結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2002−30091(T2002−30091/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2438831号商標(以下「本件商標」という。)は、「datacraft」の欧文字を横書きしてなり、第26類「印刷物、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成1年9月28日登録出願、同4年7月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1.請求の理由
本件商標は、そのすべての指定商品については、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しておらず、かつ、それについての正当事由も存在しない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録は取り消されるべきものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、「NTT職業別電話帳」に本件商標を商品「CD−ROM書籍シリーズ」の広告に使用してい旨主張する。
しかし、商品「CD−ROM書籍シリーズ」とはいかなる商品であるか内容が不明確で、その内容及び範囲が把握できない。特に近年多くの出版物はCD−ROM、いわゆる「電子出版物」で販売されることが頻繁に行われている昨今の事情を勘案すると、「CD−ROM書籍シリーズ」という記載からは「書籍の内容を記憶させたCD−ROM」又は「電子出版物」なる商品が観念できると考えられる。しかし、「書籍の内容を記憶させたCD−ROM」又は「電子出版物」は、第9類に属する商品であり、第16類の本件商標の指定商品に含まれない商品である。
したがって、被請求人の提出した証拠からは、本件商標をその指定商品「印刷物、その他本類に属する商品」のいずれにも使用しているとはいえない。
このことは、被請求人が過去所有していた登録商標「データクラフト」(登録第2438832号)について請求された不使用取消審判事件(取消2000−30720)においても同趣旨のことが審判官より述べられ(甲第1号証)、その結果、被請求人は何ら答弁をしなかったことより、当該登録商標は取消されている(甲第2号証)。上記審判事件においても、被請求人は、「タウンページ1998.3〜1999.2」以外に証拠を使用をしておらず、また、仮に使用していたとしてもその商品「CD−ROM書籍シリーズ」が出版物ではなく「書籍の内容を記憶させたCD−ROM」又は「電子出版物」に属する類の商品であったことが推察できる。
(2)仮に、100歩譲って「CD−ROM書籍シリーズ」を「出版物」であると認めたとしても、被請求人の提出した証拠については、商標法第2条第3項第7号に該当する「使用」にはあたらない。
すなわち、商標法第2条第3項第7号は、商標の広告的な使い方にも信用の蓄積があるから、商標を広告に用いる場合にも商標の使用とみるべきだとする見地に立っていると解されるが、単に不使用取消しの審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為があっただけでは、商品に関する広告に標章を付して展示又は頒布する行為には該当せず、登録商標の不使用による登録の取消しを免れ得ないからである(同趣旨判決:平成5年11月30日/東京高等裁判所判決/平成5年(行ケ)第168号/平成4年(行ケ)第144号)。
(3)特に、最新版のタウンページである 2002/3〜2003/2版(甲第3号証)には、データクラフト株式会社ひいては本件商標の広告は載っておらず、そのことからも今後継続的な使用がないものと推察できる。
また、「タウンページ」は、毎年2月から3月にかけて新版が発行されると同時にほぼすべての旧版を回収しリサイクルのために処分してしまう類のものであり、発行会社のNTT東日本でさえも旧版は所有していない。したがって、通常の商標のように一度市場に出回ったものが数年にわたって市場を転々とすることはなく、処分後は業務上の信用が化体するといった実状もない。さらに、従来のタウンページに掲載されていた自社の広告を削除する場合には、事前にタウンページ発行元である NTT東日本にわざわざ通知して削除依頼をしなければならない。
最新版のタウンページである2002/3〜2003/2版の場合には、2001年10月下旬である(甲第3号証)。
上記2.(1)で述べた不使用取消審判事件(取消2000−30720)は、平成12(2000年)年6月21日に請求されており、それに対して不使用であると認定した審決は、平成13年(2001年)10月9日になされており、被請求人は本件商標をその指定商品について「使用」しているといえるかどうかの問題については認識を新たにした時期とも重なる。それにもかかわらず、同時期に被請求人は最新版であるタウンページからあえて広告掲載することを意図的に止めている。かかる事情から推察しても、本件商標は、上記2.(2)で述べたように、「単に不使用取消の審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観」を呈しているものと思量される。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番を含む。)を提出した。
1.使用の事実
