至同第6号証の3)。

そして、請求人の営業範囲は、請求人が北海道、関東及び沖縄に支社を有していること(甲第5号証)からも明らかなとおり、日本全国に及んでおり、請求人は本件商標を昭和50年頃より使用を開始し、現在まで20数年もの間継続して使用した結果、被請求人がイ号標章の使用を開始するはるか以前に、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っているものである。

(4)イ号標章が商標権の効力の範囲に属することの説明

本件商標は、「Clair」の文字を書してなるものであるから、これより「クレール」の称呼を生ずるものである。

なお、特許庁の商標情報サービスのデータにおいて本件商標は「Clair」として扱われており(甲第7号証)、本件商標についての商標登録出願(昭和52年商標登録願第50519号、昭和56年審判第17377号)の審査・審判の経過(甲第1号証の3乃至同第1号証の5)及び旧連合商標制度の下で本件商標の連合商標として登録された登録第328770号商標「クレール」(甲第8号証の1乃至同第8号証の2)の存在等からしても、本件商標は「Clair」の文字からなること明らかである。

他方、イ号標章は、「SCi

CLAiR

」の文字からなるものであるが、全体として、観念上特別な意味を有する語ではないため、これを常に一体不可分の標章と見るべき特段の事情はないこと、「SCi

CLAiR

」の構成文字中の「CLAiR」の文字部分が、下線を付すことにより意図的に強調されており、かつ、前半部の「SCi」の文字部分は何ら意味を有しない(一種の記号として看取される。)ことから、その要部は本件商標と綴りを同じくする「CLAiR」にあると見るのが妥当であること、さらに、被請求人は、イ号標章の審査経過における平成9年10月1日付の拒絶理由通知書に対する平成9年12月3日付の意見書において、イ号標章は、「『SCi

CLAiR

』の前半の『SCi』の文字の大きさと後半の『CLAiR』の文字の大きさが異なるうえに、後半の『CLAiR』の部分のみに下線が書き加えられていることからも、3文宇目と4文字目の間に音節の区切りがあると考えるのが自然である。」旨主張しており(甲第4号証の3)、自ら、イ号標章が一体不可分のものでないことを認めていること等を勘案すると、イ号標章は、その構成文字中の後半部の「CLAiR」の文字部分より、「クレール」の称呼を生ずるものである。

なお、本件商標「Clair」の構成文字又はイ号標章「SCi

CLAiR

」の構成文字中の後半部分の「CLAiR」の文字部分からは、既登録商標からも明らかなように、「クレール」の称呼を生ずると考えるのが自然であり(甲第9号証の1乃至同第9号証の9)、また、過去の審決例等において、商標を構成する構成文字がそれに相応した称呼を生じ、特に、商標全体が一体として成語等を表すものと認められない場合には、自他商品識別標識としての機能を果たす文字部分によって、称呼を生ずるものとされている(甲第10号証の1乃至同第10号証の3)ことは、イ号標章「SCi

CLAiR

」から、その構成文字中の後半部分の「CLAiR」の文字部分が抽出され、その文字より、「クレール」の称呼を生ずることの証左となるものである。

以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用商品と本件商標の指定商品も同一の商品であるから、被請求人が商品「化粧品」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

4.被請求人は、本件判定の請求は成り立たない、との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第29号証を提出した。

(1)イ号標章について

▲1▼イ号標章の外観

イ号標章は、英文字「SCiCLAiR」の8文字を左横書きに一段に記載すると共に、「SCi」と「CLAiR」の文字のバランスを調節した上で、「SCi」の下辺に揃えて「CLAiR」の文字に下線を引き、全体をコンパクトにデザイン化し一体化した外観を有するものである。

▲2▼イ号標章の観念

イ号標章は、被請求人が独自に創作した造語からなる標章であり、特段、何等の観念も生じさせない標章である。

▲3▼イ号標章の称呼

イ号標章は、「サイクレアー」という称呼を有するものであり、このことは、今回、乙第1号証乃至同第27号証におけるイ号標章の使用形態及び被請求人が所有する他の登録商標からみて、明らかである。

