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Trademark Appeal Case

著名人名と商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35114(T2002−35114/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第3370744号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3370744号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成6年4月20日に登録出願、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」を指定商品として、平成10年11月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

1 請求人が本件商標の登録無効の理由(商標法第4条第1項第11号)に引用する登録第972813号商標(以下「引用A商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を書してなり、昭和45年4月16日に登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和47年7月20日に設定登録、その後、「かばん類、袋物」について指定商品の一部放棄がされ、平成2年6月25日に商標権の一部抹消の登録がされているものである。同じく登録第1793465号商標(以下「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和60年7月29日に設定登録されたものである。同じく登録第1786820号商標(以下「引用C商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年6月25日に設定登録されたものである。

2 請求人が本件商標の登録無効の理由(商標法第4条第1項第15号)に引用する登録第852071号(以下「引用D商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を書してなり、昭和43年6月5日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年4月8日に設定登録されたものである。同じく登録第1415314号商標(以下「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和55年4月30日に設定登録されたものである。同じく登録第1402916号(以下「引用F商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日に登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、昭和54年12月27日に設定登録されたものである。

上記引用A商標ないし引用F商標に係る商標権は、それぞれ存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第71号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし同7を提出している。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に該当し、同法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきものである。

(1)商標法第4条第1項第8号違反について

請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」あるいは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記各種商品について使用している者であるところ、上記の「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっている。

すなわち、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17歳の時パリに行き「パリ洋裁学院」でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られている。

この「ファッションオスカー」は無彩色である白を基調にまとめた「白のコレクション」に与えられたものである。その後も同氏の作品は無地の服を得意とし、大胆な「白」と「素材」を特徴とし、その服飾品は芸術に値すると賞賛されており、その顧客にはレオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリ・ヘップバーンなどの著名人も多い。同氏のデザイン活動は婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ・シャツ・ハンカチ・マフラー・ショール・ブラウスなどの衣料用小物、バンド・ベルト・ネックレス・ペンダントなどの装身具、バッグ・さいふ・名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。

わが国においても、ヴァレンティノ・ガラヴァー二の名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はVogue(ヴォーグ)誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社(千代田区大手町1−2−1)の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品はわが国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏はわが国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。

以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァー二は世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既にわが国においても著名であった。同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァー二」とフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されて取り上げられたことの多いことは甲第7号証の1ないし同第7号証の32及び同第8号証、同第9号証及び同第10号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第13号証の2、同第15号証の2、同第15号証の3、同第16号証の2、同第22号証の2、同第25号証の3、同第30号証の2、同第30号証の3、同第30号証の5、同第48号証(報知新聞)によっても明らかである。

しかるところ、本件商標は、大きく二段に横書きされた「VALENTINO」「COUPEAU」の文字の上段部分である「VALENTINO」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものであるから無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項11号違反について

本件商標は、「VALENTINO」「COUPEAU」の欧文字を上下二段に横書きしてなるものである。

これに対して、請求人が引用する商標は、前記のとおりの引用A商標ないし引用C商標である。

本件商標と引用A商標ないし引用C商標とを比較検討するに、本件商標は、その構成が前記のとおりであって、「VALENTINO COUPEAU」の欧文字は、全体が一つの語として知られているものではなく、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノクーポ一」の長音を含む9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「VALENTINO」の文字と「COUPEAU」の文字とが上下二段に表示されていることもあって、「ヴァレンティノ」と「クーポー」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも、上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、これに接する取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が決して少なくないものとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。

したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。

一方、引用A商標は、「VALENTINO」の文字よりなるものであり、その構成上「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。

また、引用B商標及び引用C商標は「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものであるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァー二」の称呼を生ずるが、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相挨って、引用B商標及び引用C商標は、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用B商標及び引用C商標は、何れも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。

してみると、本件商標は、引用A商標ないし引用C商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用A商標ないし引用C商標のそれと抵触するものであることは明らかである。結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、無効とされるべきものである。

