Trademark Appeal Case
周知商標の混同判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90337(T2002−90337/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4548092号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年5月2日に登録出願され、第29類「食肉,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。)」を指定商品として、平成14年3月1日に設定登録されたものである。
2 当審における取消理由の要点
当審において、平成14年11月19日付で商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
登録異議申立人ヤマト運輸株式会社(以下「申立人」という。)の提出に係る甲第2ないし第10号証の雑誌、新聞記事等を総合勘案すれば、商標「宅急便」(以下「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る役務「宅配便」の商標として、本件商標の登録出願前に取引者・需要者の間において広く認識されていたことが認められる。
してみれば、本件商標は、引用商標に酷似する「宅急便」の文字を含むものであり、本件商標の指定商品の輸送に際して前記役務「宅配便」も利用される場合が少なくないことから、本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は構成中の「宅急便」の文字に着目して引用商標を連想、想起し、申立人又同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
3 商標権者の意見の要点
(1)「宅急便」の文字を含んでいればどのような商標でも申立人の商標と混同するというのは、あまりにも申立人の一方的な主張であり、申立人はあくまで「クロネコヤマトの宅急便」として有名であるにすぎず、「ママの宅急便」と聞いて「クロネコヤマト」と認識する人が何人いるだろうか。クロネコは子供のクロネコを銜えた親ネコの図形が特に有名なのではないか。
本件はそれとは全く雰囲気も意味も異なるエプロン姿のママがキッチンに立っている図形が大きく前面におし出された図形商標であり、それがどうしてストレートにクロネコに結びつくのか大いに疑問である。
商標の審査は、あくまで一企業に独占的に有利に審査されるのではなく、商標として全体を眺めてみて、一般人又は取引者が混同するかどうかで判断すべきである。
(2)商標権者の主張が正しい証拠として以下の登録商標を提出する。
ア)登録第4389108号 「声の宅急便」 株式会社トイボックス
イ)登録第4029499号 「ふるさと宅急便」 東邦化工株式会社
これらの商標は本件と異なり図形も含んでいない。そのことから考えると、本件商標の方がこれらの商標よりクロネコとの識別は強力にできるものである。
(3)クロネコは物の運送を定款目的としている会社であり、本件商標の指定商品である食品の製造は行っていない。そのような会社が本来の食品製造業務を行っている会社の登録商標を取り消しできるのであろうか。
本来の業務と関係のない指定商品において商標全体を見ることなく、単なる「宅急便」のみの文字の有無にだけ拘泥している申立人の主張は全く理由を欠くものであり、商標の混同はおこらないものである。
4 当審の判断
申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
昭和50年代後半において、家庭の小口荷物を一つひとつ集めて配る宅配便が、「戸口から戸口へ」「24時間受け付け」「翌日配達」等のキャッチフレーズで人気を博し、ものすごい勢いで伸びており、中でも、昭和51年から宅配便を始めた申立人の躍進ぶりはすごく、「クロネコヤマトの宅急便」のうたい文句と共に引用商標が用いられていた(甲第3号証)。昭和59年度には、宅配便の種類は109社35便あり、申立人は、宅配市場を開拓した先駆者として、該業界の39.31%のシェアを占めるまでになっており、その業務に当たっては親子クロネコの図形からなる商標及び引用商標が使用されていた(甲第4号証)。さらに、申立人は、宅配便取扱個数が該業界において平成4年度で43.5%、同7年度で45.3%を占めるに至っている(甲第6及び第7号証)。本件商標の登録出願がされた平成13年の直近である同11年度及び同12年度においても、申立人は、それぞれ該業界の35.6%及び35.1%を占めている(甲第8及び第9号証)。
以上の事実からすると、親子クロネコの図形からなる商標はもとより、引用商標も、該図形商標とは別に、申立人の業務に係る役務「宅配便」に使用する商標として、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者の間において広く認識されていたものであり、その状態は登録査定時においても変わっていなかったというべきである。
かかる事情の下において、本件商標についてみると、本件商標は、別掲のとおり、図形と文字の組み合わせからなるところ、構成中の文字部分は「ママの」及び「宅急便」の文字を2段に書したものと容易に理解し認識されるものである。そして、この文字部分と図形部分とは、常に不可分一体にのみ看取されるべき格別の理由も見出し難いから、本件商標は、この文字部分に着目して取引に資される場合も少なくないものというべきである。また、本件商標の指定商品は、その輸送に際して上記「宅配便」が利用されることも少なくないから、上記「宅配便」と全く関係がないとまではいえない。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者はその構成中の「宅急便」の文字に着目して、広く認識されている引用商標を連想、想起し、申立人又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
なお、商標権者は、本件商標が「宅急便」の文字を含むことのみによって申立人の引用商標と混同を生ずるとすべきではない旨主張し、当庁における登録例を掲げているが、掲げられた登録商標については、登録無効の審判請求がされており、その登録が無効とされる可能性があるばかりでなく、本件商標については、引用商標の周知著名性に鑑み、上記のとおり判断するのが相当であるから、商標権者の主張は採用することができない。
よって、結論のとおり決定する。
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