即ち、乙第1号証乃至同第10号証は、被請求人が属する林原グループが、安定型ビタミンCとトレハロースを配合した新たな化粧品を、グループの販売部門会社であるエイチプラスビィ(H+B)ライフサイエンスから、「サイクレアー」という名の元に販売することを報じる新聞記事である。そして、特に、乙第1号証及び同第4号証乃至同第8号証には「サイクレアー」シリーズの製品写真も掲載されており、それらの製品写真にはイ号標章を付した商品が写っていることからも、イ号標章の称呼は「サイクレアー」である。

また、乙第11号証及び同第12号証は、新聞に掲載された「サイクレアー」シリーズの広告記事であるところ、これら広告記事には、イ号標章と共に「H+B/LIFESCIENCE」のマークを付した複数の製品写真に加えて、「次世代美肌化粧品、サイクレアー、新登場。」(乙第11号証)又は「いのちを守るように、美肌を守りたい。薬用スキンケアシリーズ『サイクレアー』」(乙第12号証)との記載がみられ、これらをみれば、イ号標章の称呼は「サイクレアー」である。

更に、乙第13号証乃至同第18号証は、化粧品「サイクレアー」を紹介する記事を掲載した雑誌であるが、これらの紹介記事には、いずれも、製品写真と共に、その写真に写っている製品が化粧品「サイクレアー」又は「サイクレアー」シリーズの化粧品である旨の紹介がなされており、これらをみても、製品写真に映し出されているイ号標章の称呼は「サイクレアー」である。また、乙第13号証乃至同第18号証には、イ号標章を付した化粧品「サイクレアー」の販売元が「(株)H+Bライフサイエンス」であることが明記されており、「サイクレアー」という称呼を有するイ号標章を付した製品が「(株)H+Bライフサイエンス」から販売されていることが明瞭にみてとれる。

乙第19号証乃至同第21号証は、雑誌に掲載された「サイクレアー」の広告記事であるが、これらをみても、イ号標章が、林原グループに属するH+Bライフサイエンスが販売する化粧品「サイクレアー」に付される「サイクレアー」という称呼を有する標章であることは明らかである。

更に、乙第22号証及び同第23号証は、株式会社H+Bライフサイエンスが発行する商品カタログであるが、これらをみても、イ号標章は常に「サイクレアー」というカタカナ表記と共に使用されており、イ号標章の称呼は「サイクレアー」である。

また、乙第24号証は「サイクレアーホワイトニングローション」の製品写真、乙第25号証は、そのパッケージを平面展開したものの写し、乙第26号証は「サイクレアーリシェイピンジェル」の製品写真、乙第27号証は、そのパッケージを平面展開したものの写しであるところ、それらのいずれをみても、イ号標章と共に、「サイクレアー」のカタカナ表記及び「H+B/LIFESCIENCE」のマーク又は「株式会社エイチプラスビィ・ライフサイエンス」の表記がみられ、イ号標章が「サイクレアー」と称呼されること、更には、「株式会社エイチプラスビィ・ライフサイエンス」が、その製造・販売元であることが判る。

更には、請求人が提出した甲第2号証は、株式会社エイチプラスビィ・ライフサイエンスの通信販売用のカタログであるところ、このカタログにもイ号標章を付した商品が「サイクレアー」と紹介されており、イ号標章の称呼は「サイクレアー」である。

以上のように、乙第1号証乃至同第27号証又は甲第2号証に示されるイ号標章の使用形態からみて、イ号標章の称呼は「サイクレアー」であることは明白である。

また、被請求人は、乙第28号証の商標公報より判るように、第3類「化粧品」を指定商品の一部とする商標「サイクレアー」を出願し、既に、商標登録第4105326号として登録している。

以上のことからしても、被請求人がイ号標章を「サイクレアー」と称呼することを意図しており、また、事実そのように使用している結果、イ号標章の称呼は「サイクレアー」であり、かつ、「サイクレアー」として一般需要者に浸透していること明らかである。

(2)本件商標について

▲1▼本件商標の外観

本件商標は、中央に「+」の印を配置した筆記体の大文字「C」と、筆記体の小文字「lair」とを左横書きに一段に表記した外観を有するものである。

▲2▼本件商標の観念

本件商標は、英文字「Clair」を一連に表記したものであり、「クレール」と称呼することからして、「鮮やかな、明るい、透明な」という意味を有するフランス語「clair」であると認識されるので、「鮮やかな、明るい、透明な」という観念を生じさせるものである。