(3)商標法第4条第1項第15号違反について

請求人は、上記の引用A商標ないし引用C商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところであって、これらのうち、引用D商標ないし引用F商標は、「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものである。

しかして、請求人提出の甲第9号証及び同第10号証(審決謄本写し)ないし同第62号証によって、引用E商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること及び引用F商標がライターについて使用されていること、また、引用D商標ないし引用F商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは明らかである。

そして、本件商標と引用A商標ないし引用C商標がその称呼を共通にする類似する商標であることは上述のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用D商標ないし引用F商標とは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と引用D商標ないし引用F商標が使用されている上記の商品は、何れも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品である。

したがって、本件商標は、これを被請求人がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。

よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、無効とされるべきものである。

2 弁駁の理由

(1)利害関係について

被請求人は、本件審判請求を提起するに当たって、請求人に審判請求の利益があることを明確にした主張立証がない、これが明らかにされない以上は本件審判請求をする利益がない旨主張している。

しかしながら、本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標の指定商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがある、又は請求人の人格権が害されると主張しているところであって、本件商標の存在により、直接不利益を被る者である。

したがって、請求人は、本件商標の登録無効の審判を請求することについて、法律上の利害関係を有するものである。

(2)引用商標等の著名性の主張に対する反論及び商標法第4条第1項第8号違反の主張に対する反論について

被請求人は、Valentinoの名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われていることを理由に引用商標「VALENTINO」が著名であるとすることはできないと主張する。

しかしながら、仮にValentinoの名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われているとしても、イタリアにおけるかかる事由が、引用商標「VALENTINO」のわが国における周知・著名性を何ら妨げる事由となるものでない。

(3)商標法第4条第1項第11号及び同第15号違反の主張に対する反論

被請求人は、VALENTINOの文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても本件商標が引用商標に類似するというのは誤りである旨主張する。

しかしながら、「VALENTINO」「Valentino」の文字を含む結合商標が他に登録されていても、それらが、取引者、需要者によりイタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)のデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」と明確に区別され、VALENTINO GARAVANIとは関係のないものとして取引されているという事実はない。すなわち、VALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)の商標が「ヴァレンティノ」と呼ばれて、周知・著名である事実に照らせば、取引者、需要者が、「VALENTINO」の語を含む結合商標について、VALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品を示すものであって、それの付された商品を、周知・著名な「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)ブランドないしはその兄弟ブランドであるなどと誤解している可能性も十分にあるというべきである。

ところが、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が、「Valentino」とそれ以外の他の特定の文字「Coupeau」とが結合したものとして取引者、需要者においてよく知られ、かつ、VALENTINO GARAVANIとは関係のないものとしてよく知られるに至っている等の特段の事情は、全く認められない。

したがって、前記VALENTINOの文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が登録されていることによって、本件商標についてVALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品との出所の混同のおそれが減少するものということはできない。

なお、請求人は、本件に関する事情として「VALENTIN0(ヴァレンティノ)」商標の周知・著名性を認定した審決を参考資料1ないし同7として提出する。

(4)結語

以上のとおり、被請求人の答弁は、何れも理由がなく、失当である

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第20号証(枝番を含む。)を提出している。

1 本件審判請求を提起するに当たって、請求人に審判請求の利益があることを明確にした主張立証がない。

本件審判請求は、適法に権利として設定されて安定した本件商標を無効とする請求である。そうすると、本件審判請求は本件商標の法的安定性を覆す行為である。その請求をするには、それ相当な理由がなければならないはずである。これを明らかにするため、本件請求を行う正当な理由を明らかにされなければならない。本件審判請求書には、これが明らかにされていない。これが明らかにされない以上は、本件審判請求をする利益がない。

