Trademark Appeal Case
「辛口」商標の使用による識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−11382(T2000−11382/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第32類「ビール」を指定商品として、平成10年4月10日に登録出願されたものである。
2 原査定の理由
本願商標は、指定商品との関係において「辛口」であることを認識させる「KARAKUCHI」(別掲に示す構成)の文字を書してなるものであるから、これを指定商品に使用するときは、その商品が「辛口のビール」であるという単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 当審の判断
本願商標は、別掲に示すとおり、左右逆向きにしたダブルクォーテーション記号とダブルクォーテーション記号(”)との間に「KARAKUCHI」の欧文字を挿入して一連に表した構成よりなるところ、その構成中「KARAKUCHI」の欧文字部分は、ローマ字綴りにより「カラクチ」を表記したもので、「辛口」(口当たりの辛いもの)の意を容易に理解させるものと認められる。
また、「KARAKUCHI」の欧文字の前後に付されているダブルクォーテーション記号(”)は、その間に表されている語を強調する意図で装飾的に付記されているものと理解され、その記号のみで自他商品を識別する標識として機能し得るものとは認められない。
ところで、インターネット情報によると、ビールの味、香り、飲みここち等の特徴を表現するのに、「芳醇」、「苦味」、「ドライ」、「辛口」、「甘口」等の表現を用いている実情が窺える。また、「ドライビール」は辛口なものといわれているところである。
この点については、例えば、請求人(出願人)提出の1987年の請求人のビール製品案内である参考資料4の14葉目には「飲むほどにDRY、辛口・生」と大きく表示し、その下段に「“スーパードライ”、さらりとした飲み口、アルコール度ちょっと高め」「キレ味がさえる、いわば辛口ビール。」等と説明する記載(同様の説明書きは参考資料5ないし7にも見られる。)があり、同じく1991年のビール製品案内である参考資料8の11葉目に掲載されている瓶ビールには、瓶の肩部分のラベルに本願商標と同様の構成からなる「KARAKUCHI」の文字〔左右逆向きにしたダブルクォーテーション記号を語頭に、ダブルクォーテーション記号(”)を語尾に配している。〕と表示し、その下段に「さらりとした飲み口、アルコール度ちょっと高め」「キレ味がさえる」「いわば辛口ビールです。」と説明書きされている。また、昭和63年7月7日の朝日新聞の記事(参考資料19の4)によると、「ドライに快進撃 ビール」の見出しの下、「辛口ビールの『ドライ戦争』が本格化した今年3月から6月まで四カ月間、ドライがビール全体の販売数量の約三分の一を占め、・・・ドライの販売数量はアサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの順。」等と記載され、「辛口」の語がビールの品質を表す語として使用されていることが認められる。
そうしてみると、本願商標より理解される意味及び上記実情よりすると、この商標に接する取引者・需要者は、その商品が「辛口」なものであることを表現していると理解し認識するものと認められる。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用をするときは、その商品の品質を表示していると認識されるものであって、自他商品の識別標識として機能し得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
しかしながら、請求人(出願人)は、本願商標を平成2年から「ビール」(缶体)について使用をした結果、現在では、その商標を需要者の間において請求人の業務に係る商品を表すものであることを認識するに至っている旨主張し、その証拠方法として参考資料1ないし87(枝番を含む。)を提出している。
そこで、請求人(出願人)が提出した参考資料をみると、以下の点が認められる。
(1)請求人の製品案内である「Asahi 1990」(参考資料7)の13葉目によると、本願商標と同様の構成からなる「KARAKUCHI」の文字〔左右逆向きにしたダブルクォーテーション記号とダブルクォーテーション記号(”)との間に「KARAKUCHI」の欧文字を挿入して一連に表した構成。以下「KARAKUCHIの表示」という。〕と「この味が、世界のビールを変えようとしている。」と記載され、ミニ樽アルミ3l(3リットル)、同2l(2リットル)、缶1000ml、同750ml、同500ml、同350ml、同250ml、同135mlの缶ビール等の各写真及び縦書きで「飲むほどにDRY」、「辛口、生」と記載されている。
そして、それらの缶ビール等(缶135mlを除く。)には、いずれも缶の表面の一番上の段に「KARAKUCHIの表示」がされ、その下の胴部分に、縦長四角形(四隅を切った形状)の輪郭内に「ASAHI BREWERIES LIMITED」、「ASAHI」、「DRAFT BEER」、「SUPER」、「DRY」、「ASAHI」(最も大きく表示)、「生」(大きく表示)(「生」の文字の周辺に英語による文章を表示)、「熱処理をしていません」、「アサヒビール」及び「スーパードライ」の文字を上から順に表し、全体がラベル状に表示(以下「スーパードライのラベル表示」という。)されている。