▲3▼本件商標の称呼

請求人のいうところによれば「クレール」の称呼を有するものである。

▲4▼本件商標の位置づけ

請求人は、昭和50年頃より本件商標を商品「化粧品」等について請求人のハウスマークとして使用を開始し、その後も継続して使用し、現在に至っている旨述べて、甲第5号証、同第6号証の1乃至同第6号証の3を挙げている。

そこで甲第5号証をみるに、同号証は、請求人会社の会社案内であるところ、発行年月日が不明であることに加えて、製品写真の一部のものに本件商標を付した商品が認められるだけであり、この甲第5号証から本件商標が請求人のハウスマークとして使用されていることを窺わせるものは何もないものである。

そして、甲第5号証には、要所要所の頁上部に「くれえるはこう考えます」、「くれえるは、確かな自信を育てます」、「くれえるは、お客様と共に育ちます」、「くれえる製品のご紹介」、「くれえる製品の故郷」、「くれえるの未来」、「くれえる仲間からのメッセージ」という記載があり、また、説明文中にも「くれえる」という表現が多出することからみて、請求人は、本件商標よりも、むしろ「くれえる」という標章の方を請求人会社を表す代表的な標章として使用していると考えるのが自然である。

また、このことは、請求人が他社との異議申立事件において述べていることとも整合する。すなわち、請求人が他社との異議申立事件において提出した平成2年5月2日付異議申立理由補充書を乙第29号証として提出する。同号証の第5頁、「(5)異議申立人の商号の略称の著名性について」の項において、請求人は「それら営業活動において、異議申立人(請求人のこと)は商号の略称として『くれえる』を用い、他人も略称として『くれえる』を用い、『くれえる』が異議申立人の商号の略称として業界および一般の需要者に広く知られており、著名である。」旨述べている。

このことからしても、本件商標が昭和50年頃から請求人のハウスマークとして使用され、現在に至っているとは考えられないものである。

甲第6号証の1には、その表紙に本件商標が記載されているが、実際の製品に本件商標が付されている例は極めて僅か(被請求人が精査したところでは、表紙から数えて5頁目の中央に写っている製品に付されている例が1つあるだけである。)であり、本件商標よりも「アンメラン」という標章の方が多数みられる。

甲第6号証の2及び同第6号証の3についても同様であって、本件商標が付された製品も幾つかは散見されるが、「アンメラン」という標章も多数認められ、また、甲第6号証の1乃至同第6号証の3もその発行日が不明であって、甲第6号証の1乃至同第6号証の3をみる限り、請求人のいうように本件商標が昭和50年頃より請求人のハウスマークとして使用され現在に至っているとは考えられないものである。

また、請求人は、被請求人がイ号標章の使用を開始するはるか以前に、日本全国において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである旨述べているが、上述したように、甲第6号証の1乃至同第6号証の3を含め、甲第5号証にも発行日の記載がなく、甲第5号証乃至同第6号証の3に示される事柄が一体いつの時点でのものであるのか不明であると共に、甲第5号証乃至同第6号証の3をみても、本件商標は、請求人の製品のごく一部のものに使用されていることが窺われるだけであって、果たして請求人のいうように、被請求人がイ号標章の使用を開始するはるか以前に、日本全国において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものであるか否かは、不明といわざるを得ない。

▲5▼まとめ

以上まとめると、本件商標は、上記のような外観、観念、称呼を有するものであり、請求人の提出した証拠をみる限り、本件商標は、過去のいっかの時点において、請求人製品の一部のものに使用された商標である、ということになる。

(3)イ号標章と本件商標との対比

▲1▼外観及び観念上の対比

イ号標章と本件商標の外観及び観念はそれぞれ上述したとおりであり、両者が外観上並びに観念上非類似であることは明らかである。また、請求人も「イ号標章が商標権の効力の範囲に属することの説明」の項においては、専ら称呼のみを議論し、外観及び観念を問題にしていないことからみて、イ号標章と本件商標とが外観及び観念において非類似であることは請求人も認めるところと考える。

▲2▼称呼上の対比

イ号標章の称呼が「サイクレアー」であることは上記(1)の▲3▼で述べたとおりであり、これを、本件商標の称呼「クレール」と対比すると、両者は、語数並びに語頭音が相違し、称呼上互いに紛れることのない顕著に相違するものであることは明らかである。