2 引用商標等の著名性を明らかにしようとする主張に対する反論

(1)まず、甲第2号証の1、同号証の2ないし甲第6号証は、引用A商標ないし引用F商標を掲載した商標公報であって、これをもってしては商標公報に掲載された引用商標であるVALENTINO GARAVANI並にVALENTINOの商標が著名であるとすることはできない。

(2)請求人は、甲第8号証の1、同号証の2ないし甲第12号証の1〜同号証の4をもって、引用商標であるVALENTINO GARAVANIの著名性、並に、VALENTINOの文字がVALENTINO GARAVANIの著名な略称でもあることを立証しようとしているが、前記書証をもって、前記事項を立証することはできない。なぜなら、

ア Valentinoの名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われている名称である(乙第1号証)。

イ VALENTINOの綴りが乙第1号証に示す辞典に記載されたとおり男子の氏名としてよく使われる名称であるとの判断を示した決定、審決がある(乙第2号証ないし同第4号証)。

ウ 甲第7号証、並に甲第13号証の1、同号証の2以下甲第62号証に示す書証の大半は、発行所が明らかでなく前記書証が刊行物として真正に成立した文書であるかどうかわからない。それだけでなく、前記書証が頒布されたものであるかどうか明らかでない。

仮に前記書証が刊行物として頒布されたとしても、それは、VALENTINO GARAVANIの表示、並にその略称であるとするVALENTINOの表示が多くの刊行物に掲載して頒布されたというだけのことである。その頒布をもってそれが直ちに前記表示が著名性獲得に結びつくとは限らない。

これが著名になったというためには、多くの刊行物に掲載して頒布されたという事実だけでなく、これとは別な立証手段が必要である。

エ 本件では、引用商標がどのような手段を講じて著名商標としたとの主張、立証もない。したがって、引用商標、並に引用商標の略称であるVALENTINOの文字が著名であるとの請求人の主張は成り立たない。

3 商標法第4条第1項第8号違反についてとの主張に対する反論

(1)イタリアのデザイナーであるヴァレンティノ・ガラバーニ氏が著名なデザイナーであることは認める。その余は不知。

(2)VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラバー二)氏の氏名を表示する文字中、VALENTINOの文字が直ちにVALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラバー二)氏を指すというほどの著名な略称であるという請求人の主張は争う。

ア 請求人は、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラバー二)氏は著名なデザイナーであって同氏の顧客の中には、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンなどの著名人も多いとしている。

(ア)しかし、これら著名人を指すにしても、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンと表示し、あるいは指称するから、これら著名人を指すことがわかるが、これらの著名人を指すとき、これを単にレオーネ、グレス、エリザベス、オードリーと表示し、あるいは指称したときは、レオーネ、グレス、エリザベス、という人はたくさんいるので、前記著名人を単にレオーネ、グレス、エリザベスといったときは直ちにこれらの著名人を指したことにはならない。すなわち、前記著名人のレオーネ、グレス、エリザベス、オードリーの表示、名称が上記著名人の著名な略称ということはできない。

(イ)それと同じように、VALENTINOの表示をもって直ちに著名人のVALENTINO GARAVANIの著名な略称ということはできない。

イ このVALENTINOの名称がイタリアの男子の名称としてよく使われる名称である(前記1(2)ア)。また、VALENTINOの表示が直ちにヴァレンティノ・ガラバー二氏の著名な略称とはいえないとの判断を示した審決、異議決定がある(同1(2)イ)。

したがって、ヴァレンティノの称呼、並に表示を含む商標は、直ちに、イタリアの著名なデザイナーであるヴァレンティノ・ガラバー二氏を指すとはいえない。

更に、VALENTINOの綴りが直ちにVALENTINO GARAVANIの略称とはいえない。

(3)よって、本件商標の登録には、ヴァレンティノ・ガラバー二氏の承諾が必要であり、この承諾を得ないで登録された本件商標は無効であるとの主張は失当である。

4 商標法第4条第1項第11号違反についての主張に対する反論

(1)本件商標と引用商標の表示をもって、この表示、並に、これを読み取る称呼は冗長なものであるとする請求人の主張は否認する。

ア 例えば、映画に趣味を持つものは、映画スターの氏名は、冗長なものであっても、これを覚えるに苦労しない。しかし、映画に趣味を持たない者は、氏名が冗長な場合覚えるのに苦労する。