(1)本件商標は、NTT職業別電話帳「タウンページ 1998.3〜1999.2 千代田・中央・墨田・江東・江戸川区版」の776頁の右から1番目の列の中で、出版社の書籍広告として使用している(乙第1号証の1及び2)。
(2)本件商標は、NTT職業別電話帳「タウンページ 2001/3〜2002/2 千代田・中央・墨田・江東・江戸川区版」の727頁の右から2番目の列の中で、出版社の書籍広告として使用している(乙第2号証の1及び2)。
2.請求人の主張について
(1)請求人は、被請求人の答弁に対し恣意的に解釈して述べているが、登録第2438832号商標に対する不使用取消審判事件(取消2000−30720)に係る登録商標「データクラフト」は、本来、連合商標として登録されたものであり、その制度がなくなった以上、役割を終えたものと商標権者は考えたので、審判手続き上の時間的、費用的な無駄を排除するために回答を省略することとした。その結果、取り消しとなった。
一方、本件商標に対する不使用取消審判事件(取消2000−30719)において、その請求は成り立たないものとされ、商標権維持の目的は果たされたのである。
(2)請求人は、他の指定商品の広告であると主張したいようであるが、出版社の書籍広告とみるのが普通の見方である。上記取消2000−30719の事件でも認められている。
(3)一般的には広告が商標の使用に当たると解せられる法があるにもかかわらず、請求人は、広告を出していても商標が取り消された判例を挙げて、被請求人の広告が商標の使用に当たらないと主張している。そういう事例もあるということであって、どう認定されるべきかは背景の事情も無関係ではないと考える。
(4)乙第5号証(「Datacraft」の文字よりなり、第16類「雑誌・辞典その他印刷物」を指定商品とする商願2001−21147に関する「商標出願・登録情報検索」)にあるとおり、本件商標と類似であり、ほぼ同じ文字列からなる商標が、株式会社データクラフトという会社から登録出願されており、被請求人の商標が取り消された場合、この会社が登録することになる。請求人の目的は、そこにあるのであろうか。
我が国の商標制度は先願主義に基づくものであるため、商標を使用した商活動が実績を重ねる前に、すなわち無名な時期に、他者との重複を避けるために、登録申請しておく必要がある。
一方、会社名は、登記する法務局支所が異なれば、不当競争と認定される場合を除いて、他社と同じ社名も登記できる。そして第三者の登録する商標と類似の文字列でも問題ないはずである。しかし、ここで会社名から株式会社なり有限会社なりを除いた文字列の部分(以後、会社名の主部と呼ぶ。)が、独創的な造語による場合は不自由が生じることになる。社名は、日常の業務あるいは商取引において、会社名の主部で呼ばれるのが通例であり、商品棚に陳列されたとき会社名の主部で表示されることが少なくない。
すなわち、会社名の主部が、第三者が保有する登録商標と同じか類似の場合、商標権を侵害していることになりかねない。つまり、会社名の使用がそのまま商標の使用になってしまうのである。
被請求人の会社名の主部は、独自に考案した造語であったので、商標として使用し始めると同時に、商標制度を尊重して、それと同じ文字列を商標として登録したものである。一方、商標制度を尊重せず、あるいは制度に無知なために、十分な調査をせず、会社名を決めた会社も上に述べたような理由で不自由を感じた場合、商標はどうしても欲しいものとなるであろう。
請求人は、本件商標の取消しを求めているが、その根拠とする法は、先願主義に基づく制度の欠点を改善するために作られたものである。すなわち、転売を目的として商標を登録する者や、使用の予定もないにもかかわらず大量に商標を登録して保有する者に対して、登録を取り消させるのが、法の趣旨であると理解している。本件のような取消し請求が認められて、善良に登録商標を使用する者が憂き目をみることがないよう、法の適切な運用を期待して止まない。
(5)請求人の弁駁2.(3)は、電話帳広告掲載依頼の手続きに関する見当違いな推測を述べ、その上に、請求人の希望的推察が書かれているにすぎない。電話帳の広告掲載手順がどうであれ商標の使用の事実と本質的に関係がなく答弁に値しない。
3.審尋に対する回答
(1)NTT職業別電話帳(タウンページ;乙第1号証の1及び2並びに乙第2号証の1及び2)に記載された「データクラフト株」(「株」の文字部分は、円輪郭で囲まれている。以下同じ。)の住所は、「練馬区田柄3−14−12−106」(乙第1号証の1)、「練馬区春日4−18−4−603」(乙第2号証の1)であるところ、これらの住所は、商標登録原簿に記載の商標権者(被請求人)の住所である「新座市西堀2丁目8番29号」(答弁書の被請求人の住所も同じ。)と異なるものであるから、これについて釈明されたい旨の審尋について、被請求人は、平成7年8月から平成10年3月まで、東京都練馬区田柄3−18−4−603を事務所として使用していた。平成l0年3月に、東京都練馬区春日町4−18−4−603に事務所を移転させたものである(電話加入件に関する事項の証明書;乙第3号証及び乙第4号証)。
(2)被請求人の取扱いに係る「CD−ROM書籍シリーズ」が、本件商標の指定商品に包含されるものであるかを確認することができる商品の説明書・写真等の提出及び広告の対象となった「CD−ROM書籍」につき、取引業者、顧客等との間に取引があったと認められる取引書類の提出の求めについて、被請求人は、上記書類の提出については、見直しをお願いする。乙第1号証、乙第2号証でみられるとおり、出版社による書籍広告以外の何ものでもない。もし、このような広告が商標権者以外によってなされた場合には、商標侵犯として争うこととなる性質のものである。その時、指定商品が違うといい逃れができる内容ではない。この審判事件の背景と、商標権のあるべき姿という見地から商標使用の事実を認定して頂きたい。