▲3▼まとめ

したがって、イ号標章と本件商標とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても顕著に相違する非類似のものであり、イ号標章を「化粧品」に使用しても、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものではない。

(4)請求人の主張について、

請求人は、「イ号標章が商標権の効力の範囲に属するの説明」の項において、イ号標章から「クレール」の称呼が生ずると主張し、その根拠として4つの理由を挙げている。

しかしながら、「観念上特別な意味を有する語ではないため、これを常に一体不可分の標章とみるべき特段の事情はない」と請求人は述べているが、観念上特別な意味を有する語ではないからといって、これを特に分離しなければならないという特段の理由はない。

イ号標章において、「CLAiR」の文字部分に下線が付されているからといって、必ずしもその部分を強調していることにはならない。何故ならば、イ号標章において後半の「CLAiR」の文字は前半の「SCi」よりも小さく表記されており、そのように小さく表記された後半の「CLAiR」の部分に下線が付されていることによって、全体としてのバランスが保たれているからである。下線が付されていることによって、或いは、文字の大きさが大きいことによって、どちらかがより強調されるというものではない。

また、請求人は、「前半部の『SCi』の文字部分は何ら意味を有しない(一種の記号として看取される。)こと」も、イ号標章の要部が後半の「CLAiR」にあることの理由の1つとしているが、「SCi」の文字部分がたとえ何らの意味を有しない一種の記号として看取されるものであったとしても、イ号標章においては、前半の「SCi」の部分は大きく、しかも標章全体の頭部に表記され、下線を付された後半の小さく表記された「CLAiR」の部部とバランス良くまとまっているから、単に意味を有しないということのみをもって、要部でないというわけにはいかない。

このように、イ号標章の要部が後半の「CLAiR」の部分にあるという請求人の主張は合理的根拠を欠く誤ったものである。

請求人は音節の区切りと標章としての可分性とを混同している。音節の区切りがあっても一体不可分として認識されている標章は多数存在する。

また、請求人は、イ号標章において自他商品識別標識としての機能を果たす文字部分が「CLAiR」であることを自明の前提として議論を展開しているが、イ号標章において自他商品識別標識としての機能を果たすのは、英文字「SCiCLAiR」の8文字を左横書きに一段に記載すると共に、「SCi」と「CLAiR」の文字のバランスを調節した上で、「SCi」の下辺に揃えて「CLAiR」の部分に下線を引き、全体をコンパクトにデザイン化し一体化したその全体であって、決して部分ではない。

まとめ

ここで強調しておきたいことは、何よりも上記(1)で述べたイ号標章の現実の使用形態である。

被請求人は、イ号標章を、常に「サイクレアー」というカタカナ表記と共に使用しており、この現実の使用形態をみれば、イ号標章の称呼は「サイクレアー」であり、かつ、「サイクレアー」として一般需要者に浸透していることは明らかである。

したがって、イ号標章から「クレール」という称呼が生ずるという請求人の主張は、上記のように何ら合理的な根拠を持たないものであることは勿論であり、合理的な根拠を持たないものである以前に、商取引の実態を無視したものといわざるをえない。

(5)イ号標章の審査経過について

請求人は、甲第3号証及び同第4号証の1乃至同第4号証の3を挙げ、イ号標章は本件商標の存在が全く考慮されずに登録された旨述べているが、これは本件商標が拒絶理由中に引用されなかったことをいっているものであるが、元々非類似であり、顕著に相違する商標が引用商標として挙げられないのは自明のことである。

(6)出所混同の可能性について

請求人は、被請求人が商品『化粧品』にイ号標章を使用していることによって、請求人の業務に係る商品と、イ号標章を付した商品との間で、出所の混同が生じていることが明らかとなった旨述べているが、上記(1)でも述べたように、常に「林原」ないしは林原グループの一員である「株式会社H+Bライフサイエンス」が製造・販売元であることを明示して一般需要者に対して広告、紹介、ないしは販売されているイ号標章を付した「サイクレアー」シリーズの化粧品の出所を、請求人である「株式会社くれえる」であると混同することは通常、ありえないことである。