すなわち、その氏名を冗長に感ずるかどうかは、その氏名に馴染んだかどうかによるものである。

イ ヴァレンティノ・ガラバー二の氏名が著名であるなら、この表示、称呼は取引者、需要者に親しまれているということであり、取引者、需要者は、VALENTINO GARAVANIの表示をもって無理なくヴァレンティノ・ガラバー二と読み取ったり、称呼することは普通に行われることである。そうすると、取引者、需要者はこれをもって冗長とは感じないようになるということである。

ウ ちなみに、甲第14ないし同第17号証に示す「世界の一流品大図鑑」と称する文書には、VALENTINO GARAVANI以外の一流品と称するブランド名が掲載されている。

上記文書に掲載されたVALENTINO GARAVANI以外の一流品のブランド名の使用者は、自己のブランド名は、取引者、需要者に冗長なブランド名であるという感じを与えることがないと判断したことにより、これを無理に略称をもって表示したり、称呼する必要がないとして、その表示に当たっては取引者、需要者に馴染まれている正規の表示、名称をそのまま使用しているのである。

エ 本件商標も、ヴァレンティノと略称されることなくヴァレンティノクーポと呼び、これが冗長であるという感じを持ったり、あるいは持たれたりせずに使われている。

(2)請求人が、本件商標の構成について、本件商標は二段に横書きされた構成からなっているとする主張は否認する。

ア 本件商標は、単純に二段書きにするものではない。

(ア) 本件商標は、ValentinoとCoupeauの文字とが一体となって目立つように連続して一連化されて認識されるような工夫を凝らした字配りで構成されており、ValentinoとCoupeauのいずれか、どちらかが目立つような配列の仕方には構成されていない。

(イ)したがって、本件商標に取引者、需要者が接したときは、ごく自然に「ヴァレンティノクーポ」と称呼するよう読み取り、本件商標のValentinoの文字(綴り)をCoupeauの文字(綴り)と切り離してValentinoの文字(綴り)に注目するような構成とはなっていない。

イ 以上、観察したところから明らかなように、本件商標と引用商標とはまず、外観を異にするだけでなく、称呼を異にし、更に、同一人物を指すものでないところから観念を異にするものであることは明らかである。

(3)本件商標が登録された後、被請求人は本件商標の普及に積極的な営業活動を開始し着手している。そうすると、本件商標が取引者、需要者に知られることによって馴染まれ、本件商標の表示が冗長であるとか、称呼が冗長であるとかという感じはなくなるのは当然である。

(4)VALENTINOの綴りを用いた氏名を名乗る著名なイタリアのデザイナーがいる(乙第1号証ないし同第4号証、枝番は省略する。以下、同じ)。

これらのデザイナーの氏名がそれぞれ商標として登録されている(乙第5号証ないし同第8号証)。

これらの商標なり、ブランド名を指称するとき、それぞれが冗長であるからといって、略称したりはしない。

これらのデザイナーの商標なりブランドが、取引者、需要者によって引用商標なりヴァレンティノ・ガラバーニ氏のブランドと取り違えられることはない。区別されて通用している。

(5)請求人が著名商標といわれているVALENTINO GARAVANIの著名な略称であるとするVALENTINOの文字を用いた、著名として取り扱われている商標、ブランドはいくらでも使用されている(甲第9号証ないし同第13号証)。

これらは、取引上、ヴァレンティノとは略称しない。また、単にヴァレンティノといったときは、取引上これらを指さない。

(6)引用商標は取引者、需要者に外観、称呼、観念はそれぞれ異なると認識され、その認識のもとにそれぞれ親しまれており、冗長な商標として取り扱われていない。また、略称をもってしては取り扱われていない。

