結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35066(T2002−35066/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2724310号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成3年10月14日に登録出願、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具、医療機械器具、これらの部品および附属品、写真材料」を指定商品として、同11年3月26日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するものであり、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
本件商標は甲第1号証の商標公報に掲載のとおり、「Janssen」の欧文字を特殊な字体で上段に、「ヤンセン」の片仮名文字を通常のブロック体で下段に、それぞれ横書きしてなるものである。
そして、「Janssen」及び「ヤンセン」は、医薬品、動物薬、農薬及び医療科学機器の開発メーカーとして世界的に知られているベルギー国のヤンセン ファーマスーティカ社(Janssen Pharmaceutica N.V.)の略称として、又は当該法人の代表者であり、天才的科学者としてその名を広く知られるポール・ヤンセン氏の略称として、医療関係者間において本件商標の出願以前から世界的に著名なものである。なお、当該ヤンセン社は、請求人の関連会社である。
わが国においても、1978年4月1日にヤンセン社と協和醗酵株式会社の合弁会社であるヤンセン協和株式会社が設立され、主として医薬品の製造販売を行ない今日に至っている(平成14年1月1日から、ヤンセン ファーマ株式会社へ社名変更、同時に請求人の100%子会社となる)。
請求人は、以上の事実を証するために、甲第2号証として、ヤンセン協和株式会社の会社案内(1988年制作)の写を、甲第3号証ないし甲第23号証として、本件商標の出願の前年である平成2年(1990年)当時、新聞に掲載されたヤンセン協和株式会社関連の記事の写を提出する。
ヤンセン協和株式会社は、1982年より消化管運動改善薬(一般名 ドンペリドン)について「JANSSEN−KYOWA」の商標をハウスマークとして使用し国内販売を開始して以来、多数の医薬品に当該ハウスマークを使用して国内販売を行なってきた事実がある(なお、本年1月1日からは「JANSSEN」の文字を大きく「PHARMACEUTICAL」の文字を小さく、2段書きしてなる商標をハウスマークとして採用している)。
ヤンセン協和株式会社の医薬品の多くは医家向けの薬剤として国内で圧倒的なシェアを誇っており、本件商標の出願のはるか以前より、上記ハウスマークを知らない医療関係者はいないであろうと予想させる程に周知著名な商標となっている。
そして、当該ハウスマークは、一見してこれが「JANSSEN」の文字部分と「KYOWA」の文字部分に分離観察することのできるものであるから、本件商標に接した需要者は、本件商標を付した医療機械器具がベルギーのヤンセン社又はヤンセン協和株式会社(ヤンセン ファーマ株式会社)の製品であるか、あるいは、これらの会社と何らかの関係のある商品である、との混同を生ずるおそれは高いものと思われる。
(1)商標法第4条第1項第8号の適用の適否について
被請求人は、答弁書(第2頁14行目から18行目)において、「JANSSEN」がヤンセン ファーマスーテイカ社の略称として著名である事実を認めている。
また、被請求人は、別の箇所では、結局各甲号証から「JANSSEN」がヤンセン ファーマスーティカ社の略称として著名であるとは認めることができないと結論付けている。
しかしながら、薬剤と医療機械器具とは、通常生産者を同じくするものとはいえないものの、医師等を需要者とする点において共通し、販売業者も共通である場合が少なくない他、同じ医療目的で病院内等で使用され得る商品であるため、例えば、注射液と注射針、診断用試薬と診断用機器のように密接な関連性を有することから、被請求人も暗に認めるように、薬剤についての周知商標であり、かつ、少なくともヤンセン ファーマスーティカ社の略称として著名である「Janssen」及び「ヤンセン」の文字よりなる本件商標に接した医療機械器具の取引関係者は、これよりヤンセン ファーマスーティカ社を容易に想起し得るものである。
(2)商標法第4条第1項第15号の適用の適否について
薬剤と医療機械器具とは商品の類否判断の準則に照らしてみても共通項の多い関連商品であり、狭義又は広義の商品出所の誤認混同が生じやすい関係にあるものと思われる。
さらに、特許庁の審査例をみても、例えば「Enduron」という降圧、利尿剤との関係で、医療用機械器具を指定商品とする「ENDURON」を15号に該当するものと認めた例がある(甲第24号証)。
また、本件商標も一旦は請求人による登録異議の申立てが認められて拒絶査定に至ったものである。
(3)以上の理由から、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
請求人は本件商標が商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当し、本件商標は無効とされるべきであると主張しているが、請求人の主張は全く根拠のないものであり、その理由を以下に述べる。
まず、請求人は、ヤンセン ファーマスーティカ社及び当該法人の代表者であるポール ヤンセン氏の略称として「JANSSEN」の著名性を主張しており、該著名性の証明として甲第3号証ないし甲第23号証を提出している。
ただし、これら各号証は全て「JANSSEN」がヤンセン ファーマスーテイ力社の略称として著名であることの証明である。なお、ポール ヤンセン氏の略称としての著名性の証明は一切なされていない。
商標法第4条第1項第8号は、その立法趣旨から他人の人格権を保護するための規定であることはかねてから判例の認めているところであり、同規定の略称に要求される著名性とは、本件商標の指定商品との関係において、一般世人が、また少なくとも指定商品の取引関係者が広く相当の割合で該略称からヤンセン ファーマスーティカ社を容易に想起し、両者の同一性を認識する程度のものと解するべきである。