しかも、請求人の商品の販売方法は主として訪問販売であると考えられるところ、被請求人の商品の販売方法は、主として店頭(乙第11号証参照)又は通信販売(甲第2号証の1頁目に「H+Bライフサイエンスダイレクトオーダーマガジン」との記載がある。)であって、請求人商品とはその流通経路を異にするものである。この点からも、両者の商品において出所の混同が生ずることは考えられない。

(7)結論

以上のとおり、イ号標章と本件商標とは類似でなく、従って、イ号標章を「化粧品」に使用しても、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものではないものである。

4 当審の判断

本件商標は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなるところ、その構成中の「C」の文字の中央部に細線で「+」を付加しているとしても、他の構成文字との関係からみて、全体として容易に「Clair」の文字を書してなるものと看取されるものである。

しかして、本願商標を構成する「Clair」の文字が、「鮮やか、明るい、透明な」の意味合いを有し、「クレール」と読まれるフランス語であってみれば、本件商標はその構成文字に相応して「クレール」の称呼を生ずるものといえる。

そして、請求人の会社案内(甲第5号証)及び請求人の商品カタログ(甲第6号証の1乃至3)をみるに、請求人の会社案内及び請求人の商品カタログの発行年月日は明らかではないが、請求人の会社案内に掲載された「くれえるの変革」の項に「昭和59年5月株式会社くれえる創業10周年.........」の記載がみられることからすれば、請求人の会社案内は昭和59年5月以降に発行されたものと推認され、同人の会社案内及び商品カタログによれば、本件商標を付してなる乾燥肌・脂性肌.........ソバカス肌等の外面美容用クリームが掲載されていることからして、請求人は化粧品に本件商標を付して使用していることが認められる。

一方、イ号標章は、別紙(2)に表示したとおりの構成よりなるところ、その構成中の「SCi」の文字と「CLAiR」の文字とはその文字の大きさに差異を有するとしても、「CLAiR」の文字に下線が引かれていることからして、両文字は外観上まとまりよく一体的に表現されているものと看取されるものである。

そして、「SCi」の文字と下線が引かれた「CLAiR」の文字とからなるイ号標章は、特定の称呼及び意味合いを有する成語を表したものではないから、これに接する看者は一般に慣れ親しまれた英語風読みより生ずる称呼をもって取引に資する場合も少なくないと判断するのが相当である。

しかして、英語において、例えば、「science」が「サイアンス」、「scientist」が「サイアンティスト」とそれぞれ読まれ、そして、「clair・audience」が「クレアーオーディエンス」、「clair・voyance」が「クレアーボイエンス」とそれぞれ読まれる例に倣ってみれば、「sci」の文字は「サイ」と読まれ、「clair」の文字は「クレアー」とそれぞれ読まれるものとみられるから、綴り字を同じくする「SCi」の文字と「CLAiR」の文字とからなるイ号標章はその構成文字全体として「サイクレアー」と読まれるものと判断するのが相当である。

してみると、イ号標章は、その構成文字より「サイクレアー」の称呼を生ずるものである。

そして、被請求人の提出した乙第1号証乃至同第27号証(乙第2号証及び同第3号並びに同第9号証及び同第10号証を除く)及び請求人の提出した甲第2号証(被請求人の商品カタログ)によれば、被請求人はイ号標章を美肌用化粧品に付してなり、その標章を「サイクレアー」と称し、特定していることが認められる。

そこで、本件商標とイ号標章との類否について判断するに、本件商標とイ号標章とは、その構成は前記のとおりであるから、外観において明確に区別し得るものである。

次に、称呼についてみるに、本件商標より生ずる称呼「クレール」とイ号標章より生ずる称呼「サイクレアー」を比較すると、相違する各音の音質の差、音構成の差等により、両者は称呼上明らかに区別し得るものである。

また、本件商標よりは「鮮やか、明るい、透明な」の観念を生ずるのに対して、イ号標章は特定の観念を生ずるものでないから、両者は比較すべくもない。

そうとすれば、本件商標とイ号標章とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても非類似の商標といわざるを得ない。

また、商品「化粧品」についてのイ号標章の使用は、被請求人の所有する登録第4130756号に係る商標権の権利行使と認められる。

してみると、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものというべきものである。

なお、請求人は、商品「化粧品」についてイ号標章の使用をしていることによって、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じている旨主張するが、これを証する具体的資料を何等提出していないから、請求人の主張は採用できない。

よって結論のとおり判定する。

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