本件商標も略称をもって取り扱われていない。

よって、請求人の主張は失当である。

5 商標法第4条第1項第15号違反についての主張に対する反論

(1)請求人が本件商標を無効としようとして請求人の引用している商標の顕著性は、争う。

請求人の主張の要旨は、本件商標は、引用D商標ないし引用F商標と類似するということである。

(2)ところが、本件商標と引用D商標ないし引用F商標とは外観、称呼、観念のいずれも相違することは既に説明したとおりである。

また、VALENTINOの文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても、本件商標をもって引用商標に類似するというのは誤りである。

そうすると、本件商標の登録をもって、直ちに商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。

第5 当審の判断

1 利害関係について

被請求人は、本件審判の請求につき、無効審判を請求するには法律上の利益が必要とされるにもかかわらず、請求人は、この点について明確にせず、本件審判の請求をしている不適法なものであるから、その請求をする利益がない旨主張するので、この点について検討する。

ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解される。

本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、ないし請求人の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の登録を無効にし、排除せんとすることは、商標権の本質に照らして当然の権利というべきものである。

したがって、請求人は、本件商標の存在によって、直接不利益を受ける者であるから、本件審判の請求をするにつき、利害関係を有するというべきである。

2 「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」の著名性について

本件審判の請求の理由及び甲第7号証ないし甲第71号証(枝番を含む。)を総合してみるに、以下の事実が認められる。

(1)ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani,1932〜)は、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)ら生まれる。17歳でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後の2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。・・・モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れ渡った。・・・」(甲第63号証)。また、「イタリアRomaのデザイナーValentino Garavani,(1932−)・・・1967年にFirenzeで白一色のコレクションを発表してマスコミに大きく取り上げられ、一躍その名を高めた。・・・」(甲第64号証)。これ以来、同氏は、イタリア・ファッション界の第1人者となり、サンローランなどと並んで世界三大デザイナーとも呼ばれるようになった。

(2)新聞記事

甲第7号証の4ないし同32(同26、同30は除く。)、甲第47号証ないし甲第49号証及び同第71号証は、昭和51年9月から平成5年8月にかけて発行された新聞におけるヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服の紹介記事を抜粋したと認められるものであって、以下の記事が掲載されている。

(ア)昭和51年10月2日「日刊ゲンダイ」には、「日本人の感覚にピッタリ」の見出しの下に、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表...」(甲第7号証の4)。

(イ)昭和51年(1976年)9月30日「読売新聞」には、「秋冬ものにも“綿素材”の進出」の見出しで、「...ヴァレンティノ・ガラバーニの‘76秋冬コレクションが、このほど大阪ロイヤルホテルで開かれた...ヴァレンティノのショーから」(甲第7号証の5)。

(ウ)昭和51年9月28日「繊研新聞」には、「鮮やか黒いファッション ヴァレンティノ秋冬ショー」の見出しで、「イタリアンのデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニの秋冬コレクションが東京・ホテルオークラで紹介された。...(ヴァレンティノ秋冬ショーから)」(甲第7号証の7)。

(エ)昭和51年9月29日「センイジヤアナル(大阪)」には、「ヴァレンティノ・コレクション 日本で初の開催」の見出しで、「(東京)イタリアンのデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニのコレクションがこのほどホテルオークラで、わが国で初めて開かれた(主催ヴァレンティノブティック・ジャパン)。...メンズのデザイナーとしも定評のあるヴァレンティノは、今回のショーでも...」(甲第7号証の8)。

(オ)昭和51年10月2日「日刊ゲンダイ」には、「日本人の感覚にピッタリ」の見出しの下に、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表...」(甲第7号証の15)。