これに対し、請求人が提出した甲第2号証のヤンセン協和株式会社の会社案内からは、ヤンセン ファーマスーティカ社が製造、販売として実際に取扱っている商品は薬剤が主であることが認められる。さらに被請求人が提出した乙第1号証からは、ヤンセン ファーマスーティカ社の日本における関連会社であるヤンセン協和株式会社が実際に取り扱っている商品は、100%が薬剤であることが認められ、ヤンセン ファーマスーティカ社及びヤンセン協和株式会社が過去に本件商標の指定商品である医療機械器具を製造及び販売した事実は証明されていない。したがって、本件商標を商標法第4条第1項第8号に違反するものとして無効とするためには、薬剤と非類似商品である本件指定商品に前記略称「JANSSEN」を使用した場合においても該会社の人格権を毀損するおそれがあると客観的に判断するに足る著名性が要求されてしかるべきである。
したがって、少なくとも本件指定商品に係る生産者、取扱者、販売者等の取引業界において、広く前記略称が著名であることが証明されない限りは、該略称が商標法第4条第1項第8号の著名な略称に該当すると認めることはできない。
しかるに、請求人がその証明として提出したヤンセン協和株式会社関連の新聞記事21通からは、ヤンセン協和株式会社が薬剤の製造、販売を行うものであることが理解されるものの、本件商標の指定商品との関連を示す記載は一切ない。
したがって、これらの証明は、薬剤についての「JANSSEN」の周知性の証明であるならばともかく、非類似商品にまで亘る該著名性の証明としての有効性は極めて希薄なものといわざるを得ない。
また、「JANSSEN」(ヤンセン)という氏名及び名称は、ヨーロッパ諸国においてはさほど珍しいわけでもなく、きわめて一般的な氏名/名称であることが考えられる。さらに、日本国内においてもヤンセンという氏名/名称を耳にする機会も少なからずあることから、本件商標「JANSSEN」によってベルギー国のヤンセン ファーマスーティカ社を必ずしも想起するものとは考えられない。殊に、本件商標は独特な英文書体で記載されているから、本件商標をもって容易に該会社を想起することは考えられない。
このように、請求人の提出した前記証明を以て、「JANSSEN」がヤンセン ファーマスーティカ社の著名な略称であるとは認めることができず、したがって、本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するとは認められない。
請求人は、本件商標が指定商品に使用されると、ヤンセン ファーマスーティカ社またはヤンセン協和株式会社(ヤンセン ファーマ株式会社)の製造又は販売に係る商品、あるいはこれらの会社と何らかの関係のある商品であるかのごとく、誤認混同を生ずるおそれがあり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると主張している。そして、それを証明する事実として、ヤンセン協和株式会社が1982年より多数の医薬品について「JANSSEN−KYOWA」の商標をハウスマークとして使用して国内販売を行ってきたことを挙げている。
しかしながら、仮に当該ハウスマークがヤンセン協和株式会社の製造、販売する薬剤を表示するものとして医療関係者の間に広く知られていたとしても、ヤンセン ファーマスーティカ社及びヤンセン協和株式会社の主な製造販売商品である薬剤と、本件商標の指定商品である医療機械器具との関係を考慮すると、両商品の品質、形状、用途は元より生産販売に係る流通経路や取引状態も全く異なるため、取引者、あるいは需要者が該指定商品に付された本件商標から生産販売者としてヤンセン ファーマスーティカ社あるいはヤンセン協和株式会社を想起するとは考えられない。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合に、該商品の生産販売者がヤンセン ファーマスーティカ社あるいはヤンセン協和株式会社であると取引者、需要者をして誤って認識させるとは認められず、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとは認められない。
本件商標は、別掲に示すとおり「Janssen」の欧文字と「ヤンセン」の片仮名文字を併記してなるところ、請求人の提出した甲第2号証ないし甲第24号証によっては、「Janssen」及び「ヤンセン」が請求人の主張するベルギー国の「ヤンセン ファーマスティカ社」又はその代表者である「ポール・ヤンセン」氏の略称として取引者、需要者間に著名性を確立するに至ったものとは認めることはできない。
してみれば、本件商標は、他人の氏名若しくは名称の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。
また、請求人の提出した甲第2号証ないし甲第23号証によれば、ヤンセン協和株式会社が医家向けの薬剤を開発、製造販売していることは認められるが、それもヤンセン協和と略されて表示(紹介)されているものがほとんどであり、単に、「Janssen」及び「ヤンセン」として表示(紹介)されているものは見当たらない。
さらに、請求人の提出に係る甲各号証は、「ヤンセン ファーマスティカ社」又は「ヤンセン協和株式会社」がその業務に係る商品「医薬品」を表示する商標として「Janssen」及び「ヤンセン」の商標を使用してわが国の取引者、需要者間に広く知られていたことを証明するには、例えば、使用された商標に係る取引書類及び商標を付した商品が広告宣伝された期間、地域、方法等に関する書類等の提出のない不十分なものであり、かつ、本件商標は、その指定商品を前記第1のとおりとするものであって、「ヤンセン ファーマスティカ社」又は「ヤンセン協和(ヤンセン ファーマ)株式会社」の業務に係る商品、医薬品とは業種を異にする商品について使用するものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、上記の会社又はこれらの会社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
なお、請求人が本件の先例として挙げた拒絶理由通知書(甲第24号証)は、その後、拒絶査定に対する審判事件(2001−2321)において、原査定が取り消され、登録すべきとの審決がされた。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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