Trademark Appeal Case
団体名と流派名の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2001−90781(T2001−90781/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4491515号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成12年2月4日に登録出願され、第41類「空手の教授,空手競技会の興業の企画・運営又は開催」を指定役務として、平成13年7月19日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
「日本空手道松涛会」又はその略称としての「松涛会」なる名称は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)が役員の一人として運営に参加している団体が古くから全国において使用し、空手の団体の会として広く認識されているものであるから、本件商標は、その団体名称の顕著な部分が一致するものであり、商取引上の秩序に誤認混同を与える商標であることは明らかである。また、申立人は、運動具に関する商品について、既に登録第2402146号商標として「松濤會」を有しており、運動用の空手道衣などに使用した場合には、両者明らかに誤認・混同を生じさせる類似商標である。
以上、本件商標がこのまま登録が維持されることは、申立人の団体がこれまで培ってきた業務上の信用にフリーライドすることは明らかであり、このような行為は不公正な行為であって、需要者の利益にも反する行為である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 取消理由の通知
当審において、平成14年4月2日付けで、商標権者に以下の取消理由(要旨)を通知した。
「日本空手道松涛会」という名称又はその略称としての「松涛会」(以下「引用商標」という。)は、本件商標の出願前から、取引者、需要者の間において広く認識されていたものと認められる。
そして、本件商標は、別掲のとおりであるところ、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「松涛会」の文字部分を独立の役務の出所標識として認識する場合がある。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、「松涛会」の文字より生ずるものと認められる「ショウトウカイ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務は「日本空手道松涛会」の業務に係る役務と同一又は類似の役務と認められるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。
(1)今回の審判は、一団体に「松濤会」の名称を核心とした商標権を排他的に取得させ、「松濤会」系列の他の団体の商標権の取得を阻止させるか、或いは実態に即して、「松濤会」系列の他団体にも商標権の取得を肯定するか否かが本質的争点であると考える。
(2)そもそも「松濤会」の沿革は、富名腰義珍氏を流祖としこの流れは、日本空手松濤会・社団法人日本空手協会・日本松濤連合会・国際松濤館等々へと分裂しながらもそれぞれの団体が、独自に社会的役割を遂行し、再統一する事もなく、今日に至っている。
この点については、登録異議申立書に添付されている甲第11号証で130頁の記載を援用しており争いがない。
また、国内・国外での団体、更には、地方の道場でも登記登録の有無を問わず、数多くの方々が、「松濤会」の名称を掲げて活動していることも紛れのない事実である。
松濤会を源流に置きながらも、時代を経て、その分派が、空手道の究極を極めるべく、日々、錬磨・努力の結果として独自の名称を附加して団体名称として活動しているのである。
(3)斯界では、「松濤会」とは系統ないし一般名称として使われているにも拘らず、「松濤会」を含む事実を根拠として、右「松濤会」を含んだ商標は、否定されると松濤会系列の流派は、自助努力で系統流派名を団体名として表す商標権の保護は、一切受けられない事となり不合理である。
更に、最初に「松濤会」の名称を商標権申請した者のみが独占的に保護される事となるのも遺憾の極みである。
(4)当会は、従来から伝わった「松濤会」スタイル空手道から、これに止まらず、老若男女・年齢・身体の完全性・強弱を問わず、万人に受けられ得る武道の実現を図る事を目的とする団体であり、「日本武学空手松濤会J・K・S」の名称のまさに“日本武学”の中に思いを託している。
一般人は、文面から「松濤会」の語を要素として商標の類似の有無を判断するものの、「松濤会」とは、松濤会流という程の意味であり、附加する名称、当会に即せば“日本武学”にこそ個性を区別するに際して意味がある事を思えば、審判は、事実を誤認し不当・違法と考える。
(5)登録異議申立書では“松濤会”ないし“松濤館”とは、即ち日本空手松濤会を指し、これは周知の事実だと主張しているが、会員数・大会実績などからすれば“日本空手松濤会”の存在を知るものの、社団法人日本空手協会、その系列分派をもって「松濤会」の直系と業界では判断している。
更に、「松濤会」の系譜を引く実力のある団体も数多くあり申立人をして“松濤会”との認識を業界関係者が有する余地はありえず“周知の事実”性は存在しない。
また、受講者を含めて需要者の間に広く認識されるという主張も、現実に空手界に接すれば、「松濤会」が世界で唯一の団体を指すのではなく、より広義に系統を指すことは入会後、簡単な空手道の沿革史を学べば、即座に体感するものであり主張に根拠がない。
更に、登録異議申立書では“培ってきた業務上の信用にフリーライド”してる旨主張しているが、当会の社会的信用と責任に基づき運営した結果として生じる利益等につき、当会が同系列の“日本空手松濤会”に対する支払義務が発生する余地はない。
以上より、商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当の旨の主張は、退けられるべきものである。
5 当審の判断
申立人の提出に係る甲各号証を総合勘案すれば、引用商標は、「日本空手道松涛会」が古くから全国において使用してきた結果、本件商標の出願前から、取引者、需要者の間において広く認識されていたものと認められる。
そして、本件商標は、別掲のとおり「日本武学」「空手松涛会・J・K・S」の文字よりなるところ、その構成文字全体は冗長であるばかりでなく、構成中の「日本武学」「空手」の文字部分はその指定役務の関係において識別力が弱いといえるものであり、また、「松涛会・J・K・S」の文字部分は、漢字と欧文字という異なった文字よりなるものであるから、本件商標に接する取引者、需要者は、その「松涛会」の文字部分を独立の役務の出所標識として認識する場合が多いものとみるのが相当である。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、「松涛会」の文字より生ずるものと認められる「ショウトウカイ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務は「日本空手道松涛会」の業務に係る役務と同一又は類似の役務と認められる。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(前記3)は妥当なものである。
なお、商標権者は、「松濤会」とは、松濤会流という程の意味であり、附加する名称、当会に即せば“日本武学”にこそ個性を区別するに際して意味がある事を思えば、審判は、事実を誤認し不当・違法と考える旨述べているが、本件商標については前記認定のとおり、その構成中の「松涛会」の文字部分を独立の役務の出所標識として認識する場合が多いものとみるのが相当であるから、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
また、「松濤会」の系譜を引く実力のある団体も数多くあり申立人をして“松濤会”との認識を業界関係者が有する余地はありえず“周知の事実”性は存在しない旨述べているが、「松濤会」の系譜を引く実力のある団体も数多くあると主張するのみであって、そうであるとする裏付けとなる証拠を何ら示さず、むしろ、前記のとおり、申立人の提出に係る甲各号証より、引用商標が、空手の団体の名称として本件商標の出願前から取引者、需要者の間において広く認識されていたものと認められるから、商標権者の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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