(カ)昭和51年10月5日「サンケイ新聞」には、「ヴァレンティノ・コレクション」の見出しで、「...イタリアン・ファッションを代表するデザイナー、ヴァレンティノ・ガラバーニの秋冬コレクション。...」(甲第7号証の18)。

(キ)昭和51年10月5日「朝日新聞」には、「親しみやすいものばかり」の見出しで、「...バレンティノ・ガラバーニのわが国初めての本格的ショーが、このほど東京と大阪のホテルであい次いで開かれた...もっともバレンティノにいわせると...」(甲第7号証の21)。

(ク)昭和51年10月6日「日経産業新聞」には、「伊の鬼才ヴァレンティノ これが76年秋冬の新作」の見出しで、「...今度はイタリアから。同国のファッション界の鬼才といわれるヴァレンティノ・ガラバーニの76年秋冬コレクションがこのほど紹介された。...」(甲第7号証の22)。

(ケ)昭和57年12月24日「日本経済新聞」には、「世界の一流品が競うヨーロッパ10日間の旅...」の記述の下の一覧表中に、「Valentino Garavaniの文字と図形」(甲第47号証)。

(コ)平成3年7月29日「報知新聞」には、「...リズの花嫁衣装はバレンチノ...」(甲第48号証)。

(サ)平成5年8月28日「朝日新聞」には、「バレンチノ ガラヴァーニ、という誤解」と「VALENTINO GARAVANIの文字と図形」のある全面広告(甲第49号証)。

(シ)昭和57年11月20日「朝日新聞」には、「世界の服をリードする3人」の見出しで、「バレンチノ」「外国からも仮縫いの客」と題して、「バレンチノ今年のベスト5の中で、...」(甲第71号証)。

(3)ファッション雑誌

甲第7号証の26、甲第7号証の30、甲第21号証ないし同第37号証、甲第50号証ないし同第53号証、甲第55号証、甲第56号証、甲第68号証及び甲第69号証は、昭和51年から平成10年4月にかけて発行されたファッション雑誌におけるヴァレンティノ ガラヴァーニに関する紹介記事を抜粋したと認められるものであって、以下の記事が掲載されている。

(ア)「ヤングレデイ」には、「・・・ヴァレンティノ、イタリアファッション界の旗手・・・イタリアで生まれたヴァレンティノは、・・・」(甲第7号証の26、昭和51年10月12日号)。

(イ)「婦人画報」には、「資生堂ザ・ギンザ・秋冬のファッション」と題する記事中に「イタリア・ファッションの第一人者ヴァレンティノも日本に登場して2年、人気も急上昇といった昨今ですが、今回紹介されたコレクションでも、セーターからコートまで洗練されたヨーロッパ感覚を見せています。」(甲第7号証の30、昭和51年11月号)。

(ウ)「nonno」(DECEMBER 12ー5 ’89 No,23)には、「ヴァレンティノ、ソニア・リキエルから・・・」の表題の下、「この秋デビューしたヴァレンティノの『オリバー・ドンナ』・・・」(甲第68号証、集英社平成元年12月5日発行)。

(エ)「Oggi」、「CLASSY(クラッシィ)」、「marie claire(マリ・クレール)」、「lecoeur(ル・クール)」には、「ヴァレンティノガラヴァーニ、という誤解。」の表題の下、「VALENTINO GARAVANIの文字と図形」のある全面広告(甲第51号証ないし甲第53号証、いずれも1993年10月号)。

(オ)「ELLE(エル・ジャポン)」には、「・・・ヴァレンティノやヨウジヤマモトで使われていた・・・」、「モデルの写真とVALENTINO」、「モデルの下げているセカンドバッグの写真とVALENTINO」、「・・・ジョルジョ・アルマーニ、ヴァレンティノ、ジョンガリアーノなどでは・・・」(甲第55号証、1997年(平成9年)8月号)。