上記缶ビールと同様の表示がされている缶ビールの写真(缶350ml又は同500ml)は、1991年、1994年ないし1997年の製品案内(参考資料8、同11ないし14)及び1999−2000の会社案内(参考資料16)にも掲載されている。
(2)’98年3月、7月度の広告記事(参考資料61の7、同62の2、3、5、6)に掲載されている商品「スーパードライ スタイニーボトル」の瓶の写真によると、その瓶の首部分に「スタイニー」「STEINY」「BOTTLE」及びその下段に「KARAKUCHIの表示」を表示し、その瓶の胴部分に缶ビールに表示されている「スーパードライのラベル表示」とほぼ同一のラベル状の表示(ただし、「熱処理をしていません」及び「アサヒビール」の表示はなく、「生ビール(非加熱処理)」が追加表示されている。)がされている。
(3)’97年5月、7月度の広告記事(参考資料56の1、2、同57の1、3)に掲載されている商品「瓶ビール」の写真によると、瓶の肩部分のラベルに「辛口」〔左右逆向きにしたダブルクォーテーション記号を語頭に、そしてダブルクォーテーション記号(”)を語尾に配している。〕と表示し、その下段に「さらりとした飲み口、アルコール度ちょっと高め」「キレ味がさえる」「いわば辛口ビールです。」と段併記されており、また、胴部分のラベルには缶ビールの胴部分の「スーパードライのラベル表示」と同一の表示がされている。
(4)’90年3月、4月、6月度広告記事(参考資料71の1、同72の1、2、同73)によると、「KARAKUCHIの表示」と、その下段に「この味が、世界のビールを変えようとしている。」と記載されていると共に、「飲むほどに」、「辛口・生。」、「アサヒ」及び「スーパードライ」と記載されている。
(5)’94年ないし’96年にかけての広告記事(参考資料11、同13、同14、同16、同37の2、同41の3、同51の1、2、同52の3、同56の1、2、同57の1、3、同58の1、同59の1、2、同60の1ないし3、同61の1、同64の1、2ないし4、同66の1、同67の1、2、同85、同87の1ないし3)によると、上記(1)及び(3)の「スーパードライのラベル表示」がされている缶ビールと瓶ビールの写真を並べて掲載し、その多くの広告には、「うまさ洗練、辛口・生。」「アサヒ スーパードライ」と記載されている。
(6)1991年、1994年、1995年の製品案内(参考資料8、同11、同12)及び’97年6月度広告記事(参考資料39の1、2、同40、同41の1、2、同41の4)によると、上記缶ビールの写真と共に「この味、辛口。」「アサヒ スーパードライ」と記載されている。
これらの事実からすると、「KARAKUCHIの表示」がされている商品は辛口の生ビールであって、その広告記事には「辛口・生」と表示していること、また缶ビールと瓶ビールにおける表示をみると、缶ビールと同一銘柄の「スーパードライ」の瓶ビールにおける肩部分のラベルに上記(3)のとおり「辛口」と表示され、缶ビールについても胴部分の「スーパードライのラベル表示」より上の部分に「KARAKUCHIの表示」がされていることから、両者の表示場所、表示内容からして、「KARAKUCHIの表示」は瓶ビールの肩部分のラベルの表示である「辛口」を表しているものと容易に理解され得るものであることが認められる。更に「KARAKUCHIの表示」は、請求人の業務に係る商品を表す商標として知られている「ASAHI」、「アサヒ スーパードライ」、「スーパードライ」の商標と共に、又は「スーパードライのラベル表示」と共に表示し、そのビールの銘柄「スーパードライ」を更に個別化するものとして使用されているものではないことを併せ考慮すると、缶ビールに表されている「KARAKUCHIの表示」は、その缶ビールの表示全体からして「辛口の(アサヒ)スーパードライ」と理解され、「KARAKUCHIの表示」は、「辛口」のビールであること(品質)を表しているものと理解し、認識されるにすぎないものとみるのが相当である。
してみると、平成2年以来、請求人は本願商標と同一の構成からなる「KARAKUCHIの表示」を缶ビールに継続して使用し、相当量の販売実績があり、宣伝広告も行ってきたと主張して、その証拠を提出したとしても、「KARAKUCHIの表示」部分は、取引者・需要者をして、その商品の品質(辛口)であることを表す表示として認識するにすぎず、独立して自他商品の識別標識として認識されるに至っているものということはできない。
なお、請求人は、「ドライ」、「辛口」、「KARAKUCHI」の語をビールについて昭和62年に初めて使用し、盛大に宣伝広告してきたものであって、この語が本来の商標として機能し、その権利は請求人に帰属するものとして、「KARAKUCHI」の語がビールの品質のみ表示するものではない旨主張しているが、「辛口」又は「KARAKUCHI」の表示がビールの品質を認識させるものであることは前記認定のとおりである。そうであれば、それらの表示は、ビールを取り扱う事業者が同様の品質をもつ商品を流通過程におく場合に、当該品質を表す表示として必要なものであり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから、そのようなものを一私人に独占を認めることは妥当でなく、仮に、請求人がビールの表示として「辛口」、「KARAKUCHIの表示」を最初に用いたとしても自他商品の識別力があるものとすることはできないから、この点についての請求人の主張は採用できない。
したがって、本願商標は上記法条に該当するものとして、本願を拒絶した原査定を覆すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。