4.以上のことから、本件商標は取消を免れる。
なお、前記1.に挙げた広告は、商標法第50条による審判事件(取消2000−30719)の審決において、商標を「使用していたものであることが認められる」と認定されたものと同じものである。
1.乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)は、いずれもNTT職業別電話帳「タウンページ 千代田・中央・墨田・江東・江戸川区版」であり、「掲載情報」を、前者は「1997.10.30現在」とするものであり、後者は「2000.11.10現在」とするものである。
(2)乙第1号証の1の収録欄には、「データクラフト株」、「3577−4191 練、田柄4−14−12−106」、「datacraft」、「CD−ROM書籍シリーズ」の各文字が記載され、また、乙第2号証の1の収録欄には、「データクラフト株」、「3577−4191 練、春日4−18−4−603」、「datacraft」、「CD−ROM書籍シリーズ」の各文字が記載されている。
2.審判長は、平成14年2月10日付けの審尋書をもって、被請求人に対し、前記第3 3.の審尋をしたところ、特に審尋(2)に関して、被請求人は、前記第3 3.(2)のように述べるのみであって、乙第1号証の1及び乙第2号証の1に記載された「CD−ROM書籍シリーズ」が本件請求に係る商品中に含まれるものであるか否かを確認することができる書類及びその取引書類についての提出をしないものである。
ところで、甲第3号証によれば、電話帳に掲載する広告等に関し、「電話帳の掲載はお客様のお申し出に基づくものです。新たに掲載したい場合、または掲載している内容を変更したい場合は、上記タウンページセンタへお申し付けください。」なる記載が認められ、電話帳への広告の掲載は、特殊な資格を必要とする職業(例えば、弁護士、医者等)以外は、一般的には広告を掲載したいと希望する者の申し出(申告)のみによってなされるものである。
そうすると、電話帳への広告は、たとえ、広告依頼主が当該職業を実際には経営していない場合でも、広告を希望する旨の申告さえあれば掲載される場合もあり得るということができる。
そして、被請求人は、電話帳の広告に本件商標をその指定商品中の「CD−ROM書籍シリーズ」について使用しているとして、電話帳の広告欄の写しを提出するのみである。
してみると、被請求人は、本件使用に係る「CD−ROM書籍シリーズ」が本件商標の指定商品中に含まれる商品であるか否かを確認するための証拠を何ら提出しないばかりでなく、仮に、「CD−ROM書籍シリーズ」が本件商標の指定商品中に含まれる商品であると認められたとしても、電話帳への広告の掲載が広告依頼主の申告のみでなすことができるという上記事情からすると、「CD−ROM書籍シリーズ」について、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に使用されたと客観的に認めるに足りる取引書類等の提出がなされない限り、被請求人が本件商標をその指定商品について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたと推認することはできない。
3.被請求人の主張について
被請求人は、乙第1号証、乙第2号証は、出版社による書籍広告以外の何ものでもない。もし、このような広告が商標権者以外によってなされた場合には、商標侵害として争うこととなる性質のものである。その時、指定商品が違うといい逃れができる内容ではない。この審判事件の背景と、商標権のあるべき姿という見地から商標使用の事実を認定すべき旨主張する。
上記商標権侵害として争う場合における「指定商品が違うといい逃れができる内容ではない。」なる被請求人の主張は、何をいわんとしているのか俄には理解し難いところであるが、しかし、仮に、他人が乙第1号証、乙第2号証と同様な広告を電話帳に掲載したとしても、本件使用に係る商品「CD−ROM書籍シリーズ」が本件商標の指定商品中に含まれる商品であることが明確にならない限り、本件商標の商標権の侵害は成立しないのみならず、本件における広告は、いわゆる不使用取消の審判を免れる目的で名目的に商標を使用するものと容易に窺うことができ、このような登録商標の使用は、使用により商標に蓄積された信用を保護することにより、産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護すること目的としている商標法の趣旨に反するものであって、保護する対象がないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第50条による不使用取消の審判の請求を免れることはできず、請求人の主張は理由がない。
4.むすび
以上のとおりであるから、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品中の「書籍」について使用していたことを証明したものとは認めることはできない。また、被請求人は、本件商標をその指定商品について使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定によりその登録を取り消すものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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