(カ)「DONNA(ドンナ・ジャポン)」には、「モデルの写真とVALENTINO」、(甲第56号証、1998年(平成10年)4月号)。

(4)ファッション専門誌

甲第66号証、甲第67号証及び甲第14号証ないし甲第20号証は、昭和51年から平成3年にかけて発行されたファッション専門誌「世界の一流品大図鑑」、「EUROPE 一流ブランドの本」及び「男の一流品大図鑑」であって、「Valentino Garavani(ヴァレンティノガラヴァーニ)」の氏名、または単に「ヴァレンティノ」の表示のみで紹介されている記事、そのデザインに係る商品について紹介されている記事が掲載されている。

(5)ファッション関係辞典、世界人名辞典

(ア)甲第63号証は、「服飾辞典」(文化出版局、昭和63年9月5日第10刷発行)であって、「イタリア北部の都市に生まれる。・・・スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。・・・1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクションは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判になり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。」の記載がある。

(イ)甲第64号証は、「英和商品名辞典」(株式会社研究社、1991年第3刷発行)であって、「イタリアRomaのデザイナーValentino Garavani(1932ー )のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など.・・・1967年にFirenzeで白一色のコレクションを発表してマスコミに大きく取り上げられ、一躍その名を高めた.」の記載がある。

(ウ)甲第65号証は、「世界人名辞典」(株式会社岩波書店、1997年11月21日第1刷発行)であって、先ず「ヴァレンティノ」の配列に「Valentino→ガラヴァーニ」と掲載され、次に「ガラヴァーニ」の配列に「ヴァレンティノ Garavani,Valentino 通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933ー)服飾デザイナー.ローマ生まれ...」と掲載されている。

(6)以上の(2)ないし(5)のように、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のフルネームはもちろん、甲第7号証の7、同15、同21、同22、甲第48号証、甲第71号証、甲第55号証、甲第56号証、甲第68号証及び甲第69号証において、単に「ヴァレンティノ」(若しくは「バレンチノ」)の表示のみで、そのデザインに係る商品について、紹介されている記事が多数掲載されている事実よりすれば、「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして、遅くとも本件商標の登録出願時の平成6年には、わが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るところであり、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと推認できる。

そして、「ヴァレンティノ」(若しくは「バレンチノ」)の表示は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品群に使用されるブランド(「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」)の略称を表すものとして、本件商標の登録出願前より、わが国のファッション関連の商品分野の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものというのが相当である。

4 出所の混同について

本件商標は、前記のとおりであるところ、その構成中の「Valentino Couprau」の欧文字が16文字、これより生ずる「ヴァレンティノクーポー」の称呼も9音であって、その構成文字又は称呼のいずれよりみても、一つの名称のものとしては冗長というべきである。さらに、本件商標は、全体として特定の熟語や氏名を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているというような事情も、被請求人の提出した証拠によっては認めるに足りない。

そして、前記2(6)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が紳士服、婦人服等のファッション関連の商品について使用され、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったこと、また、本件商標の指定商品「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘」は、その主たる需要者が一般の消費者で、VALENTINO標章が使用されるファッション関連商品の需要者と一致し、さらに、近年被服等で著名なデザイナーのデザインに係る商品は、統一されたブランド及びイメージの下に幅広く製造、販売、宣伝されていること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中前半の「VALENTINO」の文字のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それがヴァレンティノ ガラヴァーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものというのが相当である。

また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から登録査定時においても継続していたものと認められる。

なお、被請求人は、他の審決例、商標公報を提出し、「『VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)』が『VALENTINO(ヴァレンティノ)』の略称として著名でないし、また、本件商標は、一体のものとしてのみ把握されるべきである。」旨の主張をするが、たとえ本件商標の指定商品を含めた他の商品の区分において、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されている事実が存在するとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、その登録出願時から査定時において、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)標章」を使用した商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあったか否かの問題であるから、被請求人が挙げる登録商標の存在に、前記認定が左右されるものではない。

5 むすび

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